
私は個人レッスンのコースの中で、日本に入ってきた占星術の歴史的な話を少ししている。
その中で、日本に入ってきた西洋占星術は、ほとんどがアラン・レオによる体系化がなされたもので、古典占星術の重要で有用な概念がかなり捨てられて独自仕様になってしまったことについて触れている。
おそらくそれは、アラン・レオが蟹座惑星集中で、蟹座の独自性が現れた結果ではないかと考えている。
幼少時から占星術に興味を抱き、そして、高校時代には既に雑誌に寄稿していた鏡リュウジ氏は、もう、西洋占星術に携わって40年以上になるそうだ。
つまり、これだけ長い年月にわたって、西洋占星術の世界で様々な横の繋がりも得てきているため、非常に交友関係が幅広く、また、日本トランスパーソナル学会などの理事も務め、ユング心理学の河合隼雄さんらとの交流などもあったそうだ。
そしてあらゆる女性誌に記事を連載していた鏡氏は、日本の占星術の広がりを俯瞰する立場にいるようである。
この本を読んで、鏡氏が日本の西洋占星術の世界の幅広い横の交友関係を持っていることに非常に感服し、大いに学ばせていただいた。
例えばこの本で改めて知ったことは、スーパームーンやサターン・リターンといった占星術用語を普及させたのは、鏡さんらしいのである。
鏡氏によれば、最初のサターン・リターンは自分自身を確立する時で、2度目のサターン・リターンまでは社会的に活躍する時、それ以降は後進へと道を残していく時期というのが現代占星術のセオリーだそうである。
私の友人がよくその理論を解説し取り上げていたので、その理論についてはよく知っていた。
そうした鏡氏が普及させた占星術用語などからは、私も西洋占星術の基本的な教養というものを大いに学ばせていただいた。
しかし、本を読んでみて、インド占星術にのめり込んでいる私とは、やはり話が合わないと感じる部分がいくつかあった。
占いはそもそも当たらないものと考えていた
鏡氏は、158ページからの「占いは当たるのか」と題する節で、
『「占いって本当に当たるの?」「いやいや、当たるはずないでしょ」子供時代からずっとそう思ってきました。でも、占星術という営みを通して、思い当たることに意味があるのではないか。占星術は科学だ。いや、統計学だ。中にはそう主張する占星術家もいますが、僕はその考えに与しません。』
と、上記のように科学としての占星術を信じないとはっきりと書いている。
鏡氏は高校時代から雑誌で連載するほどのキャリアを持ちながら、占星術がサイエンスだとは一度も思ったことがないというのである。
その代わりに、ユング心理学の元型の概念などと組み合わせながら、占星術で扱うホロスコープの惑星の配置は、人間の心の中を炙り出す一つの象徴なのだという解釈である。
そのホロスコープに触れて、その人間が何かを感じ取ったり、気づきを得たりすれば、それが占星術の効能なのだという立場である。
鏡氏は、ユング心理学と占星術を組み合わせた立役者であるリズ・グリーンの書籍なども何冊か翻訳し、その翻訳家としての活動が際立っていた。
占星術は物事が起こるタイミングなどを的中させるサイエンスであるということを探求するのではなく、ユング心理学のようにホロスコープをあたかもマンダラを扱うかのように象徴として扱って、ある人間の無意識の内面を描き出したものであると考える点で、ほとんど心理学として携わって来たのである。
鏡リュウジ氏が行っていることは心理占星学である。
以前から鏡リュウジ氏のスタンスがそういったものであることは知っていたが、改めてこの本を読んでそれを確認した。
結局、鏡リュウジ氏がやっていることは、ユング心理学と占星術の結合であり、やはり西洋占星術を独自仕様のものにしてしまったのである。
それは、鏡リュウジ氏がやはり蟹座ラグナであることとも関係していると考えている。
蟹座というのは何でも独自仕様にしてしまうのだ。
よく日本に入ってきた文化がガラパゴス化し、日本独自仕様になってしまうというのと似ている。島国日本というのは、やはりその日本という国の中に流入した文化を日本独自の仕様に育て上げてしまうのである。
また247ページの『「占いが当たる」という感覚の正体』と題する節で、
「いずれにせよ、僕は未来のピンポイントの出来事を占いで当てられるとは思っていません。今の状況を語り直したり、自分の中でバラバラになっているものを再統合したりできる。それが占いの魅力でもあると思っています。」と述べて、出来事を的中させる占いの力を否定している。
そして、松村潔氏とのエピソードを記している。
松村潔氏が鏡リュウジ氏のホロスコープを見てくれた時があったのだという。鏡リュウジ氏が大学院を離れて少し経った頃のことだったというので、かなり若い頃の話である。その時、松村潔氏は、もうすぐ大学に戻るなどして学究的な生活に入るはずだと、鏡リュウジ氏に述べたが、結局それは外れて、鏡氏は大学には戻らなかった。すると、松村潔氏は、「いや、鏡君は太陽を生きず、月のままずっと生きちゃったからだよ。」と述べたそうである。
「僕は思わず冗談っぽく、『それちょっとずるくないですか?だったらそれも最初から当ててくださいよ!』と返したのですが……。」
といったやりとりを記している。
つまり、物事の起こる内容やタイミングを当てる技法がない西洋占星術というのは、結局のところそのような表現になってしまうしかないのである。
松村潔氏が「占星術は当たらなくていい」と言っているのは有名な話である。
それで私はこの本を読みながら、鏡リュウジ氏に対する敬意を感じながらも、やはり鏡さんは分かっていないと思わざるを得なかった。
再現性のあるやり方で、出来事をピンポイントに的中させるという、科学としての占星術の醍醐味というものを、鏡さんは感じ取っていないのである。
西洋占星術を探求した人には、どうしてもそうならざるを得ないのである。なぜなら、当てる技法というものがないからである。現代の西洋占星術というものは、アラン・レオが体系化し、重要な概念が抜け落ちてしまった。そしてハウスシステムが使えないため、ハウス同士の組み合わせによってどんな出来事が起こるかという解釈をする為の道具がなく、ダシャーのようなシステムがないため、ホロスコープに刻まれたカルマがいつ発芽するかといった観点も出てこない。
そこの部分の違いは決定的である。
であるから、西洋占星術に携わっている人々は非常に多いが、その人たちは単にチャートに現れる惑星の象徴から、チャートの主を分析するのに有用な心理学的な兆候を読み取っているだけなのである。そのように心理占星学として発達したのが西洋占星学である。
結局、鏡氏のこの『占い師の正体 ―人はなぜ占いに惹かれるのか―』という本には、西洋占星術やユング心理学の話は出てくるが、インド占星術やサイデリアル星座帯についてはほとんど語られていなかった。
もしそれらを探求し、占星術が物事を的中させる再現性のある科学であることが分かると、これまで西洋占星術に何十年も携わってきた人たちの世界観は揺らいでしまう。
だから、占星術は再現性のある科学であるとするジョーティッシュ(インド占星術)に新たに参入することを意識的、無意識的に避けているのかもしれない。
例えば、シュリK.N.ラオが米国を訪問した時にその優れた予測の技術を間近で見たマーク・ボニーは、ジョーティッシュ(インド占星術)に出会う前、20年以上、西洋占星術を実践してきたが、一度も何かをまともに当てることはできなかったと述べている。
ジョーティッシュ(インド占星術)に出会うことで、初めて、クライアントの何かをまともに当てることができるようになったのである。
しかし、にもかかわらず、鏡リュウジ氏のホロスコープには非常に素晴らしい配置が認められる。
ラグナロードの月が9室でラーフを含むラージャヨーガ:運命学や学問に打ち込む
例えば、出生図でラグナロードの月が9室に在住し、ヨーガカラカの5、10室支配の火星とコンジャンクションしている。これで1-5、5-10のラージャヨーガが学問探究の9室で形成されている。ラーフもトリコーナとケンドラの支配星と絡むことで、完全にラージャヨーガになっている。
したがって、幼少期から運命学の研究者として身を立てたというのは、このラグナロードが9室に在住して、強力なラージャヨーガを形成するこの配置にあるのである。そして、9室に対して逆行する木星が、一つ前の蟹座からアスペクトバックして、さらにこの配置を保護している。
だから、鏡リュウジ氏は大学院に進み、そして博士課程にも本来進む予定だったという。したがって、何らかの研究者になる予定だったのである。しかし、もしその研究者になる道が中断させられたとしたら、それは7、8室支配の土星が在住しているからである。
そしてもう一つ素晴らしい配置は、9室支配の木星が2室に在住している配置である。そして、2室支配で、8室在住の太陽にアスペクトしている。この素晴らしい2室があるために、鏡氏は様々な場所で講演活動を行ってきた。
そして、今現在、何かの本を書くやり方は、編集者との対談によって録音をし、そしてそれを文字起こしして本にまとめてもらうという手法が流行っている。従って、2室が素晴らしければ、それだけで本が簡単に作れてしまうのである。おそらく私は、鏡リュウジ氏の2室が強いことが、たくさんの本を出版できた理由ではないかと考えている。
まず、この2室で逆行する9室支配の木星は、蟹座から出版の5室と5室在住の火星にアスペクトしている。そして、この9室在住の火星は、ラグナロードの月との間で1-5、5-10の強力なラージャヨーガを形成し、9室支配の木星からのアスペクトを受けて、非常に素晴らしい配置を9室で形成している。であるから、学問的にも有用な優れた本を出版することが出来たし、また、海外の優れた占星術書の翻訳者として、それを日本に紹介する活動ができたのである。大学の教授というのは、ほとんどがそういった海外の優れた学問の成果を翻訳して日本に紹介するような人が多いのである。であるから、鏡氏は大学の教授レベルの仕事をして来たように思われる。
9室でのラーフ、土星、火星の惑星集中
そして、鏡氏は魔術というものにもかなり凝ったようである。
黄金の夜明け団とか、アレイスター・クローリーといった魔術師の本もたくさん読んだようである。魔術の通信教育を受けていたとも書いてある。そういった下手をすると黒魔術にも通じるようなギリギリのラインを行っていたのは、おそらく9室がラーフ、火星、土星といった凶星によって傷つけられていたからである。
強力なダシャムシャ(D10)
そして、鏡リュウジ氏がなぜこのように社会的に有名な占星術師になったかといえば、それはやはりダシャムシャ(D10)にその理由が示されている。
ダシャムシャでは、3、8室支配の金星がラグナで高揚し、そして1、10室支配の木星と1-8の星座交換をしている。極めて強力な配置である。
このダシャムシャのラグナで高揚しているマラヴィヤ・ヨーガの金星は、キャリア上で、飛び抜けて一流の仕事をする配置である。
出生図でも金星は11室の支配星で、文筆、メディアの3室支配の水星とコンジャンクトし、逆行する9室支配の木星からアスペクトされており、また月ラグナから見ても金星は、4、7室支配の水星と共に11室に在住し、ラグナロードで10室支配の逆行の木星からアスペクトされている。
ラグナから見ても月から見ても11室(高い評価、称号)が強調されている。
11室が強調されている場合、飛び抜けて高い評価を受け、自分のネームバリューで仕事をしていくことができる。
だから、鏡リュウジとして、唯一無二の存在として、西洋占星術界に名を成したのである。
そうしたポテンシャルを持つマハーダシャーの金星期が、ちょうど1984年頃に訪れて、それがちょうど高校に入るぐらいのタイミングである。
だからこそ、高校生の頃から女性誌に占いの記事を連載していたのである。
現在のダシャー:火星期
鏡リュウジ氏は、2021年7月30日からマハーダシャー火星期に移行している。火星は5、10室支配のヨーガカラカで、9室でラグナロードの月とコンジャンクションしてラージャヨーガを形成している。
このラージャヨーガを形成する5室(執筆、出版)の支配星の時期だからか、鏡氏は現在、出版活動が活発化し、このような本を出版できたのである。
そして、現在、トランジットの木星が蟹座を通過していることが、私に、こうした蟹座の人々との出会いをもたらしている。
私は4室が蟹座で、5室支配の太陽と4室支配の月がコンジャンクションしているため、4-5のラージャヨーガを形成し、さらに9室支配の木星とも相互アスペクトして、蟹座4室で4-5-9のラージャヨーガを形成している。
従って、木星がトランジットして、その惑星配置が活性化された場合、蟹座の人たちがメンターとなって私のもとに関わってくる。
従って、蟹座ラグナの人々からは恩恵を受け、それらの人たちから学びを深める時期である。
書店で思わず本を手に取って、鏡リュウジ氏の『占い師の正体 ―人はなぜ占いに惹かれるのか―』という本に出会ったわけであるが、それも全く偶然ではないのである。
私が蟹座から学ぶカルマをチャートの中に持っており、そしてそこに木星がトランジットしたから、そのような出会いが起こったのである。
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