息子を刺した元農水次官について考察する - 欲望が満たされない苦しみから更に否定的なカルマを積み増す -


一昨日、元農水事務次官であった熊沢英昭氏が息子を刺し殺すというショッキングな事件が報じられている。


元農水次官、自宅で長男刺す 東京・練馬、容疑で逮捕 搬送先で死亡
株式会社 産経デジタル 2019/06/01 21:25

1日午後3時40分ごろ、東京都練馬区早宮の民家から「息子を刺し殺した」と110番通報があった。駆け付けた警察官が血を流している男性を発見。警視庁練馬署は殺人未遂容疑で、この家に住む元農林水産省事務次官で無職、熊沢英昭容疑者(76)を現行犯逮捕した。調べに「長男を刺したことは間違いない」と容疑を認めている。

 同署によると、男性は熊沢容疑者の長男で無職、英一郎さん(44)。搬送先の病院で死亡が確認された。同署は容疑を殺人に切り替え、トラブルの有無などを調べている。

 逮捕容疑は1日午後3時半ごろ、自宅で英一郎さんの胸など複数箇所を包丁で刺すなどし、殺害しようとしたとしている。

 熊沢容疑者は岐阜県出身で東大卒。昭和42年に農林省(現農水省)に入り、経済局長などを経て平成13年に事務次官に就任したが、牛海綿状脳症(BSE)問題の責任を問われる形で14年に退官した。その後、駐チェコ大使を務めた。

 現場は東京メトロ有楽町線平和台駅の南約650メートルの閑静な住宅街。熊沢容疑者は妻と英一郎さんの3人暮らしで、近所の男性(86)は妻と出掛ける姿をよく見掛けたといい、「10年ほど前に引っ越してきたと思うが、息子の姿は見たことがない」と驚いていた。

熊沢英昭氏のチャートを作成すると、00:00:01で作成しても23:59:59で作成しても月は天秤座であるため、チャンドララグナを天秤座に設定して、チャートを吟味することができる。



天秤座から見ると、5室(息子)支配の土星は8室(深い精神的苦悩)でラグナロードの金星とコンジャンクトし、火星からアスペクトされている。


また子供運を見る場合、木星をラグナとして見るが、木星からみた5室支配の金星が12室で、8室支配の土星とコンジャンクトし、6、11室支配の火星からアスペクトされている。


5室には火星が在住し、土星と相互アスペクトして2つの凶星の絡みが見られ、月ラグナから見ても、木星から見ても5室の支配星は、ドゥシュタナハウスに在住し、凶星からのアスペクトを受けている。


ラグナロードの金星が5室支配の土星と共に8室でコンジャンクトする配置は、息子と一心同体で離れられず、苦悩しており、それが人生のテーマであることを物語っている。


また木星から見た5室の支配星が12室に在住し、8室支配の土星と6室支配の火星と絡んでいる配置からは、息子が世間から隔離されていて隠されている配置である。



熊沢英昭氏の自宅



記事によれば、近所の男性(86)は妻と出掛ける姿をよく見掛けたといい、「10年ほど前に引っ越してきたと思うが、息子の姿は見たことがない」と驚いていたという。


この息子は、ドラクエなどのゲームを自宅でずっと行っているようなニートだったようである。


またtwitterで父親のキャリアを自慢げに語る投稿なども見られる。



月から見て11室支配で7室で高揚する太陽は、9室支配の水星とコンジャクトして、9-11のダナヨーガを7室で形成しているが、この配置は、国家公務員としての輝かしいキャリアを表わしている。


月から見た5室支配の土星や木星から見た5室支配の金星は、それらの水星や太陽とはほとんど絡んでいない。


但し、水星はバラニーに在住しており、支配星の金星が5室支配の土星と共に8室に在住している為、仕事にもこの絡みが影響したかもしれない。


例えば、これは、牛海綿状脳症(BSE)問題の責任を問われる形で14年に退官しているが、そうしたキャリア上の問題につながったと考えられる。


何故なら牡牛座に在住する金星と土星の絡みは、まさに牛肉の問題を表わすからである。



牛海綿状脳症(BSE)問題と、息子のニート問題というのは、熊沢英昭氏のチャートにおいて、同じ金星と土星の絡みが表すカルマとして現れている。


ダシャーが土星や金星、火星、月、ケートゥのダシャーの時には常にこの息子の問題が影響したと考えられる。


息子を表わす5室とは、前世の功徳を表わすハウスであるが、前世の不徳の表れとしての5室の苦悩を息子を殺害することで終わらせたということである。


8室や12室などのモクシャ(解脱)ハウスは、困難な人生を通して、カルマ(因縁)を解消するハウスである。


その不幸な状況自体が、浄化のプロセスなのである。


従って、家でゲームしか出来ず、職に就いてまともな社会生活を送れない息子と一心同体で、その息子から逃れられず、面倒を見続けるという人生こそが、浄化のプロセスなのだと考えられる。



但し、このモクシャハウス(解脱:4、8、12室)にトリシャダヤハウス(欲望、怒り、貪り:3、6、11室)が絡んでくる場合、欲望の苦しみ(欲望がかなえられない苦しみ)が更なるカルマを積み増してしまう絡みである。



この金星と土星の絡みには、火星がアスペクトしており、火星は6室の表示体である為、トリシャダヤハウスの絡みであると考えることが出来る。


また木星から見た場合でも5室支配の金星が8室支配の土星と12室でコンジャンクトした状態で、6、11室支配のトリシャダヤハウスを支配する火星がアスペクトしている。



従って、熊沢英昭氏は、息子の面倒を見ることで、モクシャの人生を歩んで来ていたのだが、ここに来て、更なるカルマを積み増したと考えられる。


そこには息子が自分の理想通りにまともな社会人として適応してくれないことに対する絶望や悲嘆があったかもしれない。


あるいは、このまま自分たち両親が年老いて亡くなっていく場合にこの息子は一人で生きていくことが出来ない。


それならば親である自分が息子を殺すしかないとの絶望に近い結論、あるいは、閉ざされた思考、早急な決断などがあったと思われる。


ネット上の意見を見ていると、「自分が老いて死んでいく場合に息子は一人で生きていけないので息子を殺したのではないか」といった分析をしている方がいるようである。



息子の人生を完全に支配している自分が死んでいく場合に自分が面倒を見れないなら息子は生きていけないので殺すしかないという発想は、社会が息子の面倒を見てくれるという可能性を全く考えておらず、息子自身が何とか自分で生きていく可能性も一切、考えにない。


絶望に近い閉ざされた思考である。



トリシャダヤハウスの3室は食欲、性欲、睡眠欲などの低次の肉体的欲求を意味しており、6室は怒りのハウスであるというが、これは主に人間関係の欲望である。

人は相手が自分の期待通りに振る舞ってくれないと怒るのである。人間関係に伴う感情が絡む欲望である。



11室は貪りのハウスであるが、自分が既に十分に持っているのに更に欲しがる欲望である。


例えば、富を持っているのに更に富を欲しがる、名誉を持っているのに更により高位の肩書きや称号を欲しがるといった欲望である。


11室は、競争心を剥き出しにして成功を追い求めるのであり、その過程で、全く弱者などに対する思いやりや同情といったものは完全に無視される。



これらの3、6、11室を支配する惑星が機能的凶星となるのは、これらの欲望(欲望、怒り、貪り)は、決して満たされることがないからである。


だから、これらのハウスの支配星の時期には苦しみが生じるのである。


仏陀が苦しみがあるのは欲望があるからで欲望を捨てれば苦しみはなくなるといったのは、そういうことである。


欲望は決して満たされることがないため、欲望があると苦しみが生じる。



熊沢英昭氏の場合、息子の面倒を見ることで、モクシャの人生を歩んで来たのだが、やはり、自分の期待通りにまともな社会人として適応してくれないことに対する絶望や怒りがあったと思われる。


近所の男性が、「10年ほど前に引っ越してきたと思うが、息子の姿は見たことがない」と語っているのは、ある意味、息子のことを部屋に隔離して、人に見せないようにして来たとも言えるのである。


息子がニートで社会参加できないことをあってはならないこと、恥ずかしいこと、世間に隠さなければならないことと考えて来たかもしれない。


それは現状のありのままの息子、その息子がいることの社会の評価というものを受け入れられない、認めることが出来ないことを意味しており、私の息子は、こうでなければならないとする理想の息子像を追い求める欲求である。


そして、それが満たされないため、苦悩が生じるのである。




息子に受験勉強を強いる親などにもよく現れる欲望で、理想の息子像を追い求める欲求は、実は、息子を通して、自分の名誉欲を満たし、世間からの評価を得たいという自己中心的な欲求なのである。



そうした名誉欲、世間体を追い求める欲望が満たされない時、大きな挫折感につながり、理想通りに振る舞わない人物(息子)への怒りや暴力となって現れるのである。





現在、トランジットの土星が射手座で逆行し、木星は蠍座で逆行しているが、木星と土星のダブルトランジットが、この熊沢英昭氏の8室に在住して火星からアスペクトを受ける5室の支配星に生じている。



従って、息子と一心同体で離れられない束縛の中で、理想の息子と食い違っている現状の息子に対する絶望、怒りが噴出したと思われる。



8室は深い精神的苦悩のハウスである為、息子と鎖でつながれた密着した束縛の中でのどうしようもない行き詰まり感、絶望感の中での犯行である。


(この文章を書いている途中で、その後、息子が日常的に家庭内で暴力を振るっていたことや、息子が近所の「小学校の運動会の音がうるさい」と言うのを注意し、関係者に迷惑をかけたくないから殺害したといった事実関係が出てきているが本質的には変わらないと思われる)




然し、その犯行によって更なるカルマを積み増した時、そこにはやはり、トリシャダヤハウスの欲望が関係していたのである。



ラグナロードが5室の支配星と共に8室に在住し、6室の表示体としての火星からアスペクトされる配置、そして、木星から見た5室の支配星が8室の支配星と共に12室に在住し、6、11室支配の火星がアスペクトしている配置の中に現れており、犯行には特に火星が大きな役割を果たしたと考えられる。



8室や12室などのモクシャハウスが強調されている人は、束縛や損失、隠遁的な不幸で困難な状況を通して、カルマの解消(浄化、解脱)を行なっている場合が多いと思われるが、その際にいかにトリシャダヤハウスの関与を抑えて、更なるカルマを積み増すことを避けることが出来るかがポイントである。



しばしば聖者のホロスコープには通常の一般人に適用されるような占星術の法則が働かないと言われているが、私の考えでは、それは、聖者のホロスコープの場合、欲望がないため、3、6、11室の欲望のハウスが、通常の一般人のように凶意をもたらさないからではないかと考えている。



長い人生経験と苦闘の末に聖者は、食欲、性欲、睡眠欲に振り回されず、他人に対する期待とそれが満たされないことから来る怒りからも自由である。


そして、世間体や評価や名誉を求める欲求、成功への甘い誘惑とそれを追求して得られなかった場合の落胆、成功を掴んだ場合のそれに対する執着や束縛といったものも味わい尽くして、それらからも自由になった聖者にとって、トリシャダヤハウスの3、6、11室が、敏感な中立ハウスである8、12室に絡んで、8、12室がドゥシュタナハウスとしての最悪の機能的凶星として働くといったパラシャラが規定する法則からも自由なのではないかと思われる。



それで、聖者は欲望の苦しみからカルマを積み増すことはなく、カルマを全て焼却して、浄化し尽くした為に聖者になったのである。



従って、3、6、11室のトリシャダヤハウスとしての働きを弱めるために瞑想や奉仕などの霊的実践を行なう必要があると言える。



そうすれば、欲望が満たされない苦しみの為に更にカルマを積み増すという悪いサイクルから逃れられると考えられる。



(参考:2010/11/10 開運のための理論-『バガヴァッドギータの世界』より-)



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コメント

コメント一覧 (2件)

    • 以前、最初に事件を知った時は、確かに娘さんが自殺したことまでは公表されていなかったと思います。

      確かに壮絶なカルマだと思います。

      チャンドララグナや表示体の木星から見て、事件や状況をよく表していますが、本当のラグナはどこであったか、知りたい所です。

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