最近、アメリカ在住のインド占星術家・マークボニーのアシュタカヴァルガに関する資料を読んでいた。
その中で、マークボニーは、大統領選挙に勝利したドナルドトランプに言及していたが、私は初めて知ったが、彼自身は、予測を外していたようである。
マークボニーはその資料の中で、ドナルドトランプがあのような誰も予想できない形で、大統領に当選した理由として、彼の4室で減衰する月は、ディスポジターの火星がラグナや月からケンドラに在住し、月はディスポジターの火星からアスペクトされて、効果的なニーチャバンガラージャヨーガを形成しており、そして、その蠍座4室を通過するトランジットの土星もビナシュタカヴァルガが4点と悪くはなく、サルヴァシュタカヴァルガも30点と平均よりも高い得点で、その時、乙女座を通過していた木星のビナシュタカヴァルガポイントも6ポイントと高かったので、土星が月の上を通過するサディサティであったにも関わらず、彼の場合は、それが、大統領当選に導いたという解説をしている。
サディサティとアシュタカヴァルガの関連に関する文脈の中での話であるが、論理明快に解説をしている。
その論理明快なマークボニーも、大統領選の予測は外したようである。
マークボニーが言うには、彼は大統領の就任が生じるドナルドトランプのマハダシャー木星期はダシャーロードの木星がビナシュタカヴァルガで、6ポイントの高得点の星座を木星が通過していることは分かっていたが、大統領に就任するようには見えなかったとの弁である。
つまり、このアシュタカヴァルガの解説資料の中では、マークボニーはダシャーロードの惑星がビナシュタカヴァルガで高得点の星座/ハウスを通過している時は、その人に上昇が起こるということを徹底的にいくつもの事例を使って解説しているのである。
非常に論理は明快で、鮮やかである。研究者として非常に優れていることが分かる。
但し、そのマークボニー自身が、ドナルドトランプのマハダシャー木星期に関して、この特徴を観察していたにも関わらず、彼は、大統領選の予測を外したそうなのである。
マークボニー自身が「振り返ってみれば、彼(ドナルドトランプ)に勝って欲しくない私自身の感情的な偏りは、私の判断を曇らせたかもしれません」と予測を外した理由について綴っている。
因みに私がドナルドトランプが勝利すると予測した根拠は、まさにマークボニーの研究成果から教わったテクニックを応用したものに他ならない。
例えば、マークボニーは「The 10th Part of Glory: Planets in the Dashamsha Lagna」(栄光の第10の部分:ダシャムシャラグナに在住する惑星)の中で、ダシャムシャのラグナに在住する惑星のダシャーの時期が、キャリア上の上昇の時期であることをいくつもの事例を用いて解説している。
非常に優れた研究である。
そして、それを応用すると、ドナルド・トランプが大統領に選ばれたのは、ラーフ/火星/月期である。
ラーフはダシャムシャ(D10)のラグナに在住している。
またプラティアンタルダシャーの月はダシャムシャ(D10)の10室の支配星である。
ダシャムシャのラグナ同様、キャリア上の上昇を表すダシャムシャの10室も重要なハウスである。
そして、更に言えば、アンタルダシャーの火星もダシャムシャ(D10)で、2、7室支配で、12室には在住しているが、ラグナロードで6室で高揚する金星、4、5室支配の土星と相互アスペクトして、減衰してニーチャバンガラージャヨーガを形成する木星からもアスペクトされている。
従って、火星も強力なラージャヨーガの中に参加している。
大統領選の投開票日である11月8日が、ラーフ/火星/月期であることは、マークボニーにも分かっていたはずである。
そして、そこに示されたロジックは、日頃、マークボニーが研究し、教えている内容そのものである。
然し、そのマークボニーも、ドナルドトランプが嫌いだという感情に流されて、冷静な判断を狂わされたと回想している。
これは非常に示唆に富んでいる教訓めいた話である。
私はドナルド・トランプがヒラリークリントンに勝利すると、最初から最後まで主張していた。
途中、マルコ・ルビオという伏兵が勝利する可能性というものに翻弄されて予測にぶれも生じたが、直前になってからもドナルド・トランプの出生図を何度見直しても、ヒラリークリントンのチャートと比較してもどうしてもヒラリークリントンが勝利するとは思えなかった。
その根拠になったのは、おもにマークボニーの観点である。
例えば、大統領の就任式がある頃のマハダシャーの木星期は、ドナルドトランプのダシャムシャ(D10)において、木星は減衰しているが、木星はディスポジターである土星と星座交換することによって強力なニーチャバンガラージャヨーガを形成しており、しかも3室と6室の支配星が減衰しているため、パラシャラの例外則が形成されている。
すなわち、災い転じて福と為す、奇想天外な二重否定のラージャヨーガが強力に形成されているのである。
これは日頃、マークボニーが熱心に主張していること、そのものなのである。
すなわち、ニーチャバンガラージャヨーガやパラシャラの例外則は、これが形成される場合、例外なく、それが形成されている人に上昇をもたらすということ。
そして、それは分割図においても作用するということ。
これらは、ジョーティッシュの伝道師であるマークボニーの教えであり、研究成果そのものである。
私は更にこのダシャムシャ(D10)におけるダシャーロードの木星から見た10室で8室支配の太陽が減衰して、パラシャラの例外則を形成していることにも非常に深い意義が隠されていると感じたのである。
実際、ドナルド・トランプは大統領に就任した後、政府の高官や役人とのコミュニケーションや調整が上手く行かず、選んだ次々に高官を解任したり、あるいは高官が辞任したりが相次ぎ、まだ実務レベルの役人がかなりの部分で決まっていないと言われている。
まさにこれこそが、10室で減衰する太陽の顕現であり、彼のユニークな政治運営である。
つまり、このパラシャラの例外則で示される奇想天外な結果というものは、政府の高官が次々に辞任したり、解任されたりしながらも継続されていくユニークな政治運営に恵まれたということなのである。
結果として、彼は前の民主党の実務レベルの役人が一掃された後、自分が意図しない役人たちに操られることもなく、ある意味、彼の目的通りに政治運営が為されている可能性もある。
そのような形で、全く他の人間には予測できない奇想天外な成果が発揮されているのではないかとも考えられるのである。
分割図においてもダシャーロードをラグナとした場合のPAC(ポジション、アスペクト、コンジャンクション)を検討しなければならない。
こうした観点も日頃、マークボニーが分割図の分析の際に用いていて、生徒にも教えているやり方そのものである。
2016年の大統領選では、メディアではヒラリークリントンが優勢の一色であり、その前日でもそうであったが、ドナルドトランプも支持率を直前になって急速に伸ばしていた。
私は11月8日の投開票日の前々日辺りになって、海外で運営されているブックメーカー(賭け業者)で、急にドナルドトランプの勝利に自分の資金を賭けてみたくなった。
ドナルド・トランプが勝利することを予測しただけで満足せずに実際にその予想に基づいた行動を行なって、結果を得たら本物だと考えた訳である。
選挙の開票日近くになって私もかなりヒートアップしていた訳である。
予測が当たったことで喜んでいるだけなら、遊びのようだが、もし予想に自信があるなら、自分のお金を張って、自分が予想した結果に賭けるべきだと考えたのである。
私は自信があったので、そうするべきだし、その方が自分のスタンスとしても説得力があると考えたのである。
またこんな機会は二度とないので、この一世一代の大一番を逃す手はないと思ったのである。
それで、ブックメーカー(賭け業者)にアクセスして、口座を開こうとしたが、サイトにアクセスできず、口座の開設は断念した。
投開票日の当日の朝も、非常にドラマチックであり、投開票日の前日もその当日も、まだ誰もどちらが当選するのか全く分からない状態で、評論家の意見も二分していた。
投開票中のライブ映像を見ても、全くどちらが優勢なのかも分からない状態である。
非常に興奮した状態で、私は朝からライブ映像をチェックしていた。
もし理性(知性)がそこに示された論理(真理)を明確に掴んだら、感情に流されることはないのである。
私もヒラリークリントンがあまりにも世論調査で優勢なので、途中、何度も不安になったものだが、然し、やはり何度、チャートを見返してもヒラリークリントンが勝利する理由が見つからず、ドナルド・トランプが勝利するとしか思えないのである。
マークボニーに比べて、私が有利だったと思うのは、私はドナルド・トランプが好きだったということである。
またドナルド・トランプが勝利するべきだと考えていた。
ドナルド・トランプはリベラル派からは嫌われているが、単純で素朴な男で正直な男である。
アメリカ国民の為の雇用を拡大するという大衆想いのポピュリストである。
ヒラリークリントンは、オバマ政権時代にあれだけの時間がありながら、何もアメリカを変えることが出来ず、格差の激しいアメリカ社会を変える実行力を持たなかった期待外れの人物であると考えていた。
既にヒラリークリントンには十分なチャンスが与えられており、彼女はそれを生かせなかったのである。
従って、もしそうした私の良い意味での偏見が働いたのであれば、それは予想にとって有利に働いたかもしれない。
然し、実際には冷静にジョーティッシュのロジックによって、なるべく感情を排除して判断を行なった。
私がマークボニーの回想を読んで、思い出したのは、以前、先物取引やFXを夢中で行っていた時のことである。
私の知人で、石油やガソリンや金の先物取引をして、1日で30万とか数十万のお金を簡単に稼いでいる天才的な人物がいて、その人の話を聞いて触発されて始めたのである。
しかし、結局、先物取引で何十万というお金を1日で稼げるというその話が生み出す刺激こそが、感情的な揺さぶりである。
何の売買に関する理論も知識もなかった私は、当時、ポジションを得ると、相場が逆に動いた時に感情的に激しく動揺し、直ぐに損切をして損失を膨らませていくということを繰り返していた。
然し、もう少し感情に左右されずに我慢して、ポジションを維持していたら、その後で、反転して、再び、プラスになったという場面が何度もあったのである。
私は細かい損失を繰り返して、結局、それが累計すると大きな損失となり、意味のある勝負もせずにこうした世界から足を洗うことになった。
成功する相場師は、大きなファンダメンタルの経済予想に基づいて、長期的な展望で、トレードをして細かい動きに左右されない人物か、あるいは、明確に損切やポジション取得のタイミングについてのルールを決めて、感情を排斥して、それを淡々と実行していく人物である。
つまり、株でもなんでもそうだが、素人は、皆が株で儲かっている時に感情的に熱狂して株を買うのであるが、その時は、株で利益を出している人たちが売る時なのである。
そして、皆が株で損をしている時、感情的に熱狂する素人は怖くて株を買うことができないのであるが、株で利益を出している人たちが買う時はそのような時である。
株で利益を出せる人たちは、感情を排斥して平然と淡々とオペレーションを行なっている人々である。
こうした投資で成功する人とジョーティッシュで予測に成功する鑑定師の資質は非常に似ているのである。
金融や投資の表示体の一つは水星であり、ジョーティッシュの表示体の一つも水星であるという点でも似通っているかもしれないが、予測で成果を上げるのは、感情を排斥して、冷静に知的論理的適用を淡々と行なうことのできる人物である。
ジョーティシュで、ヒラリークリントンやドナルド・トランプのチャートを作成して予測をしながら、横で報道されている番組の世論調査の結果が、「ヒラリー圧倒的有利で、大統領当選確実」などといったアナウンスを聴いて、それで感情的揺さぶりをかけられて、自分が見て確認した惑星配置に関する明確な論理を無意識のうちに捨ててしまったり、信じなくなったり、あるいは否定してしまう。
こうしたことは良く起こることである。
今回は、そうした圧倒的なメディアの世論調査に流されて、ほとんどジョーティッシュの明確な論理をホロスコープに適用出来なかった人が多かったのではないかと考えられる。
またリベラルな人は皆、ドナルド・トランプが嫌いなので、感情に流されて、冷静な判断や論理の適用が出来なかったのである。
そもそもその明確なジョーティッシュのロジック自体を知らなければ適用も出来ない訳であるが、マークボニーのようなその明確なロジックの研究者であり、その伝導師自身が、そのように感情に影響されて微妙に判断が狂わされていくのである。
感情に流されないためには日頃からその論理に磨きをかけて、こういうパターンの場合にはこうなるという法則に対する絶対的な自信や論理の明晰さを得ていなければならない。
そうでなければほとんど何も予想することは出来ないのである。
例えば、私もリベラルな幸福な社会がやってきて欲しいという願望や理想を持っており、歴史というものはそれ(真、善、美)に向けて前進しているとするプラトンで始まり、ヘーゲルで完成した歴史観を持っている。
そうすると、例えば、マンデン占星術の予測などで、そうした自分が持つ概念や願望(希望的観測)が微妙に予測の中に紛れ込んでしまうのである。
それでマンデン占星術の中で、自分の歴史観の中での理想と合致しないような出来事は中々予測できなかったり、解釈できずに見落としてしまう。
私は先日、マンデン占星術で解釈をして、他の方の意見なども読んでいる時にそれに気がついた。
全く何の先入観もない心で、論理を明確に適用して、見なければ間違えてしまうのである。
先日、鑑定に来られた方が、昨年の春、行った私の鑑定が的中したということで驚いて今年に入ってから再び鑑定に来て下さったのであるが、その方は、今年に入ってから明確で強力なラージャヨーガを形成するダシャーに突入し、トランジットもそれをサポートし、更にジャイミニでもそれを追認していたので、鑑定した時点で、ほぼ間違いなく必ずそうなるという確信があったのである。
通常の場合、吉凶混合していたりして、分かりにくい場合もあるのであるが、この場合は、非常にクリアに明快にそれが分かるケースであった。
そして、それを伝えた所、その方は、その時点での状況から考えて、「それはあり得ない」と私に返答し、その予測の内容がすんなりと信じられない様子であった。
然し、私はそのケースにおいては、非常に明確でクリアな揺るぎない自信があったため、「それは100%確実にそうなるので心配しないで下さい。必ずそうなります。」といった発言になったのである。
かなり大胆な発言であるが、そのような発言になるのは常にいつもとは限らないが、非常に綺麗に明確な条件を満たしている時にはそのように言えることもある訳である。
通常、控えめに言うのが普通であり、そうするべきであるが、その方は信じておられない様子であったので、ついそのような発言になったのである。
そのように言えるのは、私の神経が図太いからでも図々しいからでもない。
ただジョーティッシュの明快な論理に照らして、理性(知性)がそれを認識したからである。
理性(知性)がそれを捉えた以上、それを否定したり、自分を騙すことはもはや出来ないのである。
然し、このケースは非常に肯定的で幸運な結果の予測であるため、喜ばしいケースである。
例えば、鑑定には様々なクライアントの方がやってくるが、人は皆、自分が理想とする結果を鑑定予測の中で、聞きたいものである。
またその人自身の未来に対する理想の計画を持っている。
そうした情念のこもったクライアントの話を聴いているうちに自分がチャートの中に見つけた惑星の配置などに関する明確なロジックについての判断が狂わされることが多々あるのである。
酷い場合になると、クライアントの気迫に押されて、占い師が恐怖で予測や判断の内容を変えたりもする訳である。
そういう場合、私は以前、そうした話を他の経験のある鑑定師の方からも聞いたことがあるが、やはり最初に鑑定して予測した内容が正しいのである。
ジョーティッシュの鑑定師が、クライアントの気迫や意志に押されて、クライアントが望む予測結果を言い、心の中で、「それでも地球は回っている」と、ガリレオ・ガリレイのように唱えることも出来るが、それだけではないのである。
感情的に揺さぶられて、知的に判断するその判断力自体が、微妙に狂わされることもあり得るということなのである。
ということで、マークボニーが予測を外したことについての告白的回想から、このテーマに関するエピソードが色々思い浮かんできた。
結論として、何を言いたいかと言うと、私のドナルド・トランプ当選の予測は、決してまぐれ当たりではないということである。
明確にジョーティッシュの論理を適用し、私の場合、ドナルドトランプに対する偏見がなかったことも手伝って、彼が大統領選に勝利することを予測することが出来た。
つまり、ジョーティッシュの予測では感情を排除して明確明晰にジョーティッシュの法則を適用していくことが重要である。
コメント
コメント一覧 (1件)
メディアのトランプへの批判的論調を見ると、予測ではなく、願望のオンパレードで、人間という動物は、好悪という感情の故に、自分自身の人生の予測すらままならないのだろうな、と思いました。
ともかく、自戒して、自分の人生だけでも、正しく予測できる人間になりたいと思いました。
いつも、いろいろな技法が紹介され、楽しく読んでいます。今後とも、よろしくお願いいたします。