
著者のアレックス・ジョーンズと言えば、米国の有名な陰謀理論家だが、私もグレートリセットには少なからず関心を抱いて来たので、どんな議論が為されているか少なからず興味があった。
グレートリセットは、ダボス会議が、コロナが発生した2020年以降に提案した政策で、環境に配慮した産業の構築(脱炭素)、資本主義の見直し(ステークホルダー資本主義)、公的機関と企業の連携の強化などを訴えている。
世界経済フォーラム(ダボス会議)は、、1971年に経済学者クラウス・シュワブが創設した国際会議で、毎年1月にスイスのダボスに各国の首相、大統領などの政治指導者、大企業のCEO、中央銀行総裁、学者・研究者、国際機関(国連、IMF、世界銀行)の代表、NPO・NGOのリーダーが一堂に会して、世界経済の動向、金融市場のリスク、気候変動(カーボンニュートラル)、AIやデジタル技術、国際紛争、地政学的リスク、サプライチェーン、デジタル通貨、エネルギー政策など、世界の様々な問題について話し合う。
一応、地球が危機的な状況にあるので、資本主義をリセットし、ステークホルダー資本主義を実現するというアイデアは、善意が見られるし、計画自体悪くはないが、グレートリセットした後の世界の運営の仕方が、個人を一意のIDで管理して、監視するといった全体主義的なディストピアのイメージで満ちている。
それは、例えば、クラウス・シュワブが、中国で進められている監視カメラや顔認証技術と社会的信用スコア制度などを「多くの国にとって、ロールモデル(模範)だ」と発言したというエピソードにも見られる。
世界経済フォーラム(ダボス会議)は、1921年に設立されたアメリカ外交の方針を研究、形成する為に生まれた外交問題評議会(CFR)、そして、1973年に設立された北米・西ヨーロッパ・日本(アジア太平洋地域)という「三極(トライラテラル)」間の協調を促すCFRの国際的拡張版としての三極委員会と、その構成するメンバーの人的な関係性が深いと言われている。
三極委員会設立時にはCFR出身者、CFR関係者が関わっていたという記録があり、ダボス会議の活動にもロックフェラー財団との協働や人脈の接点が指摘されている。
外交問題評議会は、三極委員会・世界経済フォーラム(ダボス会議)へと、より産業界を巻き込んだ国際的なフォーラムへと展開したとも考えられている。
因みにブリタニカの記述では、三極委員会は、外交問題評議会やビルダーバーグ会議、その他のフォーラムと共通して語られる存在だとされている。
デヴィッド・ロックフェラーは1973年に三極委員会を設立し、外交問題評議会の名誉会長を務め、ビルダーバーグ会議などには初会合から参加している。
こうしたエリートによる国際ネットワークが、世界政府の樹立を目標としていることは、以下のデヴィッドロックフェラーの発言から明らかである。
この発言は、以前から別の記事の中でも何度も引用しているし、多くの人によって引用されている。
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-デヴィッド・ロックフェラー 1991年 三極委員会での演説にて- ほぼ40年にわたって、ワシントンポスト ニューヨークタイムズ タイムマガジン そしてその他 偉大なる出版社の取締役が 我々のミーティングに参加してくれ、公表しないで 静かにしていてくれていたことに感謝している それらの年月の間 もし我々が世間の注目の明るい光の中に出ていたなら 我々の計画を発展させることは不可能だったろう しかし世界は今さらに洗練されて 世界政府に向けて行進する準備は整っている その超国家的知的エリートと国際銀行家の支配力は 確かに過去の世紀の国家が自分で決めていたやり方より望ましいものだ |
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国連総会へのロックフェラーの手紙 re: 新世界秩序、即時的アジェンダ From:ロックフェラー・グローバル・コミュニケーションズTo: GAPresident@un.org Cc: Rockefeller Global Communications Sent: Friday, March 22, 2002 2:05 AM 二〇〇二年三月二十二日、金曜日、午前二時五分 終末の時が近づいている。好むと好まざるとに拘わらず、それは我々すべてが直面せざるを得ない運命である。二〇〇一年、九月十一日、世界は終末の目撃者であった。我々が見、経験したものは、まもなく明るみに出るはずの大災害には、比ぶべくもないだろう。非常に多くの生命が失われてきた、しかもなお、それ以上に多くの生命が失われるだろう、と言われている―この古い体制が崩壊し始めるに応じて、これらのことがらは起こり続けるだろう。今存在している、あるいは古代からある人間の政府は、決してひとつも完全な支配は維持出来なかった。いかなる政府も失敗してきたし、失敗するだろう。 政府はあなたを保護出来ない。政府は人々が真実に自由な場所、あなたの近隣の人があなたの家族であり、見知らぬ人たちがあなたの友だちであると言う場所、を与えることができない。いかなる人間の今日の政府も、これを達成することができないし、しないだろう。これが、アジェンダが設定された理由である。それは、ずっと昔から、アルマゲドンとして言及されてきた。しかし、怖れないようにしなさい。それは核によるホロコースト、あるいは我々の文化を平坦にするだろう天からの迷った小惑星ではないだろう。実際、それは災厄を起こし、一掃する惑星ではないだろう。 それは、仲間の人類に対して尊敬や、やさしい思いやりなどまったくない、この偉大な惑星の人間の住民であるだろう。次の年にかけてあなた方に各々は、幾つかのことを非常に深く真剣に考えなければならない。あなたは自分自身にこれらの質問をする必要がある:私は私の仲間に対する憎しみに打ち勝つだろうか、あるいは私は私の違いを忘れるだろうか、そして隣人たちと結び付き世話を焼けるだろうか?私は彼らを親切に遇することができるだろうか?それとも、私は彼らにつけ込み続けるだろうか? あなたがある人を通りから連れてきて、何か食べ物を与え、一夜の休むところを探してあげた最後の時は何時だったか?あるいはバスの中で、ショッピングセンターで、電車の中で、となりに座った誰かに、 「こんにちは」と最後に行ったのは何時だったか? 愛する誰かを失った、見知らぬ人を最後に慰めたのは、何時だったか?その人の持っているものや、富のためではなく、ただ単純に誰かの世話をしようと、誰かと親しくした最後の時は、何時だったか?あなたの人間としての精神と心を、あなたの仲間に本当に見せた最後の時は、何時だったか?以上のことはどれも、容易ではない。それは難しい。我々の誰も完全ではない。我々の誰も、いい人生を過ごしてきていない。それがその過程に於いて、他人を傷つけることを意味するとしても、我々が得ることができることにふさわしい、ある程度のことを煩ってきたから、とある者は考えている。しかし、我々のネガティブなやりかたに反対しようとする、また反乱を起こす人たちは生き延びるだろう、そして今はただ夢でしかない、地球での人生の報酬を与えられるだろう。従順なる者のみが地球を所有するだろう。これは確かなことだ。 新しいシステムが来つつある。ただ一つの質問は:あなたがそこにいることを選ぶか?それとも、自己破壊への道を降りて行き続けるか?、と言うことだ。以下のアジェンダは避けることができない、そして、生き延びるため、それを得るために、ずっと我慢する必要があるだろう。それ故、よくよく考えなさい。 それは、あなたの未来である。そして、あなたたちすべては、それをうまくやれるだろう。あなたの兄弟 A・I・ロックフェラーより、CEO ロックフェラー・ゴローバル・コミュニケーション www.rockefeller.com.au AGENDA FOR THE NEW WORLD (新世界のためのアジェンダ) 1) 中東平和の完璧な、手のほどこしようのない瓦解。 2a) バチカンとエルサレムは、宗教テロリストたちによって破壊されるであろう。 2b) すべての宗教の世界的規模での崩壊。すべての宗教は禁止されるだろう。宗教は、家庭の外で は、実践されることは出来ない、説教されることは出来ない 3) 世界中の平和と安全の宣言に続いて、国際連合は、臨時単一世界政府を樹立するであろう。 4) 新しい単一世界国家の市民が出現する。英国(グレート・ブリテン)、中国、米国、の政府は、突然、組織的に瓦解する。その他の世界は、アナーキー状態へ。善き意志と真実に従う者のみが生き残る。 5) 新しい政府機構は、十四万四千人(一四四、〇〇〇)のエリート官僚と六百万人プラスアルファーの役人が支配するであろう。 6) 新世界が創出されるにつれて、大量掃討作戦が開始されるであろう。経済システムは復活されるであろう。インフラストラクチャーは再建される。疾病と病気は消滅するであろう。年をとることは逆転するであろうし、年をとること自体がとまるであろう。一つの新しい復元された人間の家族が徐々に地球をパラダイスの状態にするであろう。 ロックフェラー・グローバル・コミュニケーションズ、オーストラリア (週刊日本新聞編集部 翻訳) |
またデヴィッド・ロックフェラーは、『ロックフェラー回顧録』で、以下のような発言をしている。
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1世紀以上に渡って、左右両派の過激派たちが、私がこのときカストロと出会ったような広く報道された出来事をあげつらって、ロックフェラー家が圧倒的な影響力をアメリカの政治経済機構に及ぼしていると攻撃してきた。 その中には、私たち一族が、アメリカの国益に反して暗躍している秘密の陰謀団の一味であると信じている者もいたし、私の家族と私を刺して”国際主義者”と呼んだり、他の世界の有力者と結託して、共同謀議をたくらみ、世界を政治的、経済的に統合して「ワン・ワールド政府」を作ろうとしていると考えている者さえいた。 そのように彼らが批判するのであれば、私は甘んじてその追及に対して「有罪」であると認めよう。 それどころか、私はそのように言われることを誇りに思っている。 (『ロックフェラー回顧録』より引用抜粋) |
ロックフェラーが、世界政府の樹立を目標としていることは明らかである。
そして、外交問題評議会(CFR)の外交誌『フォーリン・アフェアーズ』では、アメリカの主権を世界政府の中に溶解させるという目標を掲げていることが示されている。
wikipedia 外交問題評議会でもそのことは以下のように確認できる。
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外交問題評議会の政策目標のひとつとして、「国際連合世界政府」の権力と軍事力(=国連平和維持軍)を、どの個々の国家も対抗できない水準に強化するとともに、アメリカ自身も含めて統治権と軍備を放棄させて「国際連合世界政府」のもとに全て移管させるという世界統一構想がある (wikipedia 外交問題評議会より引用抜粋) |
つまり、外交問題評議会の拡張版として、三極委員会と同じ頃に設立された世界経済フォーラム(ダボス会議)は、この世界政府の思想を継承しており、グレートリセットとは、その手段とも考えられるのである。
世界経済フォーラム(ダボス会議)には世界経済の担い手(国際金融資本家、多国籍企業の経営者)が参加している。
その主催者クラウス・シュワブには、確かに世界の危機を解決したいという善意があったのだと思われる。
『ダボスマン 世界経済をぶち壊した億万長者たち』(ピーター・S・グッドマン著 梅原季哉訳)ではクラウス・シュワブの人物像について以下のように示されている。
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地球上で最も権力を持った人々が毎年のように出席するため、ほかの権力者たちも出席する必要を感じ、それによってフォーラム固有の価値が再強化される。その仕組み作りに、シュワブが持つ人間社会についての鋭敏な洞察力、権力そのものが持つ磁気のような引力への理解が発揮された。彼が築き上げたのは、スケジュールが埋め尽くされたタイプの人々でも時間を作ろうとする催しであり、ビル・クリントン、ミック・ジャガー、そしてグレタ・トゥーンベリの関心事がすべて、なぜか時空間を超えて交わるイベントだった。 フォーラムが拡大するにつれて、シュワブは最初にこの集まりを考えた動機だったはずの理想の追求と平行する形で、自らの金儲けの本能も強めた。多くのダボスマンたちと同様に、シュワブは2つの矛盾する立場を一度に取るという芸当を習得し、普通ならひどい偽善だと批判されそうなことでも、気に留めない。公の場では純粋な価値観、例えばインクルージョン、公平性や透明性を称えているのに、富と力を持つ人々を勧誘する際は、まったく美しくない迎合ぶりをみせる。明らかに裏表がある態度だが、そのまま涼しい顔で放置する。彼は、恥知らずな献身ぶりで権力者たちに取り入ってフォーラムへと招き入れ、そこに集う人々へのアクセスそのものを商品として売り出すことで、非常に儲かる事業へと転じてきた。 シュワブがコングレス・センター内を移動するときは、まるで軍事演習のように、興奮した部下たちの一団が常に彼に付き従う。外国への招待旅行に際しては、彼は国家元首級の特別待遇を要求し、当然、それには空港での歓迎式典も含まれる。 スイスにあるフォーラム本部は、レマン湖を見下ろすガラス張りの大学キャンパスのような建物だが、2つの棟をつなぐ渡り廊下には、世界の指導者たちとシュワブの記念写真がずらりと飾られている。あるとき、一人のフォーラム職員が会議に遅れそうになり、ボスは海外出張中だと知っていたので、自分の車をシュワブ専用の駐車スペースに停めた。そのことを後から嗅ぎつけたシュワブは、彼女を解雇するよう要求し、幹部たちが介入して助け船を出すまで翻意しなかった。 シュワブはしばしば、自分はノーベル平和賞を獲るだろうと同僚たちに語ってきた。1990年代半ば、ある国際会議をフォーラムが南アフリカで主催した際、シュワブは閉幕に際してネルソン・マンデラの目の前でスピーチをしたが、その中で、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の言葉から剽窃し、「私には夢がある」と芝居がかった口調で話した。 「私や同僚は、吐き気を覚えました」と、当時フォーラムの広報を担当していたバーバラ・アースキンは振り返った。 しかし、シュワブがどこか滑稽な人物であるにせよ、同時に識見がある人物として、しぶしぶながらも称えられていることも確かだ。元同僚の一人は「彼には次の流行の匂いを嗅ぎ当て、そこに飛び込んでいくという信じられないほどの才覚がある」と語った。 早い段階から彼は、このフォーラムを、人々が集まってお金のことを話し合うだけのありきたりなビジネス会議にすべきではないと認識していた。「世界の現状を改善する」という高尚な使命を掲げることで、シュワブはこの集会を、社会に対して懸念を示す場へと変容させた。 (『ダボスマン 世界経済をぶち壊した億万長者たち』ピーター・S・グッドマン著 梅原季哉訳 P.46~48より引用抜粋) |
シュワブは、自己顕示欲が強く、自分がノーベル平和賞を獲ると豪語する人物で、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の言葉から剽窃し、「私には夢がある」と芝居がかった口調で話すような滑稽な人物であるが、ダボス会議を世界の重要人物がこぞって参加せずにはいられないようにさせ、会議に参加できること自体を商品として販売する組織化の天才のようである。
そして、フォーラムに集う富裕な資産家たちにステークホルダー資本主義を受け入れさせる為に奮闘していたと言えなくもない。
ダボス会議に集まって来る富裕な資産家たちには以下のような特徴があるという。
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一般的な傾向として、ダボスマンは収益を損なうような内省の機会は喜ばない。彼らはたいていの場合、格差が話題に持ち上がること自体に眉をひそめる。好き放題に富を追い求めておいて、その結末は”みんな、いつまでも幸せに暮らしましたとさ”で済む、自分にとって心地よいおとぎ話しか受け付けないのだ。 建前としては、ダボスマンは心底から自分の知性と情熱を注いで、現代の深刻な危機を解決しようとしている。ジャクソンホール(各国中央銀行総裁が毎年夏に集うシンポジウムの舞台となっているワイオミング州の小都市)の山あいにある壮大な別荘や、地中海のミコノス島沖に係留されたヨットなどに引きこもり、悠々自適でいても構わない身分なのだが、自分は貧しい者を助け、人類を気候変動の惨禍から救わずにはいられないのだ、という姿勢を取ってみせる。 だからこそ「彼」はここに来たのだ。1年間で数十万ドルに及ぶ世界経済フォーラムの会費を払い、さらに1人あたり2万7000ドルの参加費も出して、ボノと記念写真に収まり、ビル・ゲイツに向かってその慈善事業の功績を褒めそやし、ディーパック・チョプラ(インド出身でスピリチャル代替医療を提唱する作家)の感動的な言葉をツイッターでつぶやく。その合間に時間を見繕って、アブダビから来た政府直轄ファンドのトップをつかまえて長話をして、自分がシンガポールに持っている高級ショッピングモールへの投資を促す。 (『ダボスマン 世界経済をぶち壊した億万長者たち』ピーター・S・グッドマン著 梅原季哉訳 P.28~29より引用抜粋) |
皆、建前上、気候変動や貧富の格差など現代の世界の深刻な危機を解決しようという姿勢を見せるが、本音では、なるべく税金を支払わない為に自分の資産をタックスヘイブンへ逃がし、ダボス会議の期間中も、暇を見つけては、自分の事業への投資を促す営業などに余念がないという。
また参加者たちは、皆、世界の危機に貢献したいというポーズを示すが、肝心な税の話になると皆、回避するという。
ダボス会議にベーシックインカムの推進者で、『隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』の著者であるルドガー・ブレグマンが参加した時のエピソードが興味深い。
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そのとき、ルドガー・ブレグマンに期待されていた役は、彼が著書で取り上げたテーマであるベーシックインカムについて、何かしら前向きで肯定的な研究成果を紹介することだった。ダボス会議の運営側が2019年1月の年次総会に彼を招待し、最終日セッションのパネリストに選んだ理由も、まさにそれだった。 (略) オランダ出身の30歳の歴史家であるブレグマンは、ダボス会議に出席するのはこれが初めてだった。 彼は、その場での見聞と体験に困惑していた―億万長者たちが本性を隠し、単純に解決できるはずの数々の問題について、どうやって解決しようかと嘆き合う茶番劇である。 彼への質問は、人々を貧困からどうやって救い出すか、だった。そこからベーシックインカムに話が向かう前提だった。だが、彼はその質問を予想外の姿勢で受け止めた。そして、彼が示した回答が、爆発的にシェアされることになった。 「ここで皆さんは参加とか、正義とか、あるいは平等とか透明性といった概念について話し合っているようですが、でも、私が思うに、誰も本当の課題を持ち出しませんよね」とブレグマンは語った。「それは税逃れの問題です。私はまるで、消防士の会議に招かれているのに、誰も水の話をしてはならないことになっているみたいに感じます」 この言葉に聴衆からは笑いが起きたが、首を横に振る者たちもいた。 世界経済フォーラムの会合には不文律がある。 この会議ではパネリストは、例えば、不平等とか、不当に高い薬価、化石燃料による排気ガスなど、ほとんどあらゆる事象に関して、批判を加えることができる。だが、そうした問題に責任を負っているのが会議の参加者たちだと非難することは、禁じ手なのだ。ダボス会議を貫くのは、どの参加者も「世界の現状を改善するために寄与するふりをするという、その姿勢だ。どんな問題であろうが、その深層が複雑だったり解決策を見出すのが難しかったりしても、会場に居合わせた人々の強欲とは無関係である、ということになっていた。 大衆の貧困や苦難を生んだ責任に照らせば、億万長者たちは偽善者である、とブレグマンは非難した。 だがそれは、痛烈なマナー違反にあたるのだった。ダボスマンの隠れ家に招待されておきながら、ブレグマンは家主たちに対して、あなた方は高尚な言葉で約束したような責任を果たしていない、と批判してしまった。 (『ダボスマン 世界経済をぶち壊した億万長者たち』ピーター・S・グッドマン著 梅原季哉訳 P.418~419より引用抜粋) |
ダボス会議に集まって来る富裕な資産家は、表面上、世界の問題を解決する気があるふりをするが、無意識では、自分の事業、労働力、利益を手放すつもりはない。
また出来るだけ税金も支払いたくないのである。
その辺りは、普通の一般市民と全く変わらないのである。
ダボス会議を主催するシュワブにしても同様であり、資本主義のリセット(ステークホルダー資本主義)という高尚な理想を掲げるが、その一方で、自分の組織化の特技による金儲けには余念がない。
こうした人々が、国家間の対立や戦争のない世界政府を作ろうとする高尚な理想を掲げたとしても、それが一般市民を管理するという思想に堕落するとしても不思議ではないのである。
私は、アレックス・ジョーンズが、ダボス会議に集まる人々、またその会議を主催するシュワブの善意というものを全く信じないで、本当は世界を支配しようとしていると断定する姿勢は、あまりにも疑り深く、人の善意を全く信じない頑なさがあると思えた。
世界の支配者や指導者たちが常に我々一般市民を支配しようと企んでいるという被害妄想にも似た陰謀論は、ある意味、猜疑心や疑り深さから来ている面があり、これ自体は、それ程、良い資質とは思えない。少しは信じる姿勢も必要である。
しかし、その一方で、アレックス・ジョーンズは確かに本当のことを言っているとも思えた。
ダボス会議に集まる富裕な資産家は、表面上の姿勢とは裏腹に無意識では、自分の資本も事業も労働力も手放すまいと考えているのである。
その為、労働力たる一般市民を顔認証で監視し、一意のIDで管理するという発想になりがちなのである。
これはマイクロソフト創業者のビルゲイツの矛盾した態度からも理解できることである。
ビルゲイツは、世界の富裕な人々に財産の50%を寄付するように呼び掛けている。
そして、自身も自分の財産は全て、慈善事業に寄付されることを公言している。
しかし、一方で、ビルゲイツは、ノルウェー領スヴァールバル諸島最大の島であるスピッツベルゲン島に世界種子貯蔵庫を建設している。
人類が核戦争で絶滅した場合に備えて、生き残った者たちで、新しく世界を再生できるように備えている。
人類を救うことに100%の力を掛けるのではなく、核戦争後も自分が生き残って世界を再生させたいと保険もかけているのである。
そして、ゲイツは、米国で農地を買いまくっている。
2025年時点で「約 275,000 エーカー(約111,000ヘクタール)」の農地を、17~19州にわたって所有しているという。
財産は全て慈善事業に寄付すると公言する一方で、食糧危機にはしっかりと備えているのである。
このように世界の富裕な人々の心理を理解する場合に世界の支配を企むような完全な悪党だと考えるのは間違っており、しかし完全な善人だと考えるのも間違っている。
通常の人間を評価する場合と同じように表面意識(建前)と無意識(本音)があり、その考えや行動は矛盾したものだと考えるのが合理的である。
私は、昨年、2024年に何回か講演会、あるいはセミナーを行なって、その中で、グレートリセットにも言及したが、私の結論は、グレートリセットは、陰謀論者が言うような世界を支配する陰謀なのではなく、それ自体は、希望であるというものだった。
権力者たち、富裕な人々が、陰謀により人類の支配を企んでいるというのは、事実と異なっている。
真相は、権力者たち、富裕な人々は、その本性上、その深い内心、あるいは、無意識の中では、自分の資本も事業も労働力も手放したくないし、税金も支払いたくないため、どうしても労働力である一般市民に対しては、管理者的な発想になるということである。
その為、世界政府という理想主義の中で、それは全体主義的に人々を一元管理するディストピア的な世界観に自然になっていくということである。
そのように私はやや肯定的にクラウス・シュワブのことを捉えていたが、今年になって、シュワブは、2025年4月21日付で、突如、世界経済フォーラムの理事会議長および理事会メンバーとしての役職を辞任することを発表した。
辞任に至った理由は、2025年4月に匿名の内部告発が世界経済フォーラムの理事会に提出され、シュワブとその妻ヒルデ氏に対して「資金乱用」「私的流用」「報告操作」などの疑義が掛けられたことが挙げられる。
長年にわたるシュワブのリーダーシップに対して、フォーラムの内部文化(職場環境、年齢差別、ハラスメント疑義など)に関する批判や疑義も以前から出ていたという。
シュワブは、88歳の高齢で、世界経済フォーラムの独裁者として長く君臨してきた為、老害が生じていたとも考えられる。
世界経済フォーラムは、調査事務所を起用して、シュワブとその妻の関与についての調査を行っており、「重大な不正行為は確認されなかった」とする報道も出ているようであり、シュワブとその妻は、告発内容を「根拠のないもの」「名誉毀損」として争う姿勢を示している。
しかし、火のない所に煙は立たないという言葉があるように長年、独裁者として君臨して来たことによって、やはり、腐敗が生じていたと考えられる。
その後、世界経済フォーラムは「今後の理事会・監督機構の組織改編」「透明性・説明責任の強化」を宣言している。
シュワブが辞任し、そして、結局、シュワブが推進していたグレートリセットも頓挫したようである。
つまり、世界経済フォーラム(ダボス会議)にも自浄作用が生じたと言えるかもしれない。
こうした動きから考えると、やはり、私は、クラウス・シュワブをやや肯定的に捉えすぎていたかもしれない。
私は改めて、自分の思想をチェックしてみた時、以前、書いた2017年5月12日付の記事『デヴィッド・ロックフェラーとフリーメーソンについての考察』の中で、完結していることを確認した。
これが私の理解の最高点であり、これをまた神智学との関連で、本にまとめてみたいとも考えている。
また2021年7月9日付のその後の記事『グレートリセットについて -魚座から水瓶座への緊張点-』の中でも私の考えをまとめている。
そして、グレートリセットが、少し偏った内容で、大衆から不人気の為、それが頓挫したのであれば、もっとましな計画、政策といったものに変わっていく可能性はあると思われる。
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