前の記事で書き忘れたことだが、松本人志がラーフ期に天才芸人としての称号を得たが同時に
彼への評価は厳しいものになり、「面白くない」として数多くの批判を受けていることについて、
ラーフ期のディスポジターである水星の状態を見ることで鮮やかに理解が可能であると書いたが、
水星の状態を見る時に逆行の土星からのアスペクトを考慮する必要がある。
6、7室支配の土星が6室自室で逆行しており、木星にアスペクトしているが、
逆行しているため、一つ前の部屋からラーフと、水星にアスペクトして、ケートゥにも絡んでいる。
この逆行の土星が広範に害を及ぼしているのである。
因みに私は出生の土星も逆行している場合、一つ前の星座からアスペクトしていると考える立場である。
トランジットの惑星の場合だけ逆行が働くと考えるのは不自然である。
シュリK.N.ラオは逆行の惑星が一つ前の星座からアスペクトするのは、アスペクトについては機能しているが、
出生図に適用するとなると解釈の拡大が過ぎるのではないかと述べたそうである。
ポール・マンレイが、シュリK.N.ラオに質問した所、そのような回答があったという。
然し、通常、出生図はトランジットの運行している惑星の瞬間の配置であるから、トランジットの一部分と言うことができる。
その出生図でトランジットで機能する法則が機能していないと考えるのは不自然なのである。
このポールマンレイの記事において、KCサクセナは、トランジットと出生図の両方で使うべきだと主張しているようだが、
私もそのように考えている。
例えば、シュリK.N.ラオは、「Learn Successful Predictive Techniques of Hindu Astrology」の
「A Quick Method of Timing Marriage」において、結婚のタイミングと、DKへの土星のジャイミニアスペクトとの関係を論じる中で、
逆行する土星が一つ前の星座からジャイミニアスペクトすることが機能していることを論証している。
そして、これはKCサクセナからの鋭い指摘を受けて取り入れたことを明らかにしている。
トランジットの惑星が一つ前のハウスからアスペクトするという観点は、KCサクセナの指摘によるものであるが、
この観点自体をKCサクセナが提供した以上、出生図とトランジットの両方で働くという彼の指摘は信頼できるのである。
シュリK.N.ラオは、同じく「Learn Successful~」の中で、[K.C.Saxena (Unsung Astrological Genius)]という章を設けて、
KCサクセナと議論した日々の想い出を綴っている。
その記事によれば、KCサクセナは牡羊座ラグナで、月と木星がガージャケーサリヨーガを形成しており、水星はラシとナヴァムシャで、
4室に在住し、10室にアスペクトしているという。そして土星は7室で高揚していると書いている。(P91-92)
私はこの逆行惑星のアスペクトについては、KCサクセナの観点が正しいのではないかと考えている。
シュリK.N.ラオは自分の出生図に逆行惑星がないため、今一つネイタルチャート上の逆行惑星が一つ前のハウスからアスペクトすることが実感できないのではないかと考えたりもした。
私の出生図は牡羊座ラグナで、9室支配の木星が10室山羊座で逆行しているが、私はプラーナダシャーが水星期である時に記事を書いてブログを更新することが多い。水星は私のラグナ、月、太陽からみた3室の支配星だからである。
以前、しばしば山羊座ラグナの人から洞察を提供されることがあったのだが、その時に私はそのアイデアや情報を元に洞察を深め、占星術の記事を書いたりしたことがあった。
私はそれはおそらく逆行の木星が一つ前の星座から3室支配の水星にアスペクトしているからではないかと考えた。
アスペクトにはフルアスペクトではなく、部分アスペクトというものもあるが、木星からみた6室目に在住する私の双子座の水星に対しては、
木星は1/2アスペクトも、3/4アスペクトもしないのである。
従って、逆行をしたことで一つ前の星座から水星に影響を与えたと考える以外にない。
そして、この松本人志のチャートにおいてもラーフのディスポジターである水星に対して、土星が9番目の1/2アスペクトを与えることはできるが、これは非常に弱い影響である。そして、ラーフは土星から6室目に在住しているため、ラーフそのものに対しては、土星は部分アスペクトも提供していない。
従って、部分アスペクトの結果、ラーフやそのディスポジターである水星が傷ついたと考えるのは難しいのである。
松本人志がラーフ期に苦戦しているのは、6室支配の障害や批判をもたらす土星が逆行してラーフや水星にアスペクトし、そして、水星を保護する木星にアスペクトして傷つけ、保護の力を弱めたからだと考えた方がしっくり来るのである。
ここで、部分アスペクトについての説明が必要だが、惑星は7室目にフルアスペクトで100%の影響を及ぼすが、4室目と8室目に3/4アスペクト(75%)、5室目と9室目に1/2アスペクト(50%)、3室目と10室目に1/4アスペクト(25%)の影響を及ぼす。但し、木星と土星と火星に関しては、木星は5室目と9室目にもフルアスペクトを及ぼし、土星は3室目と10室目にもフルアスペクトを及ぼし、火星は4室目と8室目にもフルアスペクトをもたらすとされている。通常、インド占星術の入門知識において言及されるアスペクトは、フルアスペクトのことである。
この部分アスペクトの概念を使っても、松本人志のラーフのディスポジターである水星が傷ついていることを確認できないのである。
唯一、確認できるのは、水星に保護を与える木星が土星のアスペクトによって傷つき、保護の力が弱まったということである。
そして、ラーフそのものも、11室に在住するラーフはウパチャヤの凶星で強いはずである。木星のアスペクトはなく、ラージャヨーガも形成しないが、ディスポジターの水星は高揚し、木星からアスペクトされている。(水星が逆行していることはマイナスであるが、逆行の否定的な象意をこれだけで強調しすぎることはできない)
従って、水星は十分に強く、傷ついていないのである。もし逆行の土星がラーフやディスポジターの水星をアスペクトしていないと考えたら、何故、松本人志がこれ程までに批判され、酷評されるか理解が出来ない。
6、7室支配の土星は逆行して6室に在住し、障害のもとを広範囲にアスペクトで拡散している。
そして土星は自室にいて強いため、その凶意も強いことを表わしている。
従って、この強い土星の凶意が松本人志が苦戦している理由である。
通常、惑星が6室で減衰する場合は敵を惨めなまでに粉砕するのであるが、惑星が6室で自室にある場合は敵が強いのである。
敵から恩恵を受けるが、敵も強いということを表わし、もし敵が強いのであれば、その表示体である惑星のアスペクトは害がある。
この凶意の強くなった土星が、松本人志のラーフや水星を傷つけているということである。
従って、私はこの松本人志のケースは、惑星が出生図上で、逆行すると一つ前のハウスからアスペクトすることの実例として優れていると思うのである。
この6室で強い土星だが、これは松本人志と北野たけし(山羊座ラグナ)の関係を表わしているように思われる。
松本人志は北野たけしが映画監督としてのライバルであることを公言しているが、実際、映画監督としての名声において、北野たけしには及ばない。
従って、この土星はそうした山羊座ラグナの人物との関係性もよく表わしているので以前から面白いと思っていた。
私はバラーティア・ヴィディア・ヴァヴァンが主催したデリーでの占星術コースに参加した際に講座を担当した講師が、逆行の惑星が一つ前からアスペクトしているという前提で、黒板上で検証していたのを見たため、おそらく、この逆行惑星の一つ前の星座からのアスペクトに関しては、シュリK.N.ラオと彼の弟子である講師間でも意見が一致していないのである。見解は様々である。
従って、この逆行惑星の一つ前の星座からアスペクトする観点については、私の経験や考察からもK.C.サクセナの洞察が正しいと考えている。
コメント
コメント一覧 (6件)
先生のお考えだと、
逆行天体は、一つ前の星座からアスペクトする、ということでよろしいのですか?
①一つ前の星座からだけアスペクトする。
②一つ前の星座からと現在の星座、両方からそれぞれアスペクトする。
の①でいいんですよね?
それで、もう一つ疑問が湧いたのは、
逆行天体が一つ前の星座からアスペクトするのだったら、
在住も、
A. 一つ前の星座だと見る。
B. 一つ前の星座と現在の星座、それぞれ在住の効果を考える。
で、Aでいいんですかね?
組み合わせ的には①Aが自然な感じがしますが、
①Bなんてこともあるんでしょうか?
実際、機能しています。
事象をダブルトランジットで説明する場合に逆行惑星が一つ前からアスペクトするという考え方を使わないと説明出来ないケースがかなり出て来ます。
一つ前の星座と現在の星座の両方からアスペクトしますので、アスペクトするハウスが2倍になります。
在住に関しては、あくまでも現在の星座に在住していると考えますが、一つ前の星座に在住しているかのような影響があります。
つまり、②Bだと思います。
ということは、今なんて、一旦水瓶座まで行った土星が、逆行中の山羊座の一つ前の射手座からもアスペクトしてたわけですよね…
道理でやり直し感、停滞感、ダメ押し確認感が滲み出るわけですねぇ…一番進んだとこから見たら3つ前からアスペクトなわけですから…
ようやく土星が順行留に入ったのでホッとしています。
土星は、2022年4月30日に山羊座から水瓶座に移動し、6月5日ぐらいから逆行を開始して、7月13日に山羊座に戻りました。
その後、山羊座でずっと逆行し続けています。
山羊座での逆行が終わり、順行に転じるのが、10月23日からです。
つまり、6月5日から10月23日までは、土星は山羊座で逆行をし続けて、一つ前の射手座からもアスペクトし、水瓶座、双子座、乙女座にアスペクトしていました。
木星も魚座で逆行している為、一つ前の水瓶座からアスペクトし、双子座、獅子座、天秤座にアスペクトしていました。
また魚座からも蟹座、乙女座、蠍座にアスペクトしています。
そうすることで、土星と木星のダブルトランジットが、水瓶座、双子座、天秤座、乙女座、魚座、蟹座に形成されています。
『イラン保守大国の内部事情 -女性の死に対する抗議運動がイラン全土に広がる-』で書きましたが、イランでかつてないほどの自由を求める民衆のデモが拡がっているのはその為です。
リベラリズムや民主主義というのは、水瓶座、双子座、天秤座の価値観であり、それらが拡大しているということです。
然し、2022年10月24日に土星は順行に戻るので、その時から、水瓶座と双子座へのダブルトランジットは終わります。
順行の土星と逆行の木星により、天秤座へのダブルトランジットだけが残ります。
イランでのデモ活動は下火になると思います。
一方で、イタリアでは、メローニ党首率いる極右政党が選挙で勝利し、政権を取りました。
これは、水瓶座、双子座、天秤座にダブルトランジットする一方で、魚座、蟹座などの保守勢力を表わす水の星座にもダブルトランジットが形成されているからです。
興味深いことに6月5日から今日まで(まもなく10月23日で終わる)、右翼的な価値と、左翼的な価値の両方が活性化しています。
そのため、世界情勢は混とんとしています。
ウクライナでの戦争も封建的保守的な価値を守りたいロシア(またロシアに味方する中国、イラン)と、リベラリズムや民主主義を推進したい米国を中心とするNATO諸国との戦いになっていて、両者の勢いが拮抗しているのはその為です。
今は米国とウクライナ、NATO諸国は、停戦交渉には応じず、ロシアのプーチンを追い詰めようとしてますが、土星が順行に転じると、若干、NATO諸国側の勢いが失われると思います。
更に木星が2022年11月25日から魚座で順行に転じると、木星の天秤座へのアスペクトも終わり、風の星座へのダブルトランジットが全て終了します。
魚座と蟹座へのダブルトランジットだけが残ります。
そうすると、右翼、保守勢力側が活気づいてきます。
おそらく、プーチンが新たに導入した30万人の予備役の軍人たちが戦場に配備されて、劣勢だったロシアが盛り返すと思います。
それらの軍人は訓練もろくに受けておらず、装備も貧弱だと言われますが、とにかく数が多いため、馬鹿には出来ません。
個人においても国家や世界においても、惑星が逆行したり、再び、順行に転じるタイミングは、情勢の変化を意味しており、様々なドラマを生み出します。
逆行惑星が一つ前の星座からアスペクトするという観点を使わないと、全く個人の出来事も国家や世界のマンデン的な事象でも理解出来ません。
ありがとうございました。
土星と木星の動きが気になっていたので、今月末から来月初、それからまた来月の終わり等、無闇に行動せずに気を付けようと思っていました。
墓穴を掘らず、相手方が掘るのを見られるように(爆)。
すごく分かりやすかったです。
ありがとうございました。