
昨年2024年11月14日、俳優の火野正平が亡くなった。
春頃から持病の腰痛が悪化し、9月には腰椎を圧迫骨折して以降、体調が悪化し自宅で治療を続けていたという。
火野正平は、ドラマや映画で主演を張るような大スターではないが、その脇を固めて、作品を非常に質の高いものにする名優である。
ちょうど、海外の俳優に例えると、ゲイリー・オールドマンのような俳優である。

悪役や脇役をやらせると、主役以上に輝き、その映画を輝かせるが、かといって、主役が似合う訳でもない。
例えば、ゲイリー・オールドマンの場合、『レオン』(1994)で演じたニューヨーク市警の麻薬捜査官スタンフィールド役で、汚職捜査官の狂気の悪役として、強烈な存在感を放った。
『フィフス・エレメント』(1997)でも武器商人ゾーグ役として悪役を演じ、『バットマン』三部作(2005–2012)では、ジェームズ・ゴードン警部補/本部長を演じた。
また『JFK』(1991)では、暗殺犯とされたリー・ハーヴェイ・オズワルド役を演じ、エアフォース・ワン(1997)では、ロシア人テロリストのリーダー、イワン・コルシュノフ を演じた。
エアフォース・ワンは、ハリソン・フォード主演の映画だったが、ゲイリー・オールドマン演じるテロリストの悪役に魅かれた人も多かったに違いない。
結局、ゲイリー・オールドマンは、主役級の名脇役としてあまりにも有名になった為に最近では、主役を演じる俳優陣の仲間入りを果たし、映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』(2017)では、主役も務め、アカデミー主演男優賞も受賞している。
火野正平も脇役の出演ながら、主役級の重要な存在感を放った作品が多いというのが定評である。
そして、火野正平の場合、そうした俳優としての評価とは別に超一流の評価を受けているのが、「元祖プレイボーイ」「モテ男の代名詞」とみなされるほどの芸能界一のモテ男ぶりである。
モテる男性有名人を「平成の火野正平」(今なら「令和の火野正平」)とメディアが呼ぶようにもなっていた。
ウィキペディアには以下のように記されている。
私生活では1971年、同棲生活をしていた一般女性と結婚、1男1女を儲けるも1972年に別居を経て離婚(ただし、離婚届を出せずに戸籍上は40年以上、婚姻関係が続いていたことが2016年に判明)。1970年代には有名女優らと数々の浮名を流して当時のワイドショーを賑わせたが、1982年には同棲していた一般女性(鳳蘭の元マネージャー)と事実婚の状態となり、この女性との間に2人の女の子が生まれて認知している。そのモテぶりから「元祖プレイボーイ」「モテ男の代名詞」と見なされるようになり、平成時代にはモテる男性有名人について、メディアでは「平成の火野正平」と称して報じるほどであった。 (wikipedia 火野正平より引用抜粋) |
この火野正平のチャートを作成してみて、おそらく、蠍座ラグナに違いないと思った。

蠍座ラグナに設定すると、モテ男ぶりを説明することが出来る。
例えば、同棲生活をしていた女性と一男一女を儲けながらも離婚したが、実際には戸籍上離婚しておらず、その後、1970年代に有名女優らと数々の浮名を流し、1982年には同棲していた一般女性と事実婚の状態となり、この女性との間に2人の女の子が生まれて認知した。
女性と出会うと直ぐに同棲状態となり、別居や離婚しても比較的ずるずると腐れ縁が続いていく関係性は、7室と8室が絡んでいるはずである。
そこで、蠍座ラグナであれば、7室で7室の支配星と8室の支配星がコンジャンクトして、更に7室に3つの惑星が集中して、女性との出会いが多くなり、7室で金星がマラヴィアヨーガを形成している為、美人女優たちと次々と浮名を流したのである。
蠍座と牡牛座の軸は、7室の支配星が12室(ベッド上の快楽)を支配する為、しばしば、性的な関係性になりやすいが、更に双子座の月ラグナから見ると、12室(ベッド上の快楽)に3つの惑星が集中している。
従って、女性と知り合うと、直ぐに性的な関係となり、同棲関係となって、ダラダラと関係が続いていくが、その関係が成立している間に別の女性との三角関係なども始まっていく。
8室は支配者を表しており、依存する相手を意味している。
従って、火野正平が女性を支配するのではなく、女性が火野正平を支配するのである。
なんとなくほっておけない男として、女性が火野正平の世話を焼き出すのである。
そうした母性本能をくすぐる才能を持っていた。
実際、7室の太陽と水星は、ローヒニーに在住しており、ローヒニーは、「母親の忍耐を備えた実りをもたらすもの」という異名のごとく、ロマンティックな理想と官能性を合わせ持っており、ダメな男を見ると、甘ったるい盲目的な愛情で、自分がこの人の面倒を見なければこの人はダメになってしまう、などと使命感を感じてしまう。
そうして、女性たちは、火野正平にはまっていくのである。
女性から追いかけられ支配される力
これは、真実、いや、当たり前の話だが、モテる男は、女性を追いかける男ではなく、女性から追いかけられる男である。
実際、中尾ミエは、以下のように証言している。
中尾ミエ モテ男・火野正平さんの“人をひきつける力”を絶賛「ほっとけない感じなのよね」 2024年11月22日 18:30 スポニチアネックス 歌手の中尾ミエ(78)が22日、TOKYO MX「5時に夢中!」(月~金曜後5・00)に出演。14日に亡くなった俳優の火野正平さん(享年75)とのエピソードを語った。 火野さんは1971年に結婚し、長男と長女をもうけたが、その後、新藤恵美、小鹿みき、西川(現・仁支川)峰子ら多くの女優と次々に浮名を流した。「握手しただけで妊娠する」とすら言われ、愛人は9人とも10人とも。火野さん本人は「最高11股」とも語っていた。 火野さんとテレビ朝日系「新・必殺仕置人」(1977年)で共演した中尾は訃報を受け「あの頃は1番お盛んな時代で…」と共演当時を振り返る。 続けて「よく“俺ヒモの素質あるからさ~”って。私が履いてるパンツを“お~それいいな~くれよ~”って言うからしょうがないなと思ってあげたら数日後に彼女が履いてて…お前の女にやったわけじゃねえよと思って」とまさかのエピソードも明かす。 その上で「モテるというかなんだろう…ほっとけない感じなのよね。計算じゃなくて本当にしょうがないんだけど“しょうがないね~”って言いたくなっちゃうような、母性本能をくすぐる」と火野さんの魅力を絶賛していた。 |
火野正平自身が、“俺ヒモの素質あるからさ~”と、自分の才能を自覚していたようである。

今回は、ざっくりとした検証になるが、火野正平が最初に結婚した1971年は、木星/ラーフ期辺りで、翌年1972年には別居し、離婚状態となったのが、土星/土星期以降である。
1男1女を儲けるも別居して離婚に至ったと記されているが、結婚した1年後に離婚している為、子供が出来たのは同棲中で、結婚する前である。

つまり、木星期に子供が誕生しているが、木星は5室(子供)の支配星で、月から見た7室(配偶者)の支配星で8室(結婚生活)に在住している。
木星期に結婚して、子供が誕生し、その後、腐れ縁となり、婚姻関係が継続したまま、関係が変質したのは、7室の支配星が8室に在住しているからである。
(子供が木星/ラーフ期に誕生しているが、木星が5室の支配星で、ラーフが逆行の5室の支配星からアスペクトされている)
トランジットを見ると、1971年は、木星はラグナから7室にアスペクトし、土星は逆行して、7室(牡牛座)にアスペクトして、7室にダブルトランジットしている。
因みに土星は、少し前まで5室をトランジットして、木星と共に5室にダブルトランジットを形成していた為、一男一女をもうけることになった。
その後、新藤恵美、小鹿みき、西川(現・仁支川)峰子ら多くの女優と次々に浮名を流した1970年代は、マハダシャー土星期だった。

土星はジャイミニの変動表示体で、配偶者を表すDK(ダラカラカ)で、3、4室支配で10室に在住しており、土星をダシャーラグナとしても、10室に金星、太陽、水星が在住している。
ジャイミニの変動表示体の象意をヴィムショッタリダシャーの解釈に拡張して用いるジャイミニの技法の現代的適用によれば、土星期は、DK(ダラカラカ)としての効果を発揮するはずである。
土星は3室支配で、10室に在住し、3-10の絡みが形成されて、芸能人の典型的な絡みが形成されているが、3室は食欲、性欲、睡眠欲のハウスであり、不倫のハウスなどとも呼ばれる為、共演した女優たちと浮名を流すことが多くなった。
土星をダシャーラグナとしても10室に金星、太陽、水星が惑星集中していることは、仕事が絶好調で、共演する女優たちも多かったことを示している。

そして、1982年には同棲していた一般女性と事実婚の状態となるが、トランジットを見ると、土星は乙女座から8室双子座にアスペクトし、木星は天秤座から8室双子座にアスペクトし、8室にダブルトランジットすると共にラーフ/ケートゥ軸は2-8軸で、ラーフが8室をトランジットしていた。
これは、相手との結婚願望が高まる時期で、相手にヒモっぽく、依存していく時期である。
土星は乙女座から5室にアスペクトし、木星は天秤座をトランジットしていたが、いずれかのタイミングで、逆行するなどして、5室にアスペクトし、5室にダブルトランジットしていたと思われる。
同棲した女性と事実婚になり、2人の女児が誕生した1982年は、土星/太陽期、土星/月期辺りである。
子供が誕生したのは、土星は月から見た9室の支配星で、月も9室の支配星だからである。
7室のテーマが強調された人生(土星期→水星期→ケートゥ期→金星期)
火野正平は、土星期の後、7室に在住する8、11室支配の水星期となり、その後、ケートゥ期となって、7、12室支配の金星の結果を与え、更にケートゥ期の後で、7、12室支配で7室に在住する金星期となったが、全部、ダシャーは、7室に関係している。

従って、マハダシャー土星期以降も、火野正平は、亡くなるまで、モテ続けた。

火野正平は、あるインタビューで、「仕事よりも女性を取る」と回答したぐらい、人生のテーマは7室が強調されていた。
女性を支配する力
因みにwikipedia 火野正平には、興味深いエピソードが載っていた。
幼少期から継続して犬を飼っており、「彼女がいない時期はあっても、犬がいない時期はありませんでした」と言うほどの愛犬家で、最多で同時に9頭、亡くなるまでニューファンドランド2頭を含む3頭を飼育している。 (wikipedia 火野正平より引用抜粋) |
ここまで見て、私は、火野正平は、女性の母性本能をくすぐり、女性に世話したいという支配欲求を生じさせるヒモ男としての才能が、女性からモテる力の源泉だと考えたが、実は、火野正平の魔力は、それだけではなかった。
上記のように火野正平は、犬(ペット)を常に飼っており、犬がいない時期はなかったと言うほどの愛犬家で、最多で同時に9頭飼っていたという。
このペット(6室)は、愛人(6室)に置きかえることが出来る。
明らかに火野正平の6室に在住する6室支配の火星は、ペットを表している。
そして、6室の火星は、敵を粉砕する配置であり、6室のラーフもそうであり、暴力的な支配の配置である。
火野正平は、ヒモっぽい単なる優男ではなく、強力で圧倒的な支配力を持っていたのである。

だから、犬たちを最多で、同時に9頭飼っていたのであるが、それを単純に愛人に置き換えてみると、火野正平が『・・・新藤恵美、小鹿みき、西川(現・仁支川)峰子ら多くの女優と次々に浮名を流した。「握手しただけで妊娠する」とすら言われ、愛人は9人とも10人とも。火野さん本人は「最高11股」とも語っていた。』という中尾ミエの証言がよく理解できる。
火野正平は女性たちにこの人は、私が世話してあげなければダメになってしまうと、母性本能をくすぐる一方で、相手が自分にはまっていくと、相手が戦慄するほどの支配力を発揮したのである。
6室の火星と言えば、北朝鮮の金正恩の獅子座ラグナで6室で火星が高揚する配置が思い出されるが、反逆の恐れがある部下の高官を高射砲で粛正したり、大勢の喜び組の女性たちに自分の相手をさせていたかと思えば、韓流ドラマの動画ファイルの販売をした女性たち3人を銃殺している。
金正恩の支配力とは、日頃、高官たちや喜び組の前で、上機嫌で、愛想よく振舞っていても、いつ暴力を振るい出すか分からない怖さである。
北朝鮮の国民たちには、そのような恐怖心が刷り込まれている。
火野正平には、実際、そのような狂気があったと思われる。
女性たちは、世話してあげなければならないほっとけないダメ男に対する母性本能をくすぐられながら、同時に無意識下で、逆らったら何をされるか分からないという恐怖を感じ取っていたと思われる。
しかし、それは無意識下で働いているので、何故、自分が、相手に対して従順に尽くしてしまうのかが分からない。

またこれは現在、ウクライナ侵略中のウラジーミル・プーチンのチャートを見ると、よく分かるが、プーチンも蠍座ラグナで、6室の木星と2室の火星が星座交換している為、6室牡羊座に火星が在住しているかのような効果を発揮している。
6室の火星は、ウクライナの最前線に送り込まれているロシア兵たちを象徴しているが、ロシア兵が全く兵器が不足する中で、前線への突撃を強いられているのは、この配置の為である。
またプーチンには北朝鮮の金正恩ほどあからさまではないが、元新体操選手のアリーナ・カバエワを始めとして、何人かの愛人がいることが知られている。
ラグナのナクシャトラ = ジェーシュタ(神々の中の王であり、戦いと征服の神、インドラが司る)
私は、今回、ざっくりとした検証しか行っていないが、おそらく、火野正平のラグナは、蠍座のジェーシュタであり、性格に二面性が見られると考えている。
(もっと細かく言えば、ジェーシュタの第1パダで、ナヴァムシャのラグナは射手座ではないかと考えているが、ナヴァムシャや分割図の修正については、また別の記事の中で取り上げたい)
ジェーシュタには、物質性と精神性があり、俗物性と聖性が共存している。
ある時は、教会で祈りながらも、別の場面では、裏切者を暗殺するといったことが出来る人たちである。
というか、そもそもジェーシュタは、マフィアの表示体である。(プーチンはラグナがジェーシュタであるが、マフィアのボスがそのまま国家指導者になってしまったような人物である)
(※例えば、最近では、ジェーシュタのラグナを持っていると推測される三原じゅん子が暴力団幹部とゴルフ・コンペに行った写真が週刊誌にスクープされていたが、ジェーシュタは、マフィア・暴力団と関わりがある)
、
ジェーシュタの二面性は、それだけではなく、親しい人に見せる顔(本音の自分)と赤の他人に見せる顔(建前の自分)が全く違う所にも表れる。
例えば、美談として語られる火野正平の姿は、火野正平が世間的に身に付けているペルソナである。
本当に火野正平の本音の顔を覗き込むのは、火野正平と交際した女性たちではないかと思われる。
ジェーシュタは、インドラ神が司っており、インドラは戦いの神であり、神々の中の王と言われており、「征服する力」が特徴である。
火野正平は、映画やドラマでヤクザ・チンピラ・アウトロー役を数多く演じており、仁義なき戦いシリーズ(1973年以降)や、極道の妻たちシリーズ(1980年代後半〜1990年代)や実録もの任侠映画(1970年代〜1980年代)では、「暴力団のトップ(組長・親分格)」を演じた場面もある。
そうした映画の一場面も見たことがあるが、かなり、はまり役で、火野正平の素に近い感じがした。
つまり、火野正平には、そうしたヤクザ・チンピラ・アウトローの資質が隠れている。
火野正平のモテる力
このように火野正平のモテる力とは、母性本能をくすぐり、女性にほっとけない世話したいと思わせる、女性から追いかけられる力と、何をするか分からない狂気や、女性に無意識の中で、畏怖させ支配する力の共存である。
ある意味で、飴(アメ)と鞭(ムチ)を同時に用いており、ローマ時代から為政者が使って来た統治手法を実践してしまっていたのである。
黒魔術とでも言えるほどの凄まじい力である。
腰の疾患が原因で亡くなる
昨年2024年11月14日に火野正平は亡くなったが、持病の腰痛の悪化や腰椎の圧迫骨折などが原因だった。

体調が悪化し自宅で治療を続けていたという。
ダシャーは、金星/ラーフ期だったが、金星は7、12室支配のマーラカで、8、11室支配の二次的なマーラカと、マーラカの7室でコンジャンクトしている。
そして、金星は、3、4室支配で、蠍座ラグナにとって、二次的なマーラカである土星からのアスペクトを受けている。
7室は腰を表しており、通常、ヘルニアになったり、腰を悪くする人は、傷ついた7室が関係している。
アンタルダシャーは、ラグナロードで6室に在住する火星であったが、6室は怪我のハウスであり、腰椎の圧迫骨折はこの配置から来たかもしれない。
金星をダシャーロードとすると、火星は、7、12室支配で、マーラカの7室を支配し、12室でラーフとコンジャンクトしており、12室は入院のハウスであり、マーラカである2室や7室の次の優先順位で死をもたらすハウスに該当する。
金星/ラーフ期は、通常、有名になったり、社会デビューする時期であるが、火野正平は、晩年に近づけば近づくほど、有名になり、公に知られるようになっていた。
銃殺の悲劇も…北朝鮮「喜び組」スキャンダル 2015/11/20(金) 11:58 デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト 高英起 金正恩第1書記に異議を唱えたとして大口径の高射銃で人体を文字通り「ミンチ」にするやり方で処刑したり、「韓国人スパイ」と関係をもった容疑により芸術関係者を400~500人の前に引き出し、機関銃で体を粉々にするなど、残忍な処刑方法が伝えられる北朝鮮で、またもや理不尽な処刑が行われた。 舞台となったのは中朝国境に面した北朝鮮の両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)市。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、9月に韓国と通話した罪状で女性3人が銃殺されたと報じていたが、同ラジオのその後の追加取材で動画ファイルの販売が銃殺の本当の理由だったと判明する。 2000年以後、北朝鮮では、韓流をはじめとする外国映画が違法DVDやメモリなどのデジタルメディアを通じて拡散している。北朝鮮国営メディアは、金正恩時代になってかなりソフトにはなりつつあるが、相変わらずプロパガンダ中心の放送コンテンツだ。娯楽に飢える北朝鮮住民にとっては退屈極まりなく、韓流ドラマや外国映画を見たがるのは、ごく自然の流れといえる。 こうした動画ファイルは密売人を介して中国から密輸入される。北朝鮮当局もその度に取り締まりを強化しているが「イタチの追いかけっこ」状態で一向になくならない。 しかし、いくら北朝鮮といえども通常の韓流ドラマの販売ぐらいで銃殺というのは珍しい。実は、女性らが販売していたのは「喜び組」を描いた韓流ドラマ『ツツジの花が咲くまでに』だったのだ。 『ツツジの花が咲くまでに』は、「喜び組」に所属し、後に脱北した申英姫(シン・ヨンヒ)さんの手記を原作にしたドラマだ。原作は日本語に翻訳され『私は金正日の「踊り子」だった』(徳間文庫)という邦題で出版されており、「喜び組」をはじめ北朝鮮の内部事情が赤裸々に記されている。その後も、「喜び組」に関する新証言は出てきておりその実体は明らかになりつつある。 3人姉妹が販売していたのが『ツツジの花が咲くまでに』ならば、北朝鮮当局があえて銃殺した狙いも見えてくる。 「喜び組」は、金一族、とりわけ故金正日総書記に関する最高機密スキャンダルだけに、ドラマの存在自体が知られれば、多くの住民達が逆に興味をもつからだ。つまり『ツツジの花が咲くまでに』の存在を隠蔽するために、あえて携帯電話の違法通話という濡れ衣をかぶせられ処刑されたというのが、処刑が行われた背景と言える。 最高尊厳のスキャンダルを銃殺で隠蔽するのは、いかにも北朝鮮当局らしい。しかし、権威を守るための銃殺処刑という非人道的な方法が、結局は国際社会からの非難と孤立を招き、北朝鮮の発展を阻む大きな障壁となっている。 |
金正恩が女性3人を処刑した「喜び組」の禁断情報 2023/12/9(土) 18:02 デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト 高英起 高英起 英BBCは6日、5月に家族とともに漁船に乗って北朝鮮を脱出した30代のキムさんとのインタビューを報じた。キムさんによると、北朝鮮当局は最近、韓流コンテンツに対する取り締まりと処罰の度合いをいっそう強めており、昨年4月には知り合いの22歳の青年が公開銃殺される様子を強制的に見せられたという。 北朝鮮から外に逃れてきた人物の目撃証言としては、おそらくこれが最新の処刑情報だ。この証言により、最高刑を死刑とする反動思想文化排撃法の厳格な運用が改めて確認された。 北朝鮮で韓流コンテンツの取り締まりが厳しくなり、処刑まで行われるようになったのは2015年頃のことだ。同年9月、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が、「韓国と通話した」という罪状で女性3人が銃殺されたと報じたが、RFAはその後の追加取材で動画ファイルの販売が銃殺の本当の理由だったと訂正した。 筆者は当時「いくら北朝鮮当局といえども、ラブストーリーや時代劇などの韓流ドラマを流通させた程度で処刑されることはない」と考えた。そこで調べて見ると、彼女らが売っていた韓流ドラマが1998年に韓国KBSで放送された「ツツジの花が咲くまで」だった可能性の高いことがわかった。 ドラマ「ツツジの花が咲くまで」は、1995年に脱北し韓国に亡命したシン・ヨンヒ氏のエッセーをドラマ化したもので、脚本を担当したチョン・ソンサン氏も脱北者だ。内容は「喜び組」の日常を描いたもので、金正日氏の豪遊ぶりや派手な性生活を描いたものだ。 国内で出回っては、金正恩体制にとっては不都合きわまりないシロモノと言える。 つまり、このときの処刑は「韓流ドラマを売ったから」というよりは、そのドラマの内容が理由だったと見ることができる。そして当局は、こうした罪状を明らかにすることが、逆にドラマへの好奇心を高めてしまうと警戒して、「通話うんぬん」の話で事実を隠蔽したのだろう。 ところが今では、ドラマの内容などおかまいなしに処刑が行われている。2015年当時、「こんなにひどい話があるか」と思ったものだが、金正恩総書記の残忍さは、こちらの感覚をはるかに凌駕している。 |
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