出産時に取り違えられた男性のニュースが報じられたが、
前回、男性の出生図がどのように構成されているか大まかな予想を描いてみた。
特に強調したかったのが、8室と9室の絡みと太陽の傷つきである。
その後、この話題を提供してくれた友人から再度、連絡があり、実は、この男性は出生時間まで分かっているという。
貧しい家庭で育って苦労した男性(今回訴訟を起こした)は、1953年3月30日 19:17 東京都墨田区である。
裕福な家庭で育った男性(本来は貧しい家庭で育つはずであった)は、1953年3月30日 19:30 東京都墨田区である。
出生時間の差は、13分である。
まず、お互いに出生図はほとんど同じである。
然し、ナヴァムシャではラグナが1星座分ずれる。これが重要である。
9室支配の水星は5室に在住して、太陽、ラーフと挟まれており、パーパカルタリヨーガを形成している。
父親の表示体である太陽は6室に在住している。
そして、月からみた9室支配の金星は8室に在住して、3、8室支配の火星と5、6室支配の土星と絡んでいる。
9室と8室が絡んで、更に非常に9室の支配星が凶星から絡まれて傷ついている。
父親の太陽からみた9室の支配星は火星であり、火星は11、12室支配の土星から8室からアスペクトされており、更に3、8室支配の金星と接合している。
従って、父親の表示体は傷ついており、更に8室と9室が絡んでいることが分かる。
父親が変わる配置である。
出生図では違いが全く分からなかったが、ナヴァムシャを見ると、一目瞭然である。
まず、裕福な家庭で育った男性は、ラグナロードの火星が10室に在住し、10室支配の太陽がラグナに在住して、1室と10室で太陽と火星が星座交換している。
男性は現在、不動産会社を経営しているというが、まさにそうした不動産に強い配置である。
そして、2、5室支配の木星が2室射手座でムーラトリコーナの座にあり、8、11室支配で自室に在住する強い水星と、7室支配で8室に在住する金星、そして、双子座で自室にあるように強い配置のラーフと相互にアスペクトしている。
これは裕福な両親の経済基盤のおかげで、様々な恩恵が受けられる配置である。
両親からよい教育を受け、そして一流大学、一流企業に進み、そして、現在、不動産会社を経営するまでになったそうした配置をこのチャートは物語っている。まさに出生図通りの人生を歩んでいると言える。
9室支配の月が7室で高揚して10室支配の太陽と相互アスペクトしており、取り違えられた結果、本質的には父親運はよくなったのだと言える。実質的な遺伝的な父親でなくても、育ての父親であっても、本質的な父親運が良かったということである。
9室はグルのハウスであり、よい人生の師である父親は必ずしも血のつながった父親とは限らないのである。
従って、本質が現れるナヴァムシャチャートにおいて、よい父親運が現れたというのは納得できるのである。
このようにこの男性のナヴァムシャチャートは非常に裕福になることを表している。
その裕福さの源は、両親が裕福で両親から幼少時に与えられたものに恵まれ、更に両親から贈与を受けたり、相続するものに恵まれているということを意味している。
お金の軸は2-8の軸と、5-11室の軸であるが、それぞれ性質は違うが、2-8室の軸は両親とか家系、贈与、相続からお金が入ってくる。
因みに貧しい家庭に生まれて苦労した男性のナヴァムシャチャートであるが、
ラグナは天秤座ラグナで1室で土星が高揚し、水星が9室で自室に在住している。
然し、9室にはラーフ/ケートゥ軸が絡み、8室支配の金星も絡んでいるため、若干、傷ついている。
この男性の場合、間違って預けられた家庭の育ての父親が、彼が幼い頃に亡くなってしまったのである。
だからこの男性は母子家庭で貧しい生活の中で、苦労しなければならなかった。
9室は強い配置ではあるが、然し、特にダナヨーガとなるような配置は見られない。ラグナロードの金星が9室支配の水星と接合して、1-9室のダナヨーガを形成しているが、2室や11室など富を表すハウスとの関わりは見られない。
太陽は11室支配で2室に在住し、2、7室支配の火星からアスペクトされており、2-11室で星座交換している。
これはそれなりによい配置だが、然し、もう一人の裕福な家庭で育った男性には及ばない。
そして、この男性の10室支配の月は8室で高揚している。
おそらく母親はよくしてくれたが、おそらく、いつも家を留守にして、母親がいなくて寂しい想いをしたことを表している。
8室は支配者を表しており、そして、母親からの困惑なども表している。
母親は生活保護を受けて、子供のためには働かなければならず、時には心のバランスやゆとりを失って、子供に八つ当たりするなども考えられるのである。
従って、10室支配の月が8室に在住している配置はこの苦労した男性によく当てはまっている。
この男性は1室でラージャヨーガカラカの土星が高揚し、9室で水星が自室にあるため、性格的に公平で堅実で責任感があり、また識別力や抽象的な思考能力も備えており、基本的な潜在能力は高いと思われるが、今ひとつそれは富に集中しているわけではない。
男性は、トラックの運転手であるというが、おそらく、それは太陽と火星が2室と11室で星座交換していることが表している。
2室は自営業のハウスであり、更に2-11室の絡みということは、自分のトラックを所有し、同僚が大勢いて、配送業を出来高で契約して行っているといった印象である。
それなりに仕事で稼ぐ能力はあり、知的能力も高いのだが、但し、両親に恵まれたり、両親からのお金に期待できる配置ではない。
それに比べて、裕福な家庭で育った男性の方は、まさに両親からの収入や贈与、相続に恵まれる配置をしているのである。
しかし、一つ難点は、この裕福な家庭で育った男性のナヴァムシャのラグナからみて11室支配の水星が8室に在住して強い配置だが、ラーフ/ケートゥ軸と絡んで傷ついている。
これは11室の象意が強いので、兄弟運に恵まれているのだが、それは血縁上の兄弟ではないのである。
11室と8室が絡むので、兄弟が強制的に変えられるという、父親の場合と同じような象意がここでも展開する。
そして、これら3人の弟たちが、兄とは外見が全く似ていないということから、実の兄探しを始めた。
それは一緒に育った兄である男性を差し置いて、実の兄を探す行為であり、ある意味、この男性にとっては自分が血のつながりのない赤の他人であることを暴かれる辛い体験である。またそうした行為自体が、男性に対して君臨する支配でもある。
暴かれたが最後、血のつながりはなかったという事実が認知されることを意味している。
これは兄弟がもたらす苦痛であり、苦悩である。
これが11室支配で8室に在住してラーフと絡む水星の象意である。
このようにして見てくると、この二人の数奇な運命をたどった男性たちは、ナヴァムシャチャートに描かれた通りの人生を歩んでいる。
まさにこの取り違えられるという事件は、カルマ的に予定されていたのである。
そして、非常に重要なことであるが、この男性たちの人生の違いは、出生図には全く現れなかったということである。
これは日々ジョーティッシュを実践するものにとっては衝撃的である。
つまり、ジョーティッシュにおける鑑定とは、ナヴァシャチャートの分析と言ってしまってもいいくらいである。
ナヴァシャチャートを出生図のように見なければ多くのことを取りこぼしてしまう。
むしろ、出生図よりもナヴァムシャの方を丹念に見なければならない。
私の知人によれば、デリーのラオ先生をツアーで訪問した際に、ラオ先生がナヴァムシャのラグナを修正できた途端に
次々と様々なことを当て始めたのだと聞いている。
つまり、ナヴァムシャは重要なチャートであり、出生図とセットで、あるいは、出生図以上の注意深さを持って、
分析しなければならないチャートである。
まさに鑑定とはナヴァムシャで行うのである。
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