独裁者とポピュリズムとメディア
2024.03.04
ウクライナのゼレンスキー大統領が、大統領に立候補する前に映画俳優として、一般人がひょんなことから大統領になるドラマの主人公を演じていたことは非常に興味深いエピソードである。
ドラマが大ヒットして、既に国民の中には、十分にゼレンスキーの知名度が行き渡っており、後は実際に当選するのを待つばかりであった。
ポピュリズムとは、wikipediaの定義によれば、「政治変革を目指す勢力が、既成の権力構造やエリート層を批判し、人民に訴えて、その主張の実現を目指し、固定的な支持基盤を超え、幅広く国民に直接訴える政治スタイル」ということだが、大衆からの人気や指示によって政治権力の座に就く独裁者は、常にポピュリズムを背景にして出現する。
それは右翼、民族主義者の政治スタイルでもあり、以前から記事の中で言及してきたが、蟹座や蟹座から見た行為の10室である牡羊座が強調される。
蟹座や牡羊座というのは独裁者に共通する星座であり、独裁者は大衆に直接訴えかける為にしばしばメディアを好んで活用する。
その最も有力なツールが、テレビであったが、今では、SNSなどもその手段になっている。
ゼレンスキーの場合、メディアの3室に3室支配の月と7、12室支配の火星が在住し、更にラグナロードの金星と太陽が山羊座からアスペクトしている。
3室には4室の惑星が絡んでおり、しかも3室は大衆を意味する蟹座である。
その為、ゼレンスキーはポピュリズムを背景に大統領にのし上がった典型的な政治家である。
例えば、ヒトラーも大衆に訴えかけるのに最初に役立ったのは、酒場での演説だった。
ヒトラーが酒場で演説をすると、それが酒場の客たちに大いに受け、それを聞いていたナチスの前身であるドイツ労働者党の党首が、ヒトラーをリクルートしたという。
現在であれば、SNSでつぶやいたり、youtubeに投稿したものが、バズって、多くの視聴者からのアクセスを受けるようなものである。
それで、ヒトラーは、ミュンヘン各地のビアホールで演説をするようになった。
まだそれ程、テレビが普及していないこの頃に大衆に訴えかけるプラットフォームとして最も有力なのは、人が大勢集まる酒場だった。
政権を取得した後は、ゲッペルスが巧みに新聞、雑誌、本、公的会議、集会、芸術、音楽、映画、ラジオなどを使って宣伝を行い、リヒテンシュタインにナチスの宣伝映画を創らせた。
ヒトラーは、牡羊座に惑星集中し、蟹座10室にヨーガカラカの土星が在住し、思想や判断を表わす5室の支配星が蟹座に在住している。
従って、愛国民族主義者であり、ポピュリズムを背景に台頭した独裁者である。
メディアの3室に木星や月が在住しているが、ゲッペルスの月がこの射手座に在住しており、ゲッペルスがヒトラーのメディアによる宣伝活動の表示体である。
ドナルド・トランプも、大統領に立候補する前に知名度を大幅に上げるのに役立ったのは、『アプレンティス』というテレビ番組の司会者だった。
米国屈指の不動産王として、既に大富豪として有名ではあったが、この番組に出演した頃は、事業家としては、アトランティックシティーのカジノの経営で失敗し、破産の瀬戸際にあり、経済的にはジリ貧の状態が続いていたという。
それが、テレビ番組の成功で、復活を遂げたのである。
ドナルド・トランプが、大統領になれたのは、この『アプレンティス』という番組のおかげである。
『アプレンティス』は、ドナルド・トランプが、自分の会社の右腕として働く人材を番組で募集して、最終的に絞り込んだ応募者が番組に出演して、会社への本採用を目指すというものである。
この番組の中で、「お前はクビだ」というセリフが有名だったが、最近、トランプは、この番組のセリフを真似て、「ジョー・バイデン、お前はクビだ」と、メディアの前で、この以前、人気になったフレーズを繰り返している。
またトランプは、大統領在任中もTwitter(現X)にメッセージを度々つぶやいて、SNSを非常に好んで用いる。
トランプは、3、10室支配の金星が、6、7室支配の土星と共に12室蟹座に在住しており、行為の10室の支配星と、メディアの3室の支配星が蟹座に在住している。
従って、テレビやSNSを通じたポピュリズム的な手法によって、知名度を上げ、大統領にも当選出来たのである。
NHK党の立花孝志は、出生時間が分からないが、私が検証した所では、ラグナは蟹座ラグナで、典型的な蟹座の愛国民族主義者タイプである。
おそらく蟹座にラグナ、水星、木星、太陽が在住し、惑星集中しているが、ラグナにメディアの3室支配の水星が在住している。
また牡羊座にはラーフが在住し、5、10室支配のヨーガカラカの火星が、アスペクトバックして、牡羊座が強調されている。
この立花孝志は、地方議会への当選を重ねて、NHKから国民を守る党を起ち上げて、国政に躍り出て来たが、必要な人材や人脈などは全て、youtubeから得られたと言っている。
また活動全ては、自身や党の主張も、常にyoutubeによって行なっている。
安倍晋三も、蟹座ラグナで、典型的な愛国民族主義者だが、度々、Twitter(現X)を通じて、直接、メッセージを発信する形式を好んだ。
また度々、テレビ番組にも出演して、一般大衆へのアピールにも余念がなかった。
メディアの3室で、3室支配の水星が定座に在住し、スピーチの2室の支配星とコンジャンクトしており、3室が強調されているが、テレビやSNSを好んで使用したことは、こうした配置からよく理解することが出来る。
安倍晋三が、首相に就いていた2006年9月26日 ~ 2007年9月26日、2012年12月26日 ~ 2020年9月16日のおよそ9年間で、自民党はすっかり安倍晋三の蟹座スタイルに順応してしまった。
その首相在任中は、森友学園問題や、加計学園問題、桜を見る会の問題、またGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資金(国民年金と厚生年金の積立金)を使って、日本の経団連の株価を釣り上げるなど、身内びいきの蟹座スタイルが幅を利かせた。
蟹座は、公的なものを私物化してしまうという欠点があるが、現在、自民党安倍派が、パーティー券のキックバックの政治資金収支報告書への不記載問題、脱税問題などで、苦しんでいるのは、この安倍政権の後遺症といってもいいかもしれない。
政治倫理審査会を開催して、自民党の安倍派の面々が、非公開を希望しているのは、テレビの威力を知っているからだと思われる。
もし裏金問題の聴聞が、公開の場で、テレビやインターネットで放映されたら、国民に不正なイメージが、刷り込まれて、政治生命を失いかねない。
ビートルズが、世界的にヒットしたのは、テレビの影響であり、ポピュリズムの効果の最も大きな現れの一例である。
ユダヤ陰謀論で、戦後、日本人の意識を政治から遠ざける為に3S政策(スポーツ、セックス、スクリーン)が行われたと言われている。
これらのスポーツ、セックス、スクリーンは、3室の象意であり、低次の欲望のハウスである。
スクリーンというのは映画のことだと思われるが、あるいは、その後に出てきたテレビのことである。
そして、スポーツやセックスというのもテレビを通じて、放送されるようになった為、結局、これらは最終的にメディア(テレビやSNS)が取り扱う分野である。
大衆はこれらに最も囚われやすく、振り回されやすい。
読売新聞創業者の正力松太郎は、CIAの協力者だったと言われているが、メディアのコントロールは大衆のコントロールに通じる為、諜報機関が重視していることを示している。
アメリカが、戦後に検閲等を行なって、日本国民の愛国民族主義的な精神を鼓舞するような出版物を禁止したのはこの為である。
古代ギリシアでは、デマゴーグ(大衆扇動者)が度々現れ、社会経済的に低い階層の大衆の感情や、恐れ、偏見、無知に訴えて、政治的目的を達成しようとしたという。
こうした状況を見ていた為か、プラトンは、民主主義は、無知な大衆を扇動して台頭してくる独裁者の問題に悩まされる為、欠陥のある政治制度だと考えるに至った。
古代ローマにおいても、「パンとサーカス」という言葉が有名であるが、これは詩人のユウェナリスが、権力者から無償で与えられる「パン(=食糧)」と「サーカス(=娯楽)」によってローマ市民が満足して政治的無関心になっていることを指摘した言葉だという。
ローマの皇帝が、古代ローマの競技場で開催した複数頭立て馬車による競技や、闘技場で行われた剣闘士同士の試合など、大衆にスポーツ観戦をさせて、政治的不満が独裁者に向わないようにした。
こうしたコロッセウム(円形競技場)でのスポーツ競技は、今でいう所のテレビと似たような役割を果たしたと考えられる。
戦後の日本でもプロレスで力道山の活躍を大勢の日本人が街頭で、テレビにかじりついて見ている記録が残っているが、まさにそのようにして、昔から大衆はメディアによってコントロールされている。
蟹座のコミュニケーションは、一対多であり、マスメディアが向いているのである。
フェイスブックでは友達になってから、コミュニケーションが始まるが、一対一で、丁寧な関係を築こうとすれば、フェイスブックが利用されるかもしれない。
しかし、一方的なコミュニケーションには、圧倒的にTwitter(現X)が向いている。
フェイスブックとTwitter(現X)では、想定するコミュニケーションの形式が全く異なるのである。
単にフェイスブックのタイムラインをTwitter(現X)風に変更すればよいというものではない。
どのような質のコミュニケーションを促進しようとしているかの設計思想の点で全く違うのである。
大衆的なフォロワーを対象にした非対称のコミュニケーションが蟹座が好むコミュニケーションである。
従って、大衆に一方的にコミュニケーションを取ることの出来るツール、すなわち、テレビやTwitter(現X)などのツールが、独裁者の道具(プロパガンダツール)になるのである。
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