自立と依存の問題

現代精神分析学の特に対象関係理論の中では、
乳幼児が母親との心理的、物理的一体の状態から別人格へと離脱していく、
分離個体化という過程があるのであるが、それは母親からの十分な
愛情や注目、サポートなどがある乳幼児において初めて可能なのであって、
もしこれらが与えられないという不幸な乳幼児においては、
この分離個体化のプロセスで外傷を経験し、精神分裂病の潜在的な因子を抱える
ことになるのである。

従って、精神分析では母子という二者関係において、乳幼児が母親からの健全な精神的肉体的自立を成し遂げるには母親から精神的物理的に十分に与えられることが必要であるということが臨床的な観察から分かっている。これが人間が最も早期に経験する自立である。

何が言いたいのかというと他者の存在や援助を必要としない絶対的な自立というものは存在しないのであって、自立できる人というものは逆説的に人からサポートを受けられる人ということになるのである。

自立できる人というのは他者のサポートを受けられる人のことであり、逆説的に他者からのサポートによってしっかりと束縛される人のことなのである。

然し、その他者からの束縛的なしっかりとしたサポートがあるからこそ、人は自立することが可能になるのである。

従って他者からのサポートに恵まれない人は他者からの束縛を受けることはないので自由なのであるが、それは自立することを保証しないのである。

最近、ジョーティッシュの結婚というテーマについて書籍を読んだり、考えたりする機会が多いのであるが、結婚や契約関係は7室で見るが、結婚にとって重要なのは8室なのであって、8室はパートナーの家族やお金、結婚生活を表わすハウスである。

このハウスが傷ついていない場合、結婚によって、人は相手方の家族や財産によってサポートを受けて逆説的に自立に導かれるのである。


これに関連して、最近、個人事業主が法人化に踏み切るケースを本で読んだのだが、どういうケースが多いかというと、取引先との関係で必要に迫られて、法人化に踏み切るというケースのようである。

例えば、

「法人にしてもらえないと今後の取引が難しいと、得意先から言われた」
「上場会社を新規開拓したのだけれども、個人事業では取引に応じてもらえないので法人化したい」

という個人事業主の訴えが多いそうである。

具体的には以下のようなケースがあるそうである。

・自らデザインした洋服をショップに販売している服飾デザイナーの方は、特殊なボタンやレースなどの材料を購入するのに、「法人にしか販売できない」とメーカーから言われて法人化を決意したケース

・長年、個人事業者としてテレビ番組のディレクターをしていた方も、テレビ局の方針が変わり、法人化するように指導されたケース

・コンピューターグラフィックの製作者の方が、大手の建設会社との取引で「取引金額をこれ以上増やすには法人化しないとダメだ」と言われたケース


これらを見て考えられる状況というものは、この個人事業主たちは、取引先の企業に恵まれており、8室が傷ついておらず、吉星の在住やアスペクトによって強いのではないかということである。

こうした個人事業主たちは過去において長年、企業内で雇用関係を結んで働いてきており、それで良好な人間関係を築いた結果、独立した後も企業側からその人間関係のつてで、仕事を発注してもらえたり、永続する契約を結んでもらっているといったケースが多いのではないかということである。

従って、これらの個人事業主の8室は強いことが想定されるのである。

上記のケースは、企業側が永続する契約関係を続けていくために個人事業主に法人にするようにお願いしているということである。

法人化というのは、個人事業主にとっては、より自立が促進されたということであり、自立するための基盤が強固に確保されたということである。

従って、8室が強い人は自立が促されるということの一例である。

8室が強い人は契約相手のお金によって永続的に安定するのであり、それが結婚生活ということなのである。

結婚はビジネス上の契約関係にも置き換えられるのであり、8室が強い人はビジネス上の契約関係が安定するのである。

あるいは雇用関係も安定するのであり、会社に雇用されるというのはちょうど女性が男性と結婚するのと似ている。

特に明治時代の家父長制的家制度など封建的な社会においては女性が男性の家に嫁ぐということは、入社して雇用関係を結ぶことに等しいのである。


このようなことから考えると8室というものは雇用主との関係や雇用主の財産を表わすのであるが、然し、これらのハウスが傷ついていない場合、良好な雇用主との関係によって個人としての力が高まり、逆説的に自立に導かれると考えられる。


一方で、8室や8室の支配星が凶星と絡んだり、アスペクトによって傷ついているなどすると、雇用主との関係や雇用主の財産(それはつまり給料)に依存し期待するのであるが、それらが満足に得られないという結果となり、雇用主から見捨てられた状態の結果として、束縛は受けないが自立もできないのである。あるいは満足にサポートが得られないながらもそれに依存していくという状態が生じるのである。


おそらく8室に在住惑星がある場合、それが吉星ならば、

①パートナー、契約相手のサポートに恵まれ、それらが十分に得られる結果、自立に導かれるのであり、

もし8室に在住するのが、凶星ならば、②パートナー、契約相手のサポートに依存的で期待するという性格となり、然し、それらが満足に得られない結果、不安定で自立することが出来ないのである。あるいは満足に得られないながらもそれに依存していくという状態が生じるのである。

従って、満足のいく給料を支払ってくれる雇用主を求めて、会社から会社へと転々とするサラリーマンのようになってしまうのである。あるいは理想の相手を求めて男性から男性へと綱渡りをしていく独身女性のようになってしまうのである。


もし、8室に在住する惑星がなく、然し、8室の支配星が傷ついている場合は、

パートナーやパートナーのお金に恵まれないが、期待もしておらず、


もしその上で仕事の10室やアルタハウスなどが強ければ、自立して、

仕事に生きるような人生傾向を帯びるのではないかと思われる。


人のサポートを受けるということは、依存ではなく、また自立の反対概念でもない。


自立というのは人の肯定的なサポートを受けられる人に生じる状態であり、

人の肯定的なサポートが受けられない状態、サポートの不足状態が依存である。


然し、人の肯定的なサポートを受けられるのは、それだけ、人をサポートしているからである。

従って、自立とは人をサポートした人に与えられる状態である。


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上記の言及はあくまで仮説ですので、実際に機能しているかどうかは、
更に検証が必要です。秀吉


(参考文献)
「個人事業・自由業者のための会社をつくるメリット・デメリット ほんとうのところズバリ!」すばる舎 井上修著


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