パラマハンサ・ヨガナンダの伝記映画『永遠のヨギー~ヨガをめぐる奇跡の旅』(原題『AWAKE:The Life of Yogananda』)の評判がいいので、最近、渋谷のユーロスペースという映画館に行って見て来た。昼間の上映であったが、映画館の待合室は込み入っており、座席は若干の空席を残してほぼ満員の状態であった。大変な評判である。会場の人の会話では見に来たのが4回目という人もいたようである。
映画を見て改めて分かったことは、パラマハンサ・ヨガナンダは、インドのヨガの教えを、射手座の成功哲学のように教えたということである。
アメリカに渡ってヨガを広めたというのも、故郷を離れて遠い異国の地に旅立つという射手座の象意そのものである。
射手座はナチュラルゾーディアックで9室目であり、遠距離旅行という象意を持っているからである。
アストロデータバンクにある出生データでヨガナンダのチャートを作成すると、ラグナと月が獅子座マガーで、ラグナロードの太陽と水星が射手座に在住している。
映画の中で、ヨガナンダはアメリカでは人が訪れるのを待っているのではなく、自ら講演録を多方面に郵送して、当時としては画期的なダイレクトレスポンスマーケティングを行っていたというのである。
この場面を見て、なるほど、パラマハンサ・ヨガナンダは、射手座の成功哲学好きな営業マンのようなプロモーションを行なったのだと納得したのである。
それはビジネスの表示体である水星と太陽が射手座5室に在住している為である。
例えば、獅子座ラグナで、射手座5室に金星、木星、太陽が在住する村上春樹もアメリカ文学を好んで、よく翻訳しているが、射手座は、精神的な幸福の追求には必ず物質的な繁栄の追求が伴う成功哲学の表示体である。
村上春樹が最も好きな作品は、フィッツジェラルドの「華麗なるギャツビー」である。
昔の恋愛相手のことが忘れられない富豪が恋人と再会するために毎晩のように派手で贅沢なパーティーを行なうというストーリーである。
また1997年当時、アイドルだった田村英里子が、射手座に在住するマハダシャー木星期(木星/木星)になった途端に「自己実現への道」というアメリカの心理学者が書いた自己啓発の本を読んで、インスパイアされ、木星/土星期に留学のため、アメリカに渡米して、やがてハリウッドで女優としてデビューしている。
以前、田村英里子の経歴を調べていて、そのことについて何度か言及しているが、射手座は成功哲学と関係があるということは当時から考えていた。
そして、大きな書店の自己啓発のコーナーに行けば、ナポレオン・ヒルから始まって、カーネギーの「人を動かす」「道は開ける」といった本など、ほとんどの成功哲学がアメリカの物質的に富を築いた成功した実業家が書いた本である。
アリス・ベイリーの著作の中にも射手座という星座は「物質的である」という評価が為されているが、射手座の表現というものは、やや物質的なのである。
射手座は物質的な繁栄を目指し、またそれを獲得する星座である。
従って、パラマハンサ・ヨガナンダの教えも、精神世界に関する成功哲学としてアメリカ人たちに受け入れられたのである。
従って、映画の中でも言及していたが、当時、ヨガナンダの講演内容は、アメリカ人が喜びそうな自己啓発的なノウハウなど多岐に渡っていたようである。
ヨガナンダの弟子の一人に成功した実業家の石油王ジェームス・リン氏がいるが、「幸福はお金で買えると思っていたが、そうではなかった」といったことを述べている。
つまり、物質的に成功した人が更に精神的な幸福も獲得したいというのが成功哲学である。
東洋のように啓明を得るために物質的なものや家族など全てを捨てるようなことがあるなら、アメリカ人には受け入れられない。
このようにパラマハンサ・ヨガナンダの教えは、成功哲学的であったが為にアメリカ人たちに受け入れやすかったと思われる。
ヨガナンダが広めたヨガの教えは、ハリウッドのセレブなどに浸透し、今では日本の各地の駅前にもヨガスクールが出来て、一つの流行のようになっている。
おそらく、冥王星が射手座を通過していることによって、成功哲学の大衆化が起こっており、それと同時に高度なヨガの教えが、成功哲学の大衆化と共に一般に広く普及した結果ではないかと思われる。
ロバート・キヨサキの本とか、そうしたベストセラーを生み出したのはこうした成功哲学の大衆化現象である。
ヨガスクールで1年程度、ヨガを習った人が直ぐにヨガの先生として教え出すといった商業化されたヨガブームは、まさにパラマハンサ・ヨガナンダのアメリカでの活動が始まりだったのだとよく分かった。
このヨガナンダの教えがアメリカに伝えられたことによって、ヨガの商業化が始まったのである。
その為に大衆に幅広く普及することになった。
商業化とは、お金を対価にしてサービスを提供するということである。そしてそれをシステム化するということである。
それはアメリカ人の得意分野であり、市場化や商業化が得意である。何でもビジネスにしてしまう。
例えば、私も参加したことがあるが、自己啓発の数日間の研修パッケージなど、非常に洗練された商品である。
そこで、ハリウッドのセレブから始まったヨガブームに資本が目を付けて、ヨガブームが普及したのである。
然し、商業化することによって、大衆に普及するが、それと共に高度な教えの質の劣化も始まるのである。
従って、今では、巷にはヨガの先生があふれているが、本物のヨガの教師に会うことは難しくなっているのである。
先日、ある人と会ったのだが、そのようなことを嘆いていた。それについては別の記事で書いてみたい。
おそらくジョーティッシュに関しても私が知った2002年の段階では、まだ趣味でやっている人たちが仲間と知識を共有し合って楽しんでいるといったレベルであったが、こちらもヨガと同じように商業化が進んできている。(私もそのプレーヤーの一人か?)
ヨガほど簡単でないので商業化が難しいのであるが、然し、それでもヨガと同じような流れにあると考えられる。
ヨガナンダのチャートに戻るが、スワミ・シュリ・ユクテスワと出会ったのが、1910年の金星/木星期である。
マハダシャーの金星は5室支配の木星からアスペクトされており、木星は5室の支配星である。
また木星は5室支配で8室で自室に在住し、9室支配の火星と接合している。
ナヴァムシャで、木星と金星は9室(師匠)に在住している。
出生図で5室支配の木星と9室支配の火星が8室に在住しているが、8室はヨーガのハウスである。
8室はシッディや生命力、クンダリーニ、微細な身体のエネルギーなども表し、それらを扱う科学のことである。
ヨガナンダも脊髄の中に神がいるといった風にしてヨガを教えていたようである。
ヨガを実践する人のほとんどが8室が強調されている。
パラマハンサ・ヨガナンダの場合も8室に5室支配の木星とヨーガカラカの火星が在住していることで、非常にヨガの才能に恵まれていたことを表している。
そして、木星はグルの表示体であり、9室支配の火星もそうである。
それが8室に在住することによって、パラマハンサ・ヨガナンダは、グルであるシュリ・ユクテスワと寝食を共にして厳しく訓練され、育てられている。
このように師匠との関係が密になるのが、9室と8室の絡みである。
そして、1915年7月にグルからイニシェ―ションを受けているが、8室と9室の絡みは、グルからイニシェ―ションを受ける配置である。グルと弟子の関係が非常に密接になる一つの儀式である。
金星/水星期にイニシェ―ションを受けており、金星から見ると水星は8室の支配星である。
ヨガナンダがシュリ・ユクテスワと出会った時の様子が印象的である。
グルを求めていたヨガナンダが、ふと振り返るとそこにユクテスワが立っていたのであるが、夢に見たその人であり、またユクテスワは待っていたと伝えた。
この強い因縁、そして、出会ったが最後、補足されて、完全にグルの管理下に入るかのような強烈で決定的な出会いというものは、8室の木星、そして、8室に在住する9室支配の火星の象意ではないかと思うのである。
インドのグルから弟子へ継承される知識、いわゆるパランパラは、こうしたグルと弟子の密接な関係によって伝えられていくが、この関係においては、おそらく8室が強調されていると思うのである。
従って、つまり、パランパラとは、グルから弟子への知識の相続(8室)という意味があることが分かる。
そして、この過程において2-8の軸が強調されるということは、伝統社会とか家族的なつながりの中で、教えは継承されていくということなのである。
最近では、出版やインターネットの普及などによって、教育のやり方が変化しており、人は書物を通じて学ぶことを求められる。
そして、それで書物から学んで、それで自己努力で知識を得てしまうという場合も少なくない。
それが現代の教育であり、家族とか伝統社会とかそうした封建的な関係の束縛が希薄である。
然し、究極的な知識は、こうした家族的なパランパラの中で継承されると考えられる。
家族的なつながりを築いた相手に継承するのであって、寝食を共にして、家族のようになった相手に知識を伝えるのである。
決して、どこの馬の骨か分からない他人には継承しないのである。
それはパランパラにおいては、2-8の軸が強調されるからである。
つまり、パランパラというのは、伝統社会(2-8軸)の習慣であることが分かる。
他にヨガナンダは1920年8月20日の太陽/木星期にアメリカに渡っている。
ラグナロードの太陽は5室(弟子)に在住し、木星は5室(弟子)支配で8室に在住し、12室(海外)にアスペクトしている。
太陽は12室支配の月のディスポジターであり、また12室にアスペクトする木星は太陽のディスポジターである。
マハダシャー太陽期、そして、12室支配でラグナに在住するマハダシャー月期を通して、アメリカでヨガを指導したと理解することが出来る。
ヨガナンダがアメリカに渡ると、弟子たちの寄付や石油王ジェームス・リン氏がパトロンとなったことで、資金的な面では困らなかったようである。(因みにジェームス・リン氏が石油王であるのは、8室が水の星座だからである⇒石油は液体を表すため)
これは5室支配の木星が8室(不労所得)で自室に在住しているからである。
またヨガナンダの映画を見ていて、ヨガナンダをサポートしたインド時代からの仲間(名前忘れた)が、アメリカ人女性にヨガの個人レッスンをしたことが、夫に誤解されて暴力事件に発展したことがあり、それがきっかけで、その仲間は、ヨガナンダとは別の団体を作って、分離独立してしまうようなことがあった。
またヨガナンダが、アメリカ人の夫人たちを惑わしているということで、色々非難、中傷を受けたようである。
これは、5室支配の木星が8室に在住し、火星と接合して、6、7室支配の土星からアスペクトされているからである。
弟子との関係でトラブルが生じてしまうのである。
また10室支配の金星が6、7室支配の土星からアスペクトされているため、ヨガナンダのアメリカでの活動はこのような誤解から中断を余儀なくされたり、色々障害に直面している。
パラマハンサ・ヨガナンダのような聖者であっても、出生図の惑星配置が示す、特定のカルマの結果を被ることがよく分かる。
最後にヨガナンダの師匠であるシュリ・ユクテスワのチャートである。
牡羊座のバラニーに惑星集中していることが注目される。
シュリ・ユクテスワのチャートで水瓶座に月と木星が在住しているが、これはパラマハンサ・ヨガナンダのナヴァムシャの9室に在住する木星や金星に対応していると考えられる。
『永遠のヨギー~ヨガをめぐる奇跡の旅』では、このシュリ・ユクテスワとの出会いのエピソードや、ヨガナンダがアメリカから帰国した時のユクテスワとの再会などの感動の場面について触れられており、またアメリカでの活動の実際が、当時の資料などに合わせて提示されており、ヨガナンダの経歴を知る上では、非常に参考になった。
またヨガナンダのラグナが獅子座ラグナということで納得できる内容であった。
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