8月7日、8日と癒しフェアに参加したが、
15分や30分の短い時間の中で、
依頼者に参考となる話をして満足してもらう
ことを訓練する場として非常に有益な機会であった。
鑑定とは依頼者との真剣勝負であり、制限時間内で、
依頼者を満足させなければならない戦いとも言えるのである。
そうした中で最も試練となる手ごわいケースは、
出生時間が分からない場合であるが、
「確か○○時だったような気がする」とか、
「時間は分からないが朝だったと聞いている」とか、
「○時だと思うが、午前中か午後か分からない」と言ったように
単に母子手帳に書いてある出生時間が曖昧で信用できないとか、
母親の記憶が曖昧で信用できないといったようなレベルを超えて、
ほとんど出生時間が分からないというケースである。
その場合、月(チャンドラ)をラグナとして鑑定を行ないますと説明して、鑑定を始めるのだが、チャンドララグナでは、こちらが言ったことがあまり当たっていないことが多いのである。
それで当たらないのでだんだん依頼者が不審な顔つきになり、
あるいは不満そうな顔つきになってくるのが分かるのである。
そうすると、鑑定する側としては焦り出し、
実際のラグナを割り出さざるを得なくなるのである。
そこで、矢継ぎ早に多くの質問をして、情報収集をするのであるが、
この場合、出来事や事実の詳細まで収集することは出来ないので、
基本的な事実や大きな出来事をなるべく数多く収集することが大事である。
例えば、子供がいるとか、兄弟がいるとか、結婚しているとか、仕事の内容とかである。
そこで、一応、相手が申告してきた出生時間の前後に2ハウスぐらい
ラグナがずれている可能性があるものとして、全部で5つぐらいのラグナを順々に想定しながら、いろいろ質問をしていくのである。
その時、ダシャーの変わり目なども意識しながら、その前後の時期に何か大きな変化があったかどうかなども聞くのである。
出生時間がずれていたとしてもマハダシャーのずれは前後に
2~3年ぐらいではないかと想定しながら、話を聞いていくのである。
そうしたことを聞きながら、その目の前には依頼者が座っているのであるが、依頼者の容姿や雰囲気などの特徴から、ラグナのだいたいの見当をつけるのである。
例えば、牡羊座だったら、筋肉質で顔つきも骨ばっていていかめしかったり、天秤座だったら美形で柔和だったり、あるいは、服装も渋谷などを歩いているようなカジュアルで軽い感じの服装かどうか、あるいは山羊座だったら、小柄で骨太で雰囲気に土星の重たい印象があり、よく働きそうな雰囲気があるかどうかなど、今までの経験から、だいたいのラグナの特徴を感じ取るのである。
そうしたことを同時並行で進めていって、おそらくこのラグナではないかと見当づけて、いろいろ言及したことが、依頼者の事実と複数合致し始める瞬間があるのである。
その時、マハダシャーの変わり目に起こった出来事を予想して言及し、
事実関係について確認すると、依頼者の事実と一致していることが確認できたりするのである。
この辺りから、ラグナの特定に成功したのではないかと思い始めるのであるが、あるいは、ラグナのだいたいの見当をつけて、依頼者に質問をして試している段階で、ダブルトランジットによって起こった出来事を確認するのである。
このダブルトランジットによって依頼者に起こってきた出来事を確認することこそが、最も重要なステップである。
つまり、ラグナの特定とはダブルトランジットによって行なうのである。
例えば、今現在で言えば、直近で木星が水瓶座から魚座に移動した2010年4月、5月付近が、ダブルトランジットが変化した時期である。
2010年4月、5月付近から魚座、乙女座、蠍座にダブルトランジットが生じているのである。
従って、4月、5月付近から、想定したラグナにとって、何が起こりそうであるかを推測し、それを依頼者に質問としてぶつけてみるのである。
例えば、射手座ラグナであれば、その時期辺りから仕事が責任が重くなって、重くなった一方で、ある意味、昇進ともいえるような職場での立場上の変化があったかどうか・・・というような質問をぶつけるのである。
ダブルトランジットを研究したことのある人なら分かると思うが、
ダブルトランジットの変化とは、ダブルトランジットの変化が生じるタイミングで、誰にとっても明白に意識され、体験され、記憶される、ある出来事の体験となっていることが多いのである。
実際、物事とは、ダブルトランジットの変化のタイミングで起こると言ってしまってもよいかもしれない。
出来事の時期がダブルトランジットで分かるのではなく、ダブルトランジットの変化によって、出来事が引き起こされているのである。
射手座ラグナの人に上記質問をぶつけてみると、もしそれが本当であれば、「そうです。5月から急に仕事で責任が重くなりました。何故、分かるんですか?」というような回答があるのである。
このダブルトランジットの変化が生じるタイミングで起こった出来事の予想が、依頼者の経験、事実と一致していたこの瞬間こそが、ラグナを確信する瞬間である。
例えば、牡羊座ラグナや天秤座ラグナであれば、この5月以降に対人関係上の問題、意思疎通のすれ違い、辞任、退社、消耗、出費などを経験していたり、獅子座であれば、突然の仕事の中断、失業保険、雇用主との関係の悩みなどを抱えていたりするのである。
火の星座がラグナの人にとっては、現在、水の星座の2つにダブルトランジットが生じている今現在は、困難が多い時期である。
射手座ラグナの場合は仕事上の責任が大きくなり、昇進するが、12室にもダブルトランジットが生じているので、背後から足を引っぱられたり、すくわれたりして、多大な消耗や損失感がある時期である。(これは総理大臣に就任した民主党・管直人の状況に合致する)
逆に水の星座のラグナの人にとっては、1、5、9室のトリコーナにダブルトランジットが形成されるので、抜群に調子がいい時期である。
癒しフェアに来場していた人たちというのは、基本的には「癒し」というネーミング通り、ヒーリングやチャネリングとか、スピリチャル的なセッションに関心の高い人たちであり、水の象意の人たちが多かったのだと思われるが、その人たちが会場に来場して学んだり楽しんで帰るのであるから、5室や9室の象意を経験して帰っていく今回の来場者は皆、水のラグナ、あるいは水の星座に月や太陽、惑星が在住している人たちではないかと思われる。
あるいは癒しフェアでは自然食品や健康グッズ、スピリチャル系のアロマオイルなど物販も多かった為、土の星座のラグナの人も多かったと思われる。土の星座の人たちにとっては3室や7室や11室などのカーマハウス(消費)へのダブルトランジットが形成されて物品の消費に結びついたはずである。
土と水は女性星座のエレメントであるから、まさに今回の癒しフェアのキャッチコピー「一般の女性のために多くの癒しの”商品”“商材”“サービス”“概念”等を広く知っていただき・・・」というのは本当である。
依頼者の男性で出生時間が分からない方がいたが、私が複数の質問から、牡羊座ラグナであることを特定したのだが、現在が厳しく辛い時期であることの理由を共感をもって解説した途端に、現在、仕事上で契約先との間で問題が生じて大変な目にあっているという辛い状況について告白してくれた方がいた。
その方は現在の辛い状況が理解されたことが嬉しかった様子で、
現在の辛い時期が終わるタイミングなども解説したので鑑定に大変満足されたようであった。
今、辛い時期にあるのは火の星座のラグナの人たちである。
因みに私に関して言えば、ラグナは牡羊座で火の星座であるが、月、太陽、ラグナロードの火星は、水の星座に在住しているので、今は、両方の影響が出ている時期である。
今回、私が癒しフェアに出展して、一参加者として、イベントのコンテンツを創る役割を担えたのは、月、太陽から5室、9室にダブルトランジットという水の象意のよい影響を経験する時期だからである。
このようなことが頭に入っていると、現在の状況(幸福、不幸)を聞き取り調査し、ダブルトランジットのハウスを確認することによって、ラグナの可能性が絞り込めるのである。
あるいは、ラグナが分かっているのであれば、現在が幸福か不幸かを割り出すことは比較的容易である。
このダブルトランジットが重要であることは何度言っても言い足りないのであるが、
例えば、5室⇒6室⇒7室⇒8室⇒9室というハウスの順列を考えてみると、
その吉凶は、吉⇒凶⇒吉⇒凶⇒吉という順番で、全く幸福と不幸という正反対の事象が交互に切り替わるのである。
そうすると、例えばラグナが天秤座か蠍座かどちらかを特定しようとする際に、現在は魚座にダブルトランジットが生じているため、蠍座だったら、現在は子供とか学習(セミナー、イベント)、娯楽といった象意において幸福な時期であるが、天秤座だったら、現在は離婚、訴訟、負債という象意において不幸な時期である。
ラグナを天秤座か蠍座か特定する際に5室と6室の象意の吉凶の違い(幸、不幸の違い)というのは明白に出るので間違いようがないのである。
あるいはこういうケースがあったのであるが、例えば、出力したチャートは射手座ラグナだったが、射手座か蠍座か微妙であり、その依頼者は外見と振る舞いは蠍座の雰囲気を漂わせていた。
そこで私は蠍座ラグナの可能性があると思いつつも、射手座ラグナのアウトドア的で活動的な象意を言ってみたところ、それはよく依頼者の性格の事実と合致していた。
然し、現在のダブルトランジットから、5月頃から仕事上で責任が重くなり、昇進に結びついたが、仕事の量が多くなって大変であるかと聞いたところ、「そうである」とのことであった。
そこで、現在のダシャーを見ると、現在は、マハダシャー土星期で、土星は蠍座に在住していたのである。
それで蠍座の土星のマハダシャーだったので、依頼者は蠍座の雰囲気や外見を備えていたのである。
依頼者は現在、2、3室支配の土星が12室に在住するマハダシャー土星期の終わりにあり、その12室の土星にダブルトランジットが形成されているため、現在、仕事上の消耗をいつも以上に感じていたのである。一方で、10室にもダブルトランジットが形成され、土星がトランジットしているので仕事上の責任が重くなって昇進ともいえる状況になっていたが、消耗や出費を感じているようであった。
そこで、次のマハダシャー水星期になると、過去の裏方や下働きが多く、評価されにくい時期が終わり、仕事上でブレークし、創造的な活動が出来るということを告げることとなった。水星は10室の支配星で9室支配の太陽と5室で接合しており、ブレイクは間違いなかった。
ダシャーが変わると、性格や外見や着ている服装までが変わるというのは本当である。
例えば私はかつてケート期には比較的地味な服装をしていて、ウパチャヤ凶星の独特な、無口で、愛想が悪く、雑草のような性格をしており、オフィスにも行けるような綿のスラックスをはいていたが、獅子座に在住する金星期の今は、ハートマークのエンブレムの付いている黒いTシャツに、膝の所に穴の開いたGパンなどをはいている。(随分と獅子座っぽい服装になってしまったものだ)
このように依頼者を前にしながら、事実関係を収集し、服装や外見的な特徴などにも注目しながら、ラグナがどこであるかを頭の中で、ラグナを変えながら、惑星が在住するハウスやハウス同士、惑星とハウス、惑星と惑星の絡みを検討していくのであるが、ラグナが完全に特定できるまでは全ての情報や材料を可能性として中立状態に保持しておき、結論は出さないで置くのである。
そして、ダブルトランジットなどの重要なステップの検討によって最終的にラグナに関する結論を出すのである。
上記のプロセスは、全く並列処理的に思考の中で、検討していくのである。
苫米地英人氏の『心の操縦術』(PHP研究所)という本の中で、思考の並列処理と直列処理の違いについて説明してあったが、その説明を借りると、直列処理というのは、処理A⇒処理B⇒処理Cといったように処理Aが終わって初めて、次の処理Bに進み、処理Bが終わると、処理Cに移るといった計算のプロセスである。そして、そうした直線的に処理によって回答を導き出すプロセスである。
然し、並列処理とは、処理Aが完了しなくても、処理Bに進むのであり、処理Bが完了しなくても次の処理Cに進むのである。そうして情報や手がかりが保持されたまま、最終的に全ての可能性や手がかりを解決する解が導き指されるのである。その間、処理A、処理B、処理Cというものは、解が導き出されるまでは、保留とされ、保持されたままの状態となって、中立的に保たれるのである。
これが並列処理である。
従って、私はこの説明を読んだ時、ジョーティッシュでラグナを特定するプロセスとは、まさに、高度な並列処理を伴うプロセスであると理解したのである。
最後の最後の段階まで答えは出ないが、その間に蓄積したデータは全て保持して材料として記憶していなければならないのである。
今回、癒しフェアに参加して、出生時間が分からない人が頻繁に訪れ、ラグナを特定することが否応なしに要求され、そして、それをクリアすることが鑑定の山場であり、醍醐味でもあったため、ジョーティッシュにおいては実際の対面鑑定の場におけるラグナ特定こそが、今まで蓄積して来たジョーティッシュの入門知識、基本知識を試す試験場であると思うのである。
そうすると対面鑑定で必要な技術は、実際に目の前にある出生チャートとは別に、ラグナを変えた別のチャートが頭の中で描けなければならないのである。
そうしたことを瞬時に行なう能力である。これはある程度、練習、訓練によって習得可能である。
(私の場合、出生時間が分からない有名人鑑定をしたり、ラグナを検討するプロセスを占星コラムに書いたりしていることが訓練となり、ラグナ特定の手順について、だいぶ慣れてきた感じである。これは能力というよりも、何度も同じプロセスを実践して練習し慣れることが大事なのではないかと思われる。)
ジョーティッシュにおける対面鑑定とは将棋やチェスと同じであり、碁盤の上の駒を頭の中で、動かして、何手先を読んだりとか、あるいは、何十手先を読んだりすることと同じである。
そういった意味で、ラオ先生が若い時にチェスのチャンピオンであったというのは、この事実を説明するものである。
12ハウスが碁盤のようなものであり、頭の中に12ハウスを思い浮かべて、ラグナや惑星を将棋の駒のように動かして、それで何パターンもの出来事の象意や吉凶を検討するのである。
癒しフェアで経験したことはあたかも依頼者と相対して、将棋の対戦をしているかのような体感である。一種のスポーツ競技であり、依頼者との対戦なのである。
こちらが言うことが当たっていなくて、依頼者が不審な顔をしたり、不満な顔になって、最後に納得しない顔つきで、帰っていくようであればそれは負けを意味している。
一方、依頼者が満面の笑みを浮かべて自分の現在の状況を理解してくれた鑑定師に感謝し、これからの状況の予測に期待と希望を抱きつつ、家路に着くとき、それは対面鑑定における勝利を意味しているのである。
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