いつもながらハリウッドの教育啓蒙映画であることが見て直ぐに分かった。
興行師P・T・バーナムの成功を描くミュージカル映画だが、ヒュージャックマンが小人症の男や大男、髭の濃い女、全身刺青の男、結合双生児の兄弟など世間から隠れるようにして生きている人々を雇って、サーカス団を結成し、成功したり、挫折したりする物語である。
その中で、貧富による差別、人種差別や普通と違うことに対する差別、そうした差別を乗り越えて結ばれる男女の恋愛、差別を乗り越えて培われる家族愛や夫婦愛と疑惑など様々なテーマが描かれる。
この映画の中で、ハリウッドのスポンサーが伝えたいメッセージは、人と変わっていること(個性)への差別を止めて、様々な違い、個性を認め、人類が家族として協力し和合しようというメッセージである。
こうした多様性と統合というテーマは、水瓶座の理念であり、理想であることは明らかである。
ハリウッドの最近の映画を見ると、人種差別や貧富の格差、環境問題、性的マイノリティーの差別問題といった課題に正しい回答を与えようとする啓蒙教育映画が多くなっているのが分かる。
特にドナルド・トランプ大統領が当選し、世界的に右翼傾向が強まっている現在、これに危機感を持って、リベラル左翼的な理念、理想を負けずに示そうとする意図が感じられる。
天王星が牡羊座に入室して、反グローバリズム、保護主義(例えば、アメリカファースト、高い関税を掛けあうこと)など右翼的な傾向が世界に広がっているが、現在、土星と木星が水瓶座と双子座にダブルトランジットしているため、リベラル左翼的な力も負けずに強く発現しているのである。
こうした映画が示す理想主義は確かに素晴らしいもので、美しく純粋であるが、かなり頑張り過ぎている印象は拭えない。
このかなり頑張って理想を伝えないといけない状況というものが、逆にこの反対である偏狭な民族主義、国家主義、個人主義、そうしたものに基づいた差別が根強く存在することを露呈しているのである。
人間の中に潜む自分と他人を区別し、差別する意識や、自分の利益や幸福を第一に優先して追求する本能などは、かなり自然なものであり、物質的な人間、動物的な人間としての惰性の自然な姿である。
然し、理想を追求する場合は、理性を用いて常に張りつめて緊張し、闘わなければならない。
その頑張りや闘争が、あまりにも現実と乖離していると、人は疲労したり、挫折したりする。
そして、保守に回帰するのである。
例えば、リベラル左翼の牙城であるハーバード大学などでも皆、口々にアフリカ系アメリカ人の差別はいけないと口に出して唱えるが、差別は根強く残っているそうだ。
日本人でアジアやアフリカ系の人と結婚しようとする場合、家族や親戚の人から反対を受けたりして、挫折するケースなどもある。
理想は口で唱えるのは簡単だが、実際に現実に行動し、それを生きることは口で唱えるほど簡単ではない。
理想が実現していくのはゆっくりとしたプロセスである。
グローバリゼーションは、金融資本家が世界で莫大な利益を上げる帝国主義の側面もあるが、確かに世界経済が一つになって、物やサービスが世界に飛び交い、人も世界を行き来するようになると、世界を一体化の方向に導いてきたことは確かである。
アフリカ系アメリカ人が沢山、アメリカに奴隷として連れてこられた黒い歴史も含め、ヨーロッパからも多くの移民がアメリカに訪れ、多くの人種が共存し、融合する壮大な実験は、アメリカで行われてきたと言える。
こうしたグローバリゼーションは、大航海時代、そして、大国の植民地争奪合戦などの帝国主義時代に引き続いて、有無を言わさない経済活動として、実現されて来たと言える。
経済のグローバリゼーションが進んだ結果、人や物、サービスが世界を飛び交い、文化や人種の融合も起こってきたのである。
アメリカのハリウッドは映画に様々な人種を登場させる。
特に最近は、スターウォーズ最新作にベトナム系アメリカ人の女優が出演したようだが、彼女に対する人種差別的中傷も相当あったようである。
「スター・ウォーズ」初のアジア系女優に対し、執拗なバッシング続き、SNSの写真をすべて削除する事態へ 2018年6月6日 TVグルーブ 2017年に公開された「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」にてローズ役を演じたアジア系女優のケリー・マリー・トランが、ファンからやがらせをうけインスタグラムの写真を全て削除した。 ケリー・マリー・トランはベトナムから移住してきた両親のもとに生まれた、ベトナム系アメリカ人女優。「スター・ウォーズ」シリーズにおいて、有色人種の女優として初めてメジャーな役どころに抜擢された。 しかしVOXなどが伝えたところによると「最後のジェダイ」でのローズというキャラクターや、ケリー自身の人種が気に入らないというスター・ウォーズのファンは、彼女のインスタグラムに批判的なコメントを何か月にも渡り投稿 。なんとケリーの誕生日にまで「最悪のキャラクター」「価値のないキャラ。ジャー・ジャー・ビンクスの方が全然まし」などと、心無いコメントが多数寄せられたという。 さらに「ウィキペディア」のスター・ウォーズ版ともいえる「ウーキーぺディア」には「チン・チョン・ウィン・トン(アジア人に対する差別的呼び方)はディズニーが作ったクソキャラ。頭が悪く、知能遅れ、自閉症っぽくてフィ ンに恋をしている。どうしょうもないビッチだから、昏睡状態になって死ぬべき」と、悪質極まりない内容が差別的なファンによって投稿されていた。 ネット上のいやがらせを受けていたにも関わらず、ケリーは全て削除する前にはポジティブな投稿ばかりをしていた。とあるときは「長い間SNSは避けていたの。いやがらせを受けるのが怖いから」「私は未完成で、完璧じゃなく、 全然ちゃんとしてないけど、“完璧じゃなくても大丈夫よ”ということをみんなに伝えたいわ」と、メッセージを送っていた。 ケリーが写真を削除したのは、この嫌がらせが直接の原因かどうかは明確ではない。アカウント事態は未だに残っているため、ケリーのSNSへのカムバックを願うファンももちろん多くいる。 |
ハリウッド映画では華々しく理想が語られているが、現実とのギャップも又大きいのである。
理想として描いた世界はまだ現実のものではない。
『グレイテストショーマン』は立派な理想を描いたが、そもそもそこに登場するアフリカ系アメリカ人はアフリカから奴隷貿易で連れてこられたことを忘れることは出来ない。
結合双生児の兄弟も出て来るが、アメリカがベトナム戦争で枯葉剤を散布して、こうした結合双生児を生み出したことも忘れることは出来ない。
またヨーロッパやアジアからの移民やマイノリティーをアメリカの支配者階級が労働力として、税金の徴収先としてしっかりと管理してきた歴史もある。
そして、ハリウッドを所有しているのは、まさにグローバリゼーションの恩恵を受けて来た人々である。
グローバリゼーションを推進する多国籍企業が生み出した貧富の格差ということに鈍感な人々である。
人間の人種や性別、個性の違いを乗り越えて一つになるという理想を唱える割には、経済的格差には鈍感である。
ハリウッド自身が、同じグローバリゼーションによって成功した人々だからである。
資本家と労働者の賃金格差といった問題を描きたがらない。
だから何故、アメリカ国内でドナルド・トランプが白人労働者階級から支持を受けたかということが理解出来ない。
だからドナルド・トランプが大統領に就任して動揺し、狼狽えたのである。
結局、ヒュー・ジャックマン主演の『グレイテストショーマン』とはどんな映画かといえば、幼い頃、貧困を経験したP・T・バーナム(ヒュー・ジャックマン)が沈没した船の登録証を使って、10000ドルの資本を得て、資本家になり、多くの変わった人々、奇人変人を集めて、それで、割の良いビジネスを展開して成功し、大邸宅を手に入れたという成功物語である。
このヒュー・ジャックマンが演じる主人公は、アメリカの資本家を象徴している。
この資本家が、新天地アメリカで、ビジネスを操業して、それをアフリカ系アメリカ人や社会の表に出て来れない人々を見世物にして大成功したのである。
資本家である興行師P・T・バーナムが、パートナーのフィリップを勧誘し、取り分10%で承諾する場面があるが、パートナーのフィリップでさえ10%であるなら、サーカスの団員たちの給与は、もっと低いに違いないのである。
例えば、ハリウッドは脚本家の労働組合から、賃金上昇を要求する労働運動を起こされている。(あまり賃金を支払わない体質のようである)
こうしたハリウッドの価値観から考えると、興行師P・T・バーナムがサーカス団員に支払う給料は、非常に少ないに違いない。
もっと言うならば、ハリウッドはユダヤ系金融資本の所有物である。
このユダヤ系金融資本が、アメリカの権利なき労働者を使って、莫大な富を得たというアメリカの成功物語が、この映画で描かれているのである。
社会から阻害されてきた人々が一体となって幸福を掴むという理想を描いてはいるのだが、その中心で、経済的な成功を掴んでいるのは、ヒュージャックマン扮する新興の資本家なのである。
それは、上流階級(貴族、旧勢力)など封建的諸勢力を打ち破って、台頭してきた新興のビジネスマン、すなわち、アメリカに渡って成功した銀行家やビジネスマンなどである。
またこの作品では人々が多様性の元に一体となる水瓶座の世界を描いてはいるのだが、水瓶座を考える時に対向にある獅子座を一緒に考えなければならないのである。
つまり、水瓶座-獅子座軸ということで考えなければならない。
新しく生まれる社会は、水瓶座-獅子座軸の社会である。
そうすると、ヒュージャックマン扮する興行師P・T・バーナムは、資本家であり、獅子座を象徴しているのである。
つまり、水瓶座の時代というのは、大勢の個性あふれる人々と、それを管理支配する獅子座という登場人物で構成されるのである。
確かにそれらの登場人物は一体化してはいるが、大勢の個性あふれる大衆と、それを管理する一部のエリート資本家という形で決定的に役割分担が為されている。
現在の社会を見ても、資本家の力が衰える兆しは全くなく、資本家は、人工知能で自動化されていく新しい社会の推進者であり、まさに新しい社会の創造主である。
労働者が勝利する社会などは来そうにもないのが現実である。
水瓶座と言えば、リベラル左翼の星座で、共産主義の星座であるが、『グレイテストショーマン』は、個性ある人々が一体となる物語ではあるが、資本主義礼賛の物語でもある。
映画の中では、ヒュージャックマン扮する興行師P・T・バーナムが、サーカス団員にどれくらいの給料を支払ったかは出てこない。
しかし、wikipediaで、P・T・バーナムを調べると、『バーナムは、商店主として出発したが、当時アメリカで猖獗を極めていた宝くじブームに浮かれ、事業に失敗する』と記されている。
また『1835年に、ジョージ・ワシントンの元乳母で160歳を超えているとの評判があった黒人奴隷の女性、ジョイス・ヘス(Joice Heth)を買い取って見世物にすることで、興行師としての人生を始めた』と記されている。
こうした記録から推測されることは、
このP・T・バーナムは、根っからの資本家で、従業員を安くこき使うことで、荒稼ぎする山師的な人物であったような印象である。
当然、社会から阻害されて隠れて生きていたような人々であるから、賃金上昇の要求なども出来ないし、労働運動なども起こさない。
P.T.バーナムが、サーカスの興行などで、大成功し、大邸宅を得ることが出来たのは、安価な労働力があった為である。
ハリウッドは、このような人物を使って、リベラル左翼の人種、性別など様々な違いを持った個人が、和合して一体となる水瓶座の理想主義を描いたのである。
だが、ここに貧富の格差という自分たちにとって最も都合の悪い違いを乗り越えるテーマは出てこない。
ハリウッドを支配するユダヤ系金融資本家は、世界の王侯貴族の封建的諸勢力の支配を打ち破って台頭して成功を掴んだのであり、今や世界の支配者であり、オーナーである。
その人々は、自らの利益を減らして、労働者に利益を気前よく分配することを描いた社会主義的ストーリーなど作らないのである。
だからハリウッドは、低賃金や過酷な労働条件に苦しむ白人労働者階級の怒りを理解出来なかったし、トランプ台頭も理解出来なかったのである。
アメリカの歴史の中で、例えば、マーチンルーサーキング牧師の公民権運動などは本物だと思うが、ハリウッドの教育啓蒙映画は、その内容は注意深く検討し、分析しなければならない。
あまりにも美しい理想主義を声高に唱えているような内容はどこか胡散くさいと見なければならない。
何故なら、人間がもし正直であれば、自分には大抵、暗部や恥ずかしい部分、否定的な部分があり、自分を100%美化するなどということは恥ずかしくて出来ないからである。
正直な人は、必ず、自己批判もするはずである。
それがないということは、そうした自己批判に値する現実を否認して、反動形成的に自己を異常なほど美化している可能性があるのである。
どこかで自己欺瞞が働くのであり、自分の都合の悪いことを回避している可能性がある。
因みに上記でユダヤ系金融資本家(財閥)と書いたが、必ずしもユダヤ人は関係なく、ただの資本家という表現でも良いのであるが、
現実問題として、西洋の学問やフリーメーソンといった神秘主義に至るまで、世界の崇高な理想や高い価値は、ユダヤ人の文化の中から出て来ていたり、またシオニズムのような邪悪なものもユダヤ人の中から出てきている。
つまり、最善の価値あるものも最悪なものもユダヤ人から出てきているのである。
従って、アリスベイリーの著作の中では、ユダヤ人は、人類を代表し、象徴している存在であるといった記述が見られたが、それはその通りである。
従って、『ユダヤ人』と書いたのは、『人類』と書き換えてもいい訳である。
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