最近、話題となっていた『X-ミッション』という映画を見た。
オリンピックに出場するような一流アスリートたちがノーCGで、様々なジャンルのエクストリームスポーツを披露するのだが、以前、見たキャスリン・ビグロー監督の「ハートブルー」と世界観がそっくりであった。
調べて見ると実際、『ハートブルー』のリメイク/リ・イマジネーション作品のようである。
内容は完全に一致している訳ではないが、その中に流れる思想や登場人物たちの生き様が「ハートブルー」とそっくりなのである。
詳しい映画のあらすじについては、実際に映画を見て頂いた方がいいかと思うが、この映画のテーマは過酷な自然環境をエクストリーム・スポーツで制覇することによって、精神的な悟りを得るという「自己啓発」がテーマになっている。
何故、エクストリーム・スポーツの選手たちが、自ら最も厳しい人間を寄せつけない自然環境を選び出し、それにあえて挑戦しようとするのか?
それは過酷な自然に挑戦し、それを克服する過程で得られる精神的な悟り、あるいは、生きている実感を得たいからである。
それは有能なアスリートたちが持っている共通した感覚である。
何か不可能に挑戦すること自体が、深い精神的な理想と結びついている。
これらは明らかに射手座の理想主義であり、自己啓発を求めて、前人未到の記録に挑戦するアスリートたちの典型的な思想である。
スポーツを通し、肉体的な限界に挑戦することを通して、精神的な悟りに到達しようとするのである。
例えば、エベレスト山への登頂を試みたり、日頃、全く運動をしていない人が、ホノルルマラソンに挑戦しようとすることがある。
それらに共通するものは、何かそれを達成することを通して、精神的な成長(精神的な悟り)を得たいからである。
スポーツや肉体を通じての挑戦であるため、それには具体的な目標が必要である。
それがエベレスト山であり、ホノルルマラソンの完走だったりするのである。
この作品には、射手座が喜びそうなエクストリームスポーツ(Xスポーツ)が一通り登場する。
例えば、ムササビのように空を滑空するウイングスーツや、ビルからパラシュートを使って落下するベースジャンプや、大波に挑むサーフィン、岩壁を素手でよじ登るフリークライミング、雪山をスノーボードで滑り降りたり、モトクロスで、砂漠の丘陵を滑走したり、登場するXスポーツは、皆、射手座が好みそうなものばかりである。
若干、あらすじの内容にも触れると、この作品に登場する謎の犯罪者集団は、ダイヤモンドを強盗し、パラシュートで高層ビルから脱出した後は、ムンバイの街にダイヤモンドをばら撒いたり、南米上空で現金を輸送中の貨物機から現金を空にばら撒いたりするのだが、元エクストリームスポーツ界の有名人であったFBIの新米捜査官ジョニー・ユタが、犯人たちの目的が「自己啓発」であると見破るのである。
そして、謎の犯罪者集団への潜入捜査を開始する・・・・。
この謎の犯罪者集団は、自然を制覇することから更に進んで、自然と調和し、自然と一体となることで悟りを得て、自然に返すという思想を持っている。
それは人間の手から自然を開放することを意味している。
この犯罪者集団のリーダーは、かつて環境保護活動家であった「オザキ」(日本人がモデルとなっている)が、環境保護活動として捕鯨船の前で抗議活動をした際に捕鯨船の衝突を受けて死亡したのである。
その為、犯罪者集団のリーダーは、過激なテロリズムによって、実力行使することによって、人間の手から自然を力づくで取り戻すという過激な政治思想に行きついてしまったようである。
つまり、射手座の自己啓発が過激なアナーキズムな政治思想と一体化したのである。
このオザキという日本人が、考案したエクストリームスポーツの8つの難関のことを「オザキ8」と呼び、犯罪者集団は、それらを全てクリアすることが目標となってる。
そのため、次々に難攻不落の大自然を相手にしたエクストリームスポーツが登場するのである。
この「オザキ」という環境保護活動家は、その雰囲気が、ロシアのカムチャッカで大自然の写真撮影中に熊に襲われて死亡した伝説のカメラマン星野道夫氏に雰囲気が似ている人物である。
やはり、この「オザキ」という架空の人物も射手座の思想が結実したキャラクターではないかと思われる。
非常に面白いと思ったのは、この犯罪者集団のリーダーが、常に口にする自らの矜持、決まり文句がある。
それは「自分で選んだ道」というセリフである。
これは射手座の中心的な思想を表しており、「人生は自分自身の自由意志で選択している」、
そして「自分の人生は、自分の選択や自由意志で切り開く」という思想の表れである。
射手座は木星が支配星となるため、哲学的であり、特にその中でもムーラは、支配星がケートゥとなるためか、人生の生きる意味や目的を常に求めているナクシャトラである。
人間の存在の理由、人間はどこから来て何処へ行くのかといった深い哲学的な問いをいつも内に抱えているのである。
そして、おそらくこれがスポーツの3室に絡む場合にスポーツを通して悟りを得て、そのことを通して世界を救うというような壮大な理想主義的な目標を抱くのではないかと思われる。
おそらく天秤座ラグナで3室射手座に惑星が在住するとか、ラグナはどこでもいいが、3室の支配星が射手座に在住するような場合にそのような思想を持つ、アスリートが生まれるのではないかと思うのである。
因みにこの映画の元となった『ハートブルー』の監督は、キャスリン・ビグローである。
キャスリン・ビグロー監督自身が、このような射手座の自己啓発とスポーツの精神が合一した思想を持っていることが推測され、私は射手座のムーラに惑星が在住しているはずだと考えた。
早速、チャートを作成してみると、天秤座に月が在住し、月から見て9室支配の水星が射手座ムーラに在住している。
従って、結果は、私の理論通りであった。
天秤座のチャンドララグナから見て、9室(哲学、思想)が3室(スポーツ)の射手座ムーラ(哲学的、物事の根本を探究)に在住している。
3室はメディア、映像のハウスであり、従って、キャスリン・ビグロー監督はこのような思想を映画の中で表現したと理解できる。
また今回の『X-ミッション』のエリクソン・コア監督もキャスリン・ビグローの『ハートブルー』から強い影響を受けたと語っており、やはり射手座のムーラに惑星が在住しているのではないかと推測される。(※エリクソン・コア監督の出生データは不明)
キャスリン・ビグロー監督は、この『ハートブルー』の他に『ハート・ロッカー』という作品も撮っている。
イラク戦争に従軍する爆弾処理部隊の隊員である主人公が戦場の中でしか生きている実感が得られず、家庭に戻って来ても直ぐに戦場に舞い戻ってしまう姿を描いた作品である。
全く反戦映画とは異なる人間の生きる意味を問いかける作品であるが、この中にもキャスリン・ビグロー監督の射手座の思想がよく表れている。
今回見た『X-ミッション』という作品だが、原題は、『Break Point』である。日本語に訳すと「中止点」となる。
これはおそらく、射手座の崇高な理想主義と、反社会的なテロリズムとの狭間のポイントのことを指していると考えられる。
この映画では射手座の理想主義を抱きつつ、この中止点を超えてしまった犯罪者集団を描いている。
射手座には「限界を突破する」という思想があり、それは過酷な自然に立ち向かうエクストリームスポーツの精神そのものである。
私も射手座にラーフが在住しているためか、自己啓発的な考え方に接する機会があるのだが、以前、自己啓発セミナーに参加したこともある。
その自己啓発セミナーの名前が「ブレークスルー」であった。
ブレークスルーとは、行き詰まりの状況や難関や障害を突破することを意味しており、これが射手座の基本思想なのである。
そして、その思想がスポーツの分野に適用されたものが、エクストリームスポーツである。
射手座の人にとっては、不可能に思える状況や障害を自分の選択や自由意志で克服し突破していくというストーリーがたまらないようである。
映画『X-ミッション』とはそのような人たちのための映画である。
(資料)
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映画「X-ミッション」エリクソン・コア監督 有名アスリートが撮影に協力、全編がクライマックスのようなアクション大作
2016.2.19 13:15 産経ニュース
極限の技を競うエクストリームスポーツ(Xスポーツ)のアスリートによる犯罪集団と、FBIの潜入捜査官の対決を描いた「X-ミッション」が20日、全国公開される。秀作「ハートブルー」(1991年)をリメーク。サーフィンやスカイダイビングなどの有名アスリートが撮影に協力し、全編がクライマックスのような迫力に満ちたアクション大作となった。(岡本耕治)
現金を輸送する貨物機を襲撃後、スカイダイビングで逃走するなど、超人的な手口で犯行を重ねる犯罪集団が登場。元XスポーツのアスリートだったFBIの研修生、ユタ(ルーク・ブレイシー)は、彼らがXスポーツの究極の挑戦「オザキ8」を達成しようとしていることに気づく…。
エリクソン・コア監督は「ワイルド・スピード」などの撮影監督で知られる人物で、今回が2作目。電話取材に、「『ハートブルー』は強い影響を受けた作品。“再解釈”できる機会がもらえてラッキーだった」と語る。
ユタは仏沿岸の巨大な波の上で、犯人グループのリーダー、ボーディ(エドガー・ラミレス)に接触する。せり上がるエメラルドグリーンの波の途方もない質量と美しさ、そして、その中をサーフボードで滑っていく2人の技量。見たこともないような力強い映像に、思わず声がもれる。
さらに、ウイングスーツで岩場すれすれを飛行、ベネズエラの高さ980メートルの滝、エンゼルフォールを素手でよじ登るなど、雄大な自然を舞台に展開されるアスリートたちの豪快で華麗な技に見入ってしまう。
各シーンはCG(コンピューターグラフィックス)ではなく、著名アスリートたちが実演した。
「アクションというより、各スポーツのドキュメントを撮っている感覚だった。危険な撮影だったが、安全には極力、気をつけた」と振り返る。
過激な自然保護思想を持つボーディらの目的は、オザキ8の達成と環境破壊を行う企業の襲撃で、自然に敬意を表すこと。ユタはグループに潜入して極限への挑戦を繰り返す中で、彼らに連帯感を覚え、自分を見失っていく。
「自分の居場所を探すユタと、世界を変えたいというボーディの渇望はメーンテーマ。ルークとエドガーは安全ロープは付けてはいたが、非常に勇気のいる撮影をこなした。そうした体験が、彼らのせりふ一つ一つに生きているんだ」
CG映像満載の作品があふれる中、アスリートたちの本物のスタントは実に新鮮に映る。
「天気やアスリートの体力など多くの制約があり、差し迫った状況からエネルギッシュな映像が生まれる。最近の映画にはそれが足りないんだ」と語った。
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