プーチンはウクライナに侵攻するか -建国図における強いが傷ついた11室の意味-
プーチンがウクライナに侵攻するかどうかに当事国であるウクライナ及び、欧米各国に緊張が高まっている。
西側諸国も軍備をウクライナの国境付近に向けて、移動させ始めたという。
ロシアの建国図は、ソビエト連邦崩壊の際にロシア共和国が連邦から離脱し、ロシア連邦を成立させ、エリツィンが初代大統領に就任したタイミング(1990年6月12日 13:45 モスクワ)で作成したチャートがよく機能しているようである。
ソビエト連邦は、その後、1991年12月26日に崩壊している。
エリツィン政権下では、国営企業の株式を国民に証券として分配したが、それを買い集めて、国営企業を取得した「オルガリヒ」と呼ばれる新興財閥が台頭した。
このロシアの建国図を見ると、最初の10年弱は、マハダシャー月期で、月は11室支配で6室支配の土星と5室でコンジャンクトし、ラーフ/ケートゥ軸と絡んで傷ついている。
11室の支配星が激しく傷ついているのが分かるが、これはソビエト連邦内の周辺諸国との同盟関係の混乱を表わしている。
ソビエト連邦を構成した国々が、独立国として別々の外交政策を採り始めたことによって、国益がぶつかり合い、外交問題となったのである。
それで、ロシア連邦は、グルジア戦争とか、かつてソビエト連邦を構成していた国々との争いが絶えない。
アメリカがこうしたかつてソビエト連邦を構成していた国に働きかけて、西側陣営に組み入れようとする動きをしている為、それを防ごうとして必至である。
ウクライナに関しても同様で、ウクライナはNATOに加入して、西側陣営に参加したいが、ロシアはそれを阻止したいのである。
プーチンが、ロシア系住民の多いウクライナ南部のクリミア自治共和国を住民投票によってロシアに併合したのが、2014年で、黒海に面したウクライナが地政学上で重要であることを示している。
この月期は、ボリス・エリツィンの大統領時代にも重なり、エリツィンは、ソビエト連邦からのロシアの離脱を呼びかけてソビエト連邦の崩壊に導き、ロシアの威信の低下を招き、腐敗した縁故資本主義、チェチェン紛争の泥沼化などももたらしている。
傷ついた11室は外国からの評価なども表しており、ロシアの威信の低下を招き、オルガリヒなどの貪欲な新興財閥の台頭を許したり、チェチェン紛争の泥沼化をもたらしたりしたのは、まさに傷ついた11室の支配星の象意である。
この最初の傷ついた11室支配のマハダシャー月期が終わると、火星期に入っていくが、火星は、ロシアの建国図では3、8室支配で7室に在住している。
7室は外交関係、戦争のハウスである。
因みにこのマハダシャー火星期においてプーチンは、国内のオルガリヒを追放し、西側の資本家勢力を駆逐したのである。
これは7室の火星ということで、西側諸国との戦争と考えてもいいかもしれない。プーチンの国を取り戻す戦争が始まったのである。
この火星期に入った直後にボリス・エリツィンが、プーチン首相を指名して、辞任しており、国家のトップが交代しているが、火星は8室を支配しており、8室は指導者の辞任や失脚などを表わすハウスである。
そして、火星期の間、プーチンは、オルガリヒを打倒して、自分の政敵を倒したりして、自らの権力基盤を高めた時期である。
そして、ラーフ期に移行すると、2008年8月7日~8月16日の間、ロシア・グルジア戦争を行なっている。
これはラーフ/ラーフ期の出来事である。
ラーフは上述したように11室支配の月、6室支配の土星とコンジャンクトして、ディスポジターの土星も6室支配で11室を傷つけている為、これはかつてのシビエト連邦内の周辺国との軋轢を表わしている。
2014年2月27日のウクライナ(クリミア)侵攻もラーフ/水星期であり、やはり、マハダシャーラーフ期の間に起こったことである。
そうすると、ラーフ期は、かつてソビエト連邦を構成していた周辺国との軋轢が多いことを物語っている。
今、ロシア連邦の建国図では、ラーフ/月期であり、アンタルダシャーの月がまさに傷ついた11室の支配星である為、それで、ウクライナとの軍事的緊張が高まっていることが分かる。
来年2023年1月26日~2024年2月13日まで、ラーフ/火星期である為、7室に火星が在住していることを考えると、この緊張は継続していくことが考えられる。
因みにマンデン占星術では、月の新月から満月への動き、及び、満月から新月への動き(ルネーション)というものが重要であり、新月と満月のタイミングが重要だが、特にそれがラーフ/ケートゥ軸と交わる月蝕や日蝕などのタイミングが重要で、それがロシアの建国図のどのハウスに形成されているかが重要である。
2022年の月蝕や日蝕は、牡羊座/天秤座軸で、以下のようなタイミングで形成される。
2022年4月30日
2022年5月16日
2022年10月25日
2022年11月8日
最初の2022年4月30日は以下のようなトランジットになっている。
そうすると、このタイミングにおいて6室、7室、8室に惑星集中していることが分かる。
7室は戦争のハウスであるが、6室も戦争のハウスであり、特に自分よりも圧倒的に弱い国家との戦争や、自分から戦争を仕掛ける場合は、6室が関係してくる。
これは米国がベトナム戦争を仕掛けた時にアメリカの建国図で、6室に在住するケートゥ期だったことでもよく分かる。
ベトナム戦争の開始のきっかけだったトンキン湾事件は、アメリカの自作自演の謀略であったことが明らかになっており、アメリカが仕掛けた戦争である。
これはアメリカの建国図を論じる際に書きたいと思うが、ケートゥのディスポジターがアメリカの建国図の2室に在住する土星である為、ベトナム戦争によってアメリカは財政難に陥った。
話を元に戻すが、2022年4月30日に牡羊座で月蝕が起こっており、それはロシアの建国図の8室に位置している。
これはロシアにとってよくない配置であり、国家としての行き詰まりを表わしている。
元々建国図で、2、9室支配の金星が8室に在住しているのだが、これは国家の財産(国家財政)を表わす2室の支配星が、相手国の財産(国家財政)を表わす2室に在住しており、他国の富(領土など)を欲しがる配置と考えられる。
2室にアスペクトバックしていることを考えると2室と金星は強いが、8室に在住している為、例えば、西側諸国から経済制裁を受けたり、また9室は法律、国際法などを表わすハウスである為、国際的な常識やルールを壊して、不正をもたらす配置でもある。
因みに木星は4月14日から魚座の7室に入室し、土星が山羊座から魚座にアスペクトして、7室にダブルトランジットしている。
土星は4月29日から水瓶座に移動するが、それまでの間、山羊座を通過して、7室にダブルトランジットを形成する。
水瓶座に移動した後も暫くは7室にダブルトランジットし続けるはずである。
またロシアの建国図の11室にもダブルトランジットし、これは利得の11室であり、近隣国との同盟関係を表わす11室である。然し、その11室は傷ついている。
この月蝕付近のトランジットで、戦争の7室にダブルトランジットしていることが注目に値する。
この7室には、ロシアの建国図で3、8室支配の火星が在住しており、8室は上述したように国家指導者の交代や辞任などを示唆するハウスである。
やはり、今年の4月30日にかけて、ウクライナ付近に展開するロシア軍とウクライナ、西側諸国との緊張は高まると考えられる。
そして、西側諸国の経済制裁が行なわれる可能性があり、軍事的緊張は、ラーフ/火星期が終わる2024年2月13日まで続くと考えられる。
その後、ロシア連邦は、4、7室支配で10室に在住する木星期に入るが、木星は財政の2室、領土の4室にアスペクトバックし、労働者や国民の福祉を表わす6室にもアスペクトしている。
従って、ロシアは周辺諸国とそれ程、紛争を起こさない安定期に入ると思われる。
トリシャダヤハウスの11室の支配星や6室支配の土星と絡み、自らも生来的凶星であるラーフ期とは、全く違う時代が訪れるはずである。
木星は、4室と7室を支配し、10室に在住しているが、これは国際社会におけるリーダーシップなどを表わしていると考えられ、領土や外交問題などでも堂々と主張する配置に見える。
現在、ラーフ/月期であることを考えると、月は11室支配で11室にアスペクトバックしている。
傷ついているが強い11室の支配星を持っている。
また6室支配の土星とコンジャンクトすることは、侵略戦争や自分から始める戦争行為を表わしている。
プーチンは、ウクライナをNAT0に加盟させないなどのアメリカの妥協を引き出したり、小規模な軍事侵攻を展開して、批判を浴びながらもウクライナの国境付近の領域を確保する可能性がある。
それは11室の支配星が傷ついているにも関わらず、アスペクトバックし、更に5-11のダナヨーガを形成して強いからである。
2014年のクリミア併合も西側諸国の批判を浴びながらも、住民投票で、ロシア側に組み込み、国際社会は非難したが、それは既にうやむやになってしまった感がある。
こうしたことを考えると、ラーフ/月期は、何らかの自国に有利な協定をウクライナや西側諸国との間で、勝ち取る可能性がある。
因みに私が11室が、周辺諸国との友人関係や同盟関係を表わすということを理解したのは、イスラエルの建国図を通してである。
イスラエルの建国図では、11室支配の月が11室で自室に在住し、5、6室支配の土星とコンジャンクトしている。
ロシアと同じように11室の支配星が強いが、6室支配の土星から激しく傷つけられており、然し、11室の支配星は定座で強く、5-11のダナヨーガを形成しているのである。
この傷ついた11室は、イスラエルが建国まもなく、近隣のアラブ諸国と中東戦争を起こし、その後もアラブ諸国とは度々、紛争を繰り返していることに現れている。
然し、イスラエルは、国際社会から非難を浴びながらもその足並みは揃わず、ユダヤロビーの多いアメリカの肩入れなどによって、常に自国の国益につながる有利な調停を引き出したり、結局は、利権を拡大している。
イスラエルは、国際社会から非難を浴びつつも、入植地を拡大して来たのはその為である。
つまり、国際社会の評価もアラブ周辺諸国からは低い評価を受けているが、アメリカからは高い評価を受けて、それがあたかも傷ついてはいるが、強い11室の支配星で表されているかのようである。
ロシア連邦は、そうしたイスラエルと非常に似通った11室の配置を持っている。
従って、本来は侵略戦争として、認定されかねないクリミア併合などに成功し、そして、今現在もウクライナや西側諸国から有利な協定を引き出すためにウクライナ国境付近に軍を展開している。
11室は傷ついているが、強いため、アメリカや西側諸国からは批判を受ける一方で、中国などとは同盟を組み、国際社会での評価も様々である。
プーチンはウクライナに侵攻し、全面戦争にならないような微妙な侵攻を行なうかもしれない。
それは国際社会の評価が2つに分かれて、その対応も2つに分かれかねないような微妙な侵攻である。
西側社会はそれに反発し、経済制裁などを行なうかもしれないが、そこで軍を引き返す代わりにウクライナや西側諸国から何らかの有利な協定を引き出すといった考えなのかもしれない。
プーチンの戦略というのは、そういう利得を目的とした西側諸国との駆け引きなのである。
ウクライナは、ロシアと西側諸国の間にあり、ロシアが直接、西側諸国に接しない為の緩衝地帯になっているが、ウクライナがNATOに加入すると、モスクワの目と鼻の先が、西側諸国になり、それをプーチンのロシアは脅威に感じている。
これは中国と韓国の間に北朝鮮があり、直接、アメリカと中国が対峙せずに済んでいることと似ている。
主権国家というものは、隣接国家へ侵略する誘惑を持つ存在である。
戦争は常日頃から起こっている。
マンデン占星術では、7室は戦争のハウスと言い切られている所は興味深いのである。
7室は外交のハウスというよりも戦争を意味するハウスであり、それは主権国家が常に平常時から軍備を所有し、隣接国の国境の侵犯に備えていることを考えると納得する。
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