イランの王政復古の可能性について検討する -『イランの地下世界』に記された真のイラン人の姿-
2022年9月16日にイランで、スカーフで頭髪を適切に覆っていなかったとして道徳警察に逮捕されていた女性(マサ・アミニさん)が死亡した事で、イラン全土に抗議デモが拡がり、反体制運動に発展した。
2022年10月18日付の記事『イラン保守大国の内部事情 -女性の死に対する抗議運動がイラン全土に広がる-』の中で、その事件についてイランの建国図で検討した。
イラン人たちが、独裁者ハメネイ師のイスラム的慣習の強制に嫌気が指していることがよく分かった。
またそうしたデモとは別にイランの若者が、当局の目を盗んで、酒やドラッグをやってみたり、自由恋愛などを謳歌しているという記事を色々と目にしていた。
最近、若宮總著『イランの地下世界』という本を読んだが、非常に興味深い内容だった。
イランで長年暮らして日常生活でイラン人たちと付き合い、イランの国民性や文化などをよく知る著者が書いている為、全く外側からは分からないイラン国民の実態が分かった。
この2022年9月にデモが起こった理由などが、よく分かった気がする。
イランと言うと、1978年1月にホメイニ師によるイラン・イスラム革命で、パフラヴィー朝の皇帝モハンマド・レザーを国外追放し、政教一致のイスラム指導体制が確立した。
その為、イラン国民というのは、イスラムを真面目に信奉している人々で、イスラム体制を好んでいる人々だと考えていた。
中国や北朝鮮と共にロシアを支援する国であり、イスラエルによるガザ侵攻、ハマス掃討作戦を激しく非難する国であり、国民も保守的で、国民が一丸となって、アメリカに敵対している国といったイメージがあったが全く正反対であった。
イラン国民は、イスラム体制に嫌気が指しており、イスラム教、コーランの教えを信じていない人が多いようなのである。
そして、アメリカや西洋文化を非常に尊重し、イラン革命の前のパフラヴィー朝の時代を良い時代だったと懐かしがっている。
※パフラヴィー朝時代のイラン女性たち。ヒジャブやスカーフなどを全く身に付けていない。
アメリカに反発しているのは、イランで権力を握ったイスラム法学者と、イラン革命防衛隊など一部の人々だけで、国民の大部分は違うのである。
※イラン革命防衛隊
国民は、快楽主義者が多く、若者の間には、薬物、酒、自由恋愛、美容整形などが流行し、表面上だけ、イスラム体制に服従するように見せているだけで、その実、リベラルで、世俗的であり、イスラム教よりも、古代ペルシアに自らのアイデンティティーを求める人も多いようである。
そして、親日家が非常に多いという。
イランの人々は、公的な場所では、イスラムの慣習や決まりごとを守るふりをしているが、一歩、家に入ると、スカーフやヒジャブなどを脱ぎ捨てて、男女が一緒に食事をしたり、パーティーをしたり、自由に振る舞っている。
こうしたことは、イランの建国図を見ると、よく理解できる。
イランの建国図は、蟹座ラグナで、ラグナに木星が在住して、魚座にアスペクトバックし、魚座にも太陽、水星、火星が在住しており、水の星座に惑星が集中している為、保守的な価値感を持つ人々が一定の割合いることが分かる。
これはイスラム法学者や革命防衛隊などの現在のイスラム体制側の人々であり、これらの体制に忠誠を誓う人々である。
しかし、ラグナロードの月は牡牛座で高揚し、月ラグナから見ると、ラグナロードの金星が10室水瓶座に在住し、9、10室支配のヨーガカラカの土星と相互アスペクトして、4-10軸で、1-9、1-10のラージャヨーガを形成している。
土星は水瓶座にアスペクトバックして、水瓶座にあたかも土星が在住しているかのような効果を発揮している。
ラグナから見ても国民を表わす4室や文化人や富裕層、重要人物を表わす11室の支配星が水瓶座に在住している。
従って、こうした金星や土星が象徴する一般国民は、水瓶座が象徴するリベラルな政治信条で、理性的であり、イスラム教の教えは、どうでもいいと思っている。
この水瓶座-獅子座軸で表されるリベラルな一般国民と、魚座や蟹座に象徴されるイスラム法学者や革命防衛隊などの保守的な指導体制で、価値観が大きく分裂しているのが、イランである。
2022年9月の大規模な抗議デモの後、イランの女性たちは、もはや公然とスカーフを身に付けない人が増えているという。
また今年の5月にイランのライシ大統領がヘリコプターの墜落事故で死亡したが、ライシ大統領は、最高指導者のハメネイ氏の「愛弟子」であり、2022年9月の反ヘジャブ・デモを強硬に取り締まり、多くの死者を出したイスラム原理主義者で、反米強硬路線の人物だった。
この人物が死亡し、そして、次に大統領に当選した人物は、改革派のペゼシュキアン氏である。
この改革派のペゼシュキアン氏に対して、ハメネイ氏は、ライシ路線の継承を求めているというが、もう85歳であり、まもなく寿命が近づいている。
イランのチャートを見ると、まもなく、木星期が終ろうとしているが、明らかに木星は、イスラム法学者による厳格なイスラム体制を表わしている。
2027年11月からマハダシャー土星期に移行するが、土星は、獅子座に在住して、水瓶座にアスペクトバックし、水瓶座に在住する金星と相互アスペクトしている。
つまり、水の星座の影響から、風の星座や火の星座の影響に移行するのであり、国家の価値観などが、激変することを表わしている。
イラン国民は、追放されたパフラヴィー朝の皇帝モハンマド・レザー・パフラヴィーの長男クロシュ・レザー・パフラヴィーの帰還と王政復古を待望しているようであり、マハダシャー土星期にイスラム体制が終了し、王政復古し、王政が、日本の天皇制のように実質的な権力を持たずに象徴として君臨する形で、民主主義体制に移行する可能性は十分あり得ると考えられる。
※クロシュ・レザー・パフラヴィー
土星は、獅子座でヴァルゴッタマであり、ナヴァムシャでは獅子座に惑星集中している。
獅子座は王室の星座であり、イスラム法ではない、世俗の権威による統治が行われる可能性が高いのである。
そして、2022年9月の大規模なデモは、木星/火星期に起こったが、これは木星期の最後から2番目のアンタルダシャーであり、ダシャーチッドラに移行しつつあるタイミングである。
このデモから、女性がヒジャブやスカーフを着用しないようになっており、明らかにイランは変わりつつある。
マンデン占星術においては、8室は、指導者の死や体制崩壊などを表わすハウスであり、その8室支配の土星がラーフと共に獅子座に在住する配置は、イスラム体制の終焉など、何らかの国家体制の変化を表わしていると考えられる。
イラン人が、イスラム教よりも、古代ペルシアに自らのアイデンティティーを求めているということは興味深いが、ミトラ教復活を目指すミトレーアム・ジャパン(ミトラ教天使七星教会)という団体(東條真人氏が設立)が、イランで、会員や賛同者を多く集めている理由というのが、やはり、この辺りにあるのではないかと思われる。
イラン人は、古代ペルシアのゾロアスター教に自らのアイデンティティーを求めるような人々であり、イスラムには全く同一化していないからである。
またスーフィズムなどで有名なトルコの回転するダンスも創始者はイラン人であるという。
こうしたことから、イランはイスラム国というよりも、古代ペルシア人の末裔で、イスラム化する前の方が、イラン人らしいのだということが分かった。
コメント