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カルロス・ゴーンの国外逃亡について その2 -ジェーシュタの典型-

2020 1/22

カルロス・ゴーンがふてぶてしく国外逃亡してから既にかなりの時間が経過したが、結局、レバノンとは犯罪者の引き渡し条約がなく、またゴーンは、レバノンの首脳部とつながっている為、日本に送還することは出来ないことが明白となった。


検察や自分の弁護団、日本政府そのものを手玉に取り、計画的に国外逃亡したゴーンは、まさに世俗の悪知恵を溜め込んだ老獪な人物であった。


マネーロンダリングの手法を使って、巧みに富を蓄積したり、やっていること全てが老獪で、長い人生経験に裏付けされた海千山千の人物が持つ手腕そのものである。


カルロス・ゴーンが逃亡してから、様々な記事を目にするが、ゴーンには裏の顔があったという記事が目に付く。


表向き愛想は良さそうで、好人物を装っているが、実は裏で素の顔に戻ると、非常に露骨に権力主義で、金に汚い、独裁的な人物であったようだ。



以下の記事(「食堂のランチは豚のエサか」日産幹部が目撃していたカルロス・ゴーンの「裏の顔」)がそれを物語っている。(参考文献 参照)



『 日産vs.ゴーン 支配と暗闘の20年 』(文春新書)井上 久男著から引用された記事の中にそのカルロス・ゴーンの裏の顔が明らかになっている。



日産の社員食堂の食事を豚のエサと呼んだり、「名誉はカネで買うものだよ」といった発言など、行動や発言にそれは現れている。


(略)「昼休みにゴーンの部屋に説明に行ったら、靴を履いたまま机に足を挙げ、ふんぞり返って報告を聞くんだ。『役員が食べている食堂のランチは豚のエサか』とまで言ったのをよく覚えている。この人はマスコミの前ではニコニコしているが、本性はわからないと感じた。外面がいいから社外の人にはわからない。それを隠す演技力が凄かったんだ」

 そして、カネへの執着、傍若無人な振る舞いは、当時から相当なものがあったという。


(「食堂のランチは豚のエサか」日産幹部が目撃していたカルロス・ゴーンの「裏の顔」 文春オンラインより引用抜粋)

そして、そうした露骨に悪質な裏の顔を隠す演技力があったようだ。



マスコミの前では、そうした素振りを一切見せず、日産復活の立役者の好人物を装うのに成功したのである。



この表の顔と裏の顔を持つのが、ジェーシュタの特徴である。



ジェーシュタは古い魂と呼ばれ、世俗の経験を蓄積しており、老獪で、悪知恵が働く人物である。



ある種、世俗を知り尽くし、世俗の物事から隠遁しているような悟りに近い状態にもあるが、その一方で、世俗の物質的成功を掴み取りたいという欲求も残っている。



つまり、俗世間についての辛辣な意見は、露骨ではあるが、ジェーシュタが見切った真実でもある。



今回の逃亡劇は、マネーロンダリングをしようが何が、稼ぐだけ稼いで逃げたら勝ちだという、彼の人生観そのものである。



その冷酷無情な人生観は、深いレベルではまた変わってくるかもしれないが、世俗のレベルでは、一面、真理をついているとも言える。



私は、今回、カルロス・ゴーンのラグナを蠍座のジェーシュタに修正したが、彼の人物像、性格、振る舞いは、ジェーシュタそのものである。



ジェーシュタについて知りたければ、カルロス・ゴーンの行動を研究するのが最適である。




因みに同じように私がラグナをジェーシュタに修正した人物としては、そのまんま東もそうである。



そのまんま東も、宮崎県知事を務めていた頃の表向きの人の良さそうな笑顔と、裏のふてぶてしさという点で、全く激しい2面性があった。



ジェーシュタでは、その表の顔と裏の顔が露骨に変わり、それが非常に驚くほど豹変するのである。



それを見てしまった人間は、ジェーシュタの二面性に嫌悪感を抱くのは間違いない。



例えば、離婚してからカルロス・ゴーンを批判して来たリタ前夫人も、まじかで生活していただけにそれを垣間見た一人である。





カルロス・ゴーンは、現在、レバノンの邸宅で生活しているが、一般人には一切、姿を見せないという。



つまり、自宅に軟禁された状態に近いかもしれない。



但し、4室支配で12室で高揚する土星が象徴するようにレバノンの住まいは、立派な邸宅である。








カルロス・ゴーンほどの金持ちであれば、米国であれば、刑務所内に金持ち用の個室のようなものがあって、快適な刑務所ライフを送れるのである。



然し、日本ではそれは適わず、もし有罪になれば、普通の囚人と同じような待遇で過ごすしかない。



そういう意味では、カルロス・ゴーンはより快適な状況を勝ち取ったと言えるかもしれないが、然し、12室(監禁、隠遁)である為、自由は効かないのである。



また日産側が、ゴーンの邸宅の所有権を主張して訴えに出たようである。



レバノンのゴーン被告「自宅」立ち退き求め提訴 日産側が所有権主張
2020年1月7日 11:49 FNN PRIME

レバノンにあるカルロス・ゴーン被告の「自宅」をめぐり、日産側が「所有権は日産側にある」として立ち退きを求める訴訟を起こしていたことが、弁護士の話で明らかになった。

日産側の弁護士「わたしたちは確実に勝訴する。ゴーン被告にこの家を占拠する権利はない」

日産側の弁護士によると、キャロル夫人が「自宅」として出入りする、ベイルート市内の住宅の所有権は、日産の関連会社にあり、現在、立ち退きを求めて係争中だという。

また敷地内には、考古学的価値のある墓があり、日本円で18億円の資産価値があるため、6日、その資産を守るよう現地で指示したという。

判決は、およそ1カ月後に予定されていて、どのような判断が出されるか注目されている。


このことは4室支配の土星が12室に在住しているが、逆行していることも関係していると思われる。



また土星は4室の支配星であるが、3室(家の損失:4室からの12室目)の支配星でもあるため、土星期は安定した住まいは得られない象意もある。



住まいの確保において、スムーズにはいかないのである。



カルロス・ゴーンの逃亡生活は、前途多難である。





バンダナヨーガの特徴


カルロス・ゴーンは、明らかに黒だが、両側に凶星に挟まれており、バンダナヨーガを形成している。



このバンダナヨーガの象意は、政治的な理由などによって、逮捕監禁されるといった象意もある。



従って、カルロス・ゴーンが言うように日産とルノーが合併することを阻止したい日産側の意図、それに協力した日本の検察という構図もあったと思われる。



然し、カルロス・ゴーンは自ら構築したルートを使って露骨に蓄財し、派手な生活をし、大量のリストラをしたにも関わらず、自らは会社を私物化していた。



従って、これについての同情の世論は出て来ていない。





(参考資料)

「食堂のランチは豚のエサか」日産幹部が目撃していたカルロス・ゴーンの「裏の顔」
2020/1/9 17:15 文春オンライン

 レバノンに逃亡したカルロス・ゴーンの原点はここにあった。「日産・ルノー提携」の特ダネを1999年にスクープして以来、ゴーンを見つめてきたジャーナリストが、その栄光と墜落の軌跡、そして日産社内の権力闘争の実態をあますところなく描いた経済ノンフィクション『 日産vs.ゴーン 支配と暗闘の20年 』(文春新書)。

 倒産寸前まで追い込まれた日産にルノーから送り込まれたゴーンは、トップ就任からわずか1年半後、「日産リバイバルプラン」をもとに過去最高益を叩き出す。だが、ゴーンには別の顔があった。寵愛する「チルドレン」で配下を固め、意見する者は容赦なく飛ばす。そして、会社の私物化した公私混同のエピソードは枚挙に暇がない。

 独裁、ゴマスリ、権力闘争……強欲と収奪の内幕を克明に描くノンフィクションから、一部を抜粋して転載する。

◆ ◆ ◆

ゴーンに反論すると「Don't teach me!(俺に説教するな!)」

 ゴーンが来日以来変わっていないことは、自分の指示通り黙って従う有能な部下を優遇することだ。ゴーンのイエスマンとして仕えた多くの役員は、ストックオプションを付与されるなどしてかなりの財を成した。

「志賀(俊之)と並んで寵愛を受けていた象徴的な存在が、2004年から2年間、日産共同会長を務めた小枝至さんだ。相当な報酬を受け取り、退任後も相談役を務めながら不動産業を営んでいる。ゴーンはコスト削減など『汚れ仕事』をすべて小枝さんに任せた。また小枝さんもそれに応えた。リストラで痛めつけられた部品メーカーは、ゴーンというよりも、その手先となって意のままに動く小枝さんを恨んでいた」(日産元役員)

 一方で、有能であっても自分に意見する部下に対しては、高圧的な態度で接し、会社から追い出した。

 かつて日産の中枢に在籍したOBはこう語った。

「クルマ造りについてゴーンと意見が合わず反論すると、『Don't teach me!(俺に説教するな!)』と必ず言われた。何度も言うと、今度は、『Never teach me!(二度と説教するな!)』に変わる。

 自分に苦言を呈する人間に対しては、徹底的に否定する。ずっとそれをやられているとゴーンの言うとおりにやるのがラクになってしまう。優秀でも意見を言うタイプは自ら辞表を書いて会社を去るか、ゴーンに左遷された」

来日当初から、幹部たちには「裏の顔」を見せていた

 ゴーンは来日後、メディアの取材に積極的に応じ、親しみやすさを日本人にアピールしていた。私生活のことも積極的に語り、4人の子を持つ父としてテレビ番組で教育論を語ったりもした。

 ところが、こうした姿は「表の顔」に過ぎなかったことが、今回の事件を契機に浮かび上がってきた。じつは来日当初から、社内の限られた幹部たちには「裏の顔」を見せていたというのだ。

 重要案件をゴーンに直接報告することも多かった元幹部はこう打ち明けた。

「昼休みにゴーンの部屋に説明に行ったら、靴を履いたまま机に足を挙げ、ふんぞり返って報告を聞くんだ。『役員が食べている食堂のランチは豚のエサか』とまで言ったのをよく覚えている。この人はマスコミの前ではニコニコしているが、本性はわからないと感じた。外面がいいから社外の人にはわからない。それを隠す演技力が凄かったんだ」

 そして、カネへの執着、傍若無人な振る舞いは、当時から相当なものがあったという。

「当時、妻のリタさんが東京・代官山でやっていたレバノン料理店では、日産自動車名義のクレジッドカード(コーポレートカード)で仕入れ代金を払っていた。秘書部長が気がつき、ゴーンに『こんなことは困ります』と諫めると、その秘書部長はすぐに小さな関連企業に左遷されてしまった」(同前)

「名誉はカネで買うものだよ」

 私的な家族旅行に、会社所有のプライベートジェットを使うこともしばしばあったと報じられているが、家族旅行についてはこんな証言もある。

「ゴーンから『家族旅行の見積もりを作ってくれ』と言われ、担当者は社長が行くんだからと、気合を入れてプランを作った。すると『こんな高い金額が払えるか!』と激怒したという。あれだけ報酬を貰っているから少しくらい贅沢でもいいだろうと思ったらしいのですが……」

 側近のひとりによれば、外国に保管していたワインを日本に輸入する際、数千円ほどの関税を払うのを渋ったこともあったという。

 なぜゴーンは巨額の報酬を受け取りながら、ここまでカネに執着するのだろうか。

 日産のある幹部はこう分析する。

「ゴーンは移民の子として異文化の中を生き抜いてきた。そんな中で自分の存在を他人に認めさせるのは、結局は経済力が大事なのだと考えたのではないか。ゴーンの言うアイデンティティは、結局のところカネだったのでしょう」

「名誉はカネで買うものだよ」。ゴーンがそう言っているのを聞いた元幹部もいる。

不倶戴天のライバル、志賀vs.西川

「汚れ仕事」を担ってきた小枝が退任後、その役割を引き継いだのが西川廣人だった。

 西川は購買畑が長く、欧州法人での勤務経験もある。裏方として成果を重ねてきたが、頭角を現したのがルノーとの共同購買プロジェクトだ。2001年の共同購買会社立ち上げに関わり、部品調達のコスト削減の陣頭指揮を執った。冷静で粘り強い交渉力にはゴーンも一目を置き、引き立てた。彼もまたゴーンチルドレンのひとりとなった。

 ある元役員は西川についてこう回想する。

「西川は1990年代に辻義文社長の秘書を務めたこともあり、上昇志向は昔から強かった。だが、ゴーンに可愛がられて出世街道の先頭を走る同い年の志賀に、なみなみならぬ嫉妬心をたぎらせていた」

 この志賀と西川の熾烈なライバル関係が、今回の事件の要因のひとつである「ゴーンの独裁や暴走」を許すことに繋がった。そうした意味で、志賀や西川もまた「戦犯」と言わざるを得ない。

 2人は、志賀が入社年次では1年上だが、53年生まれの同学年だ。提携前の日産では東京大学出身者が幅を利かせていたが、東大卒の西川は社長秘書を務めるなど、エリートコースを歩んできた。一方、大阪府立大学卒の志賀は傍流だったが、ルノーとの提携によって2人の立場は逆転した。提携交渉の際に企画室次長だった志賀は「ルノー派」だったことから、ゴーンに寵愛されたのだ。

 西川は出世競争で志賀に対して劣勢となった。志賀より3年遅れで03年に常務執行役員に就任した。05年には副社長に昇進したものの、同時に志賀がCOOに就いたため、西川はその配下になった。

「これに西川は猛烈に嫉妬していたし、それを感じた志賀も西川批判をするようになり、2人はまさに犬猿の仲になった」(日産OB)

「汚れ仕事」担当に接近する

 西川は、巻き返しの最終手段に出る。

「ゴーンには徹底服従し、ゴーンの指示で忠実にリストラを繰り返したことで、ゴーンの目に留まったのだ」(同)

 じつは日本人上層部のライバル関係、人間関係はもっと複雑だった。ゴーンは日産を独裁的に統治していくに当たり、こうした人間関係のあやを巧みに利用してきた一面がある。

 志賀、西川以外にもゴーンが実力を認めていたのが、2人と同世代の中村克己だった。中村も志賀、西川と同じ1953年生まれだが、東京大学・大学院卒だったため、入社年次は志賀よりも2年、西川よりも1年遅い78年だった。3人の中で常務執行役員への昇格は志賀が最速の2000年で、続いて01年に中村が昇格した。

 中村はもともと「開発のエース」と目されていたが、中国での合弁会社「東風汽車」の総裁を務め、日産の中国での躍進の下地を作った。その頃は、日産社内ではゴーンの後継候補は志賀か中村と見られていた。

 2人に出世で後れを取った西川は、「汚れ仕事」を担ってゴーンの覚えがめでたい小枝至に近づいた。

 小枝は、東大卒の技術屋ながら人間関係に器用であり、社内政治にも敏感で社内遊泳術に優れていた。

 当時、東大卒が多かった日産には、都内の秀才たちが通った都立日比谷高校OBの「日比谷閥」と、都立戸山高校OBの「戸山閥」があった。「日比谷閥」のドンが小枝だったが、戸山高校出身の西川は、派閥を鞍替えしてまでも小枝に近づいたのであった。

井上 久男
参照元:「食堂のランチは豚のエサか」日産幹部が目撃していたカルロス・ゴーンの「裏の顔」
2020/1/9 17:15 文春オンライン
ゴーン会見「2017年以降、日産の成長は止まった」はなぜ詭弁なのか
「陰謀やクーデター」をことさら強調する理由は――
井上 久男 2020/01/09

「2017年以降、株価は下がって、(日産、ルノー、三菱の)3社連合の成長は止まった。私がCEOで居られたのは業績が良かったからだ。2018年以降はトップマネジメントに不安があった」

 1月8日午後10時(日本時間)、国外逃亡した日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告がレバノンで開いた記者会見にて語った、この言葉が最も印象に残った。なぜならゴーン被告の狡猾さを象徴しているからだ。

今回はスタイリストが付いたのだろうか

筆者は、あるテレビ局のモニターで同時通訳付きの会見を見た。

 紺色のスーツに、ピンク色に近いようなネクタイの、ビシッとしたいで立ちでゴーン被告は現れた。

 今回はスタイリストが付いていたのだろうかと、ふと思った。ゴーン被告は、日産の経営トップ時代、モーターショーのプレゼンテーションの前には、スタイリストを付けて、念入りに「自分がどう見られるか」をチェックしていたからだ。

「ゴーン氏は業者に複数のスーツを持ってこさせ、念入りに選びます。気に入ったものを1着選び、残りは会社の経費で買ったものでも自宅に持ち帰っていた」(日産関係者)

日産低迷の大きな要因は2つある

 この発言でゴーン氏が言いたかったことは、おそらくこうだろう。

「日産と検察が結託して陰謀、クーデターによって私を追い落としたものの、企業にとって肝心の業績は落ち、株価も下がって株主に迷惑をかけている。私が経営トップにいたらこうした事態にはならなかった」

 一部の株主らゴーン氏の支持者と見られる人たちからも「ゴーン氏がいればこんな業績にはならなかった」といった声も出ている。果たしてそうなのか。

 確かに、日産やルノーの業績は落ち込み、株価も低迷している。その大きな要因は2つある。収益源だった米国で稼げなくなったことと、新興国向けブランド「ダットサン」の不振で、過剰設備を抱えていることだ。

 さらに要因を突き詰めていくと、アライアンスを結ぶ日産、ルノー、三菱自動車の3社が世界一の自動車メーカー連合になるべく、販売台数だけを増やしていく無謀な拡大戦略をゴーン氏が推進したからだ。ゴーン氏は2017年9月、パリで記者会見し、3社の合計販売台数を2022年までに世界トップに躍り出る1400万台に拡大させる「アライアンス2022」と呼ばれる中期経営計画を発表した。

主要市場の米国で値引きしないとクルマが売れない

 この1400万台のうち900万台を共通のアーキテクチャーで生産することで量産効果を生み出し、エンジンも31種類あるうち21種類を共通化することなどによって、開発投資の重複を避けてシナジー効果を生み出すことを狙った。

 ゴーン氏は2017年4月、日産社長兼CEOのポストを西川廣人氏に譲り、自身は「アライアンス会長」という名刺を持ち、3社の司令塔、すなわち最高権力者の地位にあった。打ち出したアライアンスの中期経営計画は一見、立派な成長戦略に見えたが、その実態は、新車にかける開発投資を絞り、早く安く、チープなクルマを量産していくことだった。

 この結果、日産は主要市場の米国で値引きしないとクルマが売れなくなり、値引きして販売した新車が大量に中古車市場に流れたことで中古車価格も落ち、それがさらに新車価格をも落とす悪循環に陥った。完全にゴーン氏の戦略の誤りと言える。同様に「ダットサン」も商品力が弱く、インドやインドネシアではまったく売れず、失敗プロジェクトに終わった。

「陰謀やクーデタ-」であることを強調したが……

 失敗が露呈する前に、言い方を変えれば業績が落ち始めるのは分かったうえで、執行のトップである日産社長兼CEOというポストを西川氏に譲ったのである。本質的な原因を追求しない人からすれば、2017年4月以降は西川氏が社長なのだから、業績悪化は西川氏の責任ということになる。こうした点が筆者の指摘するゴーン氏の狡猾さだ。

 また、記者会見では、ゴーン氏はこれまで通り、日本の司法制度の「不公正さ」などを指摘。保釈後もキャロル夫人との面会が禁止されたことが人道上問題であることにも言及した。確かに、日本の司法制度は「人質司法」などと指摘され、勾留期間が長いと批判されることもある。この問題は、ゴーン氏の事件だけにあてはまることではない。

 司法制度への批判は、ゴーン氏自身がやった不正や不法行為を覆い隠すため、あるいは論点をすり替えるための詭弁に過ぎないと感じた。報酬の虚偽記載や特別背任など刑事事件として立件された経緯についても「陰謀やクーデタ-」であることを強調した。

 筆者は、ゴーン氏の事件がクーデターか否かと聞かれれば、「クーデター」と答える。クーデターの解釈はいろいろあるが、ゴーン氏の側近らが不正調査を行い、私的流用を突き止め、司法取引に応じ、検察と協力して立件したことは間違いなく、結果として「部下に刺された」形になるからだ。

事実を覆い隠そうとするためではないか

 特別背任は権力者による犯罪である。こうしたケースでは、内部通報、司法取引、密告などの手段で事件が露呈する。権力者は、不正を覆い隠せるほどの力を持つから、こうした手段が用いられる。司法取引も、トカゲのしっぽ切りにならないようにするための制度だ。

 肝心なことは、手段ではなく、犯罪事実があったかどうかだ。ゴーン氏が陰謀やクーデターをことさら強調するのは、事実を覆い隠そうとするためではないかと見えてしまう。事実認定を争う裁判では勝ち目がないと見て、ゴーン氏は逃亡したのではないか。

 ゴーン被告のプレゼンの特長の一つは、得意げな表情で身振り手振りを交えながらまくしたてるように、語ることだ。

 筆者はゴーン被告に何度もインタビューしているのでその光景を何度も間近に見てきた。

親しい記者には「Oh! My Friend」

 今回もそれには変わりはなかったが、二つ違うことがあった。まずは、表情が暗かったし、眉間にしわが寄っていたことだ。「私にとって今日は大切な日」と言ったゴーン被告だが、なんだかいら立っているように見えた。その理由は分からない。

 続いて、2時間25分もの間多くを語りながら、中身が薄かったことだ。ゴーン被告が経営トップ時代、30分のインタビューで原稿用紙10枚分の原稿が書けるほど中身が濃密なことが多かった。自分への嫌疑について、詭弁と論点すり替えの連続だったからだろう。

 一方、相変わらずだったこともあった。ゴーン被告は親しい記者には「Oh! My friend」とか「I know your face」と言うことがある。

 昨日の会見でも、「Oh! My friend」、「私はあなたがBBCの記者だと知っている」と言っていた。自分に友好的なメディアを選別したことは分かっていたが、その発言からも感じ取れた。無罪や日本の司法制度の課題を主張するのであれば、オープンな記者会見にすべきだった。不都合なことを聞かれたくないから、ゴーン氏側でメディアを選別したのであろう。

 繰り返すが、今回のゴーン氏の記者会見からは、狡猾、詭弁、論点のすり替え、メディアの選別といった悪いイメージしかない。筆者はゴーン氏の経営者としての実績を否定するつもりは毛頭ない。日産を再建した功績も否定しない。しかし、今回の記者会見の内容は、これまでのゴーン氏の「看板」をさらに汚すものになったと筆者は感じる。
参照元:ゴーン会見「2017年以降、日産の成長は止まった」はなぜ詭弁なのか
「陰謀やクーデター」をことさら強調する理由は――
井上 久男 2020/01/09
ゴーン被告逃亡か 日本を愚弄した拝金主義者だった
井上久男 | 経済ジャーナリスト 2019/12/31(火) 15:42

日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告が日本を出国し、12月30日にレバノンに入国したことを海外メディアが報じている。ゴーン被告は、有価証券報告書に虚偽の報酬を記載したとして金融商品取引法違反容疑や、会社資金をオマーンに送金して不正に使用して会社に損害を与えたなどとして会社法違反(特別背任)容疑で、逮捕、起訴されていた。

 ゴーン被告は今年3月の1度目の保釈の際に保証金10億円を支払った。その後4度目の逮捕後の4月に保釈された際に追加で5億円の保証金を支払い、計15億円を支払った。保釈の条件の一つに、海外渡航が禁止されていたので、レバノンへの入国は保釈条件に違反している可能性が高い。

レバノン政府が手助け?

 ゴーン被告は、逃亡したと見て、まず間違いないだろう。日本とレバノンとの間には「犯罪者引き渡し協定」が結ばれていないため、レバノンに逃げてしまえば、日本の司直の手が及ぶことはない。このままでは2020年4月に予定されていた初公判も開かれなくなる可能性も高い。

 12月31日のNHKの正午のニュースによると、ゴーン被告の出国記録は確認されておらず、名前を変えて出国した可能性があるという。それが事実だとすれば、筆者はレバノン政府が手を貸した可能性が高いと見る。ゴーン被告はレバノン国籍を保有しており、別の名義でレバノンがパスポートを発行してゴーン被告に渡したのではないか。それしか考えられない。なぜならば、保釈条件の中にゴーン被告のパスポートは弁護人が預かることになっていたからだ。弁護人が出国を手助けするとも到底思われない。

裁判所も弁護人もいい赤っ恥

 ゴーン被告が東京拘置所に拘留中もレバノン大使館の外交官がよく接見していた。単に差し入れとかではなく、「レバノンの外交官を通じて、ルノーにいるゴーン派の役員に指示が出ていた」(日産関係者)と言われる。幼少期をレバノンで育ち、ブラジルに移住したゴーン被告にとってレバノンは第二の故郷であり、レバノンにとっても祖国の英雄の一人だった。いずれレバノン大統領になるのではないか、といった見方もあった。

 ゴーン被告は容疑を否認しており、東京地検特捜部が手掛けた否認事件で早期に被告が保釈されること自体が珍しかったが、「人質司法」への批判という国際世論に押される形で日本の裁判所が保釈を認めた。専門家の中には、大阪地検特捜部での検事による証拠改ざん事件などの失態が続いたので、裁判所が特捜部を信用しなくなったことも、早期保釈の要因の一つになったのではないか、と見る向きもあった。

保釈保証金は15億円で妥当だったのか

 いずれにせよ、結果論として裁判所の判断は間違っていたわけで、その見識が問われ、批判は免れられない。ゴーン被告の取った行動によって、裁判所は赤っ恥をかかされたことになる。無罪請負人と言われるゴーン被告の弁護人、弘中惇一郎弁護士に対しても同様のことが言えるのではないだろうか。保釈条件に反しているので、当然ながら保釈の保証金15億円は没収になるだろう。

 そもそも15億円という保証金の額は妥当だったのか。保釈金は被告の財産状況などによって決まるが、筆者は3桁の億が適切ではないかと思っていた。それにはある根拠めいたものがある。

 日産で法務部、企画室を経験し、ゴーン被告の傍で働いたこともある元幹部が、筆者にこう語ったことがある。

「ゴーン氏は、特定目的会社(SPC)を租税回避地に設置し、日産が海外に輸出するノックダウン部品の一部は、そのSPCを経由させ、輸出額の一部を目立たぬように少しずつ抜いていた。リバイバルプラン以降、海外の現地法人など日産の資産を売却する際もそのSPC経由で取引を行い、そこで利益の一部を少しずつ抜いていた。金が入ると、SPCを解散して新たなSPCを作り、資産をそこに移動させ、足が付きにくいようにしていた。こうした話が社内で囁かれ、着服した金がゴーン氏の個人資産として一時期は数千億円に達したのではないかという見方もあった。それを運用していてリーマンショックで損失を被ったが、まだかなりの金が海外のSPCに残っている可能性がある」

 かつて、その元幹部は、ゴーン被告がリタ夫人と離婚して多額の慰謝料を支払ったことを筆者に教えてくれ、昨年11月19日にゴーン被告が逮捕された直後も「この事件は、金融商品取引法違反は入り口で、アジアを舞台にした特別背任事件につながるだろう」とも予言していた。

 このSPCを通じて、部品輸出や資産売却の利益の一部をゴーン氏が個人的に抜いていたのではないかという疑惑については、特捜部は立件していない。あくまで「疑惑」に過ぎないが、保証金を没収されることを覚悟して国外に逃げたことを考えれば、あれほど金銭への執着欲が強かったゴーン被告にとって15億円は「はした金」だったのではないかと筆者は見てしまう。

 ゴーン氏が逮捕され、被告となっても、人権擁護の観点から、あるいはこれまでの経営者としての実績から、氏を擁護する人はまだかなりいた。特に後者の視点の中には、今の日産の業績が低迷しているのはゴーン被告が経営陣から抜けたからではないかという意見も目立った。しかし、日産を長く取材してきた筆者は全く別の見方をし、それを多くの媒体で書いてきたが、改めて強調したい。

「日産と検察はぐるだ」の見苦しい言い訳

 ゴーン被告は1999年の来日から2004年にルノーのCEOを兼務する頃までは、すべの施策がすべて当たり、日産を再生軌道に乗せた凄腕の経営者だったが、そのあとは、「ただの経営者」に過ぎなかった。むしろ日産にとっては百害あって一利なしの存在になっていた。世界一の自動車メーカーの経営者になるという自己満足の野望の下、無謀な拡大戦略に走った。その結果、日産は過剰設備に陥り、値引きしないと売れないチープなクルマしか造れなくなった。

 それが露見しかかる直前の2017年に社長の座を西川廣人氏に譲った。ゴーン被告には、誰が社長になっても業績が悪化することは見えていたので、西川氏にその地位を禅譲したのだ。そのやり口は姑息だった。

 今回の逃亡を見ても、やはりゴーン被告は姑息な人物だったと思わざるを得ない。「日産と検察はぐるだ」とか、「日本では公正な裁判を受けられない」といった見苦しい言い訳をまたレバノンでも展開するのだろう。日本の司法制度に後ろ足で砂をかける形で逃げ、最後の最後まで日本や日本人を愚弄した経営者だった。
参照元:ゴーン被告逃亡か 日本を愚弄した拝金主義者だった
井上久男 | 経済ジャーナリスト 2019/12/31(火) 15:42
アメリカを敵に回したゴーン 密出国で暗躍した「元グリーンベレー」と薄気味悪い人脈
末家覚三 2020/01/09 文春オンライン

 元米軍に元英軍、さらにはトルコの航空会社、日産のカルロス・ゴーン元会長の密出国劇を手助けしたネットワークの国際性が明らかになるなか、ゴーン元会長は、レバノンを除く世界の国々を敵に回し始めたことに気付いているだろうか。なかでも元米軍グリーンベレーの男は米国で服役した経験も持つ、いわば「米政府の敵」だ。その正体を探ると、ゴーン元会長をめぐる人脈の薄気味悪さもみえてくる。

なぜゴーン氏は「特殊作戦」のエキスパートと繋がった?

 男の名は「マイケル・テイラー」。英米圏で最もありふれた名前と名字の組み合わせの一つだろうが、その名前を持つ人物が、ゴーン元会長が脱出したのと同じ航空機に搭乗したことが判明した瞬間、一部の人は、それがどの「マイケル・テイラー」か、見当が付いたはずだ。こうした「特殊作戦」のエキスパートの世界では知られた男だからだ。

テイラーの妻はレバノン人

 ゴーン元会長は大型荷物のX線検査ができない関西国際空港のプライベートジェット用の出国審査を、大型の音響機器用ボックスに潜り込むことですり抜け、トルコ経由で祖国レバノンに出国した。その一連の動作を同乗しながら指南したとみられているのがこの男だ。

 法廷資料や過去の報道によると、1960年生まれのテイラーはグリーンベレーとして知られる米陸軍特殊部隊に所属し、その後は米連邦捜査局(FBI)への情報提供者として麻薬組織に関与。またアフガニスタンやレバノンなどで現地兵の訓練に携わるなど、多彩なキャリアを積んできた。レバノン時代に出会って結婚した妻はレバノン人だ。

安全対策のコンサルタントとしても活躍しており、過去には米フォックスニュースのインタビューに応じ、空港の安全対策の不備について言及していたというから、今回の密出国にこれほど適任な人材もいなかっただろう。

《リスク評価、複雑なリスク軽減などのあらゆるサービスを、最も困難な状況下でも提供する会社です》

 CEOを務める「アメリカン・インターナショナル・セキュリティー」の削除されたホームページには、そんなうたい文句が掲げられていた。

 テイラーの名が一気に高まったのは2008年のこと。ニューヨーク・タイムズの記者がアフガニスタンでタリバンの人質となり、米政府が救出しあぐねていた際に同紙と人質奪還の契約を結び、実際に記者が脱出に成功したからだ。ただ、記者自身は自力で脱出したと報告しており、テイラーが実際にどこまで関与したかはいまだに謎に包まれている。

 テイラーには他の米国人家族に人質奪還を持ちかけ、実質的な成果を上げないまま、その家族に著書で騙されたと糾弾された経験まであるから、なおさらだ。

テイラーは「ダークサイドに墜ちた男」米国で詐欺罪で服役

 テイラーが、「ダークサイドに墜ちた」男であったことが白日の下にさらされたのは米国の国防総省で請け負ったアフガニスタンでの米軍への5400万ドルの訓練事業に対する入札不正疑惑が浮上してからだろう。

 FBIは捜査に乗り出したが、テイラーはFBIの捜査官に多額の報酬を約束するなどして捜査を妨害するよう依頼。15年、この捜査官は贈賄で禁錮10年の判決を言い渡され、テイラーも詐欺などの罪で13カ月の刑を言い渡され、服役した。

 米国国防総省やFBIまで手玉に取った男。それがテイラーだ。日本の裁判所や、入管当局などを出し抜くのは、赤子の手をひねるようなものだったろう。

ゴーン元会長は米国の上場企業勤務を10年間禁じられている

 ただ、そんな星条旗を騙した男を利用したゴーン元会長を各国政府や当局が見る目は、いっそう厳しくなるとみていいだろう。

 すでに米証券取引委員会は、東京地検特捜部による逮捕後に日産とゴーン元会長に対し1.4億ドル(150億円)の報酬を隠したとして告発し、日産から1500万ドル、ゴーン元会長から100万ドルを受け取ることで和解を済ませたが、この過程でゴーン元会長は米国の上場企業に勤めることを10年間禁じられている。米国ではのけ者扱いなのだ。

 密出国をめぐってはトルコ当局が捜査を進めているし、英国の元軍人の名前も取り沙汰されており、英国でも捜査が始まる可能性もある。フランスではすでに昨年から会社の金を使ってベルサイユ宮殿で自分の結婚式を挙げた疑惑に関する捜査が進行中だ。

 となれば、グローバルエリートであるゴーン元会長がなぜ、経済的には開発途上で暮らしやすいともいえないレバノンを選んだのか、理由は明らかだろう。

レバノンの「裏」ネットワーク

 レバノン人は古くから商人として世界中に拠点を設けており、ユダヤ人ほどではないが、強固で国際的な商人ネットワークを誇る民族として世界的には知られている。海外にいけば、レバノン料理店がそこら中にあるのもその証左だ。出自を強烈に意識し、同胞意識でつながっている。

 レバノン人のネットワークが構築されているのはビジネスという表の世界だけではない。国際連合の薬物・犯罪事務所の報告によれば、西アフリカでの麻薬密輸、ダイヤモンド密売、石油の違法取引、売春、マネーロンダリングなどにはレバノン人のネットワークが関わっているという。いわば「裏」ネットワークだ。

 テイラーは潜入捜査官としてレバノンで麻薬取引に関わったほか、現地軍の軍事教練も担っている。つまり、レバノンの裏とも表とも接点がある。ゴーン元会長にこの男をつないだのは誰なのか。捜査の進展次第で、ゴーン元会長とレバノン人の「裏」ネットワークとの接点が見えてくる可能性も否定できない。
参照元:アメリカを敵に回したゴーン 密出国で暗躍した「元グリーンベレー」と薄気味悪い人脈
末家覚三 2020/01/09 文春オンライン

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