ニーチェについて

以前、本屋で立ち読みをしていて、ふと『図解でよくわかるニーチェの哲学』(中経出版 富増章成著)というピンク色の読みやすそうな本が目に留まって、 ニーチェの思想と経歴が簡潔にまとめられているよい本だと思えたため、購入して家に置いておいた。 

最近、ニーチェ本が何冊か出版されており、2010年~2011年にかけて、 
ニーチェブームが起こっていて、著作も100万部を超えたそうである。 
http://nietzschewords.jp/ 

それはおそらく、木星と土星がニーチェの出生図の5-11室の軸で5室の支配星や11室の支配星にダブルトランジットしていたからであると思われる。 

昨年はニーチェの解説本が出版され(5室)、高い評価を受ける(11室)ことを表していたのである。 

マリリン・モンローもそうだが、人は死してなおその出生図は生き続けるのである。 


経歴を検証してみると、チャートとの対応で数々の事実関係が解釈できる。 
http://jyotish007.blog71.fc2.com/ 

例えば、ニーチェの父親はキリスト教・ルター派の牧師であったが、ニーチェが5歳の時に玄関先で転んで頭を強く打ち、35歳にして逝ってしまう。 

ニーチェは父親の表示体である太陽が12室で減衰し、パーパカルタリヨーガで、土星からアスペクトされて傷ついている。 

また9室支配の月は1室で減衰し、同じく減衰するラーフと接合しており、父親の表示体である太陽や9Lが弱くて傷ついている。 


太陽は視力を表すが、その太陽がD1だけでなく、D3、D4、D7、D9、D10、D12、D27、D60などで減衰していて弱い配置にある。 

ニーチェは強度の近視であり、また頭髪も薄いのである。 

特にD3で太陽が減衰しているということは肉体面で太陽の弱さが出てくる可能性を示唆しているが、それはここで確認できる。 

ニーチェには弟と妹がいたが、弟は幼くして亡くなってしまう。 

D3を見ると、11Lの水星が3Hに在住して3Lで3Hの自室に在住する土星と接合している。3Lが3Hは弟、妹の存在の可能性を高めるが、11Lが3Hに在住しているので、兄弟姉妹のうち最年長か最年少になる配置が形成されている。 

ニーチェは長男であることからこれも適用される。 

末っ子の弟が2歳で亡くなってしまったのは、D3で3Hと3Lに8Lが絡んでいたからではないかと思われる。 


偏頭痛持ちで、晩年は精神錯乱状態にあったというのも、1室で減するする月とラーフの絡みでよく説明できる。 

元々肉体を表す1室で惑星が減衰して健康にはよくない配置である。 

眼病、頭痛、胃の障害、猛烈な発作など、病に蝕まれて苦しんだことが記されている。 

ラグナロードの火星が8室支配の水星と接合していることも、また肉体の表示体である太陽が傷ついていることも健康に問題が出る配置である。 


このようにニーチェのチャートは個性的で特徴が多く、彼の身辺の事実関係とチャートの対応関係は非常に参考となる。 

ニーチェは幼い頃は父親が牧師だった影響で、キリスト教に信頼を寄せ、周りから「小さな牧師さん」と呼ばれていたそうである。 

聖書の文句や賛美歌をよく暗唱してそれが上手であったと妹のエリザベートが回想している。 

また大学入学前のギムナジウム(中・高校教育機関)でギリシア・ローマの古典学習を進めたようである。 

ニーチェの思想は、ギリシャ・ローマの古典から、キリスト教や、ゾロアスター教などの東洋思想まで、幅広い古典の知識に裏付けられた教養がその背景となっている。 

ラグナ、月から見た5室に在住する自室で強い木星がこの古典の知識を表している。 

この木星に対して、4室支配の土星がアスペクトしており、土星が絡むことで哲学的傾向を与えている。 

更にこの木星と、11室で高揚する8室支配の水星が相互アスペクトしているが、8室支配の強い水星との絡みは研究にとってよい配置である。 

この水星は明らかに古典解釈学を表しており、P.S.シャストリのジャイミニスートラにも、5室に絡む水星はミーマンサー(聖典解釈学)における専門家にすると書かれているようである。 

また強い水星は詩的センスや、レトリック(修辞学)の才能を与え、ニーチェの独特な散文的な文体を作り上げたと思われる。 

この木星と水星の5-11室の軸での相互のアスペクトが、哲学、思想の世界において、創造性を発揮し、高い評価と成功をもたらしたと思われる。 

然し、ニーチェは既に16歳の頃に「もしとらわれのない自由な目でキリスト教の教義や教会史を眺めるならば、一般の考え方に逆らう多くの見解を表明せざるを得ないだろう」というキリスト教への疑いを示したと記されている。 

この若さで、キリスト教的な世界観についての懐疑を示し、キリスト教の勉強も途中で辞めてしまったようである。 

これは5室在住の木星が逆行していることが関係しているのではないかと思われる。 
5室自室の木星は明らかにキリスト教の教えを表しているが、木星が逆行しているので、気まぐれな象意として表れてくるのである。 

また木星はGK(グナティカラカ)でもあるが、これはニーチェが自らの思想の中で、キリスト教を批判し、最終的には、「ツァラトゥストラかく語りき」の中で、「神は死んだ」と宣言して、キリスト教的な世界観を放棄してしまう。 

このキリスト教との奮闘が木星の逆行やGKとしてよく表れている。 

またニーチェのラグナロードの火星は8室支配の水星と11室で接合して、5室にアスペクトしている。この11室で形成される6室と8室の絡みが5室にアスペクトして5室を傷つけている配置も、聖典解釈学など、分析的にキリスト教にメスを入れたと考えることが出来る。 

6室と8室が絡むため、ここで物議が生じるのである。 

火星は水星と絡むと、知的情熱をもたらし、思考のスピードを早くしたり、論理的でシャープな思考をもたらすようである。 

ニーチェが、アポロンに対するディオニュソス、イエスに対するツァラトゥストラを生み出して、世間の常識的な世界観をひっくり返したのは、8室支配の水星の仕事である。 

8室は法則を損失するハウスであるが、世界を構成する12ハウスの1つとして、また法則の一部でもある。 

従って、8室の仕事とは何か法則をひっくり返すようなことをして、法則を機能させることである。 

彼は、何故、真、善、美を求めることが正しいという前提があるのかと問い、アポロン的な秩序や価値の前提に疑問を提示し、またキリスト教によって与えられた道徳や価値観にも疑問を提示する。 

世間に通用している常識というものを徹底的に鋭い懐疑の視線を投げかけることがニーチェの思想の特徴である。それは最終的に真理とは解釈に過ぎないとして認識論にも及んでいる。 

ニーチェはマハダシャー水星、ケートゥ、金星期にほとんど全ての著作を書き上げ、マハダシャー太陽期になると、病状が悪化して、錯乱傾向が出て、母親の元で介護を受けて余生を送っている。 

この時期になると、ニーチェは非常に高く評価されるようになっていたが、本人であるニーチェには、もはやそうしたことも分からなくなっていたようである。 

友人がいなかったり、他者からの評価に苦しんだり、母親や妹との不和など、人間関係のトラブルが多かったのも、おそらく6室支配の火星と8室支配の水星が社交を表す11室で接合したり、6室支配の火星が家族を表す2室支配の木星や2室にアスペクトしているからである。 

このように見ていくと、このニーチェの出生図は正しいのではないかと思える。


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