MENU

大阪・北新地ビル火災 -放火による復讐:日本の暗い伝統-

2021 12/17


今日(2021/12/17)の午前に大阪北新地のビル4階で火災が発生し、27人が心肺停止となるというショッキングなニュースが伝えられている。


負傷者は男性17人、女性11人 うち27人心肺停止 大阪・キタ火災
2021/12/17 12:47 産経新聞

大阪市北区曽根崎新地で17日午前に発生し、28人が負傷し、うち27人が心肺停止となっているビル火災で、負傷者28人は男性17人と女性11人であることが、大阪市消防局への取材で分かった。

大阪府警や大阪市消防局によると、17日午前10時20分ごろ、大阪市北区曽根崎新地の堂島北ビルで、「4階が燃えている」などと119番があった。8階建てビルの4階フロア約20平方メートルが燃え、28人が負傷。このうち27人が心肺停止の状態という。捜査関係者によると、府警は放火の疑いがあるとみて捜査している。

消防車など44台が出動して消火や救助活動に当たった。現場の4階にはメンタルクリニックが入居していた。クリニックのホームページは、心療内科と精神科の診療を行っていると紹介。金曜日は午前10時から診療が開始される。現場はJR北新地駅の近くで、飲食店やビルなどが並ぶ繁華街の一角。

これから詳細が明らかになっていくと思うが、「60代の男が持っていた紙袋付近から出火した」との情報があり、男性が放火した可能性が浮上している。


4階には、メンタルクリニックが入居しており、おそらく被害者はそこの医師や看護師そして外来患者ではないかと思われる。





チャートを作成してみると、そこで展開されたドラマが容易に想像できる。


まず、火星が蠍座を通過し、高揚するケートゥとコンジャンクトし、ラーフは牡牛座で高揚し、月は牡牛座で高揚していた。


この強力な月と火星が更に高揚するラーフ/ケートゥ軸の刺激を受けて、相互アスペクトし合い、チャンドラマンガラヨーガを形成している。


非常に緊密な度数でコンジャンクトしている為、ナヴァムシャやダシャムシャでも、月と火星は相互アスペクトし、ラーフ/ケートゥ軸とも絡んでいる。



チャンドラマンガラヨーガは、瞬間湯沸かし器であり、突然、怒ったり、感情を高ぶらせ、行動化をもたらす配置である。


肉食系のアグレッシブな配置であり、強い火星は、実行力や攻撃力に溢れている。


月は牡牛座で、高揚している為、ハイテンションをもたらし、ラーフとコンジャクトして、発狂をもたらす精神異常のコンビネーションである。


異常に高ぶった興奮状態、高い興奮状態の中で、行動化をもたらす配置である。





躁うつ病で言えば、躁状態であり、しばしば躁うつ病で、鬱状態から躁状態に切り替わったタイミングは、ビルから飛び降り自殺を試みたり、大胆な行動を起こしてしまう危険な状態である。


北新地と言えば、新宿の歌舞伎町のような場所で、スナック、キャバクラ、性風俗など、水商売が盛んな地域であり、歌舞伎町と同じように蠍座によって表される地域である。


蠍座というのは、非常に人に気を使う星座で、その業界の人々は、客に対して、非常に細やかに気を使う。


然し、それは諸刃の剣であり、逆に言えば、人に気を使ってもらえないと、傷ついたり、根に持つことを表わしている。


感情情緒が激しく根深いため、いつまでも恨みの感情を抱え続けることになる。


日本で言えば、ヤクザや暴力団、マフィアでもいいが、こうした蠍座の人々は、何十年も前の恨みを晴らす為に復讐を行なう。



この60代の男性は、メンタルクリニックで、不親切な対応を受けたのか、何らかの恨みがあって、その復習を果たす為に放火したのではないかと容易に想像できる。


詳しい動機などは後から明らかになってくると思われる。


負傷者多数の火災、過去にも
2021/12/17 12:27 産経新聞

大阪市北区曽根崎新地の堂島北ビルで17日午前に発生した火災では、28人が負傷し、うち27人が心肺停止状態となった。大阪市消防局が負傷者の搬送を急いでいるが、負傷者が多数出た火災は、過去にも起きている。

令和元年7月には、京都市伏見区の京都アニメーション第1スタジオから出火し、建物内にいた社員70人のうち36人が死亡、32人が重軽傷を負った。ガソリンをまいて火を付けたとして、京都府警は殺人や現住建造物等放火などの疑いで青葉真司被告(43)を逮捕した。殺人事件の犠牲者数としては平成以降で最悪とされる。

平成13年9月には、東京・歌舞伎町の雑居ビルから出火し、44人が死亡。放火の可能性が高いとされるが特定には至っていない。20年10月には大阪市浪速区の個室ビデオ店で放火事件が発生し、16人が死亡した。

因みに産経新聞の記事で、過去に起こった類似の事件にスポットライトを当てているが、京都アニメーションの放火事件も採用面接で落とされた恨みで、男性が起こした復讐の放火行為である。



また歌舞伎町の雑居ビルから出火した事件も、歌舞伎町は蠍座の街であり、大阪市浪速区の個室ビデオ店で放火事件が発生した件も、個室ビデオ店ということで、おそらく水商売に近いサービス業に位置づけられ、蠍座の象意である。


これらの放火事件は、恨みによる復讐が、ほぼその原因である。



アメリカのような銃社会であれば、度々、起こっている銃乱射事件などに匹敵する事件であり、アメリカのこうした事件でも犯人は、女性にモテないとか、粗末に扱われたとか、そうした恨みが原因である。



北欧の方で、起こった銃乱射事件でも、やはり女性にモテないとか、粗末に扱われたという恨みからの犯行が多い。



革命などを目的とした左翼的なテロ活動など、政治的な目的を持つものは、ほとんどなく、最近の犯行は、才能がなく、女性からも相手にされず、社会から相手にされない「男性」による犯行が目立っている。



これらの犯行は、皆、女性から相手にされず、社会から相手にされない「男性」による犯行なのである。女性の犯行はほとんどない。




そうしたことで、橘玲の『無理ゲー社会』の内容を思い出した。



近年、能力主義(メリットクラシー)が蔓延し、才能がある男は、富や女性からの人気や性愛を獲得し、才能がない人は、それらを得られないで社会から疎外されていくという形で、才能のあるなしで、激しく二極化する社会となって来ている。



そうした社会の功罪について、マイケル・サンデル教授も『実力も運のうち 能力主義は正義か?』(原題:The Tyranny of Merit: What’s Become of the Common Good? (メリットの専制政治:公益はどうなるのか?(英語版))の中で、指摘している。



能力主義というのは、市場原理主義(ネオリベラリズム)と近いが、より包括的な概念で、経済学の観点からは、市場原理主義と呼ばれるが、社会や文化といった側面からは、能力主義という形で、立ち現れる。



能力主義(メリットクラシー)と市場原理主義(ネオリベラリズム)は、伝統社会、封建社会が壊れて、民主主義社会となり、全ての者に平等な機会が提供される中で、もたらされた双子の兄弟であるが、能力主義は、市場原理主義という経済システムによって、過度に高められている状況である。



つまり、激しい競争によって持てる者と持たざる者に二分化していく社会である。



そして、こうした社会においては、持たざる者は、社会から疎外され、取り残されて、富や性愛から疎外され、社会に対する復讐心を募らせる。



橘令が指摘しているが、秋葉原無差別殺傷事件を起こした加藤智大も女性から相手にされなかったことが主な犯行の動機である。




こうした事件に共通する犯人像は、能力主義社会の中で、敗北し、阻害され、富や性愛の機会から取り残され、激しい恨みを抱えた「男性」である。



つまり、この北新地で、メンタルクリニックに火をつけた男性もクリニックのスタッフの女性たちから不親切に扱われたり、何らかの恨みを抱かせる原因があったのかもしれない。





日本社会における悪しき復讐=放火の伝統


因みにここで何故、放火なのかと言えば、銃社会であるアメリカと違って、何か大規模なテロリズムを起こす場合は、放火するのが最も簡単な方法だからである。



銃を購入したり、爆弾を購入したりするのは、日本では無理であるが、放火するというのは、誰でも簡単にできる復讐の手段であり、復讐する場合の日本の伝統的な方法なのである。



『日本残酷物語1 貧しき人々のむれ』平凡社ライブラリーを読んで知ったことだが、この本は、昔の日本の習俗についての記録で、近代化以前の日本の昔の人々の生活や習俗について詳しく述べられている。



その中で、日本人は、恨みを抱くと、相手の家に火をつけるという、陰鬱な慣行があったようなのである。



つまり、これは今回の北新地の事件にも表れたように今でも行なわれているということである。




山林に住む貧しい農民が、生活の足しにする為に内職で藁を編んで、藁がさや藁がっぱを作って、街に出て来て、家を戸別訪問して売りに行った時に相手がそれを断って買わないと、それを恨みに思って、家に火をつけたりするようである。



これは日本の暗い伝統社会の歴史と言うことができる。



日本は水に囲まれた島国であり、水の国であり、蟹座、蠍座、魚座が強いのだが、そうした復讐を行なうのは、おそらく蠍座の人々ではないかと思われる。



然し、逆説的に蠍座の人々は、最も人の感情に配慮する、すなわち、人に気を使う人々である。




対人場面において、相手の感情に配慮するというのは、上手く社会を渡っていく為の重要なスキルである。



カウンセリングなどにおいても共感や傾聴によって、相手の感情に配慮していくことは、重要なスキルの一つとされている。



皮肉なことに今回の事件は、そうした共感の能力を必要とするメンタルクリニックで起こった事件であった。



社会が激しい競争によって持てる者と持たざる者に二分化し、恨みを抱えた人々が増えていけば、恨みを抱えた人々の持てる者への復讐という社会的リスクも増していくのである。





インセル(非自発的禁欲者)


因みに欧米では、恋愛相手や性的パートナーが見つからず不満を抱え、女性や「モテる」男性を敵視する男性たちをインセル(非自発的禁欲者)と呼び、インセルを自認する容疑者による暴力、殺人事件が増えているようである。



女性嫌悪思想が影響か 乱射事件で「新たなテロ」論争―英
2021年08月18日 07時24分 JIJI.COM

【ロンドン時事】英南西部プリマスで5人が犠牲になる銃乱射事件が起き、自殺した容疑者の男が感化されていた可能性がある「インセル」というインターネット上の運動に改めて注目が集まっている。警察は事件を「テロではない」と判断したが、インセルは女性蔑視や過激主義につながる危険性を指摘されており、その影響力や行為の重大性からテロと見なすべきだと訴える声も出ている。

銃乱射で6人死亡 テロとの関連なし―英

 事件は12日夜、プリマスの住宅街で発生した。銃で武装した男(22)が家屋に押し入り自身の母親を殺害し、さらに路上で3歳の女児を含む通行人ら4人を射殺した後、自殺した。男は銃所持の免許を持っていた。銃犯罪が比較的少ない英国でこうした規模の乱射事件が起きたのは11年ぶりで、英社会に大きな衝撃を与えている。
 犯行の動機は不明だが、男は事件前にネットで母親やシングルマザーに対する憎悪のメッセージを書き込んだり、インセルのフォーラムに参加したりしていた。
 インセルは、英語のINVOLUNTARYとCELIBATEを組み合わせた造語で、「非自発的禁欲主義」を意味する。恋愛相手や性的パートナーが見つからず不満を抱え、女性や「モテる」男性を敵視する男性たちを指すと言われ、北米ではこれまでもインセルを自認する容疑者による暴力・殺人事件が起きてきた。
 プリマスの事件の容疑者もユーチューブなどでインセルについて言及。女性と付き合えないことや性体験のないことに不満を漏らしていた。容疑者がインセルの考え方に影響され、犯行に及んだと疑う見方が根強い。

 メディアでは「インセルは新たなテロの脅威か」(BBC放送)と議論が活発化してきた。インディペンデント紙によると、反テロ法に関し政府に助言を行う専門家は、同様の事件が増えるようであればインセルをテロとして扱うべきだと主張した。


因みにフロイトの理論では、性欲(リビドー)というものが、あらゆる社会的活動の根底にあるエネルギーであり、結局、競争社会で敗北することは、性愛が得られないという結果につながり、それが大きな社会問題と化したという解釈で納得できる。



だからこそ、こうした犯罪は全て「男性」によって行なわれているのである。



橘令によれば、一夫一婦制というのは、性愛の平等をもたらす民主的な仕組みであり、離婚率が高くなった現代では、富や地位のある男性が、結婚と離婚を繰り返して、複数回の結婚を行なうことによって、実質的に複数の女性と結婚しているのだという。



その一方で、一生のうち、全く交際も結婚もしない男性が増加してしまう。



そうした不満を抱えて、恨みを抱く男性が、何らかの右翼的な政治イデオロギーなどを身に着け、理論武装すると、危険なテロリストになっていく可能性が高いのである。



こうした犯罪傾向は、市場原理主義、能力主義がもたらしており、競争社会の中で、敗北した人々に配慮するベーシックインカムのような仕組みを整えなければ、こうした社会不安は増大していく。



「女性嫌悪思想」などと言ったものは存在しないのである。



それは女性を求めたが女性に顧みられなかった男性の恨みであり、根本的には、能力主義、市場原理主義による過度の競争社会がもたらした持てる者と持たざる者の二分化が原因である。




(参考資料)

60代男の紙袋付近から出火との情報 大阪・北新地ビル火災
2021/12/17 14:33 産経新聞

大阪市北区曽根崎新地で17日午前に発生したビル火災で、60代の男が持っていた紙袋付近から出火したとの情報があることが、捜査関係者への取材で分かった。この男が火を付けたとの情報もあり、大阪府警は放火の疑いがあるとみて詳しい状況を調べている。

府警や大阪市消防局によると、17日午前10時20分ごろ、大阪市北区曽根崎新地の堂島北ビルで、「4階が燃えている」などと119番があった。

午前10時45分ごろにはほぼ消し止められたが、8階建てビルの4階フロア約20平方メートルが燃え、28人が負傷。このうち27人が心肺停止となり、患者を受け入れた病院によると3人の死亡が確認された。

大阪市消防局によると、27人は全員4階から救出された。このフロアにはメンタルクリニックが入居していた。クリニックのホームページは、心療内科と精神科の診療を行っていると紹介。金曜日は午前10時から診療が開始される。現場はJR北新地駅の近くで、飲食店やビルなどが並ぶ繁華街の一角。
参照元:60代男の紙袋付近から出火との情報 大阪・北新地ビル火災
2021/12/17 14:33 産経新聞
全米で急増する「非モテ過激派」の深い闇
10代でレイプを妄想した少年が、40代で女性の大量殺戮を企てるまで
2019.6.29 COURRIER

2018年11月、米フロリダ州のヨガスタジオで恐ろしい銃乱射事件が起きた。狙われたのはいずれも女性で6人が死傷。容疑者は女性を「遺伝的に劣った存在で、男に奉仕するのが当たり前」と考える男性至上主義者だった。なぜいま女性に対する憎悪をたぎらせた過激主義がアメリカで台頭しているのか? 次々と陰惨な事件を引き起こす彼らの実態に米紙「ワシントン・ポスト」が迫った。

女性嫌悪が過激思想を誘発

2018年11月のある金曜日の午後。米フロリダ州タラハシーにあるヨガスタジオのインストラクター、ケイト・ピアソンは5時30分から始まるレッスンの準備をしていた。

この「ホットヨガ・タラハシー」の受講生はほとんどが女性だが、男性でもレッスンを受けられるとピアソンは話す。生徒たちはヨガのもたらす光と愛に安らぎを求めているのだという。

だが、その日の5時15分ごろにスタジオにやってきた男はちょっと様子が違った。ピアソンがひとりで受付業務をしていると、フロリダ州立大学のえび茶のTシャツで太鼓腹を覆った大柄の男が、包装されたままのヨガマットを小脇に抱えて現れたのだ。
参照元:全米で急増する「非モテ過激派」の深い闇
10代でレイプを妄想した少年が、40代で女性の大量殺戮を企てるまで
2019.6.29 COURRIER
ヨガ教室で女性だけを標的にした銃乱射事件が発生
なぜ男は女を憎むのか?「非モテ」が凶悪犯罪に走る原因を米紙が究明
2019.6.29 COURRIER

アメリカでは、女性憎悪に誘発された凶悪犯罪の増加が社会問題になっている。ひとりの白人男性が、女性だけを狙った銃乱射事件を起こすまでの過程を丹念に取材し、過激思想に走る若者たちの深層心理に迫った骨太ルポ。

「狡猾な女たちに人生を台無しにされた」

アメリカで女性への憎悪犯罪が急増していることを受けて、FBIは2013年からその追跡調査を開始した。だがその統計は、全米数千ヵ所の警察署による憎悪犯罪の報告や定義と大きく食い違う結果となり、にもかかわらず訂正もされていない。

2017年の調査を例にとると、女性だからという理由での襲撃事件は24件で、憎悪犯罪全体のほんのひと握りにすぎない。

だが研究者によれば、多くの事案は警察もしくは当事者の女性からの申告もないため表面化していないという。そして今後、被害者意識を抱く男たちと、広範な憎悪運動家グループとが互いに刺激しあってさらなる襲撃の発生も予測される。

ユダヤ系の米人権団体「名誉毀損防止同盟(ADL)」は、「多くの白人至上主義者グループを結びつける役割を果たしているのが、女性に対する根深い嫌悪感情である」と同団体の報告書『女性が敵になるとき: 女性嫌悪と白人至上主義との交点』で指摘している。

白人至上主義の守旧派から見た女性は「民族の母」であり崇敬の対象であったのに対し、偏狭な若い世代にとっては自分たちの地位を侵食する新たな憎しみの対象なのだ。

「究極の支配者と言える地位にのぼり詰めたとしよう。それでもなお、どこかのあばずれ女のせいで人生のすべてがパーになってしまった」

ネオナチのウェブサイト「デイリー・ストーマー」の設立者であるアンドリュー・アングリンは、こう断言する。アングリンは他のヘイトサイトが落ち目になるなか自分のサイトへのアクセス数が着実に伸びているのは、反フェミニズムのコンテンツがあるからだと自賛する。

「インセル(男性の非モテ過激派)は怒りの塊。そういう連中の矛先がユダヤ人に向いたりするのはよくあること」とデイリー・ストーマーに投稿しているのは、アングリンの仲間のひとりで「ウィーヴ」のハンドルネームで知られるアンドリュー・オーエンハイマー。さらに彼はサイトでこう綴っている。

「ユダヤ人に人生を台無しにされた、という人間はほとんどいない(個人的にこの目で見たことはない)。反対に、ワガママで狡猾な娼婦たちはゴマンとおり、そんな連中のせいで男はみな、人生をフイにしているんだ(その最初の相手が母親のときもある)」

増加する非モテ過激派の犯罪

この手の醜悪なレトリックは、現実の暴力に発展しかねない。

2019年4月にサンディエゴ郊外のシナゴーグを襲撃したとされる19歳の看護学生は反ユダヤ主義的な陰謀論を唱えるだけでなく、フェミニズム運動推進にユダヤ人の果たした役割を引き合いに出していた。

マノスフィアのなかでも暴力行為に走りやすいのは、非モテの過激派である「インセル」のグループだ。彼らは、つきあいたい女性を侮蔑の意味を込めて「ステイシー」と呼び、魅力的ないわゆるリア充男性を「チャド」と呼ぶ。インセルの願いは彼らを葬り去ることだ。

2014年、カリフォルニア州サンタバーバラで、エリオット・ロジャー(22)という男が銃と刃物と自分の車を使って6人を殺害、13人を負傷させ、その後自殺するという無差別殺傷事件が発生した。

大学を中退していたロジャーの犯行の動機は、彼女がいないこと、そして異なる人種間のカップルへの嫌悪感だったという。

翌2015年、オレゴン州のアムクワ・コミュニティ・カレッジで英語クラスの教師と学生合わせて9人を殺害した26歳の男子学生は、犯行声明で彼女なしの童貞の身を嘆き、人種差別的な発言を繰り返した。

2018年にカナダのトロント市街の歩道をレンタカーのバンで突入して10人を死なせた男は事件直前、フェイスブック上にこう投稿していた。

「インセルの反乱はすでに始まっている!」

容疑者たちの多くはバイアリーも含め、犯行前にロジャーの起こした事件に言及していたという。

女性たちを次々と銃で…

5時30分のクラスが始まり、受付デスクに座っていたスタッフのケイト・ピアソンは背後の壁越しにパンパンパンと響く鋭い音を聞いた。

スタジオ内のステレオ装置が落下したのかしら──だがそのうち、インストラクターのくぐもった声が聞こえ、銃声が立て続けに5発、聞こえた。(略)
参照元:ヨガ教室で女性だけを標的にした銃乱射事件が発生
なぜ男は女を憎むのか?「非モテ」が凶悪犯罪に走る原因を米紙が究明
2019.6.29 COURRIER
カリフォルニア学生街で銃乱射、6人死亡
2014年5月25日 7:48 AFP BB NEWS

【5月25日 AFP】米カリフォルニア(California)州の海岸沿いにある学生街で23日夜、何者かが車で移動しながら発砲し、6人が死亡、7人が負傷した。警察は24日、「計画的な大量殺人」である可能性を示唆した。

 事件が起きたのは、カリフォルニア大学サンタバーバラ校(University of California Santa Barbara、UCSB)周辺で、最初の発砲があったのは、23日午後9時半ごろ(日本時間24日午後1時半ごろ)だった。警察当局によると、容疑者は、同キャンパス近くのアイラ・ビスタ(Isla Vista)地区で、警察との銃撃戦の際に死亡した。死亡原因が、自殺と警察による発砲のどちらであったかは明らかになっていない。

 まだ身元が明らかになっていないこの容疑者は、学生らが街に繰り出す金曜日の夜に、黒いBMWで移動しながら同地域の複数の場所で歩行者らに向けて銃を複数回発砲した。

 サンタバーバラ郡のビル・ブラウン(Bill Brown)保安官は報道陣に対し、「われわれは、この残虐な行為が、あらかじめ計画された大量殺人であったことを示唆する文書やビデオテープなどの証拠品を入手し、現在分析を進めている」と述べ、事件現場は全部で「9か所と特定された」と明らかにした。

 テレビでは、通りを埋め尽くす救急車や警察車両の映像が流された。目撃者らは、初めのうち銃声を花火か爆竹だと思ったと話している。

 そのうちの1人、最初に発砲があった現場近くのレストランのテラス席で食事をしていた男性は、米紙ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)に対し、2度目の発砲が始まった際に、警察官から、「店内に入り身を守るようにと指示された」と語った。

 また別の目撃者は、米NBCテレビの地元支局に対し、BMWがデリの前に止まり、店の前で食事をしていたグループに対する12~20発の銃声を聞いたと語った。

 容疑者の目の前にいたという女性は、米CNNテレビに対し、容疑者の「小型の黒いピストル」をエアソフトガンと勘違いして歩き始めたところで、背後から発砲されたという。女性は涙をこらえながら、「風が顔をかすめていくような感じだった」と語った。
参照元:カリフォルニア学生街で銃乱射、6人死亡
2014年5月25日 7:48 AFP BB NEWS
非モテ男子が暴発するミソジニー(女性嫌悪)無差別テロの恐怖 英で22歳男が散弾銃で7人を殺傷して自殺
木村正人在英 国際ジャーナリスト 2021/8/14(土) 10:59

交際相手を見つけられない「インセル(非モテ)」とは

[ロンドン発]英南西部プリマスの住宅街で12日夕、地元の軍需企業で実習中のジェイク・デイヴィソン容疑者(22)がポンプアクション式散弾銃で母親のマキシンさん(51)を殺害したあと自宅から路上に出て通りがかった43歳と3歳の父娘を射殺しました。

デイヴィソン容疑者はさらに3つの現場で2人を殺害、2人を負傷させて自殺しました。

「銃大国」アメリカと違って銃の保有が厳格に規制されているイギリスで乱射事件が起きるのは2010年にイングランド北西部カンブリアでタクシー運転手が12人を殺害し、自殺した事件以来のこと。

デイヴィソン容疑者は銃を保有する免許を持っており、警察では殺傷能力の高いポンプアクション式散弾銃の入手経路、犯行に至った背景や動機を調べています。警察は「テロ」ではないと発表しましたが、果たしてそうでしょうか。

デイヴィソン容疑者はユーチューブやReddit への投稿で「人生に打ち負かされた」「殴打された」「社会的に孤立し、交際相手の女性を見つけるのに苦労している」と告白。

自分で恋愛やセックスの相手を見つけられず、性的経験がないのは女性やモテる男性に原因があると攻撃するネット上の非モテ・コミュニティー「インセル」に言及していました。

「インセル」のフォーラムにも投稿し、「私は全く女性をひきつけることができない童貞男だ」と告白。「ほぼ完全なシステム障害に達したにもかかわらず、彼は使命を達成しようとし続けている」「私はクレーンの操縦士として良い仕事を見つけている」などと語っていました。

不本意な禁欲主義者たち

2014年5月、米カリフォルニア州アイラビスタでエリオット・ロジャー容疑者(当時22歳)がカリフォルニア大学サンタバーバラ校近くで銃や刃物を使って6人を殺害、14人を負傷させたのち自殺しました。

『ハンガー・ゲーム』などハリウッド映画製作者の息子のロジャー容疑者は自分が童貞であることへの欲求不満と女性への嫌悪に満ちていました。

「女の子にキスしたことさえなかった。女性がなぜ、理想的で偉大な男性である自分とセックスしたがらないのか理解できない」と訴え、自分への愛とセックスを否定した社会への「復讐以外に選択肢はない」「私は真の犠牲者だ」と訴えて凶行に及びました。

141ページのマニフェスト(犯行声明)によって倒錯した「インセルのヒーロー」になります。「インセル」とは「インボランタリー・セリベイト」の略で「不本意な禁欲主義者」を意味します。

もともと愛を見つけるのに苦労している「孤独な処女」のために1997年にウェブサイトを開設したカナダ在住の女性は、それがのちのち女性に向けられた憎しみと怒りのサブカルチャー・コミュニティーになるとは夢にも思っていませんでした。

ロジャー容疑者の事件が引き金となり、15年10月にオレゴン州のアムクワ・コミュニティ・カレッジで26歳の男子学生が准教授や学生計9人を射殺、8人を負傷させたあと自殺しました。

犯行に及んだ学生は「友だちも仕事も彼女もいない」と不平を漏らし、童貞であることを公表。「インセル」に触れ、ミソジニー大量殺人者のロジャー容疑者を称賛していました。

18年4月には、カナダのトロントで男の運転するバンが10人をはねて殺害、16人を負傷させました。

動機は女性による性的・社会的拒絶への復讐で、男はFacebookに「インセルの反乱はすでに始まっている。われわれはみな最高の男性であるエリオット・ロジャーを歓迎する!」と投稿していました。

「インセル」によるミソジニー無差別テロはアメリカを中心に続発。Redditは4万人を超えるメンバーがいる「インセル」コミュニティーを閉鎖したことがあります。

しかし交際相手に困らない男性「チャド」や魅力的な女性「ステイシー」に嫌悪や憎悪、怒りを暴発させる「インセル」のSNS投稿は今回の事件のように野放しになり、ミソジニーや女性嫌悪や蔑視の「温床」になっているのが現状です。

日本でも「インセル」のミソジニー無差別テロは起きている

日本でも「インセル」のミソジニー無差別テロは起きています。

6日、東京・世田谷区を走行していた小田急線の車内で男が刃物を振り回して乗客に切りつけ、10人にケガを負わせた事件で、警視庁に殺人未遂の疑いで逮捕された職業不詳の容疑者(36)は「幸せそうな女性を見ると殺したいと思うようになった。誰でもよかった」と供述しました。

法務省の「無差別殺傷事犯に関する研究」で52人を実際に調べたところ7人が性的問題を抱えていました。

日本では金融バブル崩壊後、「失われた20年」に当たる1992年から2015年の間に、18~39歳で性交渉の経験がない日本女性(処女)が21.7%から24.6%に、日本男性(童貞)は20%から25.8%に増加しました。30代の10人に1人は性交渉の経験がないと回答。無職、非正規・時短雇用、収入の低い日本男性ほど童貞が多かったそうです。

10年時点で日本の18~39歳の処女は326万人、童貞は380万人と推定されています。30代の処女や童貞は156万人とみられています。スウェーデン・カロリンスカ研究所の上田ピーター氏と東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室のサイラズ・ガズナビ氏らの研究チームの調査で分かりました。

童貞とミソジニー無差別テロを短絡的に結びつけるわけにはいきません。しかし、筆者は格差を拡大させた08年の世界金融危機によって世界中で大量の「負け組男子」が生み出され、欲求不満が社会に充満していることがミソジニー無差別テロの背景の一つになっているのではないかとみています。

格差はさまざまな影を社会に落とします。コロナ危機の接触制限によりサイバー空間で欲求不満や嫌悪、憎悪、怒りが増幅している恐れがあります。

プラットフォーム企業は金儲けばかりに走るのではなく嫌悪、憎悪、怒りを煽る投稿を野放しにしていてはなりません。また社会全体でメンタルヘルスの問題に取り組む必要があるのは言うまでもありません。

(おわり)
参照元:非モテ男子が暴発するミソジニー(女性嫌悪)無差別テロの恐怖 英で22歳男が散弾銃で7人を殺傷して自殺
木村正人在英 国際ジャーナリスト 2021/8/14(土) 10:59
英南西部の住宅地で乱射事件、5人殺害 22歳容疑者は自殺
2021年8月14日 BBC NEWS

英南西部プリマスの住宅地で12日午後、22歳男性が約6分の間に5人を射殺した後、自殺した。イギリスでは2010年以来、最悪の乱射事件となった。

デヴォン・コーンウォール警察のショーン・ソーヤー本部長によると、ジェイク・デイヴィソン容疑者は銃砲所持免許を保有していた。警察は、事件はテロ関連ではないとしている。

調べによると、容疑者は自宅で51歳女性を殺害。警察は、容疑者と女性は「家族関係にあった」とみている。容疑者は続いて家の外に出て、通りかかった「とても幼い女の子をただちに撃ち殺した後、その女の子の男性親族も撃ち殺した」と警察は説明した。この少女は3歳で、一緒にいた43歳の父親も殺害されたとみられている。

容疑者は続いて、通りで53歳女性と33歳男性に向けて発砲。病院に搬送された2人は「命に別状はない様子」だという。

容疑者はさらに近くの緑地に入り、59歳男性を射殺。近くの通りで66歳女性を撃った。この女性は後に病院で死亡した。

ソーヤー警察本部長は「複数の目撃者によると、デイヴィソン容疑者はこの時点で銃を自分に向けて、自分の命を絶った」と話した。

本部長によると、容疑者は銃所持免許を保有。使用された銃は目撃者によると「ポンプアクションを使うショットガン」だったというが、警察はまだこれを確認していない。

本部長は、銃はすでに現場から回収しており、事件の共犯者の捜索は行っていないと述べた。

「この事件は、家庭に関することが屋外に流れ出て、複数の住民がきわめて悲劇的な状況で命を落とす羽目になった事案だと、考えている」と本部長は説明した。

動機はまだ特定されていないという。

現場ビディック・ドライブ通りの住所について警察に通報があったのは午後6時11分のことで、警官たちは6分以内に到着したという。この間に「複数回の発砲があった」と本部長は話した。救急隊は午後6時半ごろに現場に到着した。

警察は13の現場で捜査を続けており、容疑者のコンピューターのハードドライブやソーシャルメディアへの投稿も捜査の一環として調べる方針を示した。

事件現場の近くに住む目撃者のシャロンさんは、「最初に怒鳴り合う声が聞こえて、続いて銃声が聞こえた。まずは3発か4発」と述べた。

「そうすると犯人が家のドアをけり破って、無差別に撃ち始めた。撃ちながら家を走り出て、直線の緑地帯にいた人たちも撃って、そのまま発砲しながら通りを移動していった」

「インセル」

デイヴィソン容疑者が事件前に最後にソーシャルメディアに投稿したとみられる11分の動画で、容疑者は自分が社会的に孤立し、女性と知り合うのが難しいと話していた。さらに、「インセル(incel)」という表現を繰り返し使った。

「インセル」とは「involuntary celibate(非自発的に禁欲・独身)」を意味するようになった略語で、最近ではオンラインで集団になって女性を攻撃したりする男性たちを表すこともある。そうした「インセル」が実社会で暴力行為に及んだ事件も、世界各地で起きている。

3週間前に掲示板サイト「レディット」に投稿した動画で、デイヴィソン容疑者は「まるで映画だっていうのは分かるけど、時々自分がターミネーターとかそういうのみたいだと思ったりするのが好きだ。完全にシステムがシャットダウンしそうになるけど、それでも彼は任務を果たそうとし続けるんだ」と、話していた。

ほかに容疑者は、クレーン操作の仕事に採用されたと言い、銃砲取締法についても言及。「銃乱射事件は新しい現象で、銃そのもののせいじゃない」、「それに人が思っている以上にヨーロッパやイギリスには銃がたくさんある」と述べていた。

レディット上の別のページでは、童貞グループへの投稿で、自分が「童貞」で「女性は全く振り向いてくれない」と不平を書き込んでいた。

ユーチューブとフェイスブックは、デイヴィソン容疑者のアカウントを規約違反で削除していたことを確認した。

ソーシャルメディアでの偽情報を取材しているBBCのマリアナ・スプリング記者は、容疑者が自分の外見や女性に「もてない」とユーチューブ動画で不満を口にしていたと指摘。さらに、「インセル」と呼ばれる女性嫌悪的なオンライングループが使う、様々な表現を使っていたという。

スプリング記者によると、「インセル」と呼ばれるオンライン・サブカルチャーに集まる男性は、自分の外見や女性との関係、人生全般に対する不満を、女性や、女性と良好な関係を築ける男性たちのせいにすることが多い。

防衛機器エンジニアリング大手のバブコック・インターナショナルは、デイヴィソン容疑者が昨年8月以来、プリマスの現場で助手として働いていたことを確認した。同社のデイヴィッド・ロックウィードCEOは、「事件に衝撃を受け、とても悲しんでいる」とコメントした。

ボリス・ジョンソン英首相は13日、「プリマスで昨夜起きた悲劇的な事件で、命を落とした人たちの家族や友人たち、影響を受けたすべての人たちに思いを寄せている。救急救命隊の対応に感謝する」とツイートした。

(英語記事 Plymouth shooting: Jake Davison was licensed gun holder)
参照元:英南西部の住宅地で乱射事件、5人殺害 22歳容疑者は自殺
2021年8月14日 BBC NEWS
ツイッターで「女性嫌悪」反対運動、米銃乱射事件受け
2014年5月27日 13:51 AFP BB NEWS

米カリフォルニア(California)州イスラビスタ(Isla Vista)で起きた銃乱射事件の犠牲者追悼のために置かれた花束などの前で嘆き悲しむ男性(2014年5月25日撮影)。

【5月27日 AFP】米カリフォルニア(California)州で、女性経験がない22歳の男が女性への憎悪を理由に6人を殺害する事件が起きたことを受け、マイクロブログのツイッター(Twitter)では「女性嫌悪」に反対するキャンペーンが展開され、数千人のフォロワーを集めている。

 エリオット・ロジャー(Elliot Rodger)容疑者(22)は23日、同州サンタバーバラ(Santa Barbara)近郊のイスラビスタ(Isla Vista)で銃を乱射するなどして6人を殺害し、自殺。被害者のうち3人は男性だったが、同容疑者は犯行前にしたためた長い声明文や、動画共有サイトのユーチューブ(YouTube)に投稿した動画の中で、怒りの原因は女性だと語っていた。

 同容疑者は動画の中で、「孤独、拒絶、満たされない欲望の数々」について不満をもらし、計画していた「報復の日」に言及。「甘やかされた高慢で生意気な金髪あばずれ女は、一人残らず殺してやる。俺がどうしても欲しかった女たちは皆、俺を拒絶し、劣った人間として俺を見下した」と語っていた。

 ツイッター上では事件後、女性たちが「女性嫌悪」に関する話を共有するためのハッシュタグ「#YesAllWomen」(「そう、全ての女性」の意)が新たに立ち上げられ、26日には数千人がこれを使って投稿した。

 ある投稿者は、「#YesAllWomenなぜなら、私が男女平等を訴えるたびに、男性が嫌いなわけではないと説明する必要があるから」とコメント。

 また別の女性は、「私は1918年生まれ。母は、私たち姉妹の投票権のために闘った。あなた方も、娘さんたちが賢く投票できるように闘わなければならない。#YesAllWomen」と投稿した。

 しかし、このハッシュタグはすぐさま「#NoAllMen」(「いや、全ての男性」)というライバルも生み出した。

 ある投稿者は、「#YesAllWomenは美しいが、#NoAllMenがブタなわけじゃない!世の中に悪があるのは明白。これまでも、これから先も」とコメントしている。
参照元:ツイッターで「女性嫌悪」反対運動、米銃乱射事件受け
2014年5月27日 13:51 AFP BB NEWS
モテない――ただそれだけで大量殺人を犯す“童貞”は、なぜ誕生したのか?
『アメリカ炎上通信 言霊USA XXL』――「インセル(望まない禁欲者)」より
町山 智浩 2019/09/16

 ガタガタのトランプ政権下のアメリカでは、相も変わらず差別やテロ、デモが横行中。そんなアメリカで話題となった、もっともインパクトのある発言・暴言を取り上げるコラム「町山智浩の言霊USA」のシリーズ最新版『アメリカ炎上通信 言霊USA XXL』が9月27日に発売される。この最新コラムから選りすぐりの全3本を公開! 第1弾は「インセル Incel 訳・望まない禁欲者」

◆◆◆

モテない。ただそれだけで、無差別大量殺人を犯すテロリストたち

 秋葉原の歩行者天国で、加藤智大(当時25歳)がトラックで人混みに突っ込んだ上にナイフで通行人17人を無差別に殺傷してから10年後の今年、4月23日、カナダのトロント市の繁華街でアレック・ミナシアン(25歳)が自動車で通行人10人を轢き殺して逮捕された。

 ミナシアンは犯行直前、SNSに次のような投稿をしていた。

「インセルの反逆はもう始まった。チャドとステイシーの支配を打倒せよ! 偉大なるエリオット・ロジャー万歳!」

「インセル(Incel)」とはInvoluntary Celibate(望まない禁欲者)、つまり童貞のこと。英語版の2ちゃんねる、4chanで、本人たちが自称するようになった。チャドはモテる男性、ステイシーはモテる女性を意味するインセル語。エリオット・ロジャーは、2014年にカリフォルニアで、モテないことを理由に、銃とナイフで6人を殺した青年の名前だ。

 モテない、ただそれだけの理由で、無差別大量殺人を犯すテロリストが日常に潜んでいる! 驚いたマスコミは、現在インセルの中心になっている「インセルス・ミー」という匿名掲示板を覗いて、さらに慄然とした。そこには女性や、恋愛ができる男性に対する凄まじい憎悪が渦巻いていた。

「レイプの利点は何だと思う?」というアンケートの答え

 行方不明になっていた若い女性が惨殺死体で発見されたというニュースに「また売女が死んだ」「ざまあみろ」と喜びのコメントが並ぶ。「レイプの利点は何だと思う?」というアンケートに「デートの必要がない」「金がかからない」などの答え。「インセルが救われるために法律を変えよう」という話題は「女の就労を禁止しよう。生きるためには結婚するしかないから、俺たちにも回ってくる」「そのために女の選挙権を剥奪しよう」と盛り上がる。これは「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」というドラマそのものだ。キリスト教原理主義者たちがアメリカの政権を握って、すべての女性から働く権利と、選挙権を奪ってしまうのだ。

「そんなことを言うのはやめよう。女性だって人間なんだ」

 インセルス・ミーの掲示板で、ただ一人、当たり前のことを反論している投稿者がいた。ジャック・ピーターソンというハンドルネームで、マスコミの取材に応じた、ただ一人の投稿者だった。新聞やテレビで、ピーターソンは、インセルは怪物ではない、ただの寂しい若者なんだと訴えた。

 ピーターソンはシカゴ在住の現在19歳。仕事もなく、母の家に引きこもっている。幼い頃からシャイで、小学校では女子から「ブサイク」「キモい」とイジメられた。中学は3回も転校したがイジメは止まらなかった。ついに高校1年で中退。自殺も考えた。唯一の慰めはネットだった。そこにはピーターソンと同じような人々がいた。彼に興味を持ってくれる女の子もいた。4歳年上で、彼が16歳の時に直接会い、童貞を奪ってくれた。

 でも、その初体験は惨憺たるものだった。彼女はピーターソンをブサイクだといい、ペニスが小さいと笑った。さらにその後、他の男とセックスして「あんたより良かった」とメールしてきた。

「ブラックピルを飲む」とは?

 弄ばれたピーターソンは完全にインセルの世界に入ったという。彼らは自分がインセルだと自覚することを、「ブラックピルを飲む」と呼ぶ。もともとアンチ・フェミニズムの男たちが「レッドピルを飲む」という言葉を使っていた。映画『マトリックス』で、赤いピル(錠剤)を飲むと、この世は現実ではなく、コンピュータに作られたヴァーチャル・リアリティにすぎないという本当の現実が見えるように、男女平等は嘘で、男尊女卑こそ真実だと「目覚める」ことを赤いピルを飲むと表現した(バカか)。で、ブラックピルを飲むとは、進化論的な競争と自然淘汰において容姿や経済力に劣る自分には女性と幸福になる可能性はないという事実を受け入れることを意味するのだという。

なぜインセルはモテないのか?

 でも、ピーターソンは心の優しい少年だった。自分を捨てた彼女のことも恨んでないという。

「僕に興味を持ってくれた唯一の人だし、何もないよりはいいから」

 彼は堂々とテレビ出演してインセルに対する世間の誤解と闘い、ネットでは女性への憎しみを撒き散らす他のインセルを「それでは嫌われるばかりだ」となだめた。だが、ある日突然、掲示板にアクセスできなくなった。「綺麗ごとばかり言うウザい奴」と嫌われていたらしい。

 そしてピーターソンはYouTubeでインセル脱退宣言をした。彼は取材を受けるうちに自分のコミュニケーション能力に自信を持つようになった。外に出て世間の中に入り、女性ともデートしてみると語った。

「インセルの仲間たち、ありがとう。僕にとって初めての友だちだった」

 そのYouTubeには「インセルを裏切ったな」「どうせまた傷ついてインセルに戻ってくるさ」などのコメントがついているが、「あなたの顔、全然ブサイクじゃないと思います」という女性の投稿もある。

 実際、けっこうイイ男なのだ。トロントで10人殺した犯人も、カリフォルニアで6人殺した犯人も実はブサイクではない。何が彼らにそう思わせたのか?

[初出 週刊文春2018年6月28日号]
参照元:モテない――ただそれだけで大量殺人を犯す“童貞”は、なぜ誕生したのか?
『アメリカ炎上通信 言霊USA XXL』――「インセル(望まない禁欲者)」より
町山 智浩 2019/09/16
秋葉原事件など無差別殺傷事件の犯人の多くはなぜ男なのか?
2018.07.02 07:00  女性セブン

過去の無差別連続殺傷事件を振り返る。

 新幹線殺傷事件の小島一朗をはじめ、附属池田小児童殺傷事件の宅間守、神戸連続児童殺傷事件の少年A、土浦連続殺傷事件の金川真大元死刑囚、秋葉原通り魔事件の加藤智大死刑囚、そして、相模原障害者施設殺傷事件の植松聖被告…。

 日本中を震撼させる犯行に及んだ犯人はいずれも男性だった。

 無差別の凶悪犯罪に及んでしまう心理に、性差は関係するのか。犯罪心理学に詳しい筑波大学人間系教授の原田隆之さんが解説する。

「確かに過去の無差別殺傷事件の犯人は圧倒的に男性が多い。理由として考えられるのは、男性ホルモンに含まれる『テストステロン』という物質です」

「テストステロン」には骨や筋肉の強化や性機能の維持など、男性にとって重要な役割を持つ一方で、攻撃性や粗暴さを高める面も持っている。

「もちろん、男性であることそのものが犯罪に結びつくわけでは決してありません。大きな犯罪が起きる背景には、家庭不和やアルコール乱用など、さまざまな要因がある。その中の1つを取り出してあげつらうのは危険です。犯人のパーソナリティーや置かれた環境、脳の状態など、生物学的な面と心理学的な面の両方から分析することが求められています」(原田さん)

※女性セブン2018年7月12日号
参照元:秋葉原事件など無差別殺傷事件の犯人の多くはなぜ男なのか?
2018.07.02 07:00  女性セブン

スポンサーリンク


スポンサーリンク

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

コメント

コメント一覧 (5件)

  • ここのクリニックに通っていた事があります。
    知ってるクリニックがこんな事件に巻き込まれるなんて、信じられません…。

    私は獅子座ラグナでダシャーが今月12日から、金星/土星/木星になりました。
    金星が牡牛座10室、土星が天秤座3室、木星が射手座5室で、6-8の絡みがある時期なのでちょっと気をつけようと思っていたのですが…。
    (小さな事だと、ちょうど12日から急に腰痛になって2日ほど寝てました。)
    自分が直接巻き込まれたわけじゃなくても、通っていた身近なクリニックがこんな事になるなんて、
    5室で6-8の絡みがあるのでマインドの苦しみ=傷ついた心療内科として6-8の絡みが表現されたのでしょうか?
    さすがにこじつけかなとも思いますが…。
    • 身近なクリニックが被害を受けたというのはショッキングですね。
      クリニックに通いお世話になっていたカウンセラーの先生が被害に遭われたのであれば9室の支配星や木星の傷として現れたのかもしれません。
      • ショックです…。先生も、クリニックの内装もよく覚えてるので、あそこで事件があったなんて…。
        人間はこんなに突然に簡単に死んでしまうんだなと…。キレイな内装で、クリニックの雰囲気も好きだったんですよね。

        火星も3室天秤座なので、9室と木星と両方とも傷つきがあります。
  • 秀吉先生が仰るように、蠍座の定座火星と牡牛座の高揚月、それに接合する高揚するラーフーケートゥ軸が事件を引き起こしたみたいです。
    また、今回の事件時の火星・月・ラーフーケートゥは牡牛座・蠍座の7〜9度に密集し、精密に接合、相互アスペクトし、現象を引き立てたみたいです。

    それと驚いたのは、今回の事件と京都アニメーション放火事件は、D1とD9でいずれもチャンドラマンガラヨガを形成してます。

    また、今回の事件のD1と京都アニメーション放火事件のD9は、どちらも、
    火星が定座蠍座。
    月が高揚牡牛座。
    ラーフーケートゥ軸が牡牛座ー蠍座軸で高揚。
    と言う点は全く同じです。

    https://ameblo.jp/natsusukimono/entry-12716296997.html
    • 北新地の火災のD1と、京都アニメーション放火事件のD9が同じ配置というのは興味深いです。

      D9で、D1と同じような配置が形成された時に同じようなことが起こったというのは、偶然ではなく、

      そうした条件が出来事を引き起こしたことを意味しています。

      また出来事は、D1の配置でもD9の配置でも引き起こされることも意味していると思います。

      このコンビネーションは、異常な執念深い復讐などの行動化をもたらす配置のようです。

      商品を買わない相手の家に火を付ける伝統という話を書きましたが、

      営業で相手にサービスや商品を買わせる力というのは、こうした凄みなのかもしれません。

コメントする

CAPTCHA