先日、高橋尚子選手が東京国際マラソンで優勝するのを見ていて、何故か妙に素直に感動したのを覚えている。
レース後の優勝インタビューでは毎日、夢を持って生きることの素晴らしさを観客の皆に説き、まるで大統領か何かのような精神的で感動的な演説をし始め、見ている観客が単なるマラソンの勝利インタビューでいきなり何を言い出すのかとハラハラしたかもしれない。
然し、彼女には非常に威厳ある教育的精神的な演説を嫌味なくできる純粋さがあり、自分の優勝は自分だけのものではなく、皆を元気づけるためのものであると、限りなく自己肯定的な自信のある発言をしていた。自己尊敬と誇り高き精神の持ち主だと思う。
何か見ている人が同一化してしまうようなカリスマ性があり、スーパースター、スーパーヒーローであると思う。マラソン選手の枠を逸脱していると言える。
39キロ付近でスパートをかけ、ライバルをはるか後方に引き離しての優勝は劇的だった。
そして、スランプ時の悲惨さも劇的であった。
レース中の失速とアテネオリンピックの候補落ち、ライバルの優勝、そして、マスコミに忘れられていく中、小出監督との別れと独立、練習のケガと大会出場の断念を経験した。
どん底の状態もまたヒーローにふさわしいくらい悲劇的で厳しくつらいものであった。
今回の大会出場前に足の肉離れが心配されるトラブルがあり、もう高橋はダメかという悲壮感、悲しみが起こりつつあった。
今度、ダメだったら、もう再起はできないのではないかという緊張感が張り詰める中で、彼女はレース前のウォーミングアップをしていた。
高橋は大丈夫なのかと見ている人は心配したと思う。今度、負けてしまえばもう世間からは忘れられていき、二度とマスコミのスポットライトは浴びれなくなるのではと思われた。
そんな見ている人もはらはらさせる中で、高橋尚子選手は39キロ付近で突然、先頭に踊りだし、力強くゴールを目指して、ラストスパートをし始め、ドラマのような展開だった。
優勝した高橋選手は最後に今まで導いてくれた恩師・小出監督の偉大さを称え、ねぎらいを忘れなかった。
観客席で教え子の優勝を喜ぶ小出監督。
高橋選手のトレーニングを支えたコーチやスタッフ、チームの仲間との喜びを分かち合う姿。
幸福と栄光を絵に描いたような、パーフェクトな光景だった。
彼女の勝利に同一化し、歓喜した人々は多かったと思われる。
ただのマラソンレースではなく、そこには2年前の敗北からのドラマが詰まっていた。観客はそこにドラマを見ており、単なるマラソン競技ではなかった。
スポーツ選手は競技だけが舞台ではなく、競技に至るまでのトレーニングや生活すべてを競技の中に凝縮させて表現する表現者だと思われる。
高橋尚子は、木星が射手座ムーラトリコーナで牡羊座バラニーで高揚する太陽にアスペクトしている。
教師を表す木星が太陽の栄光を支えており、恩師、小出監督の影響を思わせる。
先頭に飛び出して、2位以下を大きく引き離してのレース展開はまさに牡羊座の太陽の勝利であったと言える。
土星の影響を受けて試練にあった太陽が再び、栄光と威厳を取り戻したような展開だった。
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