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革命家とラーフ -重信房子、バイデン、ソロスのチャートの共通点-

2022 7/14



元日本赤軍最高幹部・重信房子のチャートで、月、ラーフ、火星が双子座アールドラーに惑星集中していたことは非常に驚愕したが、逆にこのような配置がなければ自分の信じるイデオロギーに完全に献身して国際テロリストとして活動することなどできないと思った。


その特徴は幻想、過剰性である。そして、ラーフの影響を強く受けた人には、中庸という概念が見られない。


何でもほどほどに・・・行き過ぎると害になるという考え方である。


ラーフは思想でも行為でも何でも徹底的に極限まで追求されてしまう。


重信房子のラーフとの強いつながりを見て、再び、バイデン大統領のチャートを思い出した。





バイデンのチャートで、私が脳裏に焼き付いて離れないのは、ナヴァムシャで9室双子座に惑星集中する月、水星、ラーフ、土星の惑星集中である。


9室は理想主義であり、宗教や神を表すハウスである。


双子座は、アリス・ベイリーの著作によれば、春分点が双子座にあった時にフリーメーソンにおける二本の柱が打ち立てられたと記されており、フリーメーソンを表す星座は双子座である。


フリーメーソンとは主にユダヤの伝統の中における”宇宙の大建築家”としての神、理性を信奉する宗教のようなものである。


双子座というとウォール街のユダヤ系金融資本家を表す星座だが、国際金融資本家とフリーメーソンの関係については、調べれば直ぐに出てくると思う。


これは陰謀論的な文脈で紹介されていることが多いが、実際の話である。


フリーメーソンといった時にそれは、歴史上の事実としてのフリーメーソンを指すわけではない。


フリーメーソン的な理想を持っている人物や組織は、フリーメーソンと呼んでしまっていいと思う。





例えば、バイデン大統領は、国際自由主義者であると自らのことを主張している。


この国際自由主義というのは、フリーメーソンの理念を表しているといってもいいと思われる。


フランス革命の時、フリーメーソン、イルミナティーが背後で暗躍していたと言われているが、絶対王政で、国王に権力が集中する状態は、フリーメーソンにとっては打倒すべき対象である。


また王侯貴族など、封建的な身分制度によって利権を世襲する人々も打倒する対象であった。


フリーメーソンの理念である自由や平等、民主主義といった理念にとっては、独裁政権というものは全く相容れない正反対の概念である。


これらは共存することはできない。


絶対王政の時代には国王は実質的な権力を握っていたが、国民に主権があるという状態なら、許容できるため、そうしたことで、立憲君主制のような社会制度とフリーメーソンは、共存することはできるが、独裁政権とは、共存することはできない。


だからフリーメーソンは、プーチンのロシアとは共存できないのである。


バイデンは、明らかにアメリカを中心とした西側諸国の自由と民主主義が、世界にあまねく普及して打ち立てられなければならないと考えている人物である。


独裁体制のプーチンのロシアなど許容できないのである。


政治家にとって安全保障や軍事力といったテーマは、最も重要で、政治家の活動領域である。


イルミナティーのアダム・ヴァイスハウプトは、自由や民主主義といった価値を世界に普及したいと考えていたが、宗教的、神秘主義的な概念を一切否定している。


その為、フリーメーソンの政治の分野に特化した勢力とみなしてもいいかもしれない。


イルミナティーは政治活動を重視するため、暴力による革命を正当化する。



その為、ロシア革命を導いたボルシェビキや、また世界革命論のトロツキーに行き着くかもしれない。



アメリカのネオコンは、トロツキーの世界革命論を信奉して、民主党から共和党に寝返った人々であるという。


バイデンは、ジョージ・ブッシュのイラク戦争には当時、反対しており、またバイデンが、アフガニスタンから兵を引き揚げたというのも、対中シフトとは言われているが、実際には、ブッシュ政権の時代に始められた間違った戦争を終わらせるという意味合いがあったと思われる。


バイデンは、ウクライナで汚職をしたり、度々、問題発言をしてしまうなど、胡散臭さ満開の人物であるが、リベラル派の理念を過激に推進する人物である。


それで、自らの副大統領や大統領報道官にアフリカ系アメリカ人を採用したり、自由、民主主義、平等といった理念の体現に政権として見本を示すことに一生懸命である。


つまり、バイデンは、国際自由主義という理念を世界に普及させるために行動してきている。


そして、ウクライナにNATOへの加盟を目標にするように勧めてきた。



バイデンは、NATOの拡大を積極的に推進してきた人物である。


今現在、バイデン政権は、プーチンの野望を打倒するためにウクライナに最も武器を供与する国であり、独裁国家、全体主義国家であるロシアの弱体化を目標にしている。


もっと言えば、それはその前からずっとNATOの拡大という形で進められてきた。


ダボス会議=外交問題評議会は、世界政府を樹立して、アメリカの主権をその中に溶解させるという目標を持っている。


バイデンが行っていることもまさにそれであり、自由と民主主義の理念と全く相容れないロシアや中国を打倒して、アメリカの力で世界政府を作るという考えである。


このような考えはどこから生まれてくるかといえば、やはり、バイデンのD9の10室支配の月にラーフがコンジャンクトしていたり、D9の9室に在住する月や水星がアールドラー(ラーフ)に在住している為ではないかと思われる。


そのため、民主主義や自由を世界に確立させる為に武力も辞さず、アメリカの帝国主義的な世界政府の樹立というような考え方になりやすいのである。


バイデンは、オバマが大統領になったら、戦争が起こることを約束するといった予言めいたことを口にしていた。


当時、米民主党副大統領のジョセフ・バイデンが、2008年10月20日の大統領選挙運動中に「オバマが大統領になったら、就任後、6ヶ月以内に国際的な危機が発生し、オバマは(キューバ危機の時の)ジョン・F・ケネディのように重大な決断をしなければならない試練に立たされる」という内容の予言的なスピーチをして、国際的な危機が起こることを約束していたのである。




(スピーチの一部)

(略)And here’s the point I want to make. Mark my words. Mark my words.
It will not be six months before the world tests Barack Obama like they did John Kennedy.
The world is looking. We’re about to elect a brilliant 47-year old senator president of the United States of America. Remember I said it standing here if you don’t remember anything else I said. Watch, we’re gonna have an international crisis, a generated crisis, to test the
mettle of this guy. And he’s gonna have to make some really tough – I don’t know what the decision’s gonna be, but I promise you it will occur. As a student of history and having served with seven presidents, I guarantee you it’s gonna happen.
I can give you at least four or five scenarios from where it might originate.(略)


これは非常に興味深いが、9室は運命学のハウスであり、ナヴァムシャの9室に惑星集中するバイデンは、あたかも神託であるかのように将来について予言して見せたのである。


しかし、バイデンは政治家でもあるので、自分で予言したことが実現するように行動する人物でもある。


イルミナティーカードというのが流行っており、毎年、タイム誌にイルミナティーの予言が表紙の絵柄に隠された形で暗示されると言われている。


バイデンは、まさに自分で予言しておいて、自分で実行するようなまさにイルミナティーの上級幹部のような男である。



最近、興味深いのは、ジョージ・ソロスである。







最近、ダボス会議で、演説をし、ウクライナ戦争は、人類滅亡の危機であると主張し、この危機を乗り越えるには、プーチンを倒すしかないとはっきり名言している。


ソロスは、NGOなどを通じて、東欧におけるカラー革命を推進してきた人物で、独裁政権を打倒して、カール・ポパーの言う「開かれた社会」を実現するために奔走してきた。


ソロスは投資家ではなく、もはや革命家である。


ソロスの行ってきたことは、象徴的に言って、フランス革命で、絶対王政の君主を打倒したフリーメーソンの活動に等しい。


ソロスは、フリーメーソンそのものである。


然し、ソロスは、やはり、開かれた社会を実現する為には、独裁者を打倒しなければならないと考える人物である。


その為には戦争も武力闘争も避けられないと考えている。


そうした意味で、理想を実現するために暴力という手段も辞さないという過激派であり、イルミナティーやネオコンとも通じてしまう。


結局は、素晴らしい理想を持ちながらも、軍産複合体で、戦争マシーンであるネオコン(米国防総省)と違いが分からなくなってしまう。



ソロスの水瓶座の月から見て、5室の木星は、アールドラー(ラーフ)に在住しており、やはり、彼の理想主義は、何らかの極端な思想に辿り着いている可能性がある。



月は水瓶座の最後の度数にある為、場合によっては魚座に移動してしまう場合もあるが、理想主義を意味する木星がアールドラーに在住していること自体が、極端な思想に辿り着く可能性を示唆している。





自由や民主主義の信奉者が、ラーフの影響によって極端な思想に辿り着く場合、自由や民主主義を妨げる、それとは正反対の全体主義や独裁体制は、軍事力を使って、打倒しなければならないという思想に辿り着くのである。


それが革命家の典型的なパターンではないかと思われる。


今回、重信房子のチャートを見て、バイデンやジョージ・ソロスのチャートを見た所、そうした考えに行き着いた。


アメリカのリベラル派は、世界政府の樹立によって戦争を終わらせるといった政治理念を持っているが、そうした思想は、ケネディー大統領時代の人道主義的介入主義といった形で現れたりするが、一方で、過激なネオコンの理想主義として、ジョージ・ブッシュ時代のアフガニスタン侵攻やイラク戦争といった形でも現れるのである。


アメリカは、リベラルであったかと思えば、保守に豹変したり、変幻自在なのである。


従って、アメリカが推進する自由主義や民主主義は、どこか常に信用できないきな臭さが漂ってしまう。


いつ保守に転向して、崇高な理想主義であったものが、帝国主義に変わるかも分からないからである。


実際、アメリカが推進する新世界秩序(ニューワールドオーダー)とは、アメリカの帝国主義であるというのが、世界の人々の体感である。



エマニュエル・カントは、『永遠平和のために』の中で、世界平和を樹立するには、共和制で、立法に基づいた統治で、国際的な連盟を作るといった形で、理性や法による秩序を目指した。


国際連盟や国際連合の理念を先取りした考えを打ち出したようである。


それに対して、ヘーゲルは、そのようなやり方では世界平和は樹立できず、覇権国が世界を統一して、その覇権国が軍事力を使って世界を統治するようなやり方でなければ不可能であると考えていたようである。




歴史を見てみると、封建諸侯が群雄割拠する前近代社会において最も強い封建領主が武力によって全国を統一して、その後、法制度や常備軍を備えた近代国家が生み出された。



例えば、日本の封建時代を考えると、戦国時代に日本を統一したのが、織田信長で、その後、豊臣秀吉を経由して、最終的に徳川家が、徳川400年の幕藩体制を築いた。



封建社会が、近代社会に移行する過程で、必ず、武力による統一が行われているのである。



カントのように理性に期待して、条約や法制度だけで、世界的な平和や連帯を構築できるというのは、あまりにも理想主義的過ぎるのである。



それでヘーゲルは、世界を統一するには、覇権国家が必要であると考えていたようである。



例えば、今のウクライナ情勢を見てもロシアの不法行為を裁ける国際機関はどこにも存在しない為、誰もロシアを裁くことは出来ないのである。



ロシアの不法行為を裁ける唯一の存在としてのアメリカも国内でインフレに見舞われて、ロシアの核兵器を使用するという恐喝に対して、様子を伺いながら、ウクライナへの本格的な軍事支援には及び腰である。



米軍を派遣して、ロシアと直接、軍事力で衝突することも出来ず、中国の動向も注視しなければならない。



現実問題として、私たちは、アメリカ主導で、民主主義や自由主義の理念が世界に行き渡り、アメリカ一強による世界の統一が進むか、ロシアや中国による全体主義的なディストピアかという選択の中にある。


アメリカ一強の世界には不安が伴うが、然し、ウクライナ情勢で、EUやアジアに働きかけて、それぞれの国家に意見の表明や役割を求めるアメリカのリーダーシップには、より健全なものが感じられる。


だからこそ、ヨーロッパもアメリカと連帯して、プーチンロシアの野望に対抗したのである。



一つにはアメリカの力が弱まっており、より健全なやり方で他の国々と連帯していかないと、中国やロシアなどの独裁国家に対抗できないという状況もあるかもしれない。



ロシアや中国による全体主義体制よりも民主主義や自由主義を主張するリベラルな西側諸国のシステムの方がましである。



そして、ジョージ・ブッシュ時代にアメリカで暗躍したネオコン・グローバリストもその活動は沈静化しているように思える。



今は、プーチンのロシアにおいて、かつてヒトラーにおいて顕現したような民族主義的な野望が顕現している。



だから、ジョージ・ソロスが言うように我々が生き残るためには、プーチンを倒すしかないというのはおそらく正論である。



理想主義がラーフに色づけられる場合、中庸を失って過激になる傾向があるが、その理想主義は完全に間違っている訳でもないのである。




(参考資料)

ダボス会議でのスピーチ全文

ジョージ・ソロス「ウクライナでの戦争が第三次世界大戦になり、我々の文明は滅ぶかもしれない」
2022.6.1 COURRiER JAPAN プロジェクト・シンジケート(チェコ)Text by GEORGE SOROS

5月末にスイスのダボスで開催された世界経済フォーラムにおいて、投資家のジョージ・ソロスはスピーチで高まる危機感を露わにした。各国における民主主義の確立を支援してきたソロスは、ウクライナの戦争によって人類の直面する真の課題への取り組みが遅れ、取り返しのつかないことになると語った。

ウクライナでの戦争で対応が遅れる世界の課題

ロシアがウクライナに侵攻し、昨年のダボス会議から歴史の流れは大きく変わった。ヨーロッパは根底から揺るがされているが、欧州連合(EU)が設立されたのはこのような事態を防ぐためだった。

戦闘がいずれか停止したとしても、状況は決して以前に戻ることはない。ロシアの侵攻は第三次世界大戦の始まりとなり、我々の文明は生き残れないかもしれない。

ウクライナへの侵攻は突然起きたのではない。世界は以前から、「開かれた社会」と「閉じた社会」という正反対の二つの統治システムの間で闘争を繰り広げてきた。その違いをできるだけ簡単に定義してみよう。

「開かれた社会」では、国家の役割は個人の自由を守ること、「閉じた社会」では、個人の役割は国家の支配者に仕えることだと考える。

このシステムの闘争ゆえ、全人類に関わる他の問題は、後回しにせざるを得なくなった。パンデミックや気候変動への対処、核戦争の回避、国際的な組織の維持などだ。だからこそ私たちの文明は生き残れないかもしれないと言うのだ。

私は、世界の広い地域が共産主義の支配下にあった1980年代に「ポリティカル・フィランソロピー」と呼ばれる活動を始めた。抑圧に対抗する人々を支援したいと考え、当時のソビエト帝国内で次々と財団を設立したのだ。それが思いのほかうまくいった。

刺激的な日々だった。その時期に私は投資にも成功したので、1984年に300万ドルだった寄付額も、3年後には3億ドル以上にまで増やせた。

しかし、2001年の9.11テロ以降、「開かれた社会」に対する流れが変わり始めた。抑圧的な政権が台頭し、開かれた社会は包囲され、危機下にある。その最大の脅威となっているのは、中国とロシアだ。

なぜこのような変化が起きたのか、私は長い間考え続けてきた。その答えの一つにデジタル技術、特に人工知能(AI)の急速な発達がある。

強権的な政権を助けたテクノロジー

理論的にはAIは政治的に中立であるべきで、良い目的にも悪い目的にも使える。しかし実際にはその効果は非対称的だ。AIは特に抑圧的な政権を助け、「開かれた社会」を危険にさらすような支配の道具を生み出した。新型コロナウイルスもまた、そうした管理手段を正当化した。そうした管理はパンデミックへの対応に本当に有益だからだ。

このAIの急速な発展は、ビッグテックやソーシャルメディア・プラットフォームによる世界経済の支配と密接に関係している。これらの勢力は短期間のうちに世界中に広がり、広範囲に影響を及ぼしている。

この動きは、広範囲に影響を及ぼした。まず、米中間の対立を激化させた。中国は自国のハイテク・プラットフォームを国家の勝者に仕立て上げた。アメリカは、これらの技術が個人の自由に及ぼす影響を懸念し、躊躇している。

こうした態度の違いは、2つの異なる統治システムの対立に新たな光を当てている。習近平国家主席の中国は歴史上最も積極的に個人情報を収集し、国民を監視・管理する国だ。これらの発展から利益を得るはずだったが、これから説明するように、そうはならない。

非合理的な習近平の決断

まずは最近の中露関係、特に2月4日の北京冬季オリンピックの開会式での習近平とプーチンとの会談について考えてみよう。

両者は長い中ロ共同声明を発表し、両国の友情に「限界はない」と表明した。その際、プーチンはウクライナでの「特別軍事作戦」について習近平に伝えたが、本格的な侵攻の予定までを伝えていたかは不明だ(英米の軍事専門家は間違いなく伝えていたと言う)。そして習近平はこれを承認したものの、冬季五輪が終わるまで待つよう求めた。

そして習近平は、中国で流行し始めた伝染力の強いオミクロンの変種が出現してもオリンピックを開催した。主催者側は選手たちのために気密性の高いバブルを作り上げ、オリンピックは無事終了した。

しかしオミクロンは、その後まず中国最大の都市である上海で感染が拡大し、中国各地に広がった。しかし、習近平は現在もゼロコロナ政策に固執し、上海の住民に大きな苦難を強いている。上海市民は反乱寸前まで追い込まれた。

多くの人は、この非合理的な対応に困惑しているが、なぜこんなことが行われているのか、私にはわかる。習近平には後ろめたい秘密があるのだ。中国国民が接種しているワクチンは、武漢で流行したタイプの初期のウイルスの感染は防いでも、変異株にはほとんど効かない。

しかし、習近平の2期目の任期は今秋に切れ、現在非常にセンシティブな時期にあることから、そうとは公表できない。彼は異例の3期目を固め、最終的に終身支配者になりたいと考えている。そのためにすべてを尽くさなくてはならない。

激化するウクライナとロシアとの戦い

一方、プーチンの「特別軍事作戦」は計画通りには展開していない。彼は、ウクライナのロシア語圏の住民から、自分の軍隊が解放者として迎えられると期待していた。

しかし、ウクライナの抵抗は予想外に強かった。ロシア軍は装備も統率も悪く、すぐに士気を失い、深刻な打撃を受けた。アメリカとEUがウクライナを支援し、軍備を提供したことで、ウクライナ軍は、キーウではるかに大規模なロシア軍を打ち負かした。

敗北を認めるわけにはいかないプーチンは、作戦を変更した。残虐なチェチェン共和国のグロズヌイ包囲網、シリアでの残忍な作戦を率いたことで知られるウラジーミル・シャマノフ将軍を責任者に据えた。そして戦勝記念日を迎える5月9日までに何らかの成果を上げるよう命じた。

しかし、プーチンにはほとんど祝えることがなかった。シャマノフは、かつて40万人が住んでいた港湾都市マリウポリに集中した。同市はグロズヌイと同様に瓦礫の山と化したが、ウクライナの防衛隊は長く持ちこたえた。

また、キーウからの慌ただしい撤退によって、プーチンの軍隊がキーウ北部の郊外の市民に対して残虐行為を行ったことが明らかになった。これらの戦争犯罪はよく記録され、ブチャのような町でロシア軍に殺害された民間人の映像は国際的な広い憤りを呼んだ。しかし、ロシア国民はプーチンの戦争について知らされていない。

ウクライナ侵攻は、ウクライナ軍にとってより困難な新たな局面を迎えた。開けた土地で戦わなければならず、ロシア軍の数的優位を克服するのがより困難になっている。

ウクライナ軍は最善を尽くし、反撃し、大胆にロシア領内に侵入することもある。このような戦術は、ロシア国民に実態を知らしめるという効果もある。

アメリカもロシアとウクライナの経済格差是正に力を捧げ、最近ではウクライナ政府に対して400億ドルという前例のない規模の軍事・財政援助を行った。結果がどうなるかは見えないが、間違いなくウクライナには勝機がある。(つづく)
参照元:ダボス会議でのスピーチ全文

ジョージ・ソロス「ウクライナでの戦争が第三次世界大戦になり、我々の文明は滅ぶかもしれない」
2022.6.1 COURRiER JAPAN プロジェクト・シンジケート(チェコ)Text by GEORGE SOROS
習近平もプーチンも、独裁者ゆえに信じ難い過ちを犯している
ジョージ・ソロス「我々の文明を滅ぼさないためにはプーチンを倒すしかない」
2022.6.1 プロジェクト・シンジケート(チェコ)Text by GEORGE SOROS

2022年5月終わりにスイスのダボスで開催された世界経済フォーラムにおいて、投資家のジョージ・ソロスも24日にスピーチをした。ウクライナの戦争によって、結果的に文明が滅びる結果になるかもしれないと警鐘を鳴らす、ソロスのスピーチの後半をお届けする

さらなる統合を進めたいEU

最近、イタリアのマリオ・ドラギ首相などのヨーロッパの指導者たちは、さらに踏み込んだことを言い出した。ロシアのウクライナ侵攻を機に、ヨーロッパの統合を進め、プーチンの犯したようなことが二度と起きないようにしようというのだ。

イタリアのレッタ前首相は、部分的にヨーロッパを連邦化する構想を打ち出した。外交、難民保護、エネルギー、防衛、社会・医療政策などを連邦で管轄するというのだ。そこに食料と気候の安全保障も加えるべきだと、私を含む多くの人が主張している。

連邦の核となる政策においては、どの加盟国も拒否権を持たない。その他の政策領域では、加盟国は「有志連合」に参加するか、拒否権を保持することになるという。

フランスのマクロン大統領は、親欧州の姿勢を非常に高め、EUの地理的拡大の重要性とそれに備える必要性を訴えている。ウクライナだけでなく、モルドバ、グルジア、西バルカン諸国もEU加盟の資格を得るべきだと。

詳細を詰めるには時間がかかるだろうが、ヨーロッパは正しい方向に進んでいるようだ。ウクライナへの侵攻に対し、歴史上かつてないほどのスピードと結束、そして活力で対応しているのだ。当初は躊躇していた欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長も、今では親欧州派として強い発言力を持つ。

しかし、ヨーロッパによるロシアの化石燃料への依存は今も大きい。これにはメルケル独前首相の経済を重視する「重商主義」的な政策が大きく影響している。

メルケルは、ロシアとガス供給に関する特別協定を結び、中国をドイツ最大の貿易相手国にした。そしてドイツ経済はヨーロッパでもっとも強くなったが、その代償は大きい。ドイツ経済が迫られる方向転換には、長い時間を要するだろう。

ドイツのオラフ・ショルツ首相は、メルケルの政策と統治スタイルの継続を約束して当選した。しかし、彼はその約束を放棄せざるを得ず、所属する社会民主党の神聖な伝統をいくつか壊さなければならなかった。

しかし、ヨーロッパの統一維持のためには、ショルツは最終的に正しいことをいつもするようだ。彼はロシアからガスを引くためのパイプライン「ノルド・ストリーム2」を中断し、国防費を1000億ユーロ(約13兆7500億円)にまで上げると約束した。そしてドイツは長年のタブーを破ってウクライナに武器を提供した。

こうして西側の民主主義諸国は、ロシアによるウクライナ侵攻に対して同様の対応を取ったのだ。

大きな過ちを犯す独裁者たち

今や堅く結ばれたプーチンと習近平という2人の独裁者には多くの共通点がある。彼らは脅すことで支配し、その結果、信じ難いような驚くべき過ちを犯す。ウクライナで解放者として歓迎されることを期待していたプーチンと同様に、習近平は持続不可能なゼロコロナ政策に固執している。

プーチンはウクライナに侵攻してから、とんでもない間違いを犯したと初めて認識したようだ。今は停戦交渉のための地ならしをしているようだが、信用できないプーチンとの停戦合意は実現不可能だ。プーチンは状況的に和平交渉を始めなければならないが、それは辞任に等しいので絶対にやらないだろう。

現状はわかりにくい。侵攻に反対していた軍事専門家も、ロシアのテレビ番組で、いかに悪い状況かを国民に伝えた。その後、彼はプーチンに忠誠を誓った。そして興味深いことに、習近平はプーチンを支持し続けているが、それはもはや「無制限」ではない。

このことは、習近平がなぜ失敗するのかの説明になる。上手くいかないウクライナへの侵略をプーチンに許可したことは、中国の利益にはならなかった。中国は対露同盟のシニアパートナーのはずなのに、自己主張が弱い習近平は、プーチンにその地位を奪われた。しかし、習近平最大の失敗は、「ゼロコロナ」政策のさらなる推進だ。

継続するロックダウンにより、中国経済は3月以降急激に減速している。中国全土の道路輸送量を示す高速道路物流指数は、4月には前年の70%の水準まで低下し、上海だけの指数では前年同月比17%だ。貨物量の80%以上がトラックで運ばれている中国において、この数値は国内商業輸送が崩壊しかけているということを意味する。

さらに、約400社のデータをもとに中国の民間企業の動向を示す、中国財新混合業購買担当者景気指数指数(PMI)は3月に43.9、4月には37.2へと低下した。PMIの数値が50以下というのは景気悪化を意味する。中国の経済活動の急な減速は、間違いなく世界に影響を及ぼすが、そのための備えはこれまであまりなされていない。

習近平が軌道修正するまで、これらの負の影響は増し続けるだろう。しかし過ちを認められない彼は、決してそうしないだろう。不動産危機に加え、その被害は世界経済に及ぶほど大きくなる。サプライチェーンは寸断され、世界的なインフレは世界的な不況を招くだろう。

リスクを最小化するためにできること

西側諸国による対ロシア政策上のジレンマは、プーチンが弱体化するほど、彼の行動が予測不能になることだ。EU加盟国は、そのプレッシャーを感じている。プーチンがブルガリア、ポーランド、フィンランドにしたように、代替のエネルギーを確保する前にガスの蛇口を閉められ、本当に痛い目に遭うかもしれないことを理解している。

5月18日に発表されたロシア依存からの脱却のためのエネルギー転換計画「REPowerEU」プログラムは、こうした危機感を反映している。ショルツは、メルケルがロシアと結んだ特別な取引のために、特に不安な立場にある。一方、ドイツとほぼ同じ程度ロシアのガスに依存しているイタリアでは、ドラギはより勇気を持って行動している。

ここでヨーロッパの結束が試されるが、ヨーロッパが一丸となって行動し続ければ、エネルギー安全保障と気候変動に対するリーダーシップを強化できるだろう。

では中国はどうだろうか。習近平には多くの敵がいる。習近平は監視と抑圧の手段をすべて支配しているので、誰も習近平を直接攻撃しようとはしない。しかし、共産党内では対立が激化し、一般人が読めるほどの文章で表現されるほどになっているのはよく知られる。

もしかすると予想に反し、習近平はその失敗ゆえに念願の3期目の任期を得られないかもしれない。あるいはもし彼が選ばれたとしても、共産党中央政治局は、その人選を彼の自由にはさせないかもしれない。そうなれば、彼の権力と影響力は大きく低下し、彼が終身支配者になる可能性は低くなる。

一方、ウクライナ戦争が激化するなか、気候変動との戦いは二の次にならざるを得なくなった。しかし、専門家によると、私たちはすでに大きく遅れをとっており、気候変動は不可逆的なものになりかけているという。それは、私たちの文明の終焉を意味するかもしれない。

私は、この予想を特に恐ろしいと感じている。私たちの多くは、自分はいつか死ぬと理解しているが、文明は存続するのが当然だと思っている。

だからこそ戦争が早期に終結するよう、あらゆる資源を動員しなければならない。私たちの文明を維持するためにできる最善かつおそらく唯一の方法は、プーチンを倒すことだ。それが最重要課題である。
参照元:習近平もプーチンも、独裁者ゆえに信じ難い過ちを犯している
ジョージ・ソロス「我々の文明を滅ぼさないためにはプーチンを倒すしかない」
2022.6.1 プロジェクト・シンジケート(チェコ)Text by GEORGE SOROS
ロシアのウクライナ侵攻、第三次世界大戦の始まりか=ソロス氏
2022年5月25日5:05 By Reuters Staff

[ダボス 24日 ロイター] - 著名投資家ジョージ・ソロス氏は24日、ロシアのウクライナ侵攻は第三次世界大戦の始まりかもしれず、自由な文明を維持する最善の方法は西側諸国がプーチン大統領率いるロシア軍に勝利することだと述べた。

世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)で、ウクライナでの戦争は開かれた社会と中国やロシアのような閉ざされた社会との戦いの一部と指摘。「今回の侵攻は第三次世界大戦の始まりかもしれず、われわれの文明は生き残れないかも知れない」とした上で「われわれの文明を維持するための最善かつおそらく唯一の方法は可能な限り早くプーチン氏を打ち負かすことだ」と語った。

また、プーチン氏は侵攻が間違いだったと考え、停戦交渉の準備を進めているが、プーチン氏は信頼できないため「停戦は実現不可能だ」と言及。「プーチン氏が弱まれば弱まるほど、プーチン氏は予測不可能になる」とした一方、「結果は予測できないがウクライナに勝機があるのは確かだ」との見解を示した。

中国に関しては、習近平国家主席の「ゼロコロナ」戦略は失敗し、上海を「反乱寸前」に追い込んだと批判。新型コロナウイルス政策とともに習氏は一連の過ちを犯しており、3期目続投を目指す中で大きな影響力を失いかねないとした。
参照元:ロシアのウクライナ侵攻、第三次世界大戦の始まりか=ソロス氏
2022年5月25日5:05 By Reuters Staff
ロシアのウクライナ侵攻、文明存続の危機か ソロス氏
2022年5月25日 16:25 発信地:ダボス/スイス [ スイス ヨーロッパ ] AFP BB News

【5月25日 AFP】米投資家ジョージ・ソロス(George Soros)氏は24日、ロシアのウクライナ侵攻は第3次世界大戦の始まりかもしれず、人類文明存続の危機かもしれないと警鐘を鳴らした。一方、天然ガスに関しては、欧州は思っている以上にロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領に対して有利な立場にある可能性があるとの見方を示した。

 ソロス氏はスイス・ダボス(Davos)で開かれている世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)に出席。これに合わせて開催された夕食会恒例のスピーチで、ロシアのウクライナ侵攻について、「欧州の根幹を揺るがしている」「第3次世界大戦の始まりかもしれず、人類文明は乗り越えられないかもしれない」と述べた。

「われわれはウクライナ戦争の早期終結に向けて総力を結集しなければならない。人類文明を維持する最善かつ唯一であろう方法は、一刻も早くプーチンを打ち負かすことだ」

 ソロス氏は欧米諸国のウクライナ支援を称賛する一方、欧州が依然としてロシア産ガスに「過剰に」依存していると指摘。主な原因は、ロシアとガス供給に関する「特別な取引」をしたアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)前独首相が追求した重商主義的政策だとの見解を示した。

 欧州連合(EU)はロシアからのガス輸入量を今年中に3分の2削減することを目標としているが、ドイツが消極的なため、禁輸には至っていない。ロシア産石油の禁輸も、ハンガリーの反対で難航している。

 ソロス氏はプーチン氏について「ガス供給を止めるとして非常に巧みに欧州を脅迫してきたが、実は虚勢を張っているにすぎない」「実際は危機的状況にあり、ぎりぎりのところで欧州を脅してきたにすぎない」との見方を示した。

 ソロス氏によると、プーチン氏は2021年、ガスを欧州に輸出せずに貯蔵。供給不足を起こして価格を高騰させ、ロシアに莫大(ばくだい)な富をもたらした。だが、貯蔵施設は今年7月に満杯になるため、ロシアは唯一の市場である欧州にガスを輸出せざるを得なくなるという。

 ソロス氏はこの点について説明する書簡をイタリアのマリオ・ドラギ(Mario Draghi)首相に書簡を送ったが、返事はないと述べた。

「(プーチン氏は)窮地に立たされている。ガスを使って何かをしなければならない」「欧州は認識している以上に有利な立場にある」

 ソロス氏は中国の習近平(Xi Jinping)国家主席にも言及。習氏とプーチン氏を「独裁者」、中国とロシアを「オープンソサエティー(開かれた社会)に対する最大の脅威」と呼んだ。

 ソロス氏は中ロの指導者について「無制限の同盟関係で結ばれている。脅迫によって支配し、その結果として信じられないような過ちを犯すなど、多くの共通点もある」「プーチン氏はウクライナで解放者として迎えられると期待していた。習氏は持続不可能なゼロコロナ政策に固執している」と非難した。
参照元:ロシアのウクライナ侵攻、文明存続の危機か ソロス氏
2022年5月25日 16:25 発信地:ダボス/スイス [ スイス ヨーロッパ ] AFP BB News

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