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菅内閣の発足 - 野心を胸に秘めて -

2020 10/10


自民党総裁選は、菅義偉氏が圧勝し、令和2年9月16日、菅内閣が発足した。


閣僚のメンバーの顔触れを見ると、再任された閣僚がほとんどで、つまり安倍政権を継承していることが分かる。





因みに写真を見た限りでは、隣に立っている麻生太郎氏の方が圧倒的に偉そうに見える。


然し、実際に首相として、様々な命令を下して、実績を上げていくと、直ぐに首相としてカリスマが備わってくると思われる。





現場で叩き上げて成り上がってきた菅首相は、権限をフル活用して、実績を上げることで、初めて、首相らしくなれるのである。





今回、各派閥のリーダーが、菅氏を支持したのは、これまでの政権の閣僚の布陣を維持し、変化を嫌ったということではないかと思われる。


少なくとも菅氏が就任すれば自分たちは、閣僚に留任し、これまで通りの立場を続けることが出来る。



菅首相は就任早々、携帯電話料金の引き下げ実現に向けた改革を指示した。



菅首相 携帯電話料金の引き下げ実現に向け改革指示
2020年9月18日 18時09分 NHK NEWS WEB

菅総理大臣は、18日午前、武田総務大臣と会談し、携帯電話料金の引き下げの実現に向けた改革を進めるよう指示し、武田大臣は会談のあと、記者団に対し「1割程度の引き下げでは改革にならない」と述べ、携帯電話各社の努力を促す考えを示しました。

菅総理大臣は、18日午前、総理大臣官邸で武田総務大臣と会談しました。

このあと武田総務大臣は、記者団に対し「携帯電話料金の引き下げやマイナンバーカードの管理システムを運営するJーLISの改革を力強く推し進めるよう指示があった。国民の生活と直結する問題なので、できるだけ早く結論を出すように、全力で臨んでいきたい」と述べました。

そのうえで、武田大臣は携帯電話料金の引き下げ幅について「1割程度では改革にならない。諸外国は、いろんな政策で健全な競争市場原理を導入しており、ドイツやフランスでは70%下げている。やればできる」と述べ、携帯電話各社の努力を促す考えを示しました。

さらに、武田大臣は「携帯電話事業者も設備投資などいろいろやってることは間違いなく、健全な経営をしてもらわないと意味がないので、しっかりとユーザー、事業者双方から意見を聞きながら、折衷点を見いだしたい」と述べました。

菅首相 官房長官時代からの取り組み

既得権益の打破に意欲を示す菅総理大臣が、第2次安倍政権で官房長官を務めていた時から熱心に取り組んできたのが、携帯電話料金の引き下げです。

5年前の記者会見で、携帯電話の料金が高く、家計への負担が増していると指摘したうえで「いわゆる大手3社が似たような料金プラン、料金設定をしていることも事実ではないだろうか」と問題提起しました。

そして2年前には、事業者の間で適切な競争が働けば、4割程度の引き下げは可能だと具体的な値下げ幅にも言及しました。

さらに去年5月には、携帯大手各社に、通信料金と端末代金の分離を義務づけることなどを盛り込んだ改正電気通信事業法を成立させ、各社の取り組みを促してきました。

また、総理大臣として臨んだ初めての記者会見では「携帯電話の大手3社が、9割の寡占状態を長年にわたり維持して、世界でも高い料金で20%以上の営業利益を上げ続けている」と指摘し、さらなる料金の引き下げを実現させたいと強調しました。

加藤官房長官 “諸外国の例も参考に早期実現を”

加藤官房長官は午後の記者会見で、携帯電話料金の引き下げについて「国民も大変高い関心があり、菅総理大臣が官房長官時代から目に見える形で行われることが大事だという認識を示してきた」と述べました。

そのうえで「国民や利用者にとって、安くて分かりやすい料金体系、納得感のある料金やサービスの早期実現に向けて、料金の大幅な引き下げを実現した諸外国の例も参考にしながら、武田大臣のもとでしっかりと取り組んでもらえると考えている」と述べました。

携帯大手3社は

菅総理大臣が携帯電話料金の引き下げに向けた改革を、武田総務大臣に指示したことについて携帯大手3社のコメントです。

【NTTドコモ】

「日本の携帯料金が世界でも高いという総務省の調査の内容は、一つの事実として受け止めている。一方、各国における、つながりやすさなどのサービスの品質や利用形態に差異があると考えている。料金については、ニーズや競争環境を踏まえ常に見直しを検討している」

【auのKDDI】

「今後もこれまでどおり市場競争を通じて、よりよいサービスの提供に努めていく」

【ソフトバンク】

「今後もよりよいサービスを提供できるよう、引き続き努力する」

大手3社は、総務省による制度の見直しを受けて、この2年間で値下げを進めてきたと考えているだけに、菅総理大臣が、一段の引き下げに強い意欲を示していることに困惑の声があがっています。

西村経済再生相「家計の負担軽減につながる」

西村経済再生担当大臣は、18日の閣議のあとの記者会見で、携帯電話料金の引き下げについて「家計にとってプラスになると期待している」と述べました。

この中で西村大臣は「一般論として、競争の結果としてさまざまな料金が適正な価格に下がることは望ましいことだ」と指摘しました。

そのうえで「家計にとって大きな負担軽減につながるもので、厳しい経済環境の中で、非常に大きなプラスになると期待している」と述べました。


この辺り、非常に迅速である。


内閣総理大臣の機能は、行政の最高職として、閣僚や官僚に指示をすることである。





この通信の改革を指示したというのは、2、3室支配で9室獅子座に在住し、3室水瓶座にアスぺクトバックする土星の働きであることがよく分かる。


3室は通信、メディア、運輸、交通などを表しており、情報通信のインフラもこれに含まれる。



世界で一番、料金が高いと言われる日本の携帯電話キャリアの談合状態にメスを入れることは官房長官時代からの仕事の継続であるようである。


これを今度は、首相として、本格的に改革に乗り出すということのようである。


5Gの時代がまもなく訪れようとしているのに携帯電話料金が高すぎるようでは、広く国内に通信インフラが普及していかない。


私自身も最近、大手キャリアが、通信設備を持たない格安な携帯電話会社MVNOのサービスよりも優先的に自分たちの顧客を接続する為、MVNOのサービスが全くインターネットにつながらない状況に憤りを感じていた。



菅首相の3室水瓶座にアスペクトバックする土星は、あたかも水瓶座に在住している定座の土星であるかのように働き、通信インフラというものをほとんど公共の水道のように無料に近い状態で利用できるような改革を進めていくことが期待できる。


何故なら、水瓶座というのは、共産主義の星座であり、「公共」という概念を推し進めていくからである。



電気、ガス、水道などの供給網、すなわち国民生活の基本的なライフラインも3室の象意に含まれるとするならば、これらも改革していくことが予想される。



土星は菅首相の2室の支配星でもあり、2室は起業のハウスであることから、これらの改革は、菅首相の事業であると考えられる。



但し、土星は水瓶座に在住しているかのように働いているが、あくまでも土星は獅子座(王様、権力者)に在住している。



従って、このような通信料金の値下げを首相の権力によって成し遂げて行こうとしているのである。



つまり、獅子座-水瓶座軸というのは、権力者の力で、公共の利益を実現していくのである。



特に獅子座に惑星が在住して水瓶座にアスペクトして影響しているような場合はそうである。



菅首相に放送業界の人々が戦々恐々とする訳
電波料見直し、NHK受信料値下げの行方に注視
境 治 : メディアコンサルタント
2020/10/07 14:20 東洋経済ONLINE

新総理大臣に就任し、「日本学術会議」会員に推薦された学者6名の総理任命拒否が騒動になっている菅義偉首相。この件から筆者は、「法律を根拠」として行政改革を推進する菅首相の力強い意志のようなものを感じる。早くも携帯料金の値下げを掲げているが、このやり方を流用し放送業界にも圧を加える可能性もある。

その前にまず、安倍晋三政権が放送業界に対してどのような影響を与えたかを簡単に検証してみたい。

NHK経営委員会を利用した安倍前首相

NHKとの関係が何かと取り沙汰された安倍政権だったが、その伏線は第1次政権時代にすでに張られていた。2007年、経営委員長に富士フイルムの社長だった古森重隆氏が就任。富士フイルムをフィルム事業から脱皮させて成功した経営手腕をNHKに対して発揮した。古森氏を経営委員会に送り込んだのが安倍前首相だったと言われている。古森氏はNHKの経営計画を差し戻すなど、辣腕を振るった。

この頃までのNHK経営委員は高齢の大学教授が名誉職的に引き受ける、ある意味お飾り的存在も多かった。だが経営委員は衆参両議員の同意の元、総理大臣が任命する役職だ。安倍政権は形式的にすぎなかった任命を文字どおりに解釈し、経営委員選定に関わった。形骸的なシステムをルールどおりに運用したと言える。今回の日本学術会議の件と似ていないだろうか。

決して法的に誤ったことをしたわけではない。ただ、ルールに則れば政権がNHKに対し影響力が持てることを発見した。ちなみにNHKの監督官庁は総務省だが、安倍第1次政権での総務大臣が菅氏だ。

第2次安倍政権では1次政権で学びとった手法をさらに活用した。経営委員を選ぶのはもちろん、会長人事にも影響力を持つようになったと言われる。会長を決めるのは経営委員会なので介入可能なのだ。

いずれにしろ安倍政権は、経営委員会のシステムを通じてNHKに強い影響力を及ぼし続けた。ここでの問題の本質は、公共放送の制度自体に政治の介入を許す余地がある点だと思う。

放送業界にモヤモヤと力を及ぼそうとした安倍前首相に対し、菅首相はどうだろう。これまでにも菅氏は放送業界に強い態度を示していた。安倍首相よりよほどプラグマティック、実際的で具体的な言動だ。

2007年、フジテレビ系列で全国ネットされていた関西テレビ制作の「あるある大事典」が大問題を引き起こした。番組内で紹介した納豆の健康への好影響が、実は科学的根拠がない情報だったのだ。番組は放送打ち切りとなり関西テレビ社長が謝罪したが、事態は重く受け取られ、関西テレビの民放連除名にまで至った。

このときの総務大臣が菅氏だった。総務省は総務大臣名義で行政指導としては最も重い「警告」を行った。そして菅氏は総務大臣として、「今後も放送法違反が見られたら電波停止もありうる」と発言した。

振り返れば2016年、高市早苗氏が総務大臣としてほぼ同じことを発言して議論を巻き起こしたのだが、菅氏のこのときの発言はそこまでの議論にはならなかったように思う。放送業界として反論できる空気ではなかったからだろうか。

高市発言もそうだが、放送法を電波法と併せて解釈すると「総務大臣による放送停波」はありうる。菅氏が首相になったいま大事なのは、彼は法に則って強い発言もする政治家だという点だ。

総務大臣だった菅氏と「命令放送」

もうひとつ、2006年に菅氏が総務大臣だったときに起こった放送界との事件がある。「命令放送」についてだ。この名称がすでに物騒だが、NHKは政府の命令を受けて放送することがある、というもので、具体的にはNHKが短波ラジオ放送で行う国際放送についての話だ。

2006年時点の放送法には33条で「総務大臣はNHKに対し必要な事項を指定して国際放送を行うことを命じることができる」とされていた。政府による国際社会への日本のアピールにNHKが協力するものだ。その費用は国が持ち、それまでは「時事」「国の重要な政策」「国際問題に関する政府の見解」の3つの大枠を「命令」されるだけで、具体的な内容はNHKの自主性に任されていた。

2006年、菅氏は総務大臣として「北朝鮮による日本人拉致問題にとくに留意する」ようNHKに対し「命令」した。これに対し、新聞社やメディア研究者が強い反応を示した。「命令放送」であってもNHKの自主性が尊重されるべきであり、表現の自由が損なわれてはならない、というものだった。

にわかに巻き起こった議論に対し総務大臣だった菅氏は、国会での質問に応じて「表現の自由は大事であり、命令放送の中でも編集の内容には踏み込まない」と発言している。「命令放送」は2007年の放送法改定時に修正され「命令」が「要請」に変わり、NHKはこの要請に対し「応じるよう務める」と自主性を保つことが明文化された。

筆者は「命令放送」という制度がそもそも奇妙なものだったと感じるが、「停波可能発言」と併せて考えると、制度に則って強いことを言う菅氏の姿勢が浮き彫りになる。そして菅氏が第1次安倍政権の短い期間ではあるが総務大臣を経験していることは重要だと思う。内閣総理大臣就任早々、さっそく携帯電話の料金値下げを言い出したのも、この分野に通じているからだ。

また具体的な部分は官邸官僚に頼り切っていた安倍氏に比べると、菅首相は自ら制度を学び自ら考えて動くように見える。武田良太総務大臣は、これまでの経歴を考えるとこの分野に通じているとは言いがたく、菅総理の意向を反映する立場になるだろう。総務省の領域で菅氏が自らの考えを具現化する可能性は高い。

官邸官僚として暗躍した経産省出身者は退任しているが、そのうちのひとり、長谷川榮一内閣広報官の代わりに総務省出身の山田真貴子氏が広報官に就任した。そこには菅首相と総務省現場とのパイプ役の意味もあるかもしれない。

警戒する民放、恐れおののくNHK
民放側はこれまでの菅氏の放送業界への言動をもちろん覚えている。当然ながら警戒しているようだ。放送法などのルールを熟知し、それに則って強い態度に出ることもある。場合によっては「停波」を口にもする。そんなコワモテの政治家であることが民放にどう影響するか、戦々恐々のようだ。

とくに電波行政、民放が数十年間安い水準を認められてきた電波料を見直されたらたまったものではないだろう。民放はコロナ前から広告収入が激減しており、立て直しに躍起になっている最中だから、電波料が上がったらさらに打撃になる。ましてや電波オークションの話が出てきたら大汗かいて必死で止めることだろう。

ただ、菅首相が民放に圧を加えることで利する点があるようには見えない。菅氏のコワモテぶりは「お灸を据える」域でしかないと思う。むしろNHKのほうが懸念すべき点が多いかもしれない。例えば菅氏は総務大臣時代、「受信料値下げ」を国民の納付義務化とセットでNHKにかなり強硬に求めている。このときはプロパーで会長になった橋本元一氏が反対し、何度もやりあったという。

受信料値下げは安倍政権で高市早苗総務大臣が求めて実現しているので、いま値下げを菅氏が言い出すことはないだろう。ただ、第1次安倍政権で総務大臣としてNHK操縦法を会得していることを考えると今後は、安倍首相よりずっと巧妙に進めそうだ。われわれ国民としては、菅政権と民放・NHKの関係に目を光らせ、状況を把握する洞察力を磨きたいところだ。

そしてこの機に、公共放送なのに経営委員は政権の意のままにできるというNHKの不思議なガバナンスについて議論できる俎上ができるといい。受信料を払っているわれわれは株式会社で言えばNHKの株主。NHKは国民のものだと言える制度にしていきたいものだ。政権から、国民にとってプラスにならない圧がかかっていると感じたら、すかさず世論で対抗できるよう、その関係を注視していきたい。



それと菅首相の山羊座の月は蟹座にアスペクトバックしており、これが保守政治家としてのスタイルを表わしている。



ナヴァムシャでも蟹座に月が定座に在住し、木星、ラーフ、土星がコンジャンクトしている。





木星が蟹座で高揚し、月も蟹座で定座に在住して強く、ガージャケーサリヨーガを形成しており、やはり安倍政権にいただけあって蟹座が強いのである。




グルチャンダラヨーガの発現


然し、高揚する強い木星にラーフ、土星がコンジャンクトして傷つけており、グルチャンダラヨーガなのが、非常に印象的である。



最近、発売された本やニュース記事の内容を見ると、菅義偉氏が、安倍政権の末期に安倍首相から遠ざけられて、菅氏の力を削ごうとする安倍首相と菅氏が言わば権力闘争の状態にあったのである。


安倍首相を担ぎ上げ、安倍政権によって、立身出世した菅義偉氏が、最後の最後で、安倍首相との権力闘争で、引き上げてもらった安倍首相を叩き落とす。



それは自分を外そうとした安倍首相に対する正当防衛であるが、この献身と裏切りの物語は、まさにナヴァムシャの蟹座で形成される木星、月とラーフのコンビネーションが物語っている。



菅氏は、ロシアのKGB出身で、エリツィンの元で第一副首相に任命され、補佐的な立場で実力を養い、成り上がったプーチンに似ている所がある。




ジェーシュタの老獪さ


プーチンはおそらくラグナが蠍座のジェーシュタに在住しているが、ジェーシュタは世俗的な経験を溜め込んでおり、その経験から養われた老獪さが特徴である。





半分、心は世俗から隠遁しているが、権力や富への野心も捨て切れないといった二面性のあるパーソナリティーである。




菅氏は、10室支配の水星と太陽が、蠍座12室でジェーシュタに在住しているため、やはり、その政治手法が世慣れており、老獪な手腕に長けている。



おそらくその辺りで共通点があるからか、非常に似た雰囲気を持っている。



安倍首相の元で、着々と実力を蓄え、首相になる基礎を固め、最後に安倍首相を裏切ったのである。



これはプーチンが、2000年3月の大統領選挙で、オリガルヒ(新興財閥)の大富豪ボリス・ベレゾフスキーの支持を取り付けたが、大統領に就任するや、新興財閥の影響力を削ぎにかかったのと似ている。



ベレゾフスキーは、プーチンに対抗しようとしたが、保有する株式を売却し、逮捕を恐れて、イギリスに亡命している。




週刊誌の情報によれば、今、菅首相は、安倍反対派を要職に付けており、全くプーチンと同じことをしている。



菅首相の政治スタイルは、人事権を行使して、自分の言うことをきかせるという手法である。



官僚組織の中で、ポストを得ると、人事権などの権力を行使して、自分の実力を強化し、反対派などを駆逐していく。




山羊座の月


山羊座とは、火星が高揚する星座であるため、権力の使い方を最もよく心得ている星座である。



但し、木星が減衰するため、山羊座には理想やビジョンがないのである。



山羊座は、権力を振い、人事を操り、政策を実行することには長けているが、国家観、国家像を描いたりすることが苦手である。



実際は、山羊座に在住しているのは月だけで、ラグナやラグナロードの木星は射手座に在住しているので、特に問題はないと思うが、山羊座というのはそういう星座である。



まさに今、菅政権は、山羊座の権力の行使(実行力)と、蠍座の老獪さで、自らの思うままの改革を進めていこうとしている。






(参考資料)

裏切りの菅義偉「安倍降ろし」への秘めた思惑とは?二階氏と急接近、TV出演で攻勢
2020.08.28 MAG2NEWS

首相の健康不安で「ポスト安倍」に世間の関心が高まる中、菅義偉官房長官が存在感をアピールするかのようにテレビ出演を重ねています。その「思惑」はどこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、菅官房長官への急接近ぶりを見せつけている二階幹事長をキーパーソンに挙げつつ、この時期に菅氏がテレビ生出演を繰り返す理由を考察しています。

8月、テレビに出まくる菅官房長官の胸の内

おそらくこの8月ほど、菅義偉官房長官が頻繁にテレビ番組に生出演したことはなかったのではないだろうか。筆者が知っているだけでもこれだけある。

1日:日本テレビ系列「ウェークアップ!ぷらす」

2日:NHK「日曜討論」

18日:BS日テレ「深層NEWS」

21日:テレビ朝日「報道ステーション」

いうまでもなく官房長官は内閣のスポークスマンである。「原則として月曜日から金曜日に、午前と午後の2回、定例会見をおこなっている」と、官邸のサイトに書いてある。その一場面がしばしばテレビで放映されるため、いつも飽きるほど見ている顔だ。

とはいえ、内閣ナンバー2の権力者のおでましとなると、スタジオの空気感も日頃とは違う。それに、ニュース用の断片映像よりも、生出演のほうがより正確で、はるかに多くの情報が伝わってくる。キャスターの力量や質問の仕方などによっては、会見では聞けない話が飛び出すことだってありうるだろう。

それにしても、この8月の生出演回数は、異例の多さだ。菅長官は自身のブログやツイッターなどで、テレビ番組出演の「お知らせ」を掲載しているが、それによると、この1年に8回ほど生出演しており、うち4回が今年の8月に集中している。

直近の4回、いずれもテーマはコロナがらみ。出演を依頼するテレビ局側にすれば、後手にまわりがちな感染防止対策や、アベノマスク、GoToトラベルキャンペーンなどズッコケ政策について官房長官の見解を聞くという狙いはもちろんあるだろう。だが、多分それだけではない。

テレビ局側の関心と、菅官房長官の秘めた思惑が、この時節、はからずも一致したということではないか。

メディアが今、最も関心を持っているのは「ポスト安倍」の動きだ。安倍首相の体調が芳しくないのは誰の目にも明らかで、しかも、内閣支持率はさまざまな疑惑、不祥事、失政が重なって急降下、いまや保守層からも見限る声が出てきつつある。

来年9月の総裁任期切れを待たず、安倍首相が自ら退陣するという観測が流れるのも仕方がない状況だし、たぶんそうなるだろう。あの顔色、目や声の力のなさ。解散総選挙などできそうもない。9月に予定される内閣改造も危ぶまれるほどだ。

退陣となると、誰が次の総理になるのか。石破か、岸田か、河野かと世評の高名前が出てくるが、いずれも毛並みのいい世襲政治家ばかり。コロナ禍がいつ終息するかも見通せず、健康不安と経済的打撃がこれからも長々と続くことを思えば、誰がトップになろうと、国民の不平、不満を背景にした激しい政権バッシングを覚悟しておかねばならない。たとえ堕落しきった現状より誠実であっても、ひ弱な政権になっては、とてもじゃないが、もたないだろう。

その観点からいくと、政治家秘書、地方議員から、のしあがってきた菅義偉氏が打たれ強い政治家ということになるのだろうか。二階俊博幹事長が自分と同じ“たたき上げ”の菅氏に目をつけたのは無理からぬことといえる。

むろん、二階氏が菅氏に惚れ込んでいるわけではない。彼の政治活動の眼目はご多分にもれず、利権であり、勢力拡大だ。おそらくは、次期政権でも幹事長の座について党内ににらみをきかせたいのだ。6月17日と7月1日に続き、8月20日にも、二階幹事長は菅官房長官と会食し、急接近ぶりを党内外に見せつけている。

だが、前の2回と、8月20日では話の流れが大きく変わったと推察する。

二階氏は、ほんの少し前まで石破茂氏との接近が取りざたされていた。石破氏も二階氏や菅氏の支援を得たいだろう。線が細いとか、影が薄いとか言われがちの岸田文雄氏だって、いぜん、ポスト安倍の有力候補である。対中姿勢をめぐる二階氏とのささやかな食い違いが響くとは思えない。

6月と7月の段階では、二階氏はそれこそ石破、岸田といった名前をあげながら、いつかはやってくる総裁選の絵を菅氏とともに描いていたはずだ。ところが、8月に入り、健康不安説が持ち上がって安倍首相の存在感が低下するや、ポスト安倍の思考回路を乱世モードに転換した気配がある。8月20日の席では、ズバリ「菅さん、あんたがやったらいい」と、菅氏をけしかけたかもしれない。

菅氏も、幹事長に背中を押されたら、まんざらでもないだろう。メディアに総理大臣になりたいかと聞かれれば、番頭とか女房役とかいう領分を超えないよう、「いやあ、私は秀吉より秀長が好きなんで」などとごまかすが、どうもここへきて、チャンス到来と踏んでいるように思える。

かたや二階氏が8月3日の記者会見で菅氏のことを「大いに敬意を表している」とほめれば、菅氏は同18日のBS日テレ「深層NEWS」で「もっとも頼りがいがある」と二階氏を持ち上げる。次期政権は菅総理・二階幹事長と二人してアピールしているかのようだ。

菅氏のテレビへの頻出は、そんな背景からとらえると興味深い。とりわけその“意欲”を感じたのが、報道ステーションへの生出演だ。

安倍官邸が毛嫌いしていた番組だったはずだが、宗旨替えでもしたのだろうか。いや、そうではあるまい。菅氏は、安倍首相や今井補佐官のように、好き嫌いとか、敵味方に分けて、出演メディアを選ぶのではなく、目的達成のためにプラス効果が大きいと思えば、オファーを喜び勇んで受け入れるだろう。ふつうはそうだ。

報道ステーションは視聴率が高いうえ、官邸や自民党本部の圧力によるコメンテーターの入れ替えなどで、かつてのような批判精神が影を潜め、菅氏にとっても与しやすい番組になっている。

今井補佐官や長谷川栄一内閣広報官が何と言おうと、菅官房長官には、首相の足らざるところを自分が補うのだという大義名分がある。

ちなみにその夜のコメンテーターは中央大学法科大学院教授、野村修也弁護士だった。

野村氏は福島第一原発事故の国会事故調委員として報告書をとりまとめたさい、経産省から電力会社への天下りの弊害に鋭く斬り込んでいたと記憶するが、その後、コメンテーターとして、あちこちのテレビ局からお呼びがかかるにつれてカドがとれ、昨今では政府側の立場を説明するだけの人のように見える。

その夜も、コロナ対策やGoToトラベルなどの質問に「国民の命と健康」「社会経済活動」「両立」「国が立ち行かない」などのピースをつなぎ合わせて平板な答えを繰り返す菅氏に、野村氏が助け舟を出した。

野村氏 「日本の行政は縦割りの弊害が危機管理を妨げている。官房長官自身は、これまで洪水対策に使われているダムが3割しかなくて、それ以外の経産省、農水省の管轄のダムが使われていないということに気づいて対策を打った。こういう問題がコロナにもあるのではないですか」

全国1,470カ所のダムのうち、治水目的も含む多目的ダムが570か所あり、これらが国交省管轄だ。他の900か所は水力発電や農業用のダムで、経産省、農水省の管轄である。水力発電や農業用のダムも洪水対策に使えれば…という話を国交省の河川担当の局長から聞いた菅長官は、がぜんハッスルしはじめた。

官邸に、国交省、経産省、農水省の官僚を呼び、既存のダムを活用した省庁横断的な洪水対策を実行するように指示した。今年6月のことだ。

菅長官は「ダムの有効貯水容量のうち水害対策に使うことができる容量をこれまでの約3割から約6割へと倍増することができた」と胸を張った。

まさか事前には知らなかっただろうが、野村氏の問題提起コメントは、渡りに船だったはず。菅官房長官は我が意を得たりの表情で言った。

「省庁の縦割りを打ち壊して一つの方向にもっていくことはきわめて大事です。一例ですが、コロナ対策のマスクは厚労省だけではだめ…製造ラインをつくる補助金を出すのに経産省、地方自治体との関係で総務省、大学病院は文科省…それに環境省も…マスクだけで5つの省庁が入っていたんです」

評判の悪いアベノマスクまで、縦割り行政打破の成果と言わんばかりのノリである。妙な“一例”はともかく、野村氏の助太刀のおかげで、ちゃっかり、ダム活用の話をアピールできたのは、菅氏も納得だろう。

菅氏がこれまで官房長官として評価されてきたとすれば、まずその第一は、安定感だ。キモは言質をとられないこと。記者会見においても、質問のポイントを巧みに外し、都合の悪いことは隠し通す。つねに淡々というより単調で、特定の話題以外には力がこもらない。最近あまり聞かれなくなった言葉だが、「三味線を弾く」のが得意技である。

今井補佐官と不仲で、このところ安倍首相にも冷たくあしらわれているという風評の絶えなかった菅官房長官だが、安倍首相とその側近たちが目の前でふんぞり返る時間も残り少なくなり、浮かぶ瀬が見えてきたところだろうか。

しかし、裏切り、寝返り、梯子外しは政界のツネである。“三味線”で記者会見は乗り切れても、党内世論を味方につけるのは容易ではない。
参照元:裏切りの菅義偉「安倍降ろし」への秘めた思惑とは?二階氏と急接近、TV出演で攻勢
2020.08.28 MAG2NEWS
「権力の使い方熟知している」官僚たち恐々 菅氏、官邸主導に大号令
2020/9/18 6:00 西日本新聞 一面 湯之前 八州 一ノ宮 史成 前田 倫之

始動 菅政権(1)

 「まさに身の引き締まる思いだ」。自らの政権が本格始動した17日朝、菅義偉首相は官邸で報道陣にこう覚悟を語ると、矢継ぎ早に閣僚を呼び「今まで霞が関でやったこ とのないスピードでやってくれ」と指示を飛ばした。

 平井卓也デジタル改革担当相に、政府のデジタル化を一手に担う「デジタル庁」の発足作業を急ぐよう命令。田村憲久厚生労働相にも、不妊治療への保険適用の検討加速 を求めた。河野太郎行政改革担当相は早くも、省庁の弊害を国民から吸い上げるオンライン目安箱「縦割り110番」を開設した。

 内閣の「番頭格」である加藤勝信官房長官は昼すぎ、官邸ホールで官僚ら約170人を前に訓示した。「皆さんに求められているのは縦割りを排する、前例踏襲しない、さら には規制緩和。事が決まれば、果敢に」

 菅氏が16日夜の記者会見で力を込めた改革姿勢を、官邸主導というエンジンで押し出していくとの宣言だった。

        ◆

        行政権力を官邸に集中し、トップダウン型で迅速に政策を実行する官邸主導。橋本龍太郎政権に源流を持ち、菅氏が継承するとしている安倍晋三政権の下で一つの完成形 を見た統治手法だ。内閣人事局を通じた省庁の人事コントロール、絶対忠誠を誓う「官邸官僚」の存在が特徴。司令塔は政府ナンバー2の官房長官、菅氏その人であった。

 これから、官邸主導はさらに強固になる-。ある種の畏怖の感情を伴い、霞が関では既に予測が広まりつつある。政府高官は「(菅氏らに相当程度を委ねていた)安倍さ んと違い、トップに立った菅さんは自身で官邸主導の大号令を掛けているからだ」と話す。

 「菅流官邸」の権力構造も大きく変わりそうだ。

 安倍氏の「懐刀」と評された今井尚哉、日ロ経済協力などの交渉を担った長谷川栄一の両首相補佐官、スピーチライターの佐伯耕三秘書官が、主とともに官邸の中枢を離 れることになった。経済産業省出身の3人に由来し、「経産省政権」の名称が定着するほど重きをなした存在だった。

 一方、警察出身で省庁に広くにらみを利かせる杉田和博官房副長官、菅氏の名代として市街地再生から米軍再編まで携わる元国土交通省の和泉洋人首相補佐官は続投。国 交省の若手官僚は「菅氏も含め、権力の使い方を熟知している人たち。戦々恐々ですよ」と省内の空気を代弁した。

        ◆

        「選挙で民意を受けた政治家に官僚は従うべきだ」。常日ごろ、官邸主導の正当性を強調してきた菅氏。「まっとうな意見。あるべき行政の姿だ」(内閣府幹部)と受け 止める官僚は実は多い。

 問題は、安倍政権で行き過ぎて暴走し、「忖度(そんたく)」の横行や文書改ざんの問題という深刻な副作用につながったこと。加えて菅氏は首相就任直前、政権の決め た政策の方向性に反対する省庁幹部は「異動してもらう」と断言している。同じ事態が繰り返されない保証はない。

 総務省自治税務局長だった2014年、ふるさと納税で後に問題化する返礼品競争を懸念して菅氏に意見具申し、その後、昇進ルートを閉ざされた平嶋彰英氏(62)は危ぶむ 。「政策の検討過程で進言、忠言することさえできなければ、菅政権は独裁になる」

(湯之前八州、一ノ宮史成、前田倫之)

    ◇    ◇

     「国民のために働く」をうたう菅内閣。7年8カ月の安倍政権の何を引き継ぎ、変えるのか。4回にわたり探る。
参照元:「権力の使い方熟知している」官僚たち恐々 菅氏、官邸主導に大号令
2020/9/18 6:00 西日本新聞 一面 湯之前 八州 一ノ宮 史成 前田 倫之
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政権の終わりが見えてきたと思ったら、一枚岩だったはずの政権幹部たちの関係が異様なまでに軋み始めている。自分が死ぬか、相手が死ぬか。五輪まで半年、永田町で本格抗争の号砲が鳴った。

総理に呼ばれなくなった

「もう、あの人も終わりだよな」

ある自民党のベテラン議員が言う。官房長官・菅義偉のことである。官邸の守護神と言われたのも今は昔。

定例の記者会見では、記者の質問にもまるで上の空。「すみません、もう一回言って?」を繰り返すシーンは、毎度のこと。回答に窮し事務方からペーパーを差し込まれることも増えた。

この4ヵ月、菅はさんざんだった。菅原一秀や河井克行といった「側近」を無理矢理入閣させたものの、一気にスキャンダルに見舞われた。

重用してきた官僚が不倫騒動に追い込まれ、自分が肩入れしてきたIR問題でも、10年ぶりの国会議員逮捕という騒動に巻き込まれた。すべて菅の周りで醜聞が出たことから、「菅潰し」の声が囁かれた。

総理候補など夢のまた夢、スキャンダル処理にほとほと疲れた菅は、「このままやけくそで辞任するんじゃないか?」と噂を立てられる始末だ。

安倍総理との関係も決定的に軋みだした。昨年末から、菅が安倍に呼ばれる機会が減った。もちろん、朝、官邸で顔は合わせるものの、安倍は視線を合わせない。

要人との同席回数や接触時間は、かねてから菅との不仲が囁かれる今井尚哉秘書官のほうが格段に多くなった。

安倍に嫌われたのか。自分を嵌めたのは、今井ではなくて、安倍なのではないか。疑心暗鬼が、菅の胸中を交錯している。

官邸に2つあった危機管理ラインのもと、菅と今井は、修復不能な関係に陥った。今井は「菅さんは信用できないよ。総理の寝首をかく男だしね」と公言し、菅も「総理にぶら下がり会見なんてやらせて、本当にあのバカ」と今井を批判。だが、安倍は今井を選んだ。

「今井が官僚だからですよ。政治家とちがって、主君に取って代わろうとすることはありえない。総理にとって菅さんは不気味だが、今井は安心して使える。その結果、安倍総理と菅さんは『官邸内別居』状態になってしまった」(安倍側近)

このままでは、菅の政治家生命は終わる。頻繁に行っていた夜の会合も鳴りを潜め、菅の側近議員も「まったく誘われなくなったね。何をしているんだろう」と言う。表情も乏しくなり、抜け殻のようだ。

だが、これは演技だ。

『仮名手本忠臣蔵』に出てくる大星由良之助の一力茶屋のシーンを覚えているだろうか。連日酒を飲み、昼行灯そのものの大星は、ここで敵を油断させ、討ち入りのタイミングを見計らう。

慎重に五感を働かせていれば、どんなときにも運は巡ってくる――後ろ盾もない横浜市議から出発した叩き上げの菅は、それがわかっているのだ。俺をバカにして、ただで済むと思うなよ。「逆襲」への兆しはかすかに出てきている。

1月21日、廃棄していたはずの「桜を見る会」の3年分の資料が、突然見つかった。

会場設営の契約書などが、内閣府総務課に残っていたというのだ。これまでの説明とはまったく異なるが、これは菅を後押しする官僚の「反乱」だった可能性が高い。官邸職員の証言。

「桜の件は、けっきょく安倍さん自身の問題なわけです。安倍後援会が850人も招待され、昭恵枠まで膨大にあった。

すべて『廃棄』でウヤムヤにするつもりが、ここでわざわざ資料が出てくるというのは、菅さんに世話になった官僚が、菅復権のために、あえて出したとしか考えられない」

ぜんぶ、俺のせいか?

最近の「菅潰し」は、人事権を握ってきた菅に恨みを持つ官僚が荷担してきたという見方がある。一方で、アメとムチを使い分ける菅に「人事で世話になった」と感謝の感情を持っている官僚も多い。前出の職員が言う。

「菅さんにとっては、資料が突然出てきたのは大きな援軍でしょう。総理が追及されるきっかけになるし、『桜』対応を振り付けてきた今井氏にとっても失点となります」

菅が入閣させた前法相・河井克行と妻の案里についてはどうか。すでに広島地検は家宅捜索だけでなく秘書をはじめ30名以上の事情聴取まで行っている。しかし、もともと、河井夫妻は安倍総理との関係が深い。

「河井氏は『菅銘柄』と言われてきましたが、実際には河井さんは『安倍派』といっていい。案里氏の出馬も、対立候補の溝手顕正元参院議員を、安倍総理が大嫌いだったことからごり押ししたもの。菅さんは後から従っただけ」(自民党代議士)

だが河井が法務大臣を辞任する段になると安倍は「菅さんが大丈夫といったから」「菅さん自身が何度も選挙区に入ったでしょう。だから問題ないと思っていた」と菅に責任転嫁している。

そのような事情があるからこそ、週刊文春が報じた「参院選前、1億5000万円が自民党から河井陣営に振り込まれていた」という事実は、菅にとっては有利に働く。

カネの主体は党なのだ。官房長官である菅には関係ない。むしろ安倍銘柄であることがクローズアップされていくだろう。

二階とのタッグ 「さらに、次期検事総長と目されてきた東京高検検事長の黒川弘務氏が、2月8日の誕生日をもって定年退官する可能性が高まってきたのが、菅氏にとって追い風です。

『官邸の門番』としてさまざまな政治案件を握りつぶしてきた黒川氏が消えれば、菅氏も『黒川がいなければ、私も手を出せません』と堂々と安倍総理に言える。

稲田(伸夫)検事総長は、『黒川がやめれば、8月の任期までバンバン事件をやる』と語っているため、河井夫妻の立件は確定的になるでしょう」(政治部デスク)

大臣経験者の逮捕となれば、政権への打撃は大きい。菅と安倍のどちらがダメージを受けるか?安倍のほうだろう。

IR問題についても、実は安倍のなかでは危ない時限爆弾がある。逮捕された秋元司が、細田派の有力議員の名前を具体的に挙げ、カジノ企業との癒着を検察に話しているという。

「具体的に、安倍に近い現職大臣の名前と、その人物が受け取った2000万円という金額も話している」という噂で永田町は持ちきりだ。

これまで挙げてきた「追い風」は、今のところ、静かなさざ波にすぎない。どう活かすかは、菅次第。しかも、先手を打たれるかもしれない。

「総理には、年内に内閣改造を行って、菅さんを閣外に出すという思いもあるようだ。後任には甘利明氏の名前が上がってきている」(安倍側近)

実際には、「菅以外に、安倍さんの防波堤がつとまる政治家はいない。安倍さんとしては、菅に内閣を守らせつつ、力だけは着実に削いでいくという戦略だ」(閣僚経験者)という見方が強い。

いずれにせよ、菅は座して死を待つことはできない。チャンスがくれば、官房長官を辞任し、派閥を立ち上げるだろう。

援軍は多い。なにせ、睡眠時間まで削って会合を行い、飼い慣らしてきた「隠れ菅派」の議員は優に50人を超える。いまの菅を支えるのは、幹事長の二階俊博である。

「二階さんは今年になっても、何かにつけて菅さんの携帯に電話を入れて、ねぎらったりアドバイスをしたりしています。総理は、去年9月の人事で、いったん本気で二階幹事長更迭を計画しましたから、二階さんは安倍への警戒心を募らせているのです」(自民党幹部)

安倍に切られそうになった実力者2人が、タッグを組み始めているのだ。

目下、安倍が4選を狙わないかぎり、岸田文雄への総理禅譲はほぼ確定的だとされる。

「岸田さんと犬猿の仲である菅さんは、ついに『タダの人』になる。そうなるくらいなら、自分が総裁選に出馬するか、あるいは同じ神奈川選出の河野太郎か小泉進次郎を担いで政権をつくり、幹事長に就き『キングメーカー』として生きながらえるしかない」(菅派議員)

隠れ菅派に加え、二階派はもちろん、岸田を見捨てた古賀誠率いる宏池会の古賀グループ、さらに竹下派や石破派も戦列に加わる――。人数的には、不可能ではない。針に糸を通すような繊細なやり方で、最後の一手を下す。

裏切られたなら、裏切り返すだけ。菅はいま、牙を研ぎ続けている。

(文中敬称略)

「週刊現代」2020年2月1日・8日合併号より
参照元:安倍よ、ただで済むと思うな…菅官房長官「最後の逆襲」が始まった
欲望と裏切りの永田町ドキュメント
  週刊現代 講談社 2020/2/20 毎週月曜日発売
菅政権が発足 "実務家"…見えぬ国家像
2020/9/17 6:00 西日本新聞 一面 山口 卓

 菅義偉氏が「安倍1強」を引き継ぐ形で、国のかじ取りを担うことになった。野党時代から担当する記者として、菅氏が2012年に官房長官に就任した直後、何に取り組みたいのか聞いた。答えは「内閣人事局」。政策や理念を尋ねたつもりだったが、官僚を掌握することを最優先に挙げる姿に、「実務家」としての印象を強くした。

菅氏はその後、農協改革、外国人労働力の拡大、携帯料金値下げといった政策を次々と実現。「官僚はまず『できません』って言うんだよ」と口癖のように語り、勉強会や人事を駆使してそれを覆していく手法は、強権的とも評された。

 他方、菅氏から国家観を聞いたことはない。政策の柱として掲げる「自助・共助・公助」は10年に改定された党綱領に記されており、「菅カラー」と呼ぶには無理がある。菅氏の言動からは、目指すべき国の将来像がいまひとつ見えないのだ。本人も14年に雑誌のインタビューで「正直言うと、国家観というものがなかった」と打ち明けている。

 菅氏は、省庁改革、規制緩和、地方活性化といった各論を相次いで打ち出すことで求心力を高める「パッチワーク型」と言えるだろう。日本は人口減社会に突入し、国際社会では自国第一主義が広がり、米中による「新冷戦」が激化している。これまでの価値観が揺らぐ時代、国家としての方向性が示されないまま、方法論ばかりが先行するようでは心もとない。

 菅氏を新首相の座に押し上げたのは、安倍政権の権力構図を維持したいという自民党内力学に他ならない。党総裁選で5派閥の合従連衡が実現したのは、菅氏が「継承」だけを旗印に掲げたからだ。

 ただ、アベノミクスは行き詰まり、デフレ脱却は道半ば。「責任をもって引き継ぐ」と言うだけでは展望は開けない。森友、加計(かけ)学園問題についても「すでに結論は出ている」との立場を変える気配はなく、不信感はくすぶったままだ。

 こうした問題を引き起こした一因として官僚の忖度(そんたく)が指摘されるが、「政策反対なら異動」と明言する菅氏の下で、政官のいびつな関係は温存されることにならないか。

 安倍政治の功と罪に等しく向き合い、政策と制度のゆがみを修正できなければ、国民の期待は長くは続かないだろう。 (政経部次長・山口卓)
参照元:菅政権が発足 "実務家"…見えぬ国家像
2020/9/17 6:00 西日本新聞 一面 山口 卓

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