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現代の魔女狩り ー魔女裁判を髣髴とさせる現代の反理性主義-

2023 5/23



最近、ジャニーズ事務所のジャニ喜多川の性的加害疑惑が盛んに報じられており、社会問題化していた。


また市川猿之助 (4代目)の自殺未遂問題でも同性愛の問題がクローズアップされている。


市川猿之助の役者やスタッフに対するセクハラ疑惑を報じる中で、セクハラの対象が女性であるか男性であるかをメディアははっきり示していないのである。


従って、市川猿之助のセクハラの対象は女性であるとはっきり明記されておらず、ネット上では、セクハラの対象は男性であったのではないかと見なされている。


こうした問題を扱う場合のメディアの扱い方には、微妙なものがある。


(例えば、メディアが女性が暴行を受けたと表現する場合、実際は、それは強姦(レイプ)のことを意味しているが、メディアはそのことをオブラートで包んだ形でしか示さない。)


また自民党内では、LGBT法案についての議論が活発化しており、50%以上は容認する意向であるが、自民党内の頑強な保守勢力がこれを拒んでいる状態で、議論は紛糾している。




水瓶座をトランジットする土星

因みにここに来て、こうしたLGBT問題というものが、非常にクローズアップされているのは、土星が水瓶座に移動したからである。


水瓶座の理念は、人権、平等、多様性(ダイバージェンス)というものであり、メディアや企業内でのセクハラ、パワハラを扱う場合のコンプライアンスが厳しくなってきているのはこの水瓶座の影響である。


性的嗜好について、多様性を認めていく一方で、男性の男性に対する性加害なども厳しく凶弾していく。


欧米社会において、これは非常に強力に推進されている原理である。


例えば、学校で、生徒と恋愛関係に陥った女性教師が、逮捕されて禁固刑を受けるような厳しさがある。


生徒の男性にとっては、それは性被害ではなく、幸福な恋愛体験だったと思うのだが、女性教師に対して厳しすぎる感じも抱く。


これについては映画にもなっているが、西洋社会というものは、セクハラやパワハラに対して、非常に厳しく取扱い、それは企業文化などにも浸透している。



因みに市川猿之助 (4代目)の自殺未遂の記事の中で、7室の水星は、同性愛傾向を示すと書いたが、それは水星が性別的に中性の惑星だからである。


もう一つ中性の惑星は、土星であり、土星と水星は、ジェンダーがはっきりしないのである。


すなわち、同性愛傾向を与える惑星と言っていいと思われる。


水星が支配星となる双子座は特にそうした星座である。



市川猿之助の自殺未遂に関する記事の中でも記したが、双子座のシンボルは、「双子が仲よく手をつないでいる姿」であるが、男性同士、あるいは、しばしば女性同士のシンボルとしても描かれる場合も多く、同性愛の象徴でもある。



アメリカのウォール街があるニューヨークは、双子座の街であり、ニューヨークで同性愛が多いのは、双子座を象徴する街だからだと考えられ、また米ハリウッドでは、双子座に惑星集中するアメリカの建国図から考えると、アメリカの経済や文化を決定するエスタブリッシュメントは、双子座が象徴しているのである。


ハリウッドでは同性愛について啓蒙する映画が数多く創られている。(ハリウッドはユダヤ系が取り仕切っている業界である)



春分点が魚座から水瓶座に近づいていくにしたがって、西洋社会では中世の暗黒時代からルネッサンスが起こり、近代合理主義革命が起こり、産業革命だけでなく、自由、平等、博愛といった理念が普及されていくのであるが、それに伴って、LGBTの権利というものも発展してきたのである。




何故かと言えば、春分点が水瓶座に移動していく場合、双子座-天秤座-水瓶座という風のトランジットが優勢になっていくが、そうした風の星座のうち、土星と水星は、中性の星座だからである。


従って、同性愛傾向が現れるのは、春分点が水瓶座に移行していくに際して、自然な現象である。



もっと歴史を壮大なスケールで見た場合にレムリア時代やアトランティス時代というものがあったが、例えば、レムリア時代においては、人類はまだ性別が未分化であったと言われている。


そうしたことを考えると、男女のジェンダーがはっきりしていることは、特に神から与えられた自然ということでもないのである。



特に双子座は、自然を改変していく星座であり、自然というものを認めない星座であり、近代科学というものは、自然を改変し、越えていくことを運命づけられている。


従って、性転換手術といったことも行なわれるようになったが、科学の力で自然を改変していくというのは、双子座の理性の原理である。




そうした双子座-天秤座-水瓶座といった風の星座がもたらす変化に抵抗するのは、魚座-蟹座-蠍座の水の星座のグループである。



魚座の支配星である木星は、性別が男性であり、ジェンダーがはっきりしている。



従って、中性的傾向、同性愛傾向というのを認めたくなく、その存在を否定する傾向がある。





西洋社会の暗部-魔女狩り-


西洋社会では、15世紀から18世紀までに全ヨーロッパで推定4万人から6万人が魔女の嫌疑をかけられて処刑された暗い歴史がある。



キリスト教カトリック(魚座)の強固で狂信的なイデオロギーを推進する異端審問官から、魔女というレッテルを張られると、「自分が魔女である」と告白するまで、拷問が行われる。



一度、魔女という嫌疑をかけらたら、拷問によって死ぬか、自分が魔女であると告白するかのどちらかしかないのである。



魔女であると告白すれば、その後は、処刑されることになり、従って、一度、魔女というレッテルを張られると、死ぬまで異端審問官の追求を逃れるすべはない。



社会の中で、気に入らない、好かれない人物がいると、魔女であるという密告がなされ、その後、異端審問官の追求がなされ、自分は魔女であると自白するまで、拷問が延々と続く。



これは中世の暗黒時代の話ではなく、ルネッサンス後から産業革命までの間に起こった出来事である。



西洋社会の反理性主義と言ってもいいかもしれない。



こうした15世紀から18世紀にかけた西洋社会の暗部について、非常に膨大な資料を集めて明らかにしている本が、以下の『悪魔学大全』ロッセル・ホープ・ロビンズ著という本である。







以前も紹介したが、非常に学問的に価値ある貴重な本である。




私の解釈では、こうした魔女狩りに遭った人々の中には、双子座-天秤座-水瓶座の風の星座が強い人々、LGBT傾向がある人々がかなり含まれていたのではないかと考えている。



魚座-蟹座-蠍座といった水の星座の保守の思想や考え方に合致しない人々、そうした雰囲気や傾向を持つ人々に魔女というレッテルを張って、拷問し、処刑していったのが、魔女狩りだったのである。




こうした考えに至ったのは、最近、プーチンの犬と言われるラムザン・カディロフが、チェチェン共和国で、LGBT狩りを行っているというのを知ってからである。



同性愛者には「うそか死しかない」 チェチェン逃れた男性ら語る
2017年4月22日 8:45 発信地:モスクワ/ロシア [ ロシア・CIS ロシア ]

【4月22日 AFP】イリヤさん(20)は憔悴(しょうすい)しきっていた。軍服を着た男たちに殴られ、拷問されたロシア・チェチェン(Chechnya)共和国から逃げ出したが、今も生命の危険を感じている。それもすべて、彼がゲイだからだ。「チェチェンでは、うそをつくか、死ぬかしか選択肢はない」

 今は首都モスクワ(Moscow)の端にある小さな家に、やはりチェチェンから逃れてきた他の5人と一緒に隠れ住んでいる。彼らは北カフカス(North Caucasus)地方のイスラム地域に位置するチェチェンで、同性愛者の男性を狙った残忍な迫害を当局が繰り広げていると語る。
 AFPの取材に応じた男性らは全員、本名を明かすことを拒んだ。誰かに素性が知れ、見つけ出されることを恐れているからだ。「僕がゲイだということを親戚の誰かが知ったら、一瞬もためらわずに僕を殺すだろう」と、ノルチョさん(28)は述べた。「そうしなければ、家族の名誉を守らなかったといって、自分の方が殺されてしまう」

 ロシア社会には一般的に同性愛への嫌悪感があり、特に保守的なチェチェンでは同性愛はタブーとされ、死によって罰するべき不道徳とみなす家族が多く、問題は極めて深刻だ。

 チェチェンを過去10年にわたり強権的な手法で統治してきたラムザン・カディロフ(Ramzan Kadyrov)首長に対する批判的な姿勢で知られるロシアの独立系紙ノーバヤ・ガゼータ(Novaya Gazeta)は3月下旬、チェチェンで男性同性愛者たちが一斉に検挙されているという衝撃的なニュースを伝えた。

 この報道によると、チェチェン当局は同性愛者の男性100人以上を拘束し、家族に対し「汚名をすすぐ」ために彼らを殺せと呼び掛けたという。少なくとも2人が親族によって殺され、さらに1人が拷問の末に死亡したとされる。

 ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領の熱烈な信奉者とされるカディロフ首長の統制下にあるチェチェンの治安当局は、首長の対抗勢力を襲撃したり拉致したりしているとして長らく人権団体などから非難されてきただけに、この疑惑は深刻に受け止められている。

 この報道についての談話を求められたカディロフ首長の報道官は、チェチェンにはゲイの男性は「存在しない」ため、そのような懲罰的措置はあり得ないと断言した。

 カディロフ首長自身も19日、「チェチェンに関する挑発的な記事が逮捕とやらについて報じている」と述べ、同性愛者男性らの一斉検挙を否定。さらに「口にすることでさえ恥ずかしい。逮捕だの殺人だのが起きていると報じられ、(犠牲者の一人の)名前まで載っている。だが、その人物は生きており、元気で自宅にいる」と反論した。

■逃げても「いつかは見つかってしまう」

 チェチェンから逃げて来た人たちを支援している性的少数者団体「ロシアLGBTネットワーク(Russian LGBT Network)」モスクワ支部のオルガ・バラノワ(Olga Baranova)支部長はAFPの取材に対し「毎日3~4件の支援要請を受けている」と述べた。すでに20人近くがモスクワへ移ったという。

 チェチェンの首都グロズヌイ(Grozny)からは1800キロ以上離れているが、今もイリヤさんは、フェンスに囲まれた家の近くを車が通り過ぎるたびに、飛び上がるほどの不安に駆られる。「ネットワークに助けられ、一時的な逃げ場をもらった。だけど、いつかは見つかってしまう」とイリヤさんは静かに語る。

 昨年10月、イリヤさんは軍服姿の男3人に空き地へ連れ出され、殴打された。顔にはあごに沿って大きな傷跡が残っている。「一部始終を撮影され、20万ルーブル(約40万円)払わなければソーシャルメディアに流すと言われた。借金をして、それを払った」

 しかし、イリヤさんはどのみちモスクワへ逃げなければならなかった。「母のところへ兵士がやって来て、僕のことをゲイだと言った」「本当に恐ろしい。逃げてから、眠ることができない」

 仮名を語ることさえ拒んだ別の男性も、2週間前にチェチェンを離れて以来、妻や子どもに自分が同性愛者であることがばれてしまうことを恐れ、眠ることができないと語った。彼は3月に1週間、「非公式の刑務所」に入れられた。「同じ房には他のゲイたちがいた。何人かはたたきのめされていた」「釈放されたとき、今すぐ逃げなければと思った」

 チェチェンの同性愛者弾圧に関する報道は、世界各国で非難を巻き起こした。活動家たちは、ロシアと2度の独立紛争を交えたチェチェンのカディロフ首長を憤慨させないよう、ロシア政府が目をつむっていると非難している。

 このニュースを伝えたノーバヤ・ガゼータ紙の記者の一人、イリナ・ゴルディエンコ(Irina Gordiyenko)氏はチェチェンの高位イスラム法学者から殺害の脅迫を受けた。また同紙編集部には「グロズヌイ666666」と書かれ、白い粉が入った封書が届いたが、この粉は無害であることが確認された。


この男(カディロフ)のホロスコープを作成してみて、ナヴァムシャで月、金星、木星が魚座に在住しているのを見て、魚座の価値観を体現している人物であると思われた。





つまり、現代において、自分が理解出来ない水瓶座-双子座といった風の星座の価値観に対して暴力を行なう権力を持つ、西洋社会で魔女を取り締まる権限を与えられた異端審問官のような男なのである。





このカディロフが、同性愛者を見つけると取締り、拷問や処刑などを行っていることは、現代の魔女狩りである。






ユダヤ人への迫害と、魔女狩りの関係


それを考えると、西洋社会におけるユダヤ人に対する迫害の歴史も、魔女狩りの一種であったと考えることができる。



何故なら、アリスベイリーによれば、ユダヤ民族というものを象徴する惑星は、水星であり、星座としては、乙女座(水星)や山羊座(土星)であると書いてあったからである。



中性の惑星で、同性愛傾向をもたらす水星や土星が、ユダヤ人を主に象徴する惑星なのである。



因みに双子座が象徴するフリーメーソンやイルミナティーといった勢力は、こうした魚座の狂信的なイデオロギーや水の勢力(魚座-蟹座-蠍座)を打倒し、主にキリスト教のカトリックを打倒する闘い、反理性主義への戦いを行なってきた光の勢力であると考えられる。



従って、フリーメーソンやイルミナティーを悪魔崇拝だとする考え方は、主にキリスト教のカトリック(狂信的な魚座)から出て来た思想であり、情報戦なのである。



悪魔の絵柄やイメージというものは、双子座-天秤座-水瓶座の風の勢力や、それを体現するユダヤ人に被せるようにして、キリスト教のカトリックが発明したものである。



そうしたことを考えると、建国図において双子座に惑星集中するアメリカのハリウッド(アメリカの価値観を代弁する機関)が、同性愛について啓蒙するような作品を沢山制作する理由というのも分かってくる。







自民党の中での稲田朋美


稲田朋美は安倍政権の中で、防衛大臣まで務め、また父親が生長の家の支部の責任者を務めていた。



日本の保守の思想、価値観を体現する日本会議という政治勢力は、生長の家の最も原理主義的な人々が音頭をとって、日本の神道連合、寺や神社などをまとめて設立されたのである。



出生図で蟹座ラグナで、ナヴァムシャでは魚座ラグナで、ラグナで金星が高揚し、魚座の価値観を体現していた安倍晋三を裏で支えていたのは、この日本会議である。



自民党を支えているのは、こうした日本会議や旧統一教会などの宗教勢力なのであり、魚座の勢力である。



従って、自民党がLGBT法案に反対するのは、魚座の保守である為、よく分かるのである。



しかし、最近、その自民党でも50%の人々は、LGBT法案を容認する意見に傾いているという。



但し、そうした傾向に対して、自民党の最も保守的な勢力が猛反発しているという。



そして、稲田朋美は、本来、大日本帝国憲法を復活させたいと考えていた成長の家の谷口雅春を敬愛しており、安倍政権内でも、保守の筆頭であったにも関わらず、LGBT法案に関しては推進する立場なのである。



これは何度もブログの中で書いているが、稲田朋美は、蟹座ラグナで本来、魚座の価値観を体現する保守的な人間なのだが、水瓶座に太陽と水星が在住しており、水瓶座の価値観にかなり影響されている面があるのである。







私が調べた所、水瓶座に在住する水星のアンタルダシャーの時期にLGBT法案に賛成するような立場を表明している。



現在、土星が水瓶座を通過している為、尚更、稲田朋美は、こうした水瓶座の思想、価値観に対する責任を感じており、これを推進する立場なのである。



これを自民党内のプロパガンダを宣言する保守系雑誌、月刊『Hanada』の中で、あの告発されたジャーナリスト山口敬之が、「稲田朋美の裏切り」と呼んでいる。



稲田朋美は、これに対して編集部に記事の訂正するよう抗議したが、こうしたことが起こるのは、一人の人間の中でも、蟹座ラグナではあっても水瓶座に惑星が在住しているといったように異なる価値が共存しているからである。




いずれにしても、春分点が徐々に水瓶座に移動していくにつれて、どんどん世界はリベラルになってゆき、多様性(ダイバージェンス)というものが認められる社会になってゆく。



そうした中で、LGBTや同性愛者が、生き易い社会というものになっていくのである。




そして、やがて、ウクライナ戦争も終わり、2000年頃から生じていた歴史の逆回転も終わることになるだろう。



そうなった時、世界は、新世界秩序に向けて、新たに行進を始めることになる。




Chat型AIが物語る労働が必要なくなる自動化された未来や原子核融合など、好ましい未来を予見する材料は揃って来ている。



悪魔という概念を生み出したのはキリスト教のカトリックであるという認識に辿り着いたのは50年近く生きて来て学び経験を積んで来た大きな成果である。



30代の頃はまだユダヤ陰謀論というものにかなり囚われていて、全く真実が見えていなかった。



真実により近づけたと思うが、それは秘教や占星術(ジョーティッシュ)のおかげでもある。



確かに巨大多国籍企業、市場原理主義が、様々な弊害をもたらしていることは確かだが、国際金融資本家=グローバリストが、悪魔だというのは、短絡的な発想である。



西洋近代合理主義というものが、人工知能や原子核融合などで、全く世界を変えようとしており、それらは使い方によってはより社会を良くするものである。




(参考資料)

「LGBTの粛清」が蔓延るロシアの「内なる外国」チェチェン
2022年1月26日 新潮社 Foresight (執筆者:真野森作)

ロシア南西部のチェチェン共和国ではLGBTQ(性的少数者)の人々に対する激しい弾圧が起きている。独立紛争の末にプーチン大統領に忠誠を誓うカディロフ親子が権力を握り、異色の文化が形成されたチェチェンの病理を、現地を取材した筆者が報告する。

ロシアのウラジーミル・プーチン政権がウクライナ国境付近に大規模な軍勢を展開し、国際社会を緊張させている。

 実は、政権の強硬な動きは安全保障や外交面だけでなく、内政においても現れている。背景にあるとみられるのが、今年70歳を迎えるプーチン氏のレガシー(政治的遺産)づくりや、2024年大統領選で再選を果たすための下準備という狙いだ。 

 ロシア国内では伝統的価値観や愛国主義を旗印とした市民社会への抑圧が勢いを増し、民主・人権活動家やジャーナリスト、さらにはLGBTQ(性的少数者)の人々が標的にされている。

 中でも性的少数者への激しい弾圧が起きているのが、ロシア南西部のチェチェン共和国だ。『ポスト・プーチン論序説 「チェチェン化」するロシア』(東洋書店新社)を昨年9月に刊行した筆者が、ロシアとチェチェンを巡る現在進行形の病理を報告する。

ロシアの人権侵害と戦い続けるノーバヤ・ガゼータ紙

「世界は、もはや民主主義に対する愛情が冷めてしまい、独裁政治の方を向き始めた。我々は、人権と自由を通じてではなく、テクノロジーと暴力によって発展を成しえるという幻想を抱いてしまっている。自由を伴わない進歩? それは、牛を飼わずしてミルクを得ようというくらい不可能です」――。

 2021年のノーベル平和賞を受賞したロシアの独立系紙「ノーバヤ・ガゼータ」のドミトリー・ムラトフ編集長(60)は、昨年12月の授与式でのスピーチでこう強調した。

「新しい新聞」という意味の社名を持つノーバヤ紙は、ソ連崩壊後の1993年に創刊した。ロシアでは稀有な独立系リベラル紙で、国内の人権侵害や対外軍事行動の闇を果敢に報じてきた。ノルウェーのノーベル賞委員会は、強権体制の下で「民主主義と恒久的平和の前提条件である表現の自由を守るための努力」を続けてきたことを授賞理由に挙げている。

 同時受賞したフィリピンのジャーナリスト、マリア・レッサ氏と共に、「逆境の中で理想のため立ち上がる全てのジャーナリストの代表」という位置づけだ。

 ムラトフ氏のスピーチでの言葉は、報道を通じて「人権と自由」を守る取り組みを今後もやめないという意思表示だ。現代のロシアにおいてその仕事は容易ではない。「人権と自由」を恣意的に制限するプーチン政権にとって、明らかに邪魔な存在だからだ。

 ノーバヤ紙では、チェチェン報道で名をはせたアンナ・ポリトコフスカヤ記者をはじめ、6人の記者が殺害されてきた。

カディロフ親子が掌握するチェチェン

  非・民主化の動きが急速に進む現代のロシアにおいて、極北を行くのがチェチェンである。2015年に現地取材した私は、このチェチェンこそがロシア全体をより過激で抑圧的な方向へ先導しているのではないかと直感した。

そもそもチェチェンとはいかなる土地か。ロシア南西部の北カフカス地方に位置し、岩手県程の面積に人口百数十万人が暮らす。住民の大半はイスラム教スンニ派を信仰するチェチェン人だ。

 1994~2009年に独立を巡る2度の紛争があり、何十万人とされる死傷者、行方不明者が出た。紛争を通じて独立派やイスラム過激派は駆逐され、親露派のアフマド・カディロフ氏がプーチン大統領からチェチェン統治を任されるようになる。同氏が2004年に爆弾テロで殺害された後、2007年からは息子のラムザン・カディロフ氏(45)が共和国首長を務める。

「プーチン氏にとって大事なのは忠誠と安定であり、チェチェン内部がどうであろうと関係ない」とロシアのある識者は断言した。カディロフ親子はプーチン氏に個人的忠誠を誓い、見返りに首長の地位と地域統治のフリーハンド、巨額の連邦予算の投入を得てきた。

 この連邦予算を用いた大量の復興事業やインフラ整備という「アメ」と、異論は許さない「ムチ」によって少なくとも表面上は人心を掌握し、チェチェンはロシアの中で「内なる外国」とも評される特殊な地域となった。紛争で破壊された首都グロズヌイは完全に再建され、摩天楼群や壮麗な大モスク(イスラム教礼拝所)が威容を誇る。

チェチェン内部ではプーチン氏への忠誠やロシアに対する愛国心が強調される反面、イスラム教とカディロフ親子への個人崇拝が合わさった異色の文化が形成されつつある。

 首長の傘下には数万人規模のチェチェン人実力部隊「カディロフツィ」が控え、強権統治を支える。イスラム過激派への対策として、テロ容疑者に関しては親族の家まで焼き、故郷から全員追放するといった具合だ。

 チェチェンの軍人はロシアが戦争当事国であるウクライナ紛争やシリア内戦に深く関与してきた。さらに、先のポリトコフスカヤ記者らロシアの反体制派著名人の暗殺事件でも実行犯としてチェチェン人が暗躍している。

違法薬物捜査が同性愛者の大弾圧に発展

 このチェチェンで近年起きているのが、性的少数者に対する大規模な組織的弾圧だ。イスラム圏のチェチェンでは同性愛者(特に男性)への差別が元々根強いという社会的背景がある。それでも、弾圧が始まる以前は、目立たないよう努めれば、性的少数者であっても比較的平穏に暮らせたとされる。

 事態が暗転したのは2017年春のことだ。違法薬物に絡む治安当局の捜査が大弾圧へと転じた。薬物使用が疑われる男性容疑者の携帯電話の保存データから、彼が同性愛者と示す写真が見つかったのが事の起こりだった。当局は連絡先に登録されていた男性たちを次々と拘束し、拘束後には殴打や電気ショックの拷問を加えて無理やり情報を提供させ、同性愛者と疑う計100人以上を芋づる式に狩り出した。

 拷問によって多数の死傷者や行方不明者が出たとされ、同様の弾圧はその後も繰り返された。昨年6月には、家族から性的指向を理由に暴行され、隣接するダゲスタン共和国の保護施設へ逃れていた22歳の女性が、チェチェンの警官隊によって強制的に連れ戻される事件もあった。

 ノーバヤ紙や欧米メディアはこうした実態を拘束被害者の証言も交えて報じたが、ラムザン・カディロフ首長らチェチェン当局は全面否定している。一方で、カディロフ氏は2017年7月に受けた米テレビ局のインタビューで「チェチェンにはゲイなど存在しない。もしいるなら血を清めるために遠く離れたカナダへ連れて行ってほしい」と言い切った。存在の否定ほど弾圧を推進する思念はないだろう。

同性愛者には何をしてもよいという青信号

「チェチェンの治安当局は、望ましくないと彼らが考えたグループの人々に対して常に同じやり方で追い込みをかける。拘束し、拷問にかけて他の人の情報を出させる。こうした不法な弾圧を連邦政府が長年免責していなければ、今回のことも起きなかったでしょう」

 国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」(HRW)ロシア支部のターニャ・ロクシナ氏は、私のオンライン取材にこう指摘した。

チェチェンで拷問を受けた被害男性の一人は2017年10月にモスクワで記者会見を開き、刑事告発もした。だが、連邦政府当局は捜査に着手せず、訴えを握りつぶした。カディロフ氏のみならず、ロシア正教を背景とした「伝統的価値観」を重視するプーチン政権も、性的少数者への差別的扱いを拡大しているからだ。

 ロシアでは2013年にLGBTQへの差別や抑圧につながる「同性愛宣伝禁止法」(通称)が成立している。未成年者に対して同性愛など「伝統的家族観に反する情報」を宣伝・普及することを禁じるもので、最高で100万ルーブルの罰金や法人活動の90日間停止を科す。この法律によって性的少数者を巡る社会活動は抑え込まれてきた。さらに、2020年の憲法改正によって同性愛者同士の結婚は明確に禁じられた。

 HRWのロクシナ氏は「ロシアでは性的少数者には何をしてもよいという青信号が出されている」と強い危機感を語った。

チェチェンの「ゲイの粛清」を記録したドキュメンタリー映画

このチェチェンでの性的少数者弾圧と被害者の救出活動を現地で取材したドキュメンタリー映画がある。米国の映画監督、デイビッド・フランス氏(62)が制作した『チェチェンへようこそ――ゲイの粛清』だ。日本でも2月下旬から全国で公開予定となっている。

 「チェチェンで起きているのは、(ユダヤ人を根絶しようとした)ナチス・ドイツのヒトラー以来となる少数者の粛清です。それに対して国際社会が対処していない現実に私はショックを受けました」

フランス氏は雑誌ルポなどを通じて事態を知ったときの衝撃を、オンライン取材でこう振り返った。社会派の監督や作家として、米国でのエイズ禍や性的少数者への差別を扱った作品を手がけて高い評価を受けてきた。その彼の目からも、チェチェンの状況は一刻の猶予もない惨事と感じられた。

「この問題に注目を集める手助けをしたい」

 そう考えたフランス氏は2017年にロシアへ飛び、直ちに取材を開始する。チェチェンの被害当事者を支援する地元の人権団体「ロシアLGBTネットワーク」の活動に密着する手法を選んだ。ネットワークの活動家たちは標的にされた人々の命を救うため、チェチェンからの脱出と海外亡命を全面的に支えていた。

 フランス氏率いる少数精鋭の制作チームは、ロシア国内に設けられた一時避難用の隠れ家で傷ついた性的少数者たちの苦悩や希望を記録し、チェチェンからの脱出作戦の同行取材にも挑んだ。

 現地を訪れたフランス氏は、「チェチェンは非常に閉鎖的な監視社会と感じました。地元政府は(性的少数者に対しては)親族であっても攻撃するよう人々をあおっている」と指摘する。

反LGBTQを権力強化に利用するプーチン  支援活動を率いるロシア人男性は映画の中で、「財政は苦しく、(亡命先となる第三国の)ビザ取得も難しい。でも放ってはおけない。とにかく殺されない限り私たちの勝利だ」と心情を語る。彼らはチェチェンで弾圧が起きるまで普通の生活を送っていたが、救出に携わることで「お尋ね者」になってしまった。国外退避を余儀なくされたメンバーもいる。

「世の中には火事が起きたとき、助けに飛び込む英雄的な人たちがいる。私はこの映画を通して他者に対する愛をも描いた」とフランス氏は強調した。

ロシアの活動家グループは2017年から2年間で約150人をカナダなどへ海外移住させた。だが、チェチェンでは今も数万人の性的少数者が命の危険にさらされている。悲惨な状況に対して果敢に立ち向かう活動家たちの存在は、ロシア社会にとっては本来救いのはずだ。

 だが、「プーチン氏はロシアを反LGBTQに転じさせ、自己の権力強化に利用している。圧倒的多数のロシア人は性的少数者の排除に熱心だ」(フランス氏)という現実がある。

 フランス氏は「チェチェンで起きたことは世界のどこでも現実になりえる。私はその思いを『チェチェンへようこそ』(原題”Welcome to Chechnya”)という映画タイトルに込めました。性的少数者をスケープゴート(生けにえ)にする手法を各地の権威主義的な指導者が学んでいる」と訴える。確かに反LGBTQの政治的な動きは欧州のハンガリーなどに広がっている。

日本の私たちもこの現実を理解する必要がある

「国民は国家のために存するのでしょうか、それとも国家が国民のために存するのでしょうか? 今日、この問いが主たる争点となっています。かのスターリンは、この対立を圧倒的な弾圧で解決しました」

 ノーバヤ紙のムラトフ編集長はノーベル平和賞受賞スピーチでこうも語った。

 プーチン氏はいま、「国家=自らの政権」を護持・強化するためなら、ロシア国内の少数派はもちろん、ウクライナや東欧など旧社会主義圏の他国民を犠牲にしても構わないといった態度に出ている。ロシアの隣国であり、北方領土問題を抱える日本の私たちもこの現実をよく理解する必要があるだろう。
参照元:「LGBTの粛清」が蔓延るロシアの「内なる外国」チェチェン
2022年1月26日 新潮社 Foresight (執筆者:真野森作)

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