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レディコミの女王・井出智香恵の告白 - 国際ロマンス詐欺で7500万円を騙し取られる -

2023 8/18



最近、私の身近で国際ロマンス詐欺に該当すると思われる事例が増えている。


例えば、以前、クライアントの方から、国際ロマンス詐欺の事例を伺ったが、知人の女性が、SNS上で連絡して来た外国の男性と結婚する約束をしたが、男性が行なっている事業への投資を頼まれて、自分の家を担保に2000万円など巨額の借金をして、男性に送金してしまったのである。


男性と実際に日本で会う日になって、男性は待ち合わせ場所に現れず、その代わりに行けなくなった理由などをメールで送ってきたというが、その後、暫くして、連絡が取れなくなったという。


それで、その女性は、借金を返済するか、毎月、家賃相当の金額を支払って、家に住み続けるかを迫られて、緊急の家族会議を開いたという。


そのクライアントの方は、その詐欺で騙されたことが発覚した直後の緊迫した家族の現場に立ち会ったのだという。


それ以外でも似たような話があり、国際ロマンス詐欺というカテゴリーに属することが疑われる事例を何例か、聞く機会があった。


グローバリゼーションが進行したせいで、世界のどこからでも比較的裕福で(裕福だった)、貯蓄などのある日本人の女性(男性)をターゲットに詐欺を仕掛けることが可能になっている。



最近、報じられたニュースでは、国際宇宙ステーションに勤務しているという外国人男性と知り合った女性が、その男性が地球に戻るためのロケット費用として、440万円を送金してしまったケースなどもある。


その外国人男性は、「日本に来て人生をスタートさせたい」「私が日本に着いたら結婚してくれませんか」「1000回言っても伝わらないけど言い続ける。愛している」などといったメッセージを送って来たという。



こうしたSNSを利用しない形でも、海外の男性と結婚している日本の女性は、男性との間で、金銭トラブルになっている方が多い。


男性側が様々な理由を付けて、お金を要求してくるのに対して、お金を貢いでいたが、その理由が全て嘘であったことが発覚した事例もある。



日本は、魚座、蟹座、蠍座など、水の星座の象意が強く、情に脆い為、日本の女性は、お金を簡単に送金してしまうのである。


結婚をすればバラ色の未来が開けると期待する女性の心理を悪用して、既に結婚したつもりになっている女性たちは、結婚というゴールの為に男性側の問題を解決してあげる為に簡単にお金を送金してしまうのである。


過去の記事で、サルパドレッカーナ(蛇のドレッカーナ)について言及しているが、サルパドレッカーナは、蟹座の第2、第3ドレッカーナ、蠍座の第1、第2ドレッカーナ、魚座の第3ドレッカーナである。


これらの象意の中でも、特に蠍座の第2ドレッカーナは、夫、配偶者による束縛という象意として現れる。


従って、蠍座の女性が、交際している男性と旅行に行こうと誘われて宿泊先で、女郎に売られて、男性はお金を受け取って、そのまま逃亡したなどといった残酷な物語が、昔からステレオタイプとして存在する。



最近も若い女性たちで、歌舞伎町のホストにはまって、高額なボトルを入れるなど何千万円も借金をして貢いだ挙句、その:借金を支払う為に自分も買春をするといった女性が増えているようである。


こうしたことは皆、感情による束縛であり、水の星座(蟹座、蠍座、魚座)、特にサルパドレッカーナが役割を果たしているのである。



人は皆、欲望があり、その欲望は弱点である。


それは人によって違うが、ロマンス詐欺というのは、結婚したいという願望を利用した詐欺であり、これにのめり込んでいる女性(あるいは男性)は、冷静になって、相手から騙されている可能性を検討することが難しいようである。





こうした国際ロマンス詐欺で、7500万円を騙されたことを告白して話題になっているのが、レディコミの女王・井出智香恵で、先日、Abema TVで、そのことでインタビューを受けている動画を見た。









早速、チャートを作成してみたが、過去の出来事など、種々検討した結果、おそらく、ラグナは牡牛座である。







漫画家としてのキャリア



牡牛座ラグナに設定すると、9、10室支配のヨーガカラカの土星が、3室(デザイン、執筆)に在住し、3室支配の月が、10室に在住することで、3-10の星座交換をしている。



従って、メディア、芸能に関わる仕事を表わしている。



井出智香恵の作品は、いくつかテレビドラマ化もされており、つまりは、テレビの映像作品の原作者でもあるのである。



そして、オリジナルなストーリーも手掛けている為、脚本家、作家の資質も備えている。



それは、2、5室支配の水星が10室に在住し、3室支配の月とコンジャンクトする配置の中で現れている。



つまり、10室と3室の星座交換、そして、3室の支配星と5室の支配星が10室でコンジャンクトする配置が、こうした業界で作品を創造する活動を表わしている。



ラグナロードの金星は、11室で高揚しており、高い評価を受け、自分のネームバリューで生きていく実力を表わしている。



11室から5室(創作)にアスペクトしている為、この辺りでも漫画家として、作品作りに励むような配置である。



8、11室支配で、8室でムーラトリコーナの座にある強い木星は、作品から巨額の印税収入が入ることを表わしているかもしれない。








井出智香恵は、今では売れっ子漫画家で、レディコミの女王と呼ばれるまでになったが、若い頃は、豊島園に就職し、働きながら、ひたすら漫画を描いたという。



そして、1966年に『ヤッコのシンドバット』(井出ちかえ名義、集英社『りぼん』掲載)でデビューしている。



1966年は、ちょうどマハダシャー土星期に移行した後の土星/水星期である。



つまり、上述したように土星は、9、10室支配で3室支配の月と3-10の星座交換をしていると考えれば、この辺りから本格的に漫画家としての仕事がスタートしたことを表わしている。



アンタルダシャーロードの水星も5室の支配星として、3-10の星座交換に絡んでおり、漫画家として、また作家として、活動したことを表わしている。







そして、土星期を通じて、順調に漫画かとしてのキャリアを積み上げていくが、30代の頃、新幹線で隣に座った男性と恋愛して、結婚し、夫の故郷である三重県に転居して3人の子供をもうけたという。



そして、wikipediaによれば、『夫はドメスティックバイオレンスや浮気、浪費が絶えず、妻の原稿料を奪って高級車や不倫相手に注ぎ込み、さらに妻の担当編集者を殴って漫画の依頼が一時途絶え、経済的困窮に苦しめられた』というのである。


そして、1990年代後半に夫の借金を引き受けて離婚している。





夫のドメスティックバイオレンスや浮気や浪費で苦労する



ちょうどこの夫に出会った頃は、30代ということは、1978年以降である。







ダシャーは、土星/ラーフ期以降であるが、土星は、月ラグナから見ると、1、12室の支配星で6室に在住し、1-6の星座交換をしている。



ここで、12室の支配星が6室に在住することによるヴィーパリータラージャヨーガを形成していることは、後々、細かい象意を考察する際に有効である。









土星は、蟹座のアーシュレーシャで、逆行し、蟹座の第3ドレッカーナで、サルパドレッカーナ(蛇のドレッカーナ)に在住している。



アンタルダシャーのラーフは12室に在住し、出費を連想させるが、ディスポジターの火星は、7、12室支配で、4室に在住し、7室にアスペクトバックしている。



この火星は、獅子座のマガーに在住しているが、この火星こそが、このドメスティックバイオレンスや浮気や浪費を繰り返した夫の表示体である。



12室を支配している為、この夫との交際では、非常にお金を出費するのである。




通常、牡牛座ラグナの方にとって、7室の支配星は同時に12室を支配しており、また蠍座ラグナの方にとっても7室の支配星は、12室も同時に支配している。



こうしたラグナの方々は、パートナー関係で、性的な関係(12室)にのめり込みやすく、また巨額な出費(12室)を伴うのである。



蠍座ラグナ、特にアーシュレーシャは、ホストやホステスのラグナであるが、これらの人たちが、パートナー関係で出費する金額は、桁が一桁や二桁違うのであり、通常の一般人の常識を超えているのは、この為である。




このマハダシャー土星期は、1982年までで終わるが、その後も1990年代後半まで結婚は続けているが、その間、ずっと水星期である。



水星は、牡牛座ラグナから見ると、2、5室支配で10室に在住している為、漫画家としての活動は順調に続けていたが、パートナーの7室から見ると、水星は8、11室の支配星であり、不労所得や、パートナーの財産の8室と収入の11室の支配星である為、この頃、パートナー、つまり、井出智香恵氏が稼いだお金で、羽振りの良い生活をしたことが分かる。




そして、1990年代末に離婚をしたというが、その時が、ケートゥ期に移行したタイミングである。



ケートゥは6室に在住している為、このタイミングで離婚が起こったのである。




しかし、ケートゥのディスポジターである金星は、1、6室支配で11室で高揚し、5室にアスペクトしている為、この頃になると、漫画家としての地位を確立したと思われる。





1990年代に『週刊女性』に連載され、嫁と姑の争いを描いた『羅刹の家』は『凄絶!嫁姑戦争 羅刹の家』としてテレビドラマ化された。更に同時期には推理アクション漫画『嫁と姑”超”名探偵』もドラマ化されている。

(wikipedia 井出智香恵より引用抜粋)



1990年代に週刊女性に連載されたり、作品がテレビドラマ化されている為、水星期の後半ぐらいから、漫画家、作家として、メジャーになったことが分かる。





ケートゥ期、そして、金星期へ -漫画家としての地位の確立 -


そして、このケートゥ期、そして次の金星期において、漫画家として大成はしたが、恋愛などプライベートを充実させたいという欲望も出て来たと思われる。



金星はラグナロードだが、配偶者の表示体でもあり、理想主義の魚座で高揚して、恋愛の5室にアスペクトしている。



理想的な男性との恋愛を夢見るようなスタンスが出て来る時期である。



金星は魚座で高揚しており、女性ホルモン全開で、成熟した大人の女性として、男性との理想的な恋愛に辿り着きたいという願望が渦巻いているような時期かもしれない。



金星はトリシャダヤハウスの6室を支配して、6室は対人関係の欲望を表わし、お金の力で疑似恋愛なども買ったりできる力を表わしている。





情緒的で、官能的、恋愛に甘ったるく、盲目的な牡牛座ローヒニー


そもそも今回は、ラグナを牡牛座のローヒニーに設定したが、牡牛座は、五感の満足を満たすことを追求し、感覚の喜び、官能性を追求する星座である。



そして、月が高揚することから、情緒的で、ロマンティストであり、牡牛座のローヒニーなどは、恋愛に対して甘い情緒を抱きやすく、男性に対して、盲目的な恋愛感情に浸りやすいのである。



その異性などに対するスタンスが、しばしば甘ったるすぎると批判を受けやすい星座である。



例えば、好意を持った男性に対して、「どんな時も変わらぬ愛とか、永続する愛」といったテーマで、盲目的で、甘ったるいメッセージを口にするのが、ローヒニーである。



一方で、魚座の方は、理想主義者で、しばしば現実と理想が解離してしまう星座である。



現実よりも理想の方をリアルだと思ってしまう。



自分に白馬の王子様が現れると、夢見心地になりやすいのが、魚座である。



つまり、ラグナが牡牛座のローヒニーで、ラグナロードの金星が、魚座で高揚することで、非常に官能的で、恋愛に甘い願望を抱き、理想主義的な恋愛を夢見るパーソナリティーをもたらしたのである。



またローヒニーは、ダンス、歌、音楽、芸術、ドラマ、演技と関係するナクシャトラでもある。



そうしたパーソナリティーだからこそ、レディコミの世界で、女性たちが共感しそうな多くの作品を生みだすことが出来たと言うことも出来る。




国際ロマンス詐欺師たちは、こうした結婚願望を抱く女性の心理に熟知していたのか、井出智香恵をターゲットに選別し、複数人で、トラップ(罠)を仕掛けたようである。



レディコミの女王・井出智香恵が、ロマンティストで、官能的であり、理想的な結婚を夢見る願望の持ち主であり、それが弱点であることを熟知した上で、ターゲットに絞り込んでいたとすれば、悪魔的である。



最近は、銀行の口座情報やクレジットカード情報などの個人情報が、海外に漏えいしてしまう事件が後を絶たないが、そうしたことで高額所得者、資産家の住所、氏名、電話番号、メールアドレスなどが、こうした国際犯罪者、詐欺師たちの手に渡っている可能性が高い。



そうしたことで、高額所得の持ち主であるということで狙われた可能性が高いが、結局の所、詐欺で騙したり、騙されたりするのもチャートに描かれているのであり、カルマの発現である。







国際ロマンス詐欺に遭う


2022年1月、井出智香恵は、国際ロマンス詐欺に遭ったことを告白しているが、2018年春頃からおよそ4年に渡って、SNS上のやり取りで、トータルで、7500万円を送金したという。



相手は、アメリカの有名俳優マーク・ラファロを名乗る男で、SNS上で知り合い、海外でも有名であった井出智香恵の源氏物語を友人に勧められて読みファンになったと主張したという。



そして、実際にSNS上で、カメラを使って、顔を見せ合うような局面では、最近、進歩してきたAIによる画像生成技術を使ったのか、実際に本人が話しているように見えたという。



井出智香恵によれば、マーク・ラファロという田舎者風のハリウッドスターからのオファーだったから心が動いたのであり、ブラッド・ピットではそうはならなかったとのことである。







マーク・ラファロが出演したいくつかの作品を見たことがあるが、確かにマーク・ラファロは、少しダサい感じのする田舎臭い俳優で、洗練されたハリウッドのトップスターといった感じではない。







こうした二流の俳優が、既に国際的に有名になっていた井出智香恵にアプローチをしたという、あり得なくもない状況に騙されたと考えられる。



この辺りは巧みであり、ブラッド・ピットのような一流俳優だったら、連絡してくるはずがないと考えてしまったはずである。





金星/土星期 -王が乞食になるか、乞食が王になるかのタイミング-



この2018年春からの4年間は、ちょうど金星/土星期から金星/水星期にまたがる時期で、その大部分は、金星/土星期である。




この金星/土星期は、王が乞食になるか、乞食が王になるかのタイミングであると言われているが、娘と共に借金までして、7500万円を送金した井出智香恵は、明らかに王から乞食に転落したと考えられる。







この金星期は、金星をダシャーラグナとすると、魚座ラグナで、土星が、11、12室支配の機能的凶星となる。




私は以前から、魚座ラグナにとっての11、12室支配の土星の働きについて研究しているが、収入の11室と出費の12室を同時に支配する土星は、これまで稼いだお金を一夜にして失うような象意を持っており、災害的、破滅的(disastrous)な損失をもたらす時期である。



そして、魚座は水の星座であり、献身的で、無償の奉仕をしてしまう星座である。



ナチュラルゾーディアックでは12室の象意を持っており、自己犠牲で、損失する方が板についている星座と言ってもいいかもしれない。



魚座で高揚する金星は、ウッタラバードラパダー(土星)に在住し、ナクシャトラの支配星が、土星である為、これは11、12室支配で、蟹座のアーシュレーシャ、蟹座の第3ドレッカーナ(サルパドレッカーナ)に在住する土星を活性化することがよく分かる。



ダシャー解釈の原則では、この場合、マハダシャーロードの金星が、アンタルダシャーロードの土星のナクシャトラに在住していることから、この場合、アンタルダシャーロードの土星が、優勢に結果を与えるはずである。



つまり、11、12室支配で、5室に在住する土星の象意がこのタイミングで噴き出したのである。



11室は願望成就のハウスであり、強い願望を表わしているが、12室は海外を表わしており、そして、5室は恋愛、ロマンスを表わしている。



11、12室支配で、5室に在住する土星は、ロマンス詐欺で、巨額の損失を被る配置を表わしている。



ヴァラーハミヒラのブリハット・サンヒター(占術大集成)によれば、アーシュレーシャには、「毒」とか、「蛇」とか、「他人の財を盗むもの」といった否定的な象意が見られる。





7 アーシュレーシャー宿には、商品、根茎、根、果実、虫、蛇、毒、他人の財を盗むもの、籾のある穀物、すべての薬草が、


(占術大集成(ブリハット・サンヒター)〈1〉古代インドの前兆占い (東洋文庫) ヴァラーハミヒラ (著), Varahamihira (原著), 矢野 道雄 (翻訳), 杉田 瑞枝 (翻訳)より引用抜粋)



そして、サルパドレッカーナは、蛇を表わしており、蛇は狡猾で、悪意のある存在の象徴で、前世からの深い否定的なカルマによる束縛の象徴でもある。



従って、それが金星/土星期に噴き出して来たのである。




マハダシャーの金星自体は、11室で高揚して、漫画家としてのキャリアの絶頂にいて、海外にまで名前が知られるほどの高い評価を表わしている。



しかし、金星の質や、細かい所をチェックしていくと、こうした否定的な象意が浮かび上がってくる。





ヴィーパリータラージャヨーガ -転んでもただでは起きない-


しかし、井出智香恵は、昔から、弱い女性が負けたまま終わらせないことを作品のポリシーにしているようである。



それは彼女の生き様にも反映されており、例えば、ドメスティックバイオレンスや不倫、浪費が激しかった元夫への憎悪はドロドロしたレディコミの演出にも役立ち、共感した読者からも感想や体験談が発行元編集部に殺到したという。



つまり、夫との間の酷い体験は、その後の作品作りの中でのインスピレーションとなり、また読者の共感が殺到して、ブレイクして、損失を埋め合わせた感じもあるのである。









井出智香恵は、月ラグナから見ると、ラグナロードで12室支配の土星は、6室に在住し、6室支配の月と、6-12の星座交換をして、ヴィーパリータラージャヨーガ(逆転のラージャヨーガ)を形成している。



弱い女性が負けたまま終わらせないという彼女のポリシーは、ヴィーパリータラージャヨーガによって、実際の自分の人生にも当てはまる傾向かもしれないのである。



そして、今回の国際ロマンス詐欺で騙された件においても、その後、2022年1月に告白した結果、テレビの取材につながって、知名度が上がり、またこの詐欺の体験は、『毒の恋』として、2022年に漫画化したほか、「世界の何だコレ!?ミステリー」で本人のインタビューと共に再現ドラマ化されたという。









つまり、転んでもただでは起きないのであり、完全に取り戻したとは言えないまでも、ある程度、その体験をネタにして、取り戻した様子が見て取れる。



これこそが、ヴィーパリータラージャヨーガなど二重否定の効果ではないかと思われる。






・土星/ラーフ期・・・・ドメスティックバイオレンス、不倫三昧、浪費家の夫との出会い

・金星/土星期・・・・・マーク・ラファロに成りすました男から国際ロマンス詐欺で金を騙し取られる




彼女は土星期にパートナー関係で酷い目に遭っているが、これを元にして、取り戻す象意もまた土星期に生じているのである。





金星をラグナとした場合の恋愛運


因みに金星をダシャーラグナとした場合にそこには金星期の恋愛運がはっきりと示されている。






まず、魚座の金星から見て、7室支配の水星が12室に在住しており、遠距離恋愛を表わしている。



そして、5室支配の月が12室に在住し、11、12室支配の土星が5室に在住して、5-12の星座交換をしているが、これは海外への投資とか、恋愛による出費とか、色々な意味に取ることが出来る。



また7室支配の水星が、この土星と月の星座交換に接続しており、11、12室の象意と強く結びついており、火星のアスペクトを受けて傷ついている。(これがパートナーによる出費の象意である)



また星座交換によって、5-11の絡みも生み出している。



また11、12室支配の土星は、6室支配の太陽と相互アスペクトして、6-11、6-12の絡みを生み出している。



この金星をラグナとして見た時に6-12室の軸に水星、月、火星が集中し、チャンドラマンガラヨーガも形成されており、肉食系で、かなり積極的にSNS上の恋愛をしたようにも見える配置である。



また5-11室の軸で、11、12室支配の土星と6室支配の太陽が相互アスペクトしている配置も、機能的凶星同士、敵対惑星同士の絡みで、5-11室の富の軸が損なわれている。





ナヴァムシャ


ナヴァムシャを見ると、金星は月から見て、7室支配で6室で減衰しており、火星からのアスペクトを受けている。



金星が6室で減衰している為、パートナーを粉砕する配置でもあり、自分の目下のパートナーとの交際という象意も見られる。







これは自分が優位な立場に立てる田舎者の相手を選んだことに現れている可能性も考えられる。



金星が減衰していることから、本質的に恋愛に対して奥手で、小心な、自信のない面も見られるのではないかと思われる。






12室のラーフ


12室のラーフは、あまりダシャーに登場して来ないが、これも海外での出費など、否定的な象意を持つ重大な配置である。



ラーフのディスポジターが、7、12室支配の火星である為、土星/ラーフ期に元夫と出会ったということだが、そもそも新幹線の中での出会いということが、12室のラーフ的な出会いであり、怪しげな出会いであったと考えられる。



新幹線は密室(12室)であり、またどこか地方など、遠方(12室)へ行く為に乗っていたのではないかと思われるが、通常、12室のラーフの時期は、あれもこれもやりたいが何をしてよいか分からないといった悶々とする時期で、心が落ち着かない時期である。



そして、そのラーフに対して、8、11室支配の木星がアスペクトし、そして、ディスポジターの7、12室支配の火星にもアスペクトしている。



この8、11室支配の木星は、機能的凶星で、ムーラトリコーナの座にあって強いが、悪意を持っている。



従って、この木星がラーフや火星にアスペクトしてもあまり良い象意として現れないのである。




6-8のナクシャトラ交換


この木星は、ムーラ(ケートゥ)に在住し、ケートゥは、ヴィシャーカー(木星)に在住している為、木星とケートゥは、6-8のナクシャトラ交換をしているようである。



マハダシャー金星期は、金星が魚座に在住している為、ディスポジターの木星の象意を経験する時期であるが、この木星は、射手座のムーラで、ムーラトリコーナの座にあり、非常にパワフルだが、悪意を持っていて、ちょうど、資産家を調べ上げて、国際ロマンス詐欺を仕掛けるようなパワフルな詐欺師の表示体と言ってもいいかもしれない。



こうした8、11室支配の木星が、ラーフや火星にアスペクトすることで、出会うパートナーが非常に悪意を持っていて、金を騙し取るような悪人として現れたと考えられる。



従って、このラーフと火星と木星のモクシャハウス(4、8、12室)でのトライアングルが、非常に否定的な注目すべき配置である。



モクシャハウスが凶星や凶ハウスによって傷ついている場合は、自発的な自分の意志ではない強制的な解脱を表わしており、自分が望まない形で、無理やりカルマの解消をさせられることを意味している。



そのように考えると、元夫との出会いも、国際ロマンス詐欺師の犯人との出会いも普通の人には分からない何らかの意味や理由があったかもしれないのである。





このように見て来て、レディコミの女王・井出智香恵は、金星/土星期に巨額のロマンス詐欺事件に遭うカルマがあったと考えられる。



アンタルダシャーロードの土星は、サルパドレッカーナで、マハダシャーロードの金星も土星のナクシャトラであるプールヴァバードラパダーに在住し、結局、サルパドレッカーナに在住している。



今、「井出智香恵」で検索すると、国際ロマンス詐欺に遭った件や、元夫のDVの話など、多くの記事がヒットし、また複数の取材動画が、youtubeなどでも見られることが確認でき、世間的に非常に目立っており、注目されている。



これは、牡牛座ラグナから見て、10室に土星がトランジットしている為である。



井出智香恵は、レディコミ界の橋田壽賀子と言うべき人で、ドロドロした人間の確執などを描くのが得意であるが、それはチャートのこうした惑星配置に基づいているようである。










(参考資料)

「偽ハリウッドスターにだまされた」 国際ロマンス詐欺で7500万円被害 漫画家、井出智香恵さんが体験語る
2023/2/1 18:00 産経新聞 (入沢 亮輔)

交流サイト(SNS)を通じて知り合い、好意を持たせて現金をだまし取る。こうした犯罪はロマンス詐欺と呼ばれ、近年社会問題化している。「羅刹の家」「女監察医」などの作品があり、「レディースコミックの女王」として知られる漫画家の井出智香恵さん(74)も被害に遭った一人。「当時は自分で自分がわからなくなっていた。マインドコントロールされていたんだと思う」と自身の被害を公表している井出さんは滋賀県警で講演、被害防止を訴えた。

当初は気に留めず

井出さんのもとに実在するハリウッド俳優、マーク・ラファロを名乗る人物から「フェイスブック」を通じて、英語で連絡が来たのは平成30年2月ごろだった。

井出さんはマーク・ラファロの作品をほとんど鑑賞するほどのファンだったが、「本人のはずがない」と気にも留めなかった。井出さんの作品は翻訳されていることもあり、「どうせファンの1人だろうくらいにしか思っていなかった」と振り返る。

その後も、撮影の裏話やとりとめのない世間話が送信され、応じるうちに、ある日「僕が本物かどうか信じないのか」と言われたことからビデオチャットで会話することになった。画面の向こうにはまごうことなきハリウッド俳優本人の姿があり、井出さんの作品「源氏物語」を手にしていた。人工知能(AI)技術を使った偽動画「ディープフェイク」とみられるが、井出さんを信用させるには十分だった。その後、頻繁に連絡をとるようになり、男は妻と離婚協議中ということや、それを理由に裁判所に財産を差し押さえられていることなど身の上話を始めた。自身も離婚歴がある井出さんは深く共感。そして同年秋ごろ、男は井出さんに好意を伝え、2人は画面越しに結婚することを誓った。

恋愛という病気

男から金の無心が始まったのはその後すぐだった。

「飛行機に乗り遅れて新たなチケットを取るのに1100ドル必要だ。財産を凍結されているので貸してほしい」

その後も自身の入院治療費や裁判費用などを名目に要求は続いた。井出さんは直筆の原稿やブランド品を売ったり、友人や子供から借金したりして金を工面した。

当然周囲は気づいていた。「恋愛という病気にかかっている」という人もいた。ただ、当の井出さんはだまされていることを認めなかった。

「私自身うぬぼれもあったと思う。70歳にもなって恋愛とか思ってもいなかったのに」

困り果てた知人が弁護士に調査を依頼。男が示したパスポートや領収証などはすべて偽造で、男はアフリカなまりの英語を話していることもわかった。事実を突きつけられた瞬間、「もう払わなくていいんだ。つきものが取れたような感覚だった」。3年5カ月に及んだ送金は総額で7500万円にまで膨れ上がっていた。

井出さんの手元には今でも大量の送金記録が残されている。警察に被害を相談する傍ら、自身の体験を広く伝える活動を行う。

「私はSNSをよく知らないのにのめりこんでしまった。ましてや英語もできないのに。ロマンス詐欺の手口を知ってもらい、ほかの人には悲しい思いをしてほしくない」

井出さんは実感を込めて話す。

宇宙ステーション勤務かたる、暗号資産への投資目的も 肩書も手口も巧妙化

マッチングサイトや交流サイト(SNS)などインターネット上で知り合った相手に恋愛感情を抱かせ、金銭を送金させるロマンス詐欺。滋賀県警によると、令和4年のロマンス詐欺被害の認知件数は57件、被害額約3億5千万円。前年は41件、約2億2千万円だったので増加傾向にある。被害者の半数以上が男性だった。

昨年6月には、滋賀県東近江市の60代女性が、宇宙ステーションに勤務する外国人男性を名乗る人物とSNSで知り合い、「日本に来て人生をスタートさせたい」「私が日本に着いたら結婚してくれませんか」などといわれ恋愛関係になり、地球に戻るためのロケット費用や、地球や日本への着陸料などの名目で、同年8月、現金計約440万円をだまし取られる被害があった。

また、こうした関係を利用し、暗号資産(仮想通貨)などの投資に勧誘されるケースもある。滋賀県長浜市の50代の男性は暗号資産への投資名目で同年10~12月、計約3200万円を女性を名乗る人物が指定する口座に振り込んだ。口座は複数にわたり、いずれも個人名義の銀行口座だった。

恋愛感情を巧みに使った犯行で、滋賀県警の担当者は「SNSを通じて現金を要求、または投資を持ち掛けるのはすべて詐欺」と注意を呼び掛けている。(入沢亮輔)
参照元:「偽ハリウッドスターにだまされた」 国際ロマンス詐欺で7500万円被害 漫画家、井出智香恵さんが体験語る
2023/2/1 18:00 産経新聞 (入沢 亮輔)
「国際ロマンス詐欺」被害7500万円! 漫画家・井出智香恵「長女が私を救ってくれた」
2022/08/17/ 08:00 AERA (福光恵)

大丈夫なの? 財産狙いじゃない? 親の恋愛をどうとらえるか、親と子の間に軋轢も生じがちだ。漫画家・井出智香恵さんの実体験から読み解く。AERA 2022年8月15-22日合併号の記事から。

*  *  *

 SNSでやりとりをしながら、見ず知らずの相手に恋愛感情を抱かせて現金をだまし取る「国際ロマンス詐欺」。今年初め、NHK BS1でその被害にあったことを告白した大物漫画家がいる。1990年代にドラマにもなった『羅刹(らせつ)の家』などの作品で知られるレディコミの女王、井出智香恵さんだ。

 2012年の映画「アベンジャーズ」でハルクを演じたマーク・ラファロを騙(かた)る詐欺師からだまし取られた金額は、3年半で約7500万円! 相手をマークだと信じ続けた井出さんの目を覚まさせたのは、長女だった。

 井出さんの“恋愛”をめぐって親と子の間に、井出さんの漫画に負けないほどの、どんなディープなドラマが展開したのか。2人に聞く前に、井出さんがあった国際ロマンス詐欺の、巧妙すぎる手口について。

 作品が外国で出版され、18年には作品の一部がグッチのデザインに使われるなど、世界との関わりも増えていた。そんな井出さんの元に、ファンだった俳優マーク・ラファロを名乗る男性からSNSのメールが届いたのは、18年のことだ。

■毎日「愛してます!」

「大ファンです! 好きです! 愛してます!というメールが毎日届くようになったんです。私の元へは外国人からあやしいメールが届くことは珍しくなかったので、しばらくは放っておいたのですが……」

 そう話す井出さんだが、メールはいつまでたっても止まらない。ためしに「オンラインで姿を見せて」と言うと、画面の向こうでしゃべっているのはマーク・ラファロ、その人!……のように見えた。

 あとからわかったことだが、実はこれ、AIを使って本物そっくりに動くニセ動画、ディープフェイク。とはいえ井出さんの作品についてもよく知っているニセのマークを、井出さんはこのあたりですっかり信用してしまったという。

その後は「『奥さんとの離婚協議中で財産を押さえられ、日々の現金にも困っている』というマークの言うがまま、50万、100万という大金を送金してしまった。恋愛というより、最初はマークを気の毒に思う気持ちのほうが強かったかもしれません。送金額が膨(ふく)らんでからは、家族のためにも、マークの離婚が成立して、貸したお金を何とか取り戻したいという一心でした」(井出さん)。

 一方の“マーク”は「100万円必要だが、半分は自分で調達するので、半分だけお願い」と、せびる額の減額をけなげに申し出たり、中身は確認できない、数億円が詰まっているという「担保代わり」の大きな袋が届いたり。そんな二重三重の細工が、井出さんの猜疑心(さいぎしん)をさらに霞ませた。

 そんな母を、長女は最初は「母の人生は、母のもの。恋愛だって好きにしてもらっていい」と見守っていた。だが、しばらくして友人や家族にまでお金を借りて送金するようになった母を見て、「もう恋愛ごっこでは片づけられない」ことに気がつく。

「(マークとの恋愛は)家族を幸せにするためと言っていた母に、詐欺ではないかと忠告しても、聞き入れなかった。『借金癖がありDVだった』と母が言う父がいた頃も、母と離婚して父が家を出た後も、母は私たち子どもにとってのすべて。このとき、私は初めて母に逆らうという経験をしたと思います」(長女)

 以来、長女は母の友人らの協力を得て、「マークが本物ではない」証拠集めを始める。チームから送られてきた情報や写真を収集したり、記録したり。詐欺が明るみに出る日に備えた。

■親だって一人の人間

 井出さんは言う。

「いよいよお金がなくなったとき、長女の作った記録や資料を突きつけられて、ようやく自分の過ちに気がついたんです」

 マークとネットで知り合ってから、3年以上が経っていた。

「私を救ってくれた長女や家族、友人たち、ロマンス詐欺に騙されそうになっている誰かのためにも、すべてを告白して働き、一日も早く借金を返そうとしているところです」(井出さん)

離別や死別があり一人になって、パートナーを探すのも恋愛するのも個人の自由だ。だが、親の恋愛について、子の心配は尽きない。今回、編集部がおこなったアンケートに寄せられた「『親の』恋愛相談」に、その酸いも甘いも知る井出さん母娘からアドバイスをもらった。

「母は、父が70歳だった10年前に他界。まもなくして父から、古くから家に住み込んでいた家政婦さんと恋に落ちて、入籍したいと宣言された。姉は亡くなった母への思いが強く『母の存命中から何かあったのではないか。財産は一円も渡したくない』と入籍を拒絶。その後3年経った今も2人は入籍せずに、幸せに暮らしている。自分は最後まで父の面倒を見てくれるお礼も込めて、入籍してほしいと思うようになったのだが……」(50代、独身会社員)

「私の漫画では、自分の信念を貫いてやりたいことをやると、本人も周囲も、ハッピーエンドになることがほとんど。お姉様の気持ちもわかりますが、ここは強行突破で結婚してもいいのでは?」

 と井出さんが言えば、長女は、

「親も一人の人間。いくつになってもトキメキを感じられる人生ってすてき。今度は子どもが老いていく親を見守る立場になればいいと思います」

 ちなみに、井出さんの3年半に及ぶニセマークとの日々は、8月下旬に発売予定の『毒の恋 7500万円を奪われた「実録・国際ロマンス詐欺」』という作品で詳しく紹介されるそうだ。(ライター・福光恵)

※AERA 2022年8月15-22日合併号
参照元:「国際ロマンス詐欺」被害7500万円! 漫画家・井出智香恵「長女が私を救ってくれた」
2022/08/17/ 08:00 AERA (福光恵)
「地球に戻るためのロケット費用を…」 65歳女性が440万円被害 国際ロマンス詐欺か
2022/10/7 17:20 産経新聞

滋賀県警東近江署は7日、同県東近江市の嘱託職員の女性(65)が宇宙ステーション勤務の外国人男と名乗る何者かから現金計約440万円をだまし取られる詐欺事件があったと発表した。

男女の機微に触れ、寂しさに付け込む「国際ロマンス詐欺」で、同署は「SNSで知り合った相手が交際を持ちかけて送金を要求するものはすべて詐欺だ」と注意を呼びかけている。

同署によると、女性は今年6月28日、写真・動画共有SNSを通じて国際宇宙ステーションで勤務している外国人男と名乗る者と知り合った。

以降、メッセンジャーアプリLINEを通じて、「日本に来て人生をスタートさせたい」「私が日本に着いたら結婚してくれませんか」「1000回言っても伝わらないけど言い続ける。愛している」などとメッセージが届いた。

8月ごろになって、地球に戻るためのロケット費用、地球や日本への着陸料などの名目で現金を要求され、信じた女性が8月19日~今月5日の間、5回にわたり、現金計約440万円を指定された銀行口座に入金した。しかし、その後もさらに現金を要求されたことから不信感を抱き、警察に届け出たという。
参照元:「地球に戻るためのロケット費用を…」 65歳女性が440万円被害 国際ロマンス詐欺か
2022/10/7 17:20 産経新聞
「今でも自分を責める」…偽りの恋に落ちた女性が告白 国際ロマンス詐欺の手口と後遺症
2023/5/13 08:00 産経新聞 (宇山 友明)

外国人を装い、恋愛感情を抱かせて金をだまし取る「国際ロマンス詐欺」。大阪府警はガーナを拠点とする詐欺グループのメンバー17人を詐欺容疑などで逮捕、書類送検し、今年3月、リーダーでガーナ国籍のナナ・コフィ・ボアテイン容疑者(33)を国際手配した。グループは日本国内の男女69人から総額約4億9千万円を詐取したとみられる。被害者の1人が産経新聞の取材に応じ「今でも自分を責め続けている」と悲痛な思いを語った。

「僕と結婚しよう」

4年前。英会話の勉強をしようとマッチングアプリを始めた東京都の50代の女性のもとに「ジェフ・マーティン」と名乗る米国人男性から「君と話がしたい」とメッセージが届いた。

ジェフは自身を「神奈川県座間市の米軍基地で医師として勤務している」と説明。英語でのやり取りが始まり、仕事の話や週末の過ごし方など連日電話で話すようになった。

「毎日一緒にいたら、楽しいだろうな」「僕と結婚しよう」。そのうち、ジェフから熱烈なアプローチがあり、女性も好意を抱くように。しかし1カ月がたったころ、宝石を送る保険料名目などで金を要求されるようになった。

女性が男性のインターネットバンキングの口座にアクセスできないと伝えると、「何しているんだ」と激高。「お前のせいだ」「いいから払え」と午前2時や3時にも取り立ての電話がかかってくるようになり、冷静な判断を失った。

被害に気がついたのは約2カ月後。銀行に送金の相談をした際に、「詐欺ではないか」と言われたことがきっかけだった。総額で約500万円をだまし取られていた。

府警はこれまでに、このグループの日本人メンバーの取りまとめ役とされる森川光被告(59)=詐欺罪などで公判中=を逮捕し、全容解明を進めている。捜査関係者によると、被害者の中には大量のメッセージをやり取りし、約1億円をだまし取られた人もいるという。

当時は子供が巣立ち、1人暮らしだったという女性。事件後は家族に対する罪悪感にさいなまれたほか、人間不信にも陥った。「まさか自分が詐欺に遭っているとは思わず、早くこの生活を終わらせたい一心でお金を払ってしまった。私は1人で抱え込んでしまったが、勇気を出して周りに相談すればよかった」と話した。

深追いせずに…

国民生活センターによると、外国人を名乗る相手から投資名目で現金をだまし取られる「国際ロマンス投資詐欺」の相談は、平成30年度は2件だったが、コロナ禍を背景に令和3年度には192件と急増した。

被害が増加する中、アプリの運営企業も被害を未然に防ぐため入会時の本人確認や不正を監視する機能を強化。4年度の相談件数は86件と若干減ったものの、依然として被害はなくならない。

国際ロマンス詐欺の被害者支援に取り組むNPO法人「CHARMS」代表理事の新川てるえさん(58)は「犯罪グループはやり取りを始めた当初は甘い言葉をかけてくるが、ターゲットからの好意を感じるようになると次第に本性を現す」と話す。

金銭を要求する理由はさまざまで、出張先での銀行口座の凍結や身内のけがなどが突然起こり、生活に苦しむ外国人を演出。恋愛感情を抱いている被害者は「自分が助けるために何とかしなければ」という「マインドコントロール」のような状況に陥ってしまい、大金を支払ってしまう。

新川さんによると、詐欺師たちは被害者を助けるふりをして別の詐欺を企てることも多いといい、「大前提として見知らぬ外国人と連絡を取らないことが大切だが、やり取りの中で金銭を要求されたら、相手を深追いせずに、周囲や警察にすぐに相談してほしい」と呼びかけている。(宇山友明)
参照元:「今でも自分を責める」…偽りの恋に落ちた女性が告白 国際ロマンス詐欺の手口と後遺症
2023/5/13 08:00 産経新聞 (宇山 友明)
72歳のレディコミ女王、借金癖のDV夫への憎しみが「創作の原動力」だった壮絶人生
2021/1/11 週刊女性 (『週刊女性』編集部 週刊女性2021年1月19・26日号)

デビューしてから50年あまり。描いたページは約10万ページ。日本独自の文化であるレディースコミックの旗手は、まさにレディコミのような人生経験の持ち主だった! 漫画に堆肥をかけられた少女時代。売れっ子になるも借金癖のDV夫に悩まされた子育て時代。初期の作品がGUCCIのデザインに──。人間の深層を描かせたら日本一の作家・岩井志麻子が、彼女の素顔をさらけ出す!

“女王”の気さくな素顔

 コロナ禍にはあっても、一見すると平穏で美しい京都の町。ここに、伝説にして現役のレディースコミック女王の井出智香恵(72)はいる。

 気さくに取材者を最寄り駅まで迎えに来てくれ、自宅に招き入れ、仕事部屋も描きかけの漫画も見せてくれ、

「いい店があるの。しょっちゅう娘とも行ってる」

 と、近所の行きつけの場所まで楽しそうに案内してくれる。

 その途中、ベルを鳴らさない若い男の自転車が勢いよく後ろから来て抜き去っていき、

「ちりんちりん、鳴らそうよ!」

 女王は怒っているのではないが、威厳がありつつやっぱり気さくな態度で叫んだ。

 若い男も素直に、はーいと返していた。あっ、このお方は本当に漫画以外でも女王になってしまう方なのだと、心の中で平伏する秋の古都。

「この町が、すごく好き。故郷の長野を出てから、東京も含めていろんな所に住んだけど、1日1日を過ごすうちにどんどん好きになるのは、ここが初めて」

 確かに居心地よさそうな町だ。近隣の大都市にはすべて近い交通の便の良さ、駅前にだけでなくマンションの周囲にもあらゆる店がそろっていて、なのに緑豊かで空の広さも道路の抜け感も大らかだ。

 どこにでもすぐ行けるのに、動きたくなくなる居場所。女王の居場所にふさわしい。

「まぁ、長男も長女も家庭を持って独立して責任ある仕事を任されて、ちゃんとやっているし。長女も漫画家になったの」

 ご本人の人生が、レディコミそのもの。波瀾万丈だけれど地に足の着いた生き方、激動に満ち満ちているのに安定した心構え、というのは数多のインタビュー記事でも知られているが、女王はついに安住の地を見つけたのだ。

「いま一緒に住んでいる次女も、好きな絵を描きながら仕事して、そうね、次女はわりと高齢で産んだのもあって、いつまでも可愛い子どもよ」

 新幹線が走るのを見たい、という人もやってくる、という見晴らしのいいベランダがついたリビングには、今は亡きご両親の立派な仏壇がある。

 その脇に、誰もが知るヒット作から、あっ、これも井出作品だったかと改めて驚く昔の少女漫画本が詰まった本棚。

 食卓に出してくれたのは、地元の名店のお弁当。取材者を心配しつつ、お土産としても用意してくれていたマスクにフェイスシールド。

「ご先祖様は拝まなきゃ。両親も、私を産んで育てて見守ってくれているんだから」

 漫画家になってからは娘を応援し自慢にしていたご両親だが、娘がまだ何者でもない子どもで、漫画に夢中になったり漫画家を目指していたころは、大反対していたという。

「殴られたりはしなかったけど、そりゃもう犯罪扱いというくらい、漫画を読むことも描くことも阻止されてた。でも、やめなかったから今の私がある」

漫画本に堆肥をかけられて……

 1948年、長野県の静かな町に生まれ育った智香恵は、すでに5歳くらいから周りの子のそれとは違う絵を描き始めていた。

 小学生のころ、アガサ・クリスティーの『オリエント急行殺人事件』を読んだのがきっかけで、まずはミステリー小説に夢中になる。

「図書館のミステリーは、クリスティーだけじゃなくほぼ読んでしまったの」

 研究熱心、のめり込む、それは幼少期からだった。

「そこから自然と話の作り方を学んだというか、私なりに研究、分析していった」

 学んだこと経験したことを、いいこともつらいこともあまさず自身の中に強く取り込んでしまえることも、そのころからだ。

「たいていの本は、こういう展開になるな、きっとこいつが犯人だな、と最初のほうでわかってしまうようになったし」

 後に、こちらもミステリーの帝王たる存在となる森村誠一に気に入られ、森村作品すべての漫画化を許可されるようにもなるのだった。

「森村作品だけは、先が読めないことがあったわ」

 その尊敬と信頼は、あちら側も同じくらい抱いたのだ。一流は一流を知る。

 しかし親というものは、井出家に限らず子どもには普通の子でいてほしいものだ。可能性や将来を、すべて先回りして見抜いたり用意したりはできない。

 漫画は趣味にとどめておけ、勉強の合間の楽しみとして、と穏やかに忠告や心配をするのではなく、かなり強硬に実力行使の妨害までするのだ。

 親としては、特に娘に冒険などしてほしくはない。だから智香恵は漫画を描いていると勉強しろと怒られ、何度も宝物の漫画本を隠され捨てられ、ついには穴を掘って捨てられ、その上に堆肥をかけられたりもしたという。

 ウンコですか。そこで、不覚にも笑ってしまいそうになるが。

「そこまでしないと、私が掘り出してしまうからね」

 ひどい、といってしまうこともできるが、それは昭和30年代、40年代の地方に住む堅気の親としては、ごく普通のことだった。

 夢を追うことがもてはやされ、個性を大事に、多様性を認めよう、といった教育や思想はまだ一般的でなく、人並みであること、堅実であることが大事だった。

 女性も一生の仕事を、ではなく、それなりに勤めたらいいとこに嫁いで平穏な家庭を築いてほしい。それを旧弊な価値観の押しつけ、子どもの夢を摘み取る、理解がない、と決めつけるのも絶対的に正しくはない。

 好きなように生きろ。好きなように生きてはだめ。どちらも、親心には違いない。

GUCCIも認めた斬新な作画

 ともあれ漫画と漫画家への夢はあきらめきれない、いや、頑として持ち続けた智香恵だが、基本はしっかりした親御さんに育てられた真っ当なお嬢さんだ。これは今現在も、女王の根底を成している。

 親のいうことを聞くふりだけでなく、ちゃんと期待にも応えるように高校を卒業すると、2020年夏に閉園した遊園地のとしまえんを運営していた株式会社豊島園の広告部に就職した。

 今と違って、漫画家を目指すならやはり東京にいたほうが圧倒的に有利、チャンスは広がった。

 堂々と上京し、東京に住んで堅実に仕事もしながら、真夜中に漫画を描いた。本格的に投稿を始め、実に6か月で結果を出す。才能、努力もさることながら、なんといっても意志の強さは筋金入りだ。

 66年、集英社の漫画雑誌でデビューを飾る。『ヤッコのシンドバット』は王道の少女漫画、明朗なコメディータッチで、後にレディコミ女王と呼ばれ、ドロドロの愛憎劇で人気を博す井出智香恵の片鱗すら見当たらない。

 その後、こちらも王道のスポ根漫画、『ビバ!バレーボール』を集英社の人気漫画雑誌『りぼん』に連載。かなり恵まれた、漫画家人生のスタートだ。

 当時は少女漫画といえば、バレーとバレエ。東洋の魔女と称えられた、バレーボールの日本選手が活躍した東京オリンピック。その余波もあり、大ヒットした。

 りぼんマスコットコミックスの第1号としても、漫画史に残る。しかしその絵柄もストーリーも正統派すぎる少女漫画を初めて目にした人は、現在のレディコミ女王の作品とは信じられないかもしれない。

 後にその可愛らしい絵柄を日本文化、クールジャパンと認められ、2018年にはGUCCIとコラボレーションした商品までできるのだ。

「うれしいけど、自分でこの時代の絵はすごく下手と劣等感を持っていたから。ほら、典型的な巨大な瞳に星がキラキラ、まつ毛バサバサでしょ」

 本人は卑下するが、そこにGUCCIのデザイナーは“ビバ!”と衝撃を受けたわけだ。

 現代の少女漫画はさまざまな絵柄があり、あそこまで強調された瞳は古臭いとなっているようだが、やはり往時の漫画を知るかつての少女としては、瞳にはこのように星と虹が輝いていてほしい。背景にも、花が咲き乱れていてほしい。

 ともあれここら辺から、たいていの日本に住む女性の中には井出智香恵がすみつくことになる。ざっくりと同世代なら、『ビバ!バレーボール』という正統派の少女漫画で愛と恋と夢と希望、友情に努力といった物語に引き込まれるし。

 その後は双葉社のレディコミ誌『JOUR』などで、もっと大人になった女たちの愛と恋、そして性を描く世界に心奪われた。

 井出智香恵が、描く場や作風やジャンルを変え、レディースコミックの女王へ進化していくにつれ、同世代でない女性たちにも愛読者は広がっていく。

「ネットの普及で、すごく若い子や海外の人たちまでが、私の漫画を読んでくれているみたいね。思いがけない世代や国の人たちに、ファンだといわれて驚くわ」

 バブル期と重なるように、レディコミの大ブームがあった。井出智香恵は1か月に400ページ以上を描くこともあったという。

ギネス級の作品量と独自の作風

 とにかく、井出伝説にはものすごい数字が出てくる。

 50年以上も現役で活躍もさることながら、作品タイトルは1000くらい、総ページ数はそろそろ10万ページになるのでは、といわれている。

「女性漫画家として世界最多だと、ギネスに申請しようとしたんだけど、ものすごく複雑で面倒な調査やあれこれがあって、ちょっとあきらめてしまったところ」

 勝手に海外で複製されているのも、どうにもならなくて今は放置してあるともため息をつく。成人女性のための愛と官能のレディコミは、他国にはないジャンルのようで、海外の読者にとってもレディコミ女王なのだった。

「ウェブで、世界中に読まれる時代が来るとは思わなかったわ」

 ちなみに、本邦初、もとい世界初のレディコミ誌は、講談社から'79年に創刊された『BE・LOVE』だといわれている。それがよく売れたので集英社から『YOU』も発刊され、続々とレディコミ誌が生まれていく。

「私の漫画って、ときにやりすぎ、過激、といわれるほど喜怒哀楽や山場や見せ場が鮮明。だから、なんたってわかりやすいんでしょうね」

 創成期は、少女漫画誌の読者の年齢層がちょっと上がったくらいの、恋愛ものが中心だった。それが次第に、性描写のページが増えていく。

 成人誌に載るくらいの過激な官能シーンが売り物の雑誌も出てきて、玉石混交、群雄割拠、といった活況を呈していく。井出智香恵だけでなく、少女漫画で人気だった漫画家も続々と参入し、レベルは引き上げられた。

「元はメジャーな少女漫画誌で描いていたのに、とかいわれもしたけど。それ以外のものだって、描きたかったわ。とにかく、私は漫画を描くのが好きなんだから」

 そんな井出智香恵は、レディコミにおける漫画家の三大女王、四天王、と名前を挙げられるときは、絶対に真っ先に加えられるようになるのだ。

「そのころはまだ、官能描写はさほどでもなかったの。『JOUR』で森村誠一先生原作のミステリーを描かせてもらったら、人気になったのね」

 なにもレディコミ読者は、官能的な場面だけを求めているのではない。とにかく、おもしろい物語も読みたいのだ。井出作品は、物語性も圧倒的だった。

「他の出版社や他誌でもたくさん描かせてもらったんだけど、激しい性描写が売りの雑誌からは、“凝ったストーリーやきれいな恋愛はいらないから、とにかくエロエロな場面を中心に”“男女が重なってりゃいい”みたいなこともいわれたわ」

 失礼な、とこちらが憤慨したくもなるが、井出智香恵は徹底したプロなのだ。意識、姿勢もだが、女のプロともいえる。

「漫画を描くことは、私にとっては何よりも大事な仕事ですから。まぁ、なんだかんだ腹立つことをいってくる男性漫画家や、なんであんなもの描くの? と本気で心配してくれる友達の女性漫画家もいたけど」

飽きさせないジャンルの豊富さ

 井出作品の読者からすれば夢も見たいけど夢物語ではなく、現実に自分や身の回りの人たちにあり得る話。それが漫画として、自身に重ねつつ第三者の目でも見られる。

 女というものの本質、正体、本性。自分のそれを見たくない、目をそらしたいと思う反面、つい覗き込んで突ついてもしまうもの。

「私にもある」「私にはないわ」「こうしたい」「これはしたくない」「こんな男に愛されたい」「こんな男に翻弄されたい」レディコミは、大人の少女漫画だ。

「20年近く前、ぶんか社から『ザ・離婚』なる漫画誌を出してたんですが。それには井出さんの人気作品を、再掲載してたんですよね」

 井出智香恵作品を早くから読み、仕事をしたいと願っていた編集者の一人に、ぶんか社の後迫直樹さんがいる。

「でも僕が立ち上げた漫画誌『本当にあった主婦の体験』には、念願の書き下ろしをいただきました。当時の井出さんは本当にレディコミ女王で、巻頭カラーしか描かなかったんですよ。表紙に井出さんの名前があれば、売れたんです」

 レディコミといえばまずは、女のエロとエゴが渦巻くドロドロの世界、と定義する人もいる。現に嫁姑問題、ご近所トラブルといった煽り文句が表紙には並んでいる。

 恋愛だってレディコミでは、泥沼の不倫や性欲むき出しの浮気の方が正統派となる。

 正直、稚拙な絵柄とストーリーのそれも多い中、井出作品は物語の骨子もしっかりしていて、いそうでいない、いなさそうでいる、絶妙な人物造形も際立つ。そのうえ、絵柄はメジャーな少女漫画誌に載っているような華麗なものだ。

 なおかつ性描写も生々しいのだから、トップになるのは当然ともいえる。

 今現在もレディコミ誌を作る後迫さんは、このように解説してくれた。

「レディコミって、日本独自の文化というか。つまりガラパゴス化しているんです。漫画家も読者も入れ替わりがなく、そのまま持ち上がっていく。

 読者は20代のころに自身を重ねる不倫や三角関係などを読んでいて、40代になっても読むのをやめず、嫁姑問題や夫の浮気などに興味をシフトさせていく。

 レディコミを専門とする漫画家にとっても、安定した世界なんです。メジャーな漫画雑誌での生存競争は大変だけど、レディコミ漫画家はその世界の中で生きていけるんです。

 井出先生の得意なミステリーもですが、レディコミ世界でホラーだの歴史ものだの、性愛メインでないジャンルも開拓されていきました」

 井出智香恵も後迫さんも、レディコミのブームは終わったというが、終わったというより落ち着いた、ということなのだと解釈もできる。

 現に、コンビニに行けば雑誌売り場の一角に、専門のコーナーみたいなものもある。本棚に飾らず読み捨てるものともいわれるが、ときにすごい掘り出し物、井出作品に迫るほどの傑作だって発見できるのだ。

『羅刹の家』で女王として君臨

 いずれにせよ、まだ電話とファックスしかない時代。ブームのときも落ち着いたときも女王という敬称と地位を保っているのだから、気難しくて近寄りがたい人だったら怖いな、と後迫さんは緊張しながら会いに行ったら、

「いい意味で、期待を裏切られたというか。井出先生はとにかく気さくで、さっぱりしてポジティブ。ご苦労なさっていても、大らかで優しい人柄ですよ」

 となった。後迫さんは女王がまだ滋賀県にいるころに会ったが、地元で有名なフレンチに連れて行ってくれたり、とにかく作品と同様サービス精神が旺盛だったそうだ。

 それは井出智香恵に会った人は、皆が感じることだ。描くものと同じで華やか、そしてとにかくこちらを楽しませようと努めてくれる気さくな女王、と。

「今はレディコミ誌も次々に休刊になったりね、私の雑誌連載も以前に比べれば減ったけど、時代に合わせてウェブでも描いているし。なんたって生涯現役よ。いずれ、『羅刹の家』の第3部も描きたいし」

 レディコミでの『女監察医』『SEXセラピスト氷川京介』などの代表作と並び、いや、知名度ではそれらを超える代表作となれば、『羅刹の家』だ。

ドラマ化もされたこの作品は、井出智香恵漫画は読んだことがない、という人でも知っている。1989年に『週刊女性』で連載が始まったこの漫画は、普遍の関係にして問題である嫁姑の闘いを中心に描かれている。

 嫁姑問題だけでなく、夫婦の葛藤や女同士の競争、妊娠出産に育児、道ならぬ恋に純な性愛、とにかくたいていの女性が持つ喜怒哀楽に苦悩に欲望がこれでもかと詰まっていて、娯楽の殿堂にして、折に触れ開かねばならぬバイブルともなっている。

 この漫画によって、それまでもレディコミ女王の候補として名が挙がっていた井出智香恵は、決定的に女王として戴冠するのだ。

 メインは嫁姑問題だが、根底に流れる家族というものの恐ろしさ、大切さ、その主題は本人の経験に深く根差している。そのままを描いているのでない、にしても。

夫のDV、浮気……壮絶な実生活

 本人と作品が重なることをまた語るとなれば、元夫の存在を抜きにはできない。本人もいろいろな媒体で語っているが、壮絶なDVと離婚を経ているのだ。

 自称“ものすごい面食い”の井出智香恵は、新幹線の中で出会った長身の美男にひと目惚れし、そこから結婚まで一直線となってしまう。

 ところが夫となった人は見てくれがいいだけで、ろくに働かず妻のお金で浪費と放蕩をするようになる。さらに子どもが三人生まれ、妻はものすごい量の漫画を描きながら子育てをし、夫の世話もしなければならない。

「レディコミ全盛期だったのが、幸いしたのか災いしたのか。私が稼いだ金、みんな遊びに使っちゃうんだから。あんな外車ばっかり何台もあって、どうしようっての。

 私としては、育ち盛りの子ども三人を食べさせるために必死だったけど、元夫の借金のために馬車馬のごとく、となってたようなところもあるわ」

 聞けば聞くほど、とんでもない男である。家の中に怖いものがいる、それはなんという恐怖だろうか。家とは安らぎの場、守られる城であるはずだ。まさに、羅刹の家。

「殴る理由なんて、ないっていうか。ううん、何でもいいの。殴りたいから殴る。そんだけ。床に顔を押しつけられて、汗で顔が埃まみれになったのは、今もはっきり覚えてる。私がへこたれないから、ますますいきり立つ」

 妻の稼ぎが目当てというより、それがなければ生きていけなかった夫は、頑として離婚には応じない。この場合、妻には子は宝物だが、夫には人質だった。

 だったらよき夫、よき父になれよと周りはいうだろうが、改心などするわけがない。本人は、自分は間違っていないと信じているのだから。

「田舎なのにランボルギーニとか買って、浮気もやりたい放題。容色だけはまだ保っていたから、惚れる女もいたわけよ。愛人で、夫の婚外子まで産んじゃったのいますよ。みんな、もう縁は切れているようだけどね」

怒りと子どもの成長が原動力に

 レディコミ全盛期は、妻がすべての尻拭いをできた。しかし何事もブームは落ち着きを見せる。いつしか、収入をはるかに上回る借金が押し寄せてきた。

「離婚してといったら、子どもを殺すとか脅すし。口だけじゃなく、子どもを叩いたりするようになったから、さすがにもう限界が来たと本気出したわ。

 人って私に限らず、殴られ続けると逃げる気力もなくなったりするもんなの。でも子どもに手を上げられて、覚悟も決心もできたわ。

 あなたのすべての借金を私が払うし、離婚してもあなたの生活は私が見るから、どうぞ形式的に離婚して、とだましたの。

 なんだかんだで正式離婚まで10年かかったけど、その後は一切会ってない。寂しい、わびしい、ひとりぼっちだという噂はたまに聞こえてくるけどね」

 さすがの元夫も体力、気力ともに衰えて、つきまとうだの怒鳴り込むだのはしないようだが、彼も燃え尽きたのだろうか。

「わりと最近まで、夫の借金を返済させられてたのよ。最も忙しいときは十人くらいいたアシスタントも、先生は儲けているのにどうしていつもボロい格好してるんですか、と陰で心配してたらしいし」

 まったくもって、第三者としても元夫をかばう気になどなれないが。井出智香恵に猛烈に量産させ、恐ろしい体力気力で傑作を生産させた、その原動力にもなっていたのだというのはまったくの見当違い、間違いではなかろう。

「読者は自分と関係ない他人の不幸は、かわいそうだと同情しながらも、読み物になっていればエンタメとしておもしろがれるの」

 夫婦、嫁姑問題だって、「いやなら別居すれば」というのは簡単だ。しかし多くの夫婦、嫁姑はそうはいかないのだ。まだ学校や会社の、「いやなら辞める」のほうが簡単だ。いったん身内となった人たちとの関係を切るのは損得や計算抜きの感情も絡む。

 みんな頭では、理屈では解決法はわかる。だが、実行するのは困難だ。だったら、もうしばらくは現状を受け入れよう、ともなる。新しい世界に踏み出す方が怖い、という人もいる。耐え忍ぶことを、美徳とする考えもある。

 ただし井出智香恵の場合、耐え忍ぶことより戦うことを選ぶほうが多かったようだ。

「そんなぐちゃぐちゃな葛藤を私が整理して描くことで、皆さん何か解決法を見つけられるし、ひとときの憂さ晴らしにもなる」

 再度、元夫をどうしてもかばうことはできないが、レディコミ女王をこのような心境に至らしめ、それによって救われる読者がいる現実を見れば、よき夫でよき父でなかったこともまったく無駄ではなかったかとまで思えてくる。

「ようやく離婚が成立したときは、本当に晴れ晴れ、さっぱりすっきりしたけど。今もこれからも、死ぬまで元夫は一生許せない。

 ずっと憎み続けるし、あれ以上に憎いやつも出てこないと思う。でも確かに、この経験と感情は、私が漫画を描くときは役に立っている」

 夫には恵まれなかったかわりに、子どもにはいろんな意味で恵まれたと笑う。

「夫は顔で選んで失敗したけど、子どもたちは美しくなったし。あんなことがあっても3人とも、素直ないい子に育ってくれたし」

 次女は可愛いリボンをつけていって、いじめっ子に盗られたり捨てられたりした。それをまったく強がったり落ち込んだりせず、次の日はもっと可愛いリボンをつけていく、といったことを挑発でも意地でもなく、天然でやってしまえたのだという。

「弱い相手に平気で暴力をふるうような人に、甘い期待をしてはいけないわ。ときにはずる賢く、立ち回らなきゃ」

 井出智香恵は、自身の過酷な経験をまったく無駄にしていないどころか、読者のためにも大いに生かしている。

 対抗するためのアドバイス、対処のためのヒントが、必ず作中にあるのだ。DV夫を欺く方法も、手を変え品を変え描いてあると。

 そして井出智香恵は、必ず希望や救いのある終わり方にするのを貫いている。子どもだけは、不幸にしないとも。

「私の漫画は娯楽だけじゃなく、参考や救いにもなってほしいから」

 といって、井出智香恵は女はすべてか弱い、とは思っていない。

「たいていの女は、まずは自分が悪者になること、傷つくことを恐れている。それを避けて、幸せになりたい。だけど、そうもいかないから」

驚愕の年下の“彼氏”の存在が……

 それにしても、撮影のためにマンション近くの公園で朗らかにブランコを漕ぎ、

「嫌いなやつの名前を、ひどい目に遭う登場人物につけちゃう」

 と笑うレディコミ女王は、若い。創作意欲から何から、まったくもって生涯現役という言葉がぴったりだ。

「年齢は、どうしようもない数字。心が若けりゃ、いいじゃない」

 なるほど、確かに井出智香恵が平成などに生まれていれば、親は物わかりよくなければならず、漫画家を目指すといえば応援し、投稿や持ち込みなどしなくてもネットを駆使して、たちまち自宅に居ながらにして人気を博していたかもしれない。

 そういうデビューをする漫画家、そんな存在の漫画家は現にいるし、それはそれで職業として成り立ち、よい作品も生み出しているが。

 はたして、そのような道をたどった後に、レディコミ女王の井出智香恵は今このような存在であっただろうか。『羅刹の家』は、生まれていただろうか。

 しかしレディコミ女王はちゃっかり、娘たちに勧められてハマったネットゲームで知り合った男性とバーチャルな出会いと恋愛も楽しみ、現に今は彼氏といっていい子どもたちくらいの年代の男性がいるという。

 女王の居心地よさげな仕事部屋には、大ファンだという氷川きよしのグッズが目につくところに飾られている。

 簡単に回転できる椅子は、女王が座ったままくるっと半回転するだけで、一瞬のうちに仕事机とパソコン机を入れ替えられる。

「娘たちがゲームにハマってて怒ったら、お母さんもやってみなよと引きずり込まれたの。今じゃ、私のほうが夢中」

 くるくると仕事とゲームを入れ替え、しかし椅子は一つで位置はぶれない。

「すごーい年の差があるのね、今の彼氏は。しかも、ゲームの世界では“夫婦”役」

 その経験を作品化するかどうかは聞きそびれたが、そのままでなくても作品に生かすことは間違いない。

 そしてなんと。次号からはこの『週刊女性』で実に32年ぶりに連載を再開する。女王の再降臨だ。令和に毎週、井出智香恵の作品が読めるとは期待感しかない。

 まったくもって、何もかもが生涯現役のレディコミ女王。

 しかしその目のキラキラさは、レディコミではなく少女漫画なのだった。

◆特別寄稿 作家・岩井志麻子
いわい・しまこ 1964年、岡山県生まれ。少女小説家としてデビュー後、『ぼっけえ、きょうてえ』で'99年に日本ホラー小説大賞、翌年には山本周五郎賞を受賞。2002年『チャイ・コイ』で婦人公論文芸賞、『自由戀愛』で島清恋愛文学賞を受賞。著書に『現代百物語』シリーズなど。最新刊に『業苦 忌まわ昔(弐) 』(角川ホラー文庫)がある。
参照元:72歳のレディコミ女王、借金癖のDV夫への憎しみが「創作の原動力」だった壮絶人生
2021/1/11 週刊女性 (『週刊女性』編集部 週刊女性2021年1月19・26日号)
国際ロマンス詐欺、指示役逮捕へ
2022年8月8日 11:53 共同通信

交流サイト(SNS)で外国人などを装い、相手に恋愛感情を抱かせる国際ロマンス詐欺の手口で金銭をだまし取ったとして、大阪府警が詐欺容疑で国際手配した森川光容疑者(58)=住所職業不詳=が、ガーナの捜査当局に身柄を拘束されたことが1日、府警への取材で分かった。近く日本に移送するなどして逮捕する方針。

 府警によると、森川容疑者は2018年8月からガーナに滞在していたが、今年2月に旅券が失効。7月、ガーナ当局が不法滞在容疑で身柄を拘束した。公開手配した5月以降、森川容疑者は府警に「被害弁済の金が用意できるまでは帰国しない」などと電話で伝えていた。
参照元:国際ロマンス詐欺、指示役逮捕へ
2022年8月8日 11:53 共同通信
執念の逮捕劇「一生ガーナで逃亡生活か?罪償って余生過ごすか?」公開手配と説得で容疑者が『自ら潜伏先を...』
2022/08/08 19:30 MBS NEWS

 国際ロマンス詐欺の手口で現金をだまし取ったとされる男が潜伏先のガーナから身柄を日本に移され、8月8日に逮捕されました。今回の逮捕劇の裏には、大阪府警の捜査員の強い思いがありました。

 (記者リポート 8月8日 関西空港)

 「国際ロマンス詐欺の指示役とみられる森川容疑者が、潜伏先のガーナからフランス・パリを経由して帰国しました。いま何を思うのでしょうか」

 8月8日、詐欺の疑いで逮捕された住所不定・無職の森川光容疑者(58)。ガーナを拠点に活動する詐欺グループの主犯格とみられ、現地当局に身柄を拘束されて8日に移送されました。森川容疑者が主導していたのはいわゆる国際ロマンス詐欺です。

 警察によりますと、森川容疑者はマッチングアプリなどで架空の人物になりすまして日本人男性2人に恋愛感情を抱かせ、現金約150万円をだまし取った疑いが持たれています。森川容疑者らは「アメリカ人女性ライター」や「イエメン在住の女性医師」になりすまし、「口座凍結されて生活が困窮している。私を助けて、お金はあるけど足りないの」というようなメッセージで金を要求していたといいます。

 グループの口座には約4億円の入金記録があり、被害者は男女65人に上るとみられています。警察は一連の詐欺事件で暴力団組長の男など15人を摘発しましたが、その過程で指示役とみられる森川容疑者の存在が浮上したといいます。

 その潜伏先が日本から約1万4000km離れたアフリカのガーナであることを突き止めたのは大阪府警・国際捜査課の永峰啓次警部です。永峰警部は今年5月18日、意を決して「公開手配」に踏み切りました。

 (大阪府警・国際捜査課 永峰啓次警部)

 「国内の捜査については“やりつくした感”がありました。最終的に森川容疑者を揺さぶるために公開手配が有効ではないかと考えて踏み切りました。森川容疑者に対しての圧力になるんじゃないかという意図がありました」

 容疑者が海外逃亡している場合、帰国しなくなる可能性があるため公開捜査はしないことが多いといいますが、今回は“あえて賭けに出た”といいます。

 (大阪府警・国際捜査課 永峰啓次警部)

 「自分が置かれている立場もおそらくガーナでわかるでしょうし、当然テレビとかネットで画像は見られると思うので。あとは相手がどういう反応を示すのか待つだけというのがありました。それが上手いこと功を奏した」

 捜査の網にかかった森川容疑者が、公開手配から1週間後、曽根崎警察署に自ら国際電話をかけてきたのです。

 (大阪府警・国際捜査課 永峰啓次警部)

 「本人は『被害金を返済するまでは帰国しない』と。強気な態度で言い訳ばかりずっと終始していた状態でしたね。その後4回ほど電話がありまして、私と森川容疑者の間に連絡手段が確立された、チャンネルができたような感じになるんですが、一生ガーナで逃亡生活を送るのかそれとも日本に帰国して罪を償って余生を日本で過ごすのか、損得計算みたいなのを一生懸命説得するように言い続けていました」

 説得に応じて徐々に態度を軟化させていったという森川容疑者。そして7月18日の4回目の電話で「アクラ市ノースレゴンのアパート。ここにいる」と潜伏先を明かしたのです。大阪府警はこの情報をガーナ当局に伝え、7月20日に森川容疑者は滞在していたアパートで身柄を拘束されました。

 (大阪府警・国際捜査課 永峰啓次警部)

 「連係プレーが非常にうまくいきまして、その結果、ガーナ当局も迅速に素早く動いてくれた。すべて正直に話してほしいですね。被害者が大勢いらっしゃいますので、正直に話して罪を償ってほしいですね」

 取り調べに対して「ガーナ人らの指示で金を回収していただけ。私の顔などが手配されていたので腹をくくって帰国した」などと容疑を否認しているという森川容疑者。警察は詐欺グループの内情や金の流れなどを詳しく知っているとみて調べを進める方針です。
参照元:執念の逮捕劇「一生ガーナで逃亡生活か?罪償って余生過ごすか?」公開手配と説得で容疑者が『自ら潜伏先を...』
2022/08/08 19:30 MBS NEWS

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