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小池百合子の真実 - 学歴詐称疑惑を出生図から読解する -

2020 6/17


先日、読者の方から小池百合子について取り上げて欲しいというリクエストがあったが、最近、小池百合子の学歴詐称疑惑が盛り上がりを見せている。


これは『女帝 小池百合子』石井妙子著の出版の衝撃というものが大きいと思われる。



私も早速、買ってきて読んでいるが、推理サスペンス小説でも読んでいるかのような面白さがある。


この本は、石井妙子氏が、小池百合子の3年半に渡るリサーチによって書き上げられた本だが、リサーチの途中段階で、「小池百合子研究 父の業を背負いて」『新潮45』(2017年1月号)や「男たちが見た小池百合子という女」(『文藝春秋』2017年8月号)、「女たちが見た小池百合子『失敗の本質』」(『文藝春秋』2018年1月号)などを発表している。


そして、ある日、小池百合子がエジプト留学時代に同居していた女性から自分が知る全てを打ち明けたいというという手紙が届くのである。


それで、事態が、一挙に進展し、小池百合子の重要な過去の事実関係が暴露されていく。


石井妙子氏が、探偵のように小池百合子の人生の足跡を辿っていくうちに鍵になる人物が現れて、真実が開かされていくという、ノンフィクションの推理探偵ものである。


然も、追跡する相手が小池百合子という東京都知事に就任している有名政治家である。


追う者と追われる者、実際の現実社会で起こっていることであるだけに非常に興味深い。



この小池百合子のエジプト時代のルームメイトの女性が送って来た手紙は以下のような内容である。


(略)すると、2018年2月、一通の手紙が『文藝春秋』編集部気付で私宛に親展で届いた。私の記事を読んだという読者からの手紙。自分の知る全てを打ち明けたいとある。それは、まさに私が探し続けていた、あの同居女性からの手紙だったのだ。

 思いが天に通じることがあるのだろうか。私は震える手で手紙を読んだ。大変な達筆で文章はしっかりと論旨が通っており、非常に知的な印象を受けた。内容は衝撃的なものであった。

「小池さんがカイロ・アメリカン大学に、正規の学生として在学していたかは不明と言えます。カイロ大学は1976年の進級試験に合格できず、従って卒業はしていません。小池さんは『カイロ大学を卒業。しかも首席』という肩書を掲げて今日の栄光を勝ち得た訳ですが、私は彼女の自分語りを、あたかも真実のように報道している日本という国のメディアの浅薄さを感じずにはいられませんでした。事実を確かめずに報道するマスコミ。しかし、小池さんと同居していた者として知っている事実を口にするには、彼女はあまりにも有名で、国民に知らされている情報を覆すことは、私自身の身の安全を考慮してもできませんでした」
彼女の名前を本書では早川玲子(仮名)とする。彼女との出会いによって、私は、私の想像をはるかに超える、多くの事実を知り得ることになるのだった。(略)


(『女帝 小池百合子』石井妙子著より引用抜粋)


石井妙子氏の著作の中で、特に重要な箇所は、小池百合子の父親・勇二郎氏について書かれている箇所である。





特に『破天荒の父・勇二郎』、『父の立候補と落選』、『中東の有力者』といった見出しで書かれている部分が重要である。



小池百合子の行動パターンは、この父親にそっくりであり、父親の性質が小池百合子に受け継がれたと考えられるのである。


石井妙子氏によれば、小池百合子は、芦屋の中流家庭で生まれ、父親は権力者にすり寄って、そこで築いた人脈を元に大きいビジネスをしようとする大言壮語の山師的人物で、特に多額の献金が出来る程、裕福でも無かったが、政治家のタニマチを気取っていたという。


この父親は、戦後の闇市では、ペニシリンを高値で売って稼ぎ、また石油業界の社長が遠戚であったコネを使って、石油を業者間で転売するブローカー的な仕事をしていたようである。


この父親は、日本アラブ協会に入会していたのだが、1970年にエジプトの要人、ムハンマド・アブドル・カーディル・ハーテム(通称 ドクター・ハーテム)が来日した時の歓迎パーティーで、自分を売り込んで、ハーテムは社交辞令で、エジプトに来たらいつでも歓待すると述べたそうだ。


そして、ハーテムが帰国すると、日本アラブ協会に所属する国会議員の紹介状を手にエジプトに飛び、ハーテムに再会し、紹介状を携えた勇二郎をハーテムはエジプトの首都カイロで歓待したという。


石井妙子氏は、「日本の国家議員と太いパイプを持つ実業家だと、ハーテムは理解したのだろう」と綴っている。


そして、勇二郎氏は、ハーテムからアラブの別の要人を紹介してもらうことに成功したという。


石井妙子氏は、この勇二郎氏のことを『日本人には中東の有力者と太いパイプがあると思わせ、中東の有力者の前では日本の有名政治家の代理人であるがごとくに振舞う。大法螺を次々と吹く。この思考の破綻した父に、娘の人生も翻弄されていくのである。』と記している。



このアラブ留学時代に同居していた女性が、これからカイロ大学に入学しようというのに小池百合子が全く勉強しようとしないことに心配して、「勉強しないでも平気なの?」と尋ねると、「いいの。だって、お父さんが、ドクター・ハーテムにカイロ大学に入れるように頼んでくれているから。それを待っていればいいの」と答えたそうである。


つまり、小池百合子の父・勇二郎がハーテムの来日時に国会議員の紹介状を利用して、強引に親交を築いたドクター・ハーテムのコネで、娘をカイロ大学にねじ込んだということらしいのである。そして、全く勉強もしなかったが、卒業資格も与えられたということらしいのである。


何故、それが出来たかというと、父親の勇二郎が、政治家のタニマチを気取って、政治家の周辺をうろつき、車の送迎をしたり、そうしたまめなことをしながら、政治家の人脈に食い込んでいったからである。


父親は、政治家たちからはたいして信頼されていなかったが、政治家の周辺をうろついている間に『日本人には中東の有力者と太いパイプがあると思わせ、中東の有力者の前では日本の有名政治家の代理人である』かのような幻想を抱かせることに成功したということである。


権力者と付き合っているうちに仲介者としてその人自身にも権力が乗り移っていくという実証例かもしれない。


また嘘も繰り返せば真実になるということの実証例でもある。


それで、日本の政治家とパイプを持っている重要な実業家であると、ハーテムに勘違いさせて、娘をカイロ大学にコネで、入学させたということである。


だから小池百合子は、カイロ大学に裏口入学し、勉強はしていないが、卒業もさせてもらったのである。


それに首席で卒業したといった実際には事実ではない恥ずかしい尾びれを付けたのではないかと思われる。



そのカイロ大学首席卒業という経歴を元に小池百合子は、キャスターとなり、政治家になり、また都知事にまで成り上がったのだから、それは政治家に近づいて大言壮語して成り上がった父親のおかげであり、ある意味、父親にそっくりで、父親の作品といってもいいのである。




小池百合子は、この父親を毛嫌いしていたそうで、石井妙子氏は、以下のように書いている。


(略)娘は父の被害者だった。だが、同時に父の創造物でもあった。時には父が娘の共犯者となって協力した。ふたりの関係は、他者には容易にうかがい知ることができない。「亡くなるまで、小池さんはお父さんのことを蛇蝎のごとく嫌っていた。大っ嫌いだったんですよ。あの関係は、とてもひと言では説明できない」(小池事務所関係者)
「一卵性親子。もとは、ひどいファザコンだよ。でも、大人になってから毛嫌いするようになった。父親に苦しめられた、利用された、という思いがある一方で、結局、自分を一番、愛してくれたのは父親だという思いもある。複雑な愛憎が絡みあった関係だよ」(小池親子の知人)


(『女帝 小池百合子』石井妙子著より引用抜粋)


最近、小池百合子の学歴詐称疑惑が、拡大することに伴って、小池百合子が出馬表明を控えた6月8日にカイロ大学が、「小池百合子氏が1976年10月にカイロ大学文学部社会学科を卒業したことを証明する。卒業証書はカイロ大学の正式な手続きにより発行された」と声明を発表している。


東京のエジプト大使館がフェイスブックで公表したそうだ。



これが何を意味するかについて、『カイロ大「小池氏は卒業生」声明の正しい読み解き方 都知事選を前にエジプト軍閥が切った外交カード』(鶴岡弘之 JBpress)によれば、これは小池百合子に貸しを作って、何らかの外交的な利益を引き出そうとするエジプト政府の意図が見えると分析している。


小池百合子をカイロ大学に裏口入学させたムハンマド・アブドゥルカーデル・ハーテム氏は、『カイロ大学を粛清した革命評議会の情報・文化・メディア責任者であり、エジプト情報省を創設し、長年、独裁メディア(テレビ・ラジオ・新聞)をすべて掌握した人物』とのことである。


つまり、エジプトのCIA長官のような人物であり、情報部、インテリジェンス(諜報)部門の責任者である。



これで分かったことは、このエジプト時代に小池百合子にカイロ大学の入学資格と、卒業資格を与えた人物は、小池百合子の12室に在住する木星の表示体であるということである。







木星はバラニーに在住しているが、バラニーは、CIAやモサド、KGB、MI6など、インテリジェンスソサイエティ―に属する人物を表わしているからである。



それは、私が以前、小池百合子を牡牛座ラグナに修正したことを更に実証するものでもある。





小池百合子の学歴詐称疑惑を出生図から読み解く



私は、今回、『女帝 小池百合子』を読んで、ますます小池百合子が、牡牛座ラグナで正しいことを確認した。



更にナヴァムシャのラグナは、水瓶座で、ダシャムシャのラグナもおそらく水瓶座で正しいと考えている。



ということから、おそらくラグナは牡牛座のクリティッカー第3パダである。







小池百合子が父親がハーテムとの間に築いたコネを使って、カイロ大学に裏口入学し、卒業させてもらったことは、出生図の木星の配置で示されている。



木星は、8、11室の支配星で、牡牛座ラグナにとっては最悪の機能的凶星である。



11室は資格、称号、利得のハウスであり、8室は不正、悪意、不道徳のハウスである。



従って、8室と11室を同時に支配する木星は、不正な収入とか、不正に入手した資格を意味する表示体である。



この木星が12室(海外)で、牡羊座のバラニー(諜報)に在住しているため、この木星は、当時、インテリジェンス界で指導的人物であったハーテムの表示体である。



ハーテムは、革命評議会の情報・文化・メディアを統括するエジプト情報省の創設者であり、その権力は絶大であった為、裏口入学や卒業資格の供与などは、簡単なことである。



日本の政治家とつながる事業家に貸しを作って、そのルートを使って、外交的な利益を引き出そうという考えも出て来るはずである。



インテリジェンスに関わる人間が、二重スパイや内部協力者を育成するやり方の基本が、ここに見られる。



つまり、8、11室支配で12室に在住する牡羊座バラニーの木星が、カイロ大学の卒業資格取得の秘密である。



因みに小池百合子のチャートでは、父親の表示体である4室支配の太陽が家族、財産の2室に在住しているが、太陽はプナルヴァス(木星)に在住している。



だから太陽と木星はナクシャトラの支配星を経由して、強く結びついている。



父親の存在が地位(4室)や財産(2室)、そして、エジプトの要人とのコネや大学卒業資格(8、11室支配の木星)をもたらしたのである。



ここで8室の支配星が12室に在住する配置が見られるが、ドゥシュタナハウスの支配星が自分以外のドゥシュタナハウスに在住する配置は、ヴィーパリータラージャヨーガ(逆転のラージャヨーガ)である。



二重否定的な効果によって、逆にラージャヨーガのように働くのである。



本来、8、11室支配の木星は、牡牛座ラグナにとって支配的な人物、逆らえない人物、悪意のある宗教的なグルなどを意味して、支配や苦しみをもたらすのであるが、この木星は12室に在住していることがポイントであり、大学入学時に借りが出来てしまった人物(ハーシム)は、遠い外国にいるのである。


従って、滅多なことでは日本の日常生活の中に介入して来ないし、また世間にもこんなに長い間、学歴詐称疑惑の煙も立たなかったのは、それが遠い外国で起こった不正だからである。



つまり、そうしたことが二重否定によるラージャヨーガではないかと考えられる所以である。



因みにこの木星はバラニー(金星)に在住しているが、金星はラグナロードで2、5室支配の水星と共に3室(メディア)に在住している。



従って、このカイロ大学に首席で卒業したという学歴が、テレビ東京のワールドビジネスサテライトへのキャスターへの起用に繋がっていくのである。



そして、金星はプシュヤ(土星)に在住しているが、土星は9、10室支配のヨーガカラカで、月から見ても10、11室支配で、太陽(政治)にアスペクトする土星である。



そのキャスターとしての経験が、政治家への転身につながったことが分かる。



太陽(プナルヴァス):父親の影響 ⇒ 木星(バラニー):カイロ大学への裏口入学 ⇒ 金星(プシュヤ):キャスター抜擢 ⇒ 土星(ハスタ):政界へ進出 ⇒ 月(アシュビニー):海外生活、隠遁生活 ⇒ ケートゥ(アーシュレーシャ):文筆家、隠遁生活 ⇒ 水星(アーシュレーシャ):メディア、文筆家(※ファイナルディスポジター)



この辺り、惑星が在住するナクシャトラの支配星の連鎖が、原因と結果の連鎖になっていることが非常に興味深い。



この流れで行くと、政界を引退した後は、土星が在住するハスタの支配星は12室に在住する月である為、外国生活か、隠遁生活である。




興味深い点は、カイロ大学の卒業資格が、キャスターへの起用や政界への進出など、連鎖的に高い称号、評価、収入(11室)をもたらしているということである。



もしもっと早くに学歴詐称疑惑が報じられていたら、キャスターへの起用も政界進出も不可能だったかもしれない。



今まで隠し通せてこれたことが、ヴィーパリータラージャヨーガ(逆転のラージャヨーガ)かもしれないのである。





以前、このヴィーパリータラージャヨーガが、キャンセルされているかどうかということで読者の方と大分、議論になったことがある。



もし8室支配で12室に在住する木星に別のハウスの支配星が絡んでいる場合、ヴィーパリータラージャヨーガがキャンセルされてしまうということである。



例えば、この8室支配で12室に在住する木星には、メディアの3室を支配する月がコンジャンクトしており、また7室支配の火星が天秤座からアスペクトしている。



今回の『女帝 小池百合子』の出版は、小池百合子が今まで隠してきた学歴詐称疑惑を浮上させる決め手となり、学歴詐称疑惑を隠し通すことを不可能にした要素である。




もしこうした他のハウスの支配星の介入がなければ、完全に8室の支配星の象意は、12室に在住することによって隠されてしまったと考えると、3室支配の月がそれを妨害したとも考えられる。



今後の動向には注目である。





然し、今回、カイロ大学が声明を出し、小池百合子の大学卒業を保証することになった。



このエジプトが外交カードに使えるとまで考えて、小池百合子の大学合格を保証したことで、小池百合子は、学歴詐称疑惑を逃げ切れるかもしれない。



何故なら、カイロ大学自身が、卒業資格を与えたというならば、それはどうしようもないことだからだ。



有名人がお金で、大学の卒業資格を買うというのは、良く知られた事実である。



裏ルート、入学試験によらないルートを使って、大学卒業資格を入手したということである。



つまり、そのような社会の現実が存在するということであり、その仕組みへの非難が高まっていくと考えられるが、小池百合子自身は、そのような現実を利用したということで、倫理的に非難されても、法的な追求は出来ないかもしれない。



その辺りが、牡羊座で形成される8-12のヴィーパリータラージャヨーガの効果かもしれないのである。



現在、小池百合子は、マハダシャー木星期に移行し、木星/土星期である。




このヴィーパリータラージャヨーガが働いているか、キャンセルされているかについては更に検討していく必要がある。





然し、そのような法や社会の常識、制度、規範を超越した方法によって、何かの利得を得るというのは、牡羊座の特徴である。



牡羊座は、ルールの制定者であるが、自らはそのルールに従わないのである。



ましてや人が作ったルールになど従わないのが、牡羊座である。





例えば、パラシャラの例外則、ニーチャバンガラージャヨーガ、ヴィーパリータラージャヨーガなどの二重否定の奇想天外な働きについて以前、記した記事『ニーチャバンガ・ラージャヨーガ(普通でない成功法則)』を読んで頂きたいのである。




理論物理学者の保江邦夫教授(ノートルダム清心女子大学)が、奇想天外な普通でない形で、次々に試験を突破していく様子について記している。



例えば、大学の入学試験の時に過激派の学生が暴れるので、試験問題が通常の半分で、斬新な問題が出されて、その結果、合格するなど、変わった合格の仕方をするのである。



保江邦夫教授の人生は、入学試験に留まらず、そんな出来事だらけなのである。




そのような普通でない上昇をもたらしたのは、ナヴァムシャで、牡羊座で火星、太陽、土星がコンジャンクトして、減衰する土星がニーチャバンガラージャヨーガを形成しているからである。



そのような配置がある場合、特に牡羊座で二重否定が形成された場合、法や社会の常識、制度、規範を超越した方法によって、普通の人には全く出来ないような形で上昇や利得を手にするのである。




小池百合子のカイロ大学裏口入学は、牡羊座で形成される8-12のヴィーパリータラージャヨーガである為、法や社会の常識、制度、規範を超越した方法による上昇をもたらしたのであり、この保江邦夫教授のパターンとよく似ているのである。




今回、小池百合子が、人生最大のピンチにおいて、エジプト情報部の息のかかったカイロ大学から、卒業証明が行なわれ、小池百合子に助け舟が出されたというのは、ある意味、このヴィーパリータラージャヨーガの発現とも考えられるのである。




それが完全に働かずに様々な妨害を受けたとしてもということである。





この小池百合子のエジプト時代に同居していた女性は、身の危険が及ぶのを恐れて、ずっとこの事実を公にはしなかったそうである。



同居時代に「次第に小池を訪ねてくる客のために、お茶を出したり、料理をつくったり、後片付けをしたりで一日が終わってしまうことへの不安や不平を日記に綴る」ようになったそうである。



パワーのある人間と一緒にいると、その周りの人間は振り回されるようになる。



そして運が悪ければ消される場合もあるのである。



小池百合子のことをもっと早くに暴露していたら、日本との有利な外交を目論むエジプト情報部によって、小池カードを育成する為、暗殺されていた可能性もある。



だから今になってから暴露したというのは正しい判断かもしれない。





(その2に続く)




(参考資料)

カイロ大「小池氏は卒業生」声明の正しい読み解き方
都知事選を前にエジプト軍閥が切った外交カード
2020.6.12(金)鶴岡 弘之 JBpress

小池百合子都知事の“カイロ大卒”という学歴について、詐称疑惑が都知事選を前に話題になっている。JBpressも疑惑を追及する記事をこれまで掲載してきた。そんな中、駐日エジプト大使館が6月9日、フェイスブックを通じて、小池知事が「卒業したことを証明する」とするカイロ大学の声明を発表した。だが、カイロ大学OB(1995年中退)のジャーナリスト、浅川芳裕氏は、日本の常識でその声明を真に受けてはいけないと釘をさす。カイロ大学とは一体どんな大学なのか? 今回の声明の裏側に透けて見える小池氏のエジプト人脈の危険性とは。浅川氏に語ってもらった。(JBpress)

カイロ大の権力を掌握しているのは?

──今回のカイロ大学の「小池百合子氏がカイロ大学を卒業したことを証明する」という声明を浅川さんはどうとらえていますか。声明は信用に値するものでしょうか。

浅川芳裕氏(以下、浅川) 学歴なんだから、今回のカイロ大学の声明で詐称の真偽は一発で片が付いたのではないか・・・日本人の常識からすれば、そう感じている人も多いでしょう。しかし、カイロ大学はそんなヤワでマトモな大学ではないのです。

──一体、どんな大学なのですか。

浅川 カイロ大学の権力を完全に掌握しているのは軍閥独裁国家エジプトの軍部であり、泣く子も黙る情報部です。大学といえば“学びの園”“学問の自由”といった平和な生ぬるいイメージから理解しようとすると、本質を見誤ります。

 大学の強権管理に対して、硬派な学生たちも黙っていません。異議申し立てや抗議活動を展開する中、2010年以降に限っても、100人以上が逮捕され、10人近くが亡くなっています。殺害した大学側の治安部隊は学生の死について、「超法規的な死」と定義し、逮捕者を「軍事法廷」で裁くことも稀ではありません。

 今回のカイロ大学の声明からも、その強権性はうかがえます。「日本のジャーナリスト」が小池氏の卒業について信頼性に疑問を呈したことについて、「看過できない」と批判し、「エジプトの法令にのっとり対応策を講じる」と警告していますが、ただの脅迫です。なんの根拠、反論も示さず、取材・報道の行為自体を封じ、罰しようとしている。実際、多くのジャーナリストがエジプトで取材をしたというだけで、軍事監獄で拘束されています。その数は、中国、トルコに続きワースト3位です(ICP:ジャーナリスト保護委員会2019調べ)。

私もカイロ大学学生時代、何度も留置所や独房にぶち込まれ、拷問を受けたり、消されそうになったりしました。これは「強制失踪」という取り締まり方法で、逮捕も起訴もされず、裁判も受けられず、留置所をたらい回しにされながら、「行方不明」という形でこの世を去っていくわけです。

 私は幸い、脱出に成功しましたが・・・そんな個人の痛烈な体験から、カイロ大学の歴史や権力構造の闇について興味をもち、独自調査をしてきました。

 その結果をまとめた拙著『カイロ大学〝闘争と平和″の混沌』(ベスト新書)で詳しく書きましたが、1908年の建学時、カイロ大学は中東・アフリカ圏初のリベラルな近代大学として誕生しました。しかし、1952年に大転換が起こります。自由将校団による軍事クーデターが起きたのです。世界史の教科書にも載っている「ナセル革命」です。

ナセルは革命後、カイロ大学の知識人やエリート学生を支配下に置くため、キャンパスに革命親衛隊を送り込みます。それに対し、自由な大学を堅持しようとリベラル派とムスリム同胞団の教授・学生たちが団結しデモ活動で対抗しましたが、軍隊との力の差は歴然です。1954年、カイロ大学は軍部に制圧され、革命評議会下に置かれます(エジプト現代史では「カイロ大粛清事件」と呼ばれる)。それ以来、軍部支配というカイロ大学の伝統はいまも続いているわけです。

小池氏の父親から投げつけられた言葉

──そのカイロ大学の歴史と小池知事の学歴がどう結びつくのですか。

浅川 じつは、ナセル革命の中心人物の1人であるムハンマド・アブドゥルカーデル・ハーテム氏(1918~2015年)が、小池氏のカイロ大学時代の後ろ盾なのです。

 ハーテムとは何者なのか。カイロ大学を粛清した革命評議会の情報・文化・メディア責任者であり、エジプト情報省を創設し、長年、独裁メディア(テレビ・ラジオ・新聞)をすべて掌握した人物です。イスラエルとの中東戦争において、偽情報戦で名を馳せたことから、ハーテム氏のことを「アラブ世界のプロパガンダの父」と呼ぶ歴史家もいます。メディア支配術を通じて、ナセル亡き後も、続くサダト、ムバラクと3代の独裁者の側近として仕えてきました。

 小池氏のメディアコントロールの巧みさはプロパガンダの父譲りなのかもしれません。

──学歴詐称疑惑の引き金となった石井妙子氏による「小池百合子『虚飾の履歴書』」(『文藝春秋』2018年7月号)でも、ハーテム氏が登場しますね。同居女性が「小池氏が入学したのは1973年10月で、2年生への編入だった。小池氏は『父がハーテム氏に関西学院の数カ月間とカイロ・アメリカン大学の数カ月間を足して1年間とみなしてくれと頼んで認められ、授業料も入学金も無料になった』と喜んでいた」と証言しています。

浅川 実際、権力者の後ろ盾がなければ、2年への編入はありえません。私の経験からもわかります。私自身、私立カイロ・アメリカン大学に正規入学し、1年の単位を正規に取得していましたが、国立カイロ大学には1年から入り直しています。エジプトでは私立と国立の間に単位交換の制度はないからです。私と同じようにカイロ・アメリカン大学をやめてカイロ大学に移ったエジプト人の知り合いたちも、みな同じです。大学を管轄する「高等教育省」の法令上、例外はありません。

 小池氏のケースについて、権力者のコネによる「正規入学」とみなすのか、それとも制度の公平性から「不正入学」とみなすのかは、ある種の価値観の違いでしょう。しかし、カイロ大学を掌握する権力者に頼み込み、入学した行為が尋常ではないのはたしかです。カイロ大学の声明でわざわざ「正規の手続き」と強調している点、また大学の公式サイトではなく、大使館という外交ルートを通じて声明を発表している点も尋常ではありません。軍閥国家エジプトの意思の表れです。

「小池氏の父がハーテム氏に頼んだ」という石井妙子氏の取材結果も、私の実体験と符合します。小池氏の父・勇二郎氏とのやりとりからです。

 カイロ大学時代、小池家が営むカイロ都心の和食屋に食事にいったときのことです。知り合いから勇二郎氏に「浅川君は百合子さんの後輩、カイロ大に正規入学した学生だ」と紹介されると、「ありえない。でも君と百合子とは全く違うんだ。分をわきまえろよ」という言葉を突如投げつけられたことをよく覚えています。

 そのときは一体何を言い出すのかと面食らいましたが、その後、現地で小池氏とハーテム氏との関係、不正な入学や卒業の噂を耳にし、小池家の和食屋に行くたびに勇二郎氏から執拗な説教をされ、悟りました。

「この親父さんは娘をカイロ大学に入学、そして卒業させるために、権力者にすり寄って、相当苦労されたのだな。そこに、どこの馬の骨ともわからない日本の田舎から出てきた僕がコネなしで正規入学したことを知って、娘の存在価値が下がったかのように感じ、逆切れしているんだな」

・・・と当時、冷静になって勇二郎氏の深層心理を分析しつつも、「どれだけ百合子が苦労して勉学に励んだかお前はわかるのか、それに比べてお前は・・・」と不条理な説教を受けるたびに、自分に向けられた負の感情に寒気を覚えたものです。娘への深すぎる愛情のなせるわざなのか、わかりませんが、自分の後ろめたさの裏返しの異様な感情を私にぶつけていたのはわかりました。

ハーテム氏が小池氏の後ろ盾、エジプト政府が公認

──それは業の深い話ですね。しかし、ハーテム氏の後ろ盾による不正入学・卒業説は、石井氏が取材した小池氏の同居人女性の証言にもとづくだけで、決定的な証拠とは言えないのではないでしょうか。

浅川 そうともいえません。ハーテム氏自身による裏付け発言がいくつもあります。1つ目は「東京初の女性知事、カイロ大学の卒業生・・・」と題する政府系新聞アハラーム紙の記事(2016年8月3日付)です。「ハーテム情報大臣の支援を受け、彼女は社会学科を卒業。彼は小池を自分の子供のようにみなしていた」(抜粋)とあり、ハーテム・小池後ろ盾説をエジプト政府(系新聞)が公認した内容です。

 ハーテム氏はこの記事ソースであるアハラーム新聞社の取締役会会長として、長年、君臨してきた人物です。同社の記者がわざわざ会長の実名を出して、荒唐無稽な内容を書くことは考えられない。むしろ、ハーテム氏が書かせたとみることもできます。記者はまた、カイロと東京で数回、小池氏と面談したことを同記事で明かしており、彼女への取材に基づく内容だともほのめかしているにもかかわらず、小池氏のコメントを掲載していない。

 この不可解な記事を深読みすれば、都知事にまで出世した小池氏に対し、彼女を育てたハーテム氏、つまりはエジプト軍閥国家への恩を忘れるなよ(さもなければ真相をばらすぞ)、という脅迫じみたメッセージと解釈することも可能です。エジプトの政府系メディアはプロパガンダの塊ですから、この記事は、報道の事実より、そこから垣間みえる権力者側の意図を読み取るソースとして真価を発揮します。

──そうはいっても、そこまでの恩を売ろうとするものですか。

浅川 国家が外国人を自国民より特別待遇する背景には、当然、明確な意図があります。

 カイロ大学では1954年の粛清後、小池氏が留学する70年代まで、特殊な外人留学枠が存在しました。1つはアラブ諸国で反政府活動をする若者を亡命させ、ナセルの「アラブの大義」で洗脳し、国に戻ったとき工作員にする枠。イラク元大統領サダム・フセインもその1人でした。

 もう1つは、表向きは文化的ですが、同様にエジプトの国策に都合のいい将来のエージェント育成のため、非アラブ特定国の若者を優遇する枠です。ハーテム氏は情報相のトップとして、アジアやヨーロッパ諸国の若者の受け入れを推進すると同時に、それらの国々の議員と友好協会を立ち上げていきます。

 その延長として、アハラーム紙記事(2004年6月21日付)では、ハーテムの日本関連の功績を2つ列挙しています。エジプト日本友好協会創設者・会長として、数百億円にのぼる巨額の援助を日本政府から引き出したこと、その文脈に続けて、彼が小池氏を“子飼い”にしたことです。また、同じ記事で、小池氏はハーテム氏に対して「日本の内閣でイスラムの寛容さについて説いていますよ」と電話で話してくれた、との逸話を紹介しています。

 つまり、小池氏はハーテム氏の目論見通り、エジプトを代弁する子飼い(エージェント)として立派に育ったというわけです。その記録をハーテム氏は歴史の証拠として、政府系新聞にちゃんと残している。

 これらのエジプト政府系新聞の記事から言えるのは、ハーテム氏がカイロ大入学時から卒業(どんな形の入学や卒業であれ)まで小池氏の面倒をみたこと、そして、その後も両者の関係は何十年も続いていたことです。少なくとも、それが国家の公式声明なのです。

エジプト軍閥が切った外交カード

──だんだんきな臭い話になってきました。小池氏の学歴(詐称)の深層はどう読み解けばいいのでしょうか。

浅川 現在、軍事独裁政権トップであるシシ大統領がカイロ大学長ならびに各学部長の任命権を持っています。ハーテム氏からみれば、このシシ大統領は、ハーテム氏の軍部時代の弟分タンターウィー(元国軍総司令官、2011年の革命後の国家元首代行)の部下、つまり孫弟子にあたる人物です。

 都知事就任時に真っ先に祝電を出したナサール元学長にしても、大統領からの任命(無選挙)で知事になっています。学長(学者)は権力のトップには就けないが、大学の自治や民主化運動弾圧などでうまく立ち回れば、知事や軍閥企業社長などに天下りできるのです。

 カイロ大学を代表して日本のメディア対応をする日本語学科の学科長も、軍部の息のかかった学長の任命です。つまり、これまで日本のメディアからの取材に対し、小池氏を卒業生として認めたり、都知事就任を祝福した学長、文学学部長、学科長らは同じ穴のムジナなのです。

 小池氏の学歴偽証については長年、疑惑が出てきては、日本からのメディアの取材に対して、カイロ大学が卒業を認めることを繰り返しては収束してきました。その背後には、こうした小池知事のハーテム人脈を頂点するエジプトの軍部・情報部と大学の権力階層構造があるわけです。

 そして今回ついに、エジプト軍閥が都知事選を前に外交カードを切ってきた。長年、“子飼い”にしてきた小池都知事の“卒業証明”について、大使館を通じ声明を発表したというわけです。見かけ上はカイロ大学長の文書ですが、彼は独裁者シシを筆頭にする軍閥のお飾り御用学者にすぎません。声明が大使館という国家間外交ルートから出されたことも、その傍証です。

 この世には、冒頭で述べた“超法規的な”殺害があるように、“超法規的な”卒業というものが存在するのです。

 学歴詐称の疑惑の先にある、真の問題は、今回の声明への見返りが何かということです。

 小池氏はこれまでハーテム人脈の権力構造により、特別待遇を受けてきた。その恩に加え、小池氏は、学歴詐称疑惑の渦中で迎える都知事選の直前、エジプトの軍閥から助け舟を出された格好です。

 エジプト上層部・カイロ大学側にしても、何のメリットもなければ、いくらハーテム人脈といっても長年、わざわざ小池氏を擁護する理由はありません。これは、日本の国益にとって、より本質的な問題といえます。

 この問題は、学歴詐称よりさらに深刻なことは明白です。

 エジプトの軍部・情報部に借りがあり、弱みを握られた日本人が現職の東京都知事、そして「日本初の女性首相」候補だったとしたら・・・。

◎浅川 芳裕氏(@yoshiasakawa)

 1974年、山口県生まれ。ジャーナリスト。エジプトの私立カイロ・アメリカン大学(1992年~93年)、国立カイロ大学文学部セム語専科(1993~95年)で学ぶ。アラブ諸国との版権ビジネス、ソニー中東市場専門官(ドバイ、モロッコなど)、『農業経営者』副編集長などを経て『農業ビジネス』編集長。著書は『日本は世界5位の農業大国』(講談社+α新書)、『ドナルド・トランプ 黒の説得術』(東京堂出版)、『カイロ大学』(ベスト新書)ほか多数。訳書に『国家を喰らう官僚たち―アメリカを乗っ取る新支配階級―』(新潮社)。中東・イスラム関連記事では『「イスラム国」指導者の歴史観』『なぜ増える? イスラム教への改宗』(いずれも『文藝春秋スペシャル』)などがある。
参照元:カイロ大「小池氏は卒業生」声明の正しい読み解き方
都知事選を前にエジプト軍閥が切った外交カード
2020.6.12(金)鶴岡 弘之 JBpress
小池知事、カイロ大学の卒業証書原本を公表「ご自由にご覧頂きたい」
2020/6/15 20:00 BUSINESS INSIDER JAPAN

東京都知事選(6月18日告示、7月5日投開票)に出馬する意向を表明している小池百合子都知事(67)が6月15日、都知事選の政策を発表する記者会見を開いた。この会見の終了後、小池知事は議論の的となっている「卒業証書」の原本を選挙スタッフを通じて公開した。

小池氏は、「これまでも何度も私は公表してきたということをお答えしております。このことについて、政策論争よりも卒業証書の話ばっかり先に出てくるのは、これはふさわしくないと考えております。何度も公表させていただいているものでございますので、今日はご自由にご覧頂きたいと存じます」と述べた。

小池氏をめぐっては、これまでも最終学歴として発表しているエジプト国立カイロ大学を卒業していないのではないかという疑義を伝える週刊誌の記事などが報じられてきた。

石井妙子氏の近著『女帝 小池百合子』でも学歴疑惑について、かつてのルームメイトの証言とともに言及され話題になった。

カイロ大学「卒業証書は正式な手続きで発行」と声明を出したが…

小池氏のカイロ大学卒業の経歴をめぐっては、カイロ大学が6月8日に学長名で「小池百合子氏が、1976年10月にカイロ大学文学部社会学科を卒業したことを証明する」「卒業証書はカイロ大学の正式な手続きにより発行された」という声明を出した。駐日エジプト大使館は翌9日、非公式の翻訳文でカイロ大学の声明を発表した。

今回の卒業証書の原本公表は、都知事選の前に学歴をめぐる疑惑を払拭しておきたいという狙いがあると見られる。

一方、エジプトの国立大学が政府、特に軍や治安当局の管理下に置かれていることを踏まえて、大学側は「卒業」自体を認めているが、小池氏が正規の手続きで卒業したかは疑いがあるという声もある。

ただ現時点で、卒業に際して実際に不正があったとする証拠はなく、カイロ大学の声明を否定できる物証や当局者の証言などはない。

(文・吉川慧)
参照元:小池知事、カイロ大学の卒業証書原本を公表「ご自由にご覧頂きたい」
2020/6/15 20:00 BUSINESS INSIDER JAPAN
小池百合子氏の「カイロ大学卒業証書」を現物公開する
2020/6/15 16:05 NEWSポストセブン

「無風」と見られていた東京都知事選(7月5日投開票)に降って湧いたのが再選確実とされる小池百合子・都知事(67)の「学歴詐称騒動」だ。渦中の証拠資料を公開する──。

 突風はカイロから吹いてきた。小池氏の出馬表明をひかえた6月8日、エジプトのカイロ大学が「小池百合子氏が1976年10月にカイロ大学文学部社会学科を卒業したことを証明する。卒業証書はカイロ大学の正式な手続きにより発行された」と声明を発表し、東京のエジプト大使館がフェイスブックで公表したのだ。

 何が起きているのか。発端は5月29日に刊行されたノンフィクション作家・石井妙子氏による『女帝 小池百合子』(文藝春秋刊)。都知事になるまでの小池氏の半生を追った内容である。

 その著書の中で石井氏は、カイロ留学時代の小池氏と「同居していた」という日本人女性の証言をもとに、「カイロ大学卒業」という小池氏の経歴に詐称の疑いがあると指摘し、卒業証書にも疑問を呈した。

 それに対してカイロ大学が、「カイロ大学及びカイロ大学卒業生への名誉毀損であり、看過することができない」と声明を出したのである。

 つまりは卒業証書が“本物なのか”という真贋論争なのだが、肝心の現物は作者の石井氏も見ていないし、都議会で野党に提出を求められても小池氏は提出を拒んでいる。理由は「これまで何度も公表してきた」から。

 その画像を本誌は持っている。小池氏は若手議員時代に本誌に「ミニスカートの国会報告」を連載しており、その誌面で公開したものだ。

〈元気印の私が目障りでしかたがない人たちが、『小池百合子の学歴詐称疑惑を調査しろ』と、カイロにまでさぐりを入れているとか。残念ながら私のカイロ大学卒業証書はホンモノ。このページで証明します〉(1993年4月9日号)

 と卒業証書を掲載していた。

 石井氏は著書の中で本誌の連載記事をしばしば引用しているが、この卒業証書についてはこう書いている。

〈卒業証書らしきものを載せて、「これが証拠の卒業証書」とキャプションを付け紹介している。しかし、名刺の半分の大きさで、何が書かれているのかまったく読めず、「証明」にはなっていない〉(『女帝』より)

 そこで本誌は「名刺の半分」ではなく、大きく拡大して公開する。

 小池事務所にも、「『週刊ポスト』で公表したものが小池が持っている卒業証書と同一です」と改めて確認が取れた。

◆〈学士を与えることを決定〉

 卒業証書にはアラビア語でこう書かれてある。

〈大学理事会は1976年12月29日、1976年卒業生のための文学部の試験結果を精査し、1952年に日本で生まれたコイケユウジロウ氏の娘であるコイケユリコさんに「良」の成績で文学部社会学科の学士を与えることを決定した〉
 翻訳したのは、アラブ圏で最高峰のアズハル大学を卒業し、現在は通訳・翻訳家であるカイロ在住のモハメッド・ショクバ氏である。こう語った。

「エジプトの大学では父親の名前を入れるのが特徴で、卒業証書としては見たところ何も疑問点はない」

 卒業証書と一緒に小池氏から提供されていた卒業証明書には、〈文学部は1952年7月15日に日本で生まれたミスターコイケユリコに1976年10月に文学部社会学科の学位を成績「良」で与えている〉と書かれている。

 なぜか小池氏に「ミスター」と男性の敬称がつけられているが、ショクバ氏によると「証明書がそうした雛形のもとに書かれているからで、エジプトの大学の文書では女性なのに男性形で書かれるのはよくあること」という。

 これで真贋論争に決着がつくか。

※週刊ポスト2020年6月26日号
参照元:小池百合子氏の「カイロ大学卒業証書」を現物公開する
2020/6/15 16:05 NEWSポストセブン
小池都知事の学歴詐称疑惑、エジプト政府との関係でも重要
2020.06.11 07:00 女性セブン

東京都知事選の告示(6月18日)を目前に控え、小池百合子・東京都知事(67才)の動向が新型コロナウイルス対策以外で注目されている。いわゆる“学歴詐称問題”だ。一冊のノンフィクション作品がきっかけで再燃した疑惑──。国際ジャーナリスト・山田敏弘氏が真相に迫る。

 * * *

 その本の帯には《救世主か?“怪物”か?彼女の真実の姿。》と書かれてある。

 5月末に発売された『女帝 小池百合子』(文藝春秋刊)。作家の石井妙子氏が、3年半にわたって小池百合子・東京都知事の半生を取材し、まとめたノンフィクションだ。

 小池知事は1971年に19才で単身、エジプトの首都カイロにわたり、名門カイロ大学に入学。1976年に「首席」で卒業したという。その後はニュース番組のキャスターを経て政界入りし、2016年からは女性初の都知事となり、“次の総理候補”とまでいわれるようになった。

 この本では、特に小池知事の学歴にスポットを当てている。“カイロ大学卒業が虚偽ではないか”と指摘しているのである。

 もし虚偽ならば、公人である小池知事は公職選挙法違反(虚偽事項公表罪)に問われる可能性も出てくるから、ただの嘘では済まされない。

『女帝』が指摘する最大の根拠は、当時、カイロで小池知事と同居していたことがあるという女性の独白だ。

 この同居女性の主張をまとめると、こうだ。小池知事は、高度なアラビア語が不可欠となるカイロ大学にエジプト人有力者のコネで入学。だがアラビア語がまったくできず、大学の授業でアラビア語の手助けをしてもらうために日本人留学生と結婚するも、すぐに離婚。結局、その後に一時帰国した日本で「カイロ大学卒業」という嘘の学歴をメディアに売り込んだと同居女性は小池知事本人から聞かされた──。

 実は筆者も小池知事の学歴詐称疑惑を調べるために2017年にカイロで現地取材を行っている。

 留学当時の小池知事を知る日本人やエジプト人は、彼女に卒業できるアラビア語能力はなかったと一様に口を揃えた。日本人として初めてカイロ大学を卒業した小笠原良治・大東文化大学元名誉教授をはじめ、カイロ時代の小池知事と交流があった人たちには「カイロ大学を卒業できる能力はなかった」とはっきりと述べる者も少なくない。

『女帝』によれば、カイロ時代の同居女性はこれまで40年以上も口を閉ざしてきた理由を、「小池さんと同居していたものとして知っている事実を口にするには、彼女はあまりにも有名で、国民に知らされている情報を覆すことは、私自身の身の安全を考慮してもできませんでした」と吐露。その上で、「カイロ大学は1976年の進級試験に合格できず、従って卒業はしていません」と語っている。

 小池知事は帰国後すぐに、カイロでの学生生活を仔細にまとめた著作『振り袖、ピラミッドを登る』(講談社刊)を出版している。だがそこには事実関係の矛盾や嘘が入り交じっているという指摘はかねてからあった。

結婚生活など小池知事のカイロ時代を語る上で欠かせない情報は一切言及されていない。そうした実態を知ると、これまで彼女の学歴詐称疑惑が繰り返し議論になるのも仕方がないとも思える。

 本人もそれを自覚してか、2016年に都知事選に出馬した際、一度だけフジテレビのテレビ番組で卒業証明書を判読できる形で公開したことがある。

 だが、証明書に書かれた文言や日付、スタンプなどにおかしな点があると検証されており、卒業証明書を不正に入手したのではないかとの疑念すら出ている。

◆日本のメディアに卒業証明書を配った

 数年にわたって議論されてきた小池知事の学歴詐称疑惑。ここで筆者はひとつの結論を出したい。彼女は学歴詐称をしていない、と。いや、学歴詐称を証明するのは難しい、と言った方がいいかもしれない。

 前述したように筆者はカイロで現地取材をした際、カイロ大学の日本メディア窓口である、文学部日本語学科長のアーデル・アミン・サーレ教授と接触。学内にある卒業者の記録書を調べてもらったところ、彼は「小池さんは首席ではないごく普通の成績ですが、1976年に間違いなく卒業している」と、断言した。

 そして今回も改めてカイロ大学側に接触し、大学の広報による正式な見解を文書で受け取った。そこにはこう書かれている。

《1952年7月15日生まれの小池百合子氏は、カイロ大学のエジプト人または外国人に対する規則に従い、1976年にカイロ大学文学部社会学科の学士を取得したことを、ここに表明します。同氏は、自国で高職を得て、高く評価できる卒業生の一人であることを、カイロ大学として評価しています》

 またこれまでの学歴詐称疑惑に関する記事については、《カイロ大学の卒業生の一人である小池百合子氏についての疑念を断固として拒否》し、《間違った情報を発信されたことについて強い遺憾を表します》と続けた。

 大学側が卒業をこのように認めている以上、それを覆すのは難しいのではないか。

 さらに言えば、2016年に小池知事が初の女性都知事として当選した際に、カイロ大学のガーベル・ガード・ナッサール学長(当時)が地元のテレビ番組に出演し、「カイロ大学文学部社会学科の卒業生である小池知事を誇りに思う」と発言していた映像も存在する。

 肝心の学力はどうか。当時の彼女の語学力では卒業が困難であることは誰もが認めるところだ。

 留学時の小池知事を知る人物が語る。

「小池さんの父親は石油商で、彼の人脈で知り合った元エジプト情報相のアブデル・カーディ・ハーティム氏というエジプト人有力者のおかげで、ホームステイ先やカイロ大学への推薦書なども手配できたといわれています。当時のエジプトはカネとコネの世界ですから、彼女の人脈は大きな武器となったことでしょう」

 あるカイロ大学の関係者はこんな話を打ち明ける。

「ナッサール前学長は現職中(2013?2017年)に、小池氏の学歴詐称疑惑を問い合わせてくる日本人の記者には、小池氏の卒業証明書を惜しみなく提供する方針だった。現学長になってからプライバシー保護の観点から個人情報を提供しなくなったが、当時は相当数配ったから、日本のメディア関係者には小池氏の卒業証明書のコピーを持っている人がたくさんいるはずだ」

 つまり、“物証”はあるということ。

 ただし、大学側の見解や物証が出ても、『女帝』に登場する同居女性の告発や、エジプトではかつてコネやカネで卒業証明書などを購入できたという情報もあり、学歴詐称疑惑が完全に払拭されたわけではない。

 この疑惑は小池知事が改めて卒業証明書を公開し、その上で、正々堂々と疑惑を追及しているメディアの取材を受けてその正当性を証明すれば済む話である。前出の大学関係者は、「この問題はエジプト政府の高官レベルでも話題になっている。日本政府などが絡んで大きな騒ぎになると、在エジプト日本国大使館が動いて調べるなど、エジプト政府との関係でも大事になる」とも語る。

 2期目を目指す現職都知事は自らの身の潔白を説明する責任があるのではないか。さもないと、この不毛な議論がいつまでも止むことはないだろう。

※女性セブン2020年6月25日号
参照元:小池都知事の学歴詐称疑惑、エジプト政府との関係でも重要
2020.06.11 07:00 女性セブン
『女帝 小池百合子』著者に聞く、小池都知事に賛同できない理由
ダイヤモンド編集部 岡田 悟:記者
2020.6.17 12:00 DIAMOND Online

7月5日投開票の東京都知事選に再選出馬を表明した小池百合子氏。その半生に迫った『女帝 小池百合子』(文藝春秋)が5月28日に発売され、15万部のベストセラーとなった(6月11日現在)。「これまでの女性たちの苦難の道の末に咲かせた花であるとして、受けとり、喜ぶことが、できない」――。小池氏についてこのように書いた、著者であるノンフィクション作家の石井妙子氏に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

政治家を“演じている”小池氏に当初は興味なし
カイロ時代の生真面目な同居人が抱えていた秘密

――小池百合子氏についてこうした著書を書こうと考えたきっかけを教えてください。

 最初は小池氏にはさほど関心がありませんでした。文藝春秋の編集者の方から執筆依頼があったのですが、小池氏は特に実現しようとしている政策もなく、いわば“空っぽ”。政治家というよりも、政治家を演じている人物だと考えていたので、本にはならないのではないかと思っていました。

 小池氏が初当選した2016年の都知事選でも、彼女は情熱的な言葉を使って聴衆をあおっている割には、目が笑っていない。言葉と感情が比例しないというか、どこかひんやりしたものを感じ、それが気になりました。それでも、彼女について積極的に書きたいとは思いませんでした。

 ただ、彼女がキャスターから政治家に転じ、東京都知事に上り詰めた平成という30年間を、小池氏という人物を通じて描けるのではないか。小池氏という政治家をここまで押し上げたのは、小池氏自身の罪なのか、この時代の私たちの罪なのか? そういう視点でなら本にできるという感じはしていました。

――月刊誌に小池氏の生い立ちを記す中で、エジプト・カイロ時代に小池氏と同居していた早川玲子(仮名)さんという女性から連絡を受け、彼女が保管していた膨大な記録や証言を取材することができたのですね。

 早川さんはとても生真面目で優しい方です。小池氏よりも10歳ほど年上で、カイロに来た当時、20歳ほどだった小池氏にとっては姉のような存在でした。小池氏は1976年10月に当時のサダト・エジプト大統領夫人の訪日に同行し、日本に一時帰国した際、日本のメディアの取材を受けて、「日本人で2人目、女性では初めてカイロ大学を卒業した」と自己紹介しました。

 小池氏は、エジプトに戻ってからそのように書かれた日本の新聞記事を早川さんにうれしそうに見せています。早川さんは当時を振り返り、「そんな嘘をついてはいけないと、小池氏にもっと注意を与えておけばよかった」と後悔の念を私に語ってくれました。

アラブ最高峰のカイロ大は留年も当たり前
腐敗、日本政府の援助を見据えた思惑も

 早川さんはこうした小池氏とのカイロでのやり取りを、自身の母への相当量の手紙で克明に記しており、取材時にはそこから記憶を想起してもらって話を聞きました。小池氏が後半生に日本で大臣、そして東京都知事となったことに恐怖心を感じておられました。そんな小池氏の秘密を自分だけが知っているという不安に加え、エジプトは軍事独裁国家であり、小池氏とアラブ世界とのパイプを考えれば、命を狙われるリスクもゼロではないと考えていたからです。

 ただ早川さんには、小池氏を憎いと思う気持ちはなく、経歴を詐称したことが憎いので、これを償ってほしいと考えていると話しておられましたね。

――早川さんの証言によると、カイロ時代の小池氏は遊びやアルバイトに熱心で、アラビア語の読み書きは超初歩レベルと、とても熱心に勉強をしていたふうではない。にもかかわらず日本ではカイロ大学“首席卒業”と自称してキャリアを積んできました。今年6月8日には在日エジプト大使館がカイロ大学長の声明として、小池氏がカイロ大を卒業したのは事実だとする声明を出しました。

 そもそもカイロ大はアラブ世界の最高峰の大学であり、卒業するのは非常に難しい。4人に1人は卒業できないと当の小池氏自身が過去に語っています。アラビア語のネイティブでない日本人であれば、死に物狂いで勉強しても、留年を繰り返して何年もかけて卒業するのがやっとで、できない人もたくさんいます。まじめに勉強していなかった小池氏が首席で、4年で卒業できたとは考えられません。

 小池氏は、父の勇二郎氏と、エジプトの副大統領などを務めたアブドゥル・カーデル・ハーテム氏とのコネによってカイロ大の2年生に編入できたようですが、進級できず落第し、卒業はできなかった。

 ではなぜ、カイロ大があのような声明を出したのか。エジプト社会は腐敗が多く、いわばその人の社会的地位に合わせて恩恵が受けられる国です。またエジプト政府は日本から多額のODA(政府開発援助)を受けており、日本政府や小池氏とのパイプを政府も重視していることでしょう。現在の小池氏の地位や権力を考えれば、カイロ大は小池氏が卒業生であることをむしろ利用したい、という思惑があるのではないでしょうか。

莫大な借金、顔のあざに苦しんだ少女時代の小池氏
“下”に落ちる恐怖が過度な上昇志向を形成

――著書では小池氏の学歴詐称疑惑に限らず、幼少時代から今に至るまでの彼女の振る舞いを、徹底した関係者への取材によって明らかにしています。特にカイロに渡る前の兵庫県芦屋市時代、顔のあざに悩んだり、父親の勇二郎氏の事業や政治活動の失敗で莫大な借金を抱えたりするなど、彼女の経験には同情を覚えます。

 小池氏の実家は芦屋市にありましたが、高級住宅街のイメージから連想されるような裕福な家庭ではありませんでした。経済的に不安定な幼少時代からの環境は、社会の上へ上へと常にはい上がらないと、下に落ちてしまうという恐怖感を彼女に植え付けたことでしょう。組織の上層部にいる有力者とだけつながって世渡りをするという小池氏の手法は、父親譲りといえます。

 また勇二郎氏の見栄もあって、地元の名門女子高である甲南女子中学・高校に通いましたが、周囲は本当の富裕層の子女たち。劣等感を抱いたことで、いつか強者になって人を見下したい、だから権力が必要だと考えるようになったのだと思います。今の彼女に権力があるからこそカイロ大の声明が出るわけですからね。

――カイロから帰国後はテレビの世界で活躍。やがて新党ブームに乗って日本新党の参議院議員となり、衆議院にくら替えして、その後は自民党へ。2003年には小泉純一郎内閣で環境大臣として入閣を果たします。「クールビズ」を流行させるなど環境大臣の経験は、やたらと「エコ」をアピールする彼女の大きな売りになっています。しかし当時、水俣病患者やアスベスト被害者に対して実に冷酷な対応をしていますね。

 水俣病関西訴訟で04年に最高裁判所が国の責任を認めましたが、環境大臣として認定基準の見直しには踏み込みませんでした。05年にはアスベストの被害が明らかになりましたが、尾辻秀久厚生労働大臣(当時)と異なって真摯に解決策を示さず、被害者団体とのやり取りでは強い怒りを買いました。

 これには二つの面があると思います。一つには、自民党の保守政治家として、「女性政治家だから社会的弱者に優しい」と周囲の男性政治家や世間から見られることを避けたかったのではないか。イギリスのサッチャー元首相が、弱者切り捨てともいわれる市場原理主義的な経済政策を導入したり、フォークランド戦争を始めたりするなど、女性であるがゆえにそう見られまいと“女性らしくない”政策に傾いたのと似ています。

 当時、女性議員は旧社会党出身者が多く、小池氏は土井たか子氏にとても批判的でした。こうした女性議員たちと自身を差別化する意図もあったのでしょう

助けを求める人々を足蹴にしたくなる心理
“芦屋令嬢”を演出しても出てしまう地金

 二つ目は、彼女自身が苦労してはい上がる人生を歩んできたため、立場の弱い人から頼られると、手を差し伸べるよりも、むしろ足蹴にしたくなるのではないか。芥川龍之介の小説「蜘蛛の糸」のように、下から糸につかまろうとする人を振り払おうとする心理に駆られるのではないでしょうか。

――阪神・淡路大震災の被災者の訪問を受けた際に、指にマニキュアを塗りながら応対し「塗り終わったから帰ってくれます?」と言い放つエピソードも出てきます。私も小池氏本人に16年11月にインタビューした際、iPadを操作しながら目を合わせることなく生返事を続けられたことがあるので、こうした言動は十分に想像できます。小池氏のそんな一面はあまりメディアで取り上げられませんね。

 小池氏はテレビカメラが回っているなど公の場所と、そうでない場所での振る舞いが大きく違います。北朝鮮による拉致被害者の家族の記者会見に付き添った際など、自分がいかにも良心がある人物であるかのように振る舞うことはとても上手です。

 記者会見でも「○○と存じます」などと丁寧さをやたら強調した言葉遣いをします。“芦屋令嬢”的なイメージを意識しているのでしょう。しかし、いざ自分に不利な質問が出ると、手元の資料を束ねて机にたたきつけてバンバン音を立てるなど、途端に豹変する。“地金”が出てしまうのです。

 小池氏の周辺を取材して感じたのは、本人は学ぶ力、思考力が乏しいのに、複雑な物事をさも十分に理解しているように自分を見せる力だけは抜群に高いことです。多くの人々は小池氏のそうした虚像だけを見ているわけで、それが怖い。

 小池氏が07年にわずか55日間、防衛大臣を務めた際の事務次官だった守屋武昌氏は、私の取材に「小池氏は防衛政策を理解していないのに、記者会見では、さも中身を理解しているように話す。鋭い質問には論点をそらした上で、さも堂々と答えていた。中身を学んでくれればとレクチャーの時間を取ろうとしても、雑誌のグラビア撮影やテレビの取材を優先するので時間を取れなかった」と話していました。

――とりわけ防衛大臣ともなれば、それは極めて危険ですね。

新型コロナの危機下でけん玉、かるた、こんまり…
不幸な少女時代が生み出す、すぐにバレる嘘

 また小池さんは、いわゆる“マスコミ受け”する言葉や施策を打ち出すことにかけても天才的です。3月以降、新型コロナウイルスでの対応で医療の現場が危機的な状況下にあっても、彼女が記者会見で紹介したのは、「コロナかるた」、けん玉、そして近藤麻理恵さんの片づけ動画でした。派手な柄のマスクを話題にしようとするなど、すぐに目くらましをする。

 早川さんに言わせれば、例えばカイロ大学卒業の件でも、小池氏には嘘をついているつもりはない。目の前の相手が振り向いてくれるよう、相手の喜ぶことを口にしてしまう性格だというのです。カイロ大“首席卒業”も、当時の日本人男性記者が喜んで記事にしてくれると考え話を作ってしまったのでしょう。今もマスコミに対して同じことをやっている。

 一方で、小池氏の嘘はすぐにバレるような甘いものが多い。カイロ滞在時をつづった著書『振り袖、ピラミッドを登る』でも、1年留年しているのに4年で卒業したと書いたことなど、調べればすぐに矛盾に気づくようなエピソードがたくさん出てきます。

 そういう意味では、彼女はカイロにいたころから今まで何も変わっていない。彼女自身の特異なキャラクターよりも、そんな彼女をここまで押し上げた社会の在り方こそ問題ではないかと思います。環境大臣時代に水俣病やアスベストが問題化していた時期であるのに、小池氏がぶち上げたのはクールビズでした。公害問題で地道な成果を上げることよりも、マスコミや社会はクールビズに飛びついてしまったわけです。これは私たち社会の責任でもあります。

 都庁で行われる小池氏の記者会見を動画でよく見ますが、彼女のくだらない冗談に、前の方に座っている民放キー局の女性記者たちが、大げさに受けたり、うんうん、うんうんと必死でうなずいて見せている。私は密かに「うなずき娘」と呼んでいるのですが(笑)、記者たちが権力者に迎合しすぎています。

 小池氏に気に入られたいという気持ちはわからなくはありません。でも、若くても大手メディアの記者には、特権的な立場が与えられているのですから、自らの役割を自覚して、もっと毅然としていてほしいです。そもそも環境大臣時代の彼女の振る舞いをメディアが詰め切れていれば、今ごろ東京都知事にはなっていなかったかもしれません。

調べるほど女性代表には見えなくなった小池氏
踏みつけられた女性にこそ見出した尊敬の念

――著書の終盤で石井さんは「(小池氏を)これまでの女性たちの苦難の道の末に咲かせた花であるとして、受けとり、喜ぶことが、できない」と書いています。

 今回の著書は小池氏の“批判本”と呼ばれますが、私はむしろ、小池氏を生み出したこの社会の流れ、在り様にこそ関心がありました。

 そもそも私は、もっと女性の政治家が増えるべきだと思っていますし、決定権を持つべき立場に就く女性が増えれば、世の中をいい方向に変えることができると考えています。その趣旨からいえば、常に女性初といわれてさまざまなポジションに就いてきた小池氏を理屈の上では応援すべきなのですが…。でも私にはどうしても、彼女を女性の代表として見ることができないのです。

 小池氏について調べれば調べるほど、彼女を女性たちの苦難の歴史の果てに咲いた花、成果であるとして見ることができなくなりました。

 小池氏は、私がこれまで評伝で取り上げてきたどの女性たちとも違います。今回の取材でも、私は尊敬したくなる素敵な女性たちとたくさん出会うことができました。カイロで小池氏と同居していた早川さんがそうですし、「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」副会長の古川和子さん、築地市場の移転に反対していた「築地女将さん会」の方々などです。市井にはこんなにも優れた女性たちがいるのだと感激しました。でも、そうした女性たちが小池氏によって踏みつけられていったわけです。

 一方で、自分のことしか考えていない小池氏という人間が、ひたすら階段を上って「女性初」として社会の称賛を浴びていく。どうして彼女に出世の階段を上らせてしまったのか。社会を見渡せば“ミニ百合子”のような女性はたくさんいます。そのような人が出世してしまうという社会でいいのか。地道に努力している女性が踏みつけられていいのか、考えさせられました。

 とはいえ、小池氏を現在の地位から引きずりおろしたいと考えて作品を書いたわけではありません。しかし、早川さんら、これが女性のすごさだと思わせてくれるような市井の女性たちに出会い、その正義感に触れ、小池氏よりも、そうした女性たちに私の心情が傾いたことは事実です。

 歴代内閣における女性閣僚の多くがそうですが、どうしても男性側がピックアップして選ぶ。彼女たちは高い地位にいる男性によって選ばれた女性であって、女性たちの塊の中から上へと押し上げられた人材ではありません。

 男性側も、女だから大臣にはしてやるが、総理大臣なんてとんでもないというのが前提で、女性閣僚はあくまでもアクセサリーのような存在です。また最近の女性政治家を見ていると、有能で素敵な私を見てほしいという、自分の虚栄心を満足させたいという思いから政界進出するタイプが多いように見えます。

 小池氏を、ドイツのアンゲラ・メルケル首相、台湾の蔡英文総統と同列に並べ、コロナ対策で成功したのは女性リーダーだったと論じた記事も目にしましたが、果たしてそうでしょうか。日本では残念ながら女性側の人材の裾野の小ささもあり、メルケル氏や蔡氏のような、能力があって実務ができ、真摯な言葉で人を感動させることができる女性リーダーがなかなか出てきません。日本でも早く出てきてほしいと思います。
参照元:『女帝 小池百合子』著者に聞く、小池都知事に賛同できない理由
ダイヤモンド編集部 岡田 悟:記者
2020.6.17 12:00 DIAMOND Online

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コメント

コメント一覧 (15件)

  • 先生、

    牡羊座の奇想天外な我が道を行く、行くことができる、
    という部分が記されていたと思うのですが、

    牡羊座の木星(バラニー)にはそのような性質があると考えてよろしいのでしょうか?

    私は、そうなのですが、とても思い当たることが多いのです。
    振り返ると、とても、ここから逆転しないだろう…と普通なら思える局面から、有り得ない方向に事態が進展したとか…
    • 牡羊座のバラニーに在住する木星にそういう性質があるということではなく、牡羊座に在住している惑星ということで書いています。
      牡羊座は、運動星座で、火の星座である為、ダイナミックで、変化に富んでいるということで、そういうことが起こりやすいです。
      また特に牡羊座で二重否定的な効果が発揮されている場合、そうしたことが起こりやすくなります。
      「とても、ここから逆転しないだろう…と普通なら思える局面から、有り得ない方向に事態が進展した」ということであれば、
      二重否定的な配置があるのかもしれません。実際、ラグナや月の配置、牡羊座に在住する惑星の数や種類など、もう少し詳細な情報をお願いします。
      • 先生、
        返信ありがとうございます。

        私は水瓶座ラグナで、ラグナに太陽水星土星、全てシャタビシャー

        3室牡羊座バラニーの木星(Amk)

        4室牡牛座ラーフ

        8室乙女火星

        10室蠍座月アヌラーダ
        ケートゥ、ジェーシュター

        12室山羊座金星(AK)ダニシュター

        となってます…

        どん底から頂点みたいなの多いです…(小学校の時に有名などうしようもない悪童で、中2から成績が上がり始めて高校でずっとトップ等…)
        • おそらく6室支配の月が10室で減衰してパラシャラの例外則によるラージャヨーガ的な効果、及び高揚するケートゥとコンジャンクトで、ニーチャバンガラージャヨーガが成立しています。月がアヌラーダですか、土星期から始まって、中学時代は、土星期もしくは水星期です。ケートゥや月のアンタルダシャーの時期にそうしたどん底からの上昇が起こったか調べるとよいかと思います。土星、水星期自体がラグナでラージャヨーガを形成しているから、悪い時期とも思えません。それと牡羊座の木星は射手座の定在にアスペクトバックするので、射手座に木星が在住しているかの効果を発揮します。それで射手座のアンタルダシャーの時期に上昇したかもしれません。そのどちらかではないかと思います。11室が強くなるので、木星期が来ると急に高い評価を受け始める訳です。よかったら調べてみてフィードバックお願いします。
  • 先生の仰る通りのようです。
    札付きの全校に轟く悪ガキが、土星期の最後に勉強に興味を持ち始めました。土星木星期でした。それが小学校5年ぐらいからです。
    土星木星期の最後に中学入学しましたが、親はビリだと思っていたのに、最初のテストで400人中130番ぐらいでした。

    それで、水星水星金星期これが1979年5月15日までですが、その次の水星水星太陽期に至る間に大きく変貌します。
    1学期の終わりに、サボって英語に全く付いていけてないことを自覚し、それで、夏休み自分で勉強します。そうすると、夏休み終わって二学期が9月に始まった時に、逆に自分の方が学校より先をやってて、楽になりました。
    ここから成績が学校でも上位になります。
    そして、水星水星木星期1980年8月4日までですが、ここで体育祭かなんかに来ていたアメリカ人宣教師と会い、毎日教会に遊びに行きだして英語が喋れるようになってました。
    そして、
    高校一年、先生に進められて奨学生の試験を受けると、合格して、留学が決まったのが水星水星木星期、水星水星土星期です。

    先生の仰る、月が6室だけれども、10室で減衰+高揚するケートゥのニーチャバンガラージャヨガ的な効果、というのは、私、昔から、実感するのです。

    というのは、昔から、何かで敵対者と巡り合い、ストーカーされたり、粘着されたりするのです。
    だけれども、私はそういう時に大局的な視点や、我慢強さが発揮されて、動く相手に墓穴を掘らせ、最終的には、勝利と名誉を勝ち取る、というパターンが繰り返されているのです。
    もちろん、この期間の最初には、評判が落ちています。
    だけれども、最後逆転しますから、注目を集めた状態で、評判が好転するのです…
    • なるほど、アンタルダシャー、プラティアンタルダシャーの木星期にやはり上昇がある訳ですね。


      射手座にアスペクトバックする牡羊座や獅子座の配置というのは、木星が定座にある場合の次ぐらいに強い配置と言われています。

      その時、牡羊座であれば、運動星座で、火の星座である為、ダイナミックな上昇をもたらすと言えます。


      また6室支配で蠍座で減衰する月は、ストーカー的な粘着質の人物として現れるというのはよく分かります。


      まさにそれが星座や惑星が象徴する通りの人物です。


      然し、粘り強く相手が墓穴を掘って勝利するというのは、まさにニーチャバンガラージャヨーガやパラシャラの例外則の効果だと思います。


      そして、その期間の前半には苦しみ、後半に逆転するというのも法則の通りです。
  • 留学でアメリカに旅立ったのは、1981年7月7日、翌日から水星ケートゥ太陽期が始まります。
  • 先生、チャラダシャーも見てみました。

    先生の仰る通り、
    私の人生で、最大級の転換とも言える奨学生としての留学は、
    魚射手のダシャーでした。
    魚射手は、1981年6月25日から始まりますが、始まってから、先生に、試験受けてみたらどう?と言われました。そしてその年の10月には最終選考で決まっていました。
    • 射手座には、ジャイミニスキームでは、木星はアスペクトしていませんが、


      射手座から見た場合、学習の5室にAmKの木星が在住し、水瓶座から水星、太陽、土星がジャイミニアスペクトして、5室が強い為、


      その時期に学習に恵まれたのだと思います。


      (木星が牡羊座で逆行しているようなことがあれば、射手座にもジャイミニアスペクトしています)



      また射手座自体が利得、願望成就の11室であったということも関係していると思います。


      そして、12室が強いということです。


      AmKが5室に在住するような配置は、通常、仕事はせずに学習や創造的な活動に費やす時期として、幸運な時期です。


      ですから留学したことが分かります。


      また射手座は急激な上昇をもたらす為、全く平凡な日常から跳躍するような胸躍る体験となった訳です。

      • 先生、
        今までの謎が全て解けた気がします。
        ジャイミニアスペクト…いつもヴィ厶ショッタリダシャーばかり気にしていたので頭に入っていませんでしたが、チャラダシャーもちゃんと考えようと思います。

        先生、私の8室乙女座火星ウッタラパールグニーなんですが、
        私の天体で唯一逆行してます。
        若い位置の乙女座ですが…
        私はマンガルドーシャだと思うのですが、逆行でキャンセルされるものですか??
        • マンガルドーシャは逆行でキャンセルされるといったことはないと思います。
          基本的に火星が在住しているハウスで決まると思います。
  • 先生、
    色々と教えて下さり、ありがとうございました。

    次の記事でも、私は月から6室目に木星が有り、実感するところがあるので、非常に驚きました…
  • 先生、

    一つお教え頂きたいのですが、
    蠍座でケートゥが高揚する、
    即ち、ラーフは牡牛座で高揚する、

    それは私も知っていたのですが、

    それぞれ、射手座、双子座で高揚する、と書いてあるのを読んだことがあるのですが、それも正しいのでしょうか??
    • そのような説もあるようですが、あまり一般的ではありません。
      然し、総合すると、ラーフが双子座で強く、ケートゥが射手座で強いとする考え方、
      あるいは、ラーフは水星の星座で強くなり、ケートゥは木星の星座で強くなるという考え方になっています。
      蠍座でケートゥが高揚し、牡牛座で、ラーフが高揚する方が、一般的です。

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