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日銀破たん、日本財政破たんの危機 -預金封鎖の予感-

2022 7/28


円安が進んでいるが、輸入に頼っている日本は燃料や食料(小麦など)の資源価格の高騰により、じわじわとインフレになって来ている。


専門家によれば、日本は戦後、最大の危機と考えられているが、日本ばかりでなく、世界的に考えても危機的状況にある。


先日のスリランカの財政破たんもそうだが、コロナの影響で観光収入が減り、インフラ整備の為に中国に巨額の借金をしていたスリランカは返済が出来なくなり、債務不履行(デフォルト)を宣言した。


また中国などでもコロナ封じ込めの為、上海などでは長期に渡って都市を封鎖したため、経済が悪化している。


銀行から8000億円の預金が引き出せずに人々が集まって抗議活動したり、不動産を購入した人々が不動産の建設工事が進まない為、支払いを拒否するような動きが出ている。



アメリカは金融緩和をし過ぎて、インフレが激しいため、政策金利を引き上げて、2022年6月の時点で、3.4%に引き上げている。


アメリカが急激なインフレとなったのは、コロナ下で、米連邦準備銀行(FRB)が、金融緩和をし、4兆5千億ドル(マネーの総量の40%)のお金を短期間で市場に投入した為であるという。


一方で、日銀は、政策金利を0.25%を上限としており、日米で大きな金利差が生まれて、円を売ってドルを買う動きが加速し、急激な円安となって、本日7月25日の時点で、1ドル136.39 円である。


通常は日銀は、円安を抑えるため、金利を引き上げ、日米の金利差を無くしたいが、日本は住宅ローンを変動金利で組んでいる一般市民が多いため、金利を上げると返済が出来なくなって、破産者が続出し、社会不安が増大してしまう。従って、金利を上げることが出来ない。


また日本政府は1200兆円の負債を抱えているため、金利が2%に上がるだけで、利息だけで24兆円支払わなければならなくなる。


利息を支払う為、また国債を発行すると、更に財政赤字が膨らむため、金利を上げることが出来ない。(金利を2%にすると政府は財政破たんするという)


それで、日銀は政策金利の上限を0.25%としているようだ。


海外のヘッジファンドや機関投資家は、それを知っていて、日銀がこれ以上、政策金利を上げられないことを分かっている為、日銀の打つ手はもうないと見て、円売りを仕掛けて来ている。


1992年8月にイギリス政府がポンドの価値を維持できないと考えたジョージ・ソロスは、ポンド売りを仕掛け、イングランド銀行は、ポンドを支えきれなくなって、ポンドが暴落し、ソロスは、210億ドルを稼いだが、それと同じことが今、起こっている。



現在、日銀は、海外の投機筋の円売りに対して、同額の国債を買い入れて、円安を防いでいるが、それがいつまで続くかである。



日銀はもはや海外の日本売りに対して、全て買いで対抗するしかない状況になっているという。それ以外、選択肢がないようだ。


日銀は2012年頃からアベノミクスが始まると、毎年、巨額の国債を買い入れるようになり、2014年~2018年の5年間で、毎年、50兆円買い入れたという。


また国債だけでなく、上場投資信託(ETF)なども毎年、6兆円購入し、コロナ下で、更に12兆円に増額し、現在、50兆円分の株式を保有しているという。(日銀が保有するETFは、日本国内にあるETF市場全体の8割を占めるそうである)



それで2022年6月時点で、日銀の国債保有率は、50.4%になっている。これは日本政府が発行した国債の半分を日銀が引き受けていることになる。


これは財政ファイナンスと言って、中央銀行が政府から直接、国債を引き受けると無制限に国家の借金が膨らんで、財政が悪化する為、財政法で禁止されている。


この法律を回避する為、一度、市中銀行に国債を引き受けさせるが、最終的に日銀が引き受けて、実質的に国債を日銀が直接引き受けていたに等しいという。



財政ファイナンスの禁止は、第2次世界大戦前後の日銀による国債の直接引き受けが、貨幣供給量を増やし、急激なインフレーションを引き起こした為に規定されたという。



日銀がこのまま国債を買い続けると、買いが続かなくなって、日銀が破綻するか、市中に貨幣が大量に供給されて、円が暴落して、急激なインフレ(ハイパーインフレ)になるかのいずれかになると見込まれている。



日銀が破綻すると、海外への送金が禁止されたり、預金封鎖となって、銀行からの引き出しが制限されたり、また預金に対して、税金をかけられる可能性も出てくる。



似たような話は、youtubeでもどこにでも挙げられているが、私は、2022年6月17日刊行の『オレが香港ドルを暴落させる ドル/円は150円経由200円へ!』カイル・バス著、浅井隆著を参考にした。





この本によれば、円安は更に進み、150円~200円になるというシナリオもあるという。



1ドル200円になれば、銀行預金は、実質、価値が半額になってしまう。



日本人は海外旅行も出来なければ、海外から物を輸入で仕入れられなくなってしまう。



また燃料や食料など、資源価格が高騰し、輸入で成り立っている業界は、物価高となって、国民生活への負担が増大する。




日本が戦争中に行った財政ファイナンスは、戦後にインフレで国債が紙くずになるという形で、国民が負担することになった。



然し、1929年に起きた世界恐慌に対して、高橋是清蔵相は、1932年から1935年の間、日銀に国債の直接引き受けを行わせ、積極的な財政支出政策(いわゆるケインズ政策)を実施し、昭和恐慌を乗り切ったようだ。



この時は、物価は2%の上昇に留まっており、特に問題は起こらず、歴史的には、有効な政策だったと評価されているようである。



国債が暴落もデフォルトも起こさなかったのは、日銀が直接引き受けを行ない、国債のほとんどが国内で保有されていたことで影響が限定的であり、政府と日銀が一体化していたためであったという。



従って、日銀が国債の保有高を増やしていっても問題はないとする考えもある。



結局、安倍政権が、アベノミクスで目指したのは、確信犯的に高橋是清の政策を真似して、財政ファイナンスで、経済不況を乗り切ろうとしたということかもしれない。



それが安倍元首相の「日銀は政府の子会社」という発言に現れていたかもしれない。





日銀が政府の発行した国債の50%を保有し、主要な株主が日銀である会社が多い状況は、日本は、国家社会主義に移行しているということである。



アベノミクスの2012年からの歩みは、国家社会主義の台頭という評価が出来る。




MMT理論(現代貨幣理論)では、自国通貨を発行できる政府が、自国通貨建てで国債を発行している限り、債務不履行(デフォルト)に陥ることはないとされている。



上述したように高橋是清の時は、このMMT理論がよい形で、働いたと言える。



然し、日本の軍部が戦時国債を乱発して、戦後、インフレとなって、国債が紙くずとなるといった前例もあり、また第一次世界大戦中にドイツが、戦勝国から莫大な賠償金を課せられた為、その返済に充てようとして、紙幣を大量に発行して、それでハイパーインフレとなった事例もある。



但し、それは日本の生産設備が破壊されて、生産力などが全くゼロになったからだとも言えるし、またドイツの場合は、巨額の対外債務があったからだとも言える。



日本は対外債務を抱えておらず、国債は外国人投資家が保有しておらず、日本国内で、政府の子会社である日銀自身が保有している。



つまりは、日本国民が、日本国債を支えている。



日本は財政破たんはしないかもしれないが、税金、預金封鎖などで国民に負担を求め、海外から購入する資源が割高となり、物価高(インフレ)となり、また外国通貨に対して円安になるため、海外での購買力が低下する。



日本国民は、国内だけで貧しく暮らしていくことしかできない、国内に閉じ込められた囚人のようになっていくと考えられる。









日本のマンデン図を見ると、2022年12月からケートゥ期に移行するが、ケートゥは9室に在住し、ディスポジターの太陽が5室の牡羊座バラニーで高揚して、1、4室支配の木星とコンジャンクトし、5、12室支配の火星と相互アスペクトしている。



5室でラージャヨーガを形成している。



この配置から見ると、更に国家社会主義が推し進められていくと考えられる。



自民党、日本維新の会、参政党などが票を伸ばしていくかもしれない。




ナヴァムシャを見ると、ケートゥは、8室支配の土星と共に12室に在住し、2室支配で6室で減衰する月からアスペクトを受けている。



この配置は、日本は破綻に近い状態になっていると考えられる。



然し、D1の配置を見ると、日本は国民が団結して、愛国民族主義で乗り越えて行こうといった形になるのではないかと考えられる。



経済など物質的な活動がダメになった時は、精神主義に偏らざるを得ない。



その為、武士道とか、愛国精神で、国難を乗り越えて行こうといった動きになっていくと考えられる。




然し、国家社会主義は、国民の命や権利を何とも思っていない為、国民に過大な負担を求める。




従って、国民の未来の借金である国債を無制限に発行したり、国民の預金に税金をかけて、赤字を補てんしたりできるのである。




専門家によれば、2024年とか2026年が日本の財政破たんの時期だと予測しているが、これは日本のマンデン図のマハダシャーケートゥ期への移行と完全にタイミングが一致している。




然し、ダシャーの流れを見ると、ケートゥ期は、もっと早く2022年12月から始まるのである。




その為、土星が山羊座に逆行した2022年7月13日から2022年の年末にかけて、株式市場が崩壊し、世界恐慌に突入していく動きが生じるはずである。




その時は、おそらく間違いなくやって来るのだが、それがどんな形でやって来るかはまだ見ていないだけに信じがたいが、今年中に何かが起こることは確かである。




世界的な表現では、その混乱の中で、グレートリセットが模索されることになる。




人類の歴史の中でも非常に稀有なポイントである。






(参考資料)

禁じ手「財政ファイナンス」踏み込んだ日銀「黒田総裁」に財政規律は効くか
フォーサイト-新潮社ニュースマガジン
鷲尾 香一

 4月27日、日本銀行は金融政策決定会合を開催し、新たな追加金融緩和策を決定した。

 特筆すべきは、「国債買い入れ枠を無制限に拡大」し、“事実上の財政ファイナンス”に踏み出したことだ。

 そこで今回は、この「財政ファイナンス」について紐解いてみたい。

発表文に説明なし

 この決定会合まで、日銀は、

 「長期国債の保有残高の増加額を、年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買い入れを実施する」

 という手段を掲げていた。

 しかし今回、実際の長期国債の年間買い入れ額の実態は10兆円台まで低下していた(買い入れ枠に大幅な余地があった)にもかかわらず、買い入れ限度額を“無制限”に拡大した。

 この点について、筆者は黒田総裁の会見直前、4月27日当日朝の拙稿『本日開催「日銀」金融政策決定会合「中身」と「効果」』で、

 「日銀が国債買い入れ枠を無制限にすることは“限りなく財政ファイナンスに近い”」

 と指摘しておいた。

 そしてその理由として、

 「終息の予測が付かない新型コロナの対策として、今後、より一層の財政出動が必要となり、巨額の財政出動が必要な場合の需要に応え、(赤字)国債の大量発行による金利上昇を抑制するための“ラストリゾート”」

 とするために今回「無制限への拡大」をするだろうと予測し、説明した。

 では、当の日銀はどのように説明したか。

 発表された文書『金融緩和の強化について』では、

 「(3)国債のさらなる積極的な買入れ」

 とする項目の説明に付記した注意書きで、

 「金利が急速に上昇する場合には、迅速かつ適切に国債買入れを実施する」

 と書かれているだけで、どこにも「買い入れ枠を無制限にする」とも、その説明も書かれていない。

 しかし、同日の記者会見で黒田東彦総裁は、間違いなく、

 「買い入れ上限を設けずに、必要な額の長期国債の買い入れを実施する」

 と述べている。そして、

 「国債買い入れは金融政策上の目的で行っているものであり、(中略)あくまでも金融政策運営上の必要に基づいて実施している措置」

 であるとして、決して「財政ファイナンスではない」とも強調した。

現実にはすでに実施

 前稿でも説明したが、財政ファイナンスとは、中央銀行が政府の発行する国債等を直接引き受けることで、政府の厳しい財政状況において、財政赤字を穴埋め・補填する措置のことを言う。

 だが、財政ファイナンスは政府の財政節度を失わせ、中央銀行による通貨の増発に歯止めが掛からなくなり、悪性のインフレを引き起こす可能性があることが指摘されており、通貨や財政政策に対する信頼を毀損するとして、先進国では制度的に禁止されている手法である。

 もちろん日本でも、財政法第5条で、原則として日銀が直接国債を購入することを禁止している。

 ただし、国会の議決があれば可能であるとも規定している。そして実際、日銀が過去に買い入れた国債が満期を迎えた場合、その償還資金として新しく発行された「借換債」に切り替えても総額は変わらず(これを別名「日銀乗り換え」とも言う)、通貨膨張に該当しないとの理由から、直接引き受けが国会の議決の範囲内で行われている。

 つまり、財政ファイナンスは、すでに現実に「特定の条件のもとで、さらには、国会の承認により実施されている」のだ。

急激インフレ引き起こした「二・二六事件」

 そもそも、この財政法による財政ファイナンスの禁止は、日本の場合、第2次世界大戦前後の日銀による国債の直接引き受けが通貨膨張を通じで急激なインフレーションを引き起こしたことに鑑み、規定された。

 1929年に起きた世界恐慌に対して、時の大蔵大臣高橋是清は1932年から1935年の間、日銀に国債の直接引き受けを行わせ、積極的な財政支出政策(いわゆるケインズ政策)を実施し、昭和恐慌を乗り切った。

 これが日本で初めての財政ファイナンスの実施だった。

 しかし、この時期の消費者物価は2%台の上昇にとどまっている。

 その後景気回復に伴い、高橋蔵相は金融緩和政策を転換するとともに財政規律を回復させるため、日銀による国債の直接引き受けを停止しようとしたが、その寸前で非業の死を遂げる。世に言う「二・二六事件」である。

 事件の実行主体は陸軍青年将校らだが、背景には軍首脳部の関与があったことは歴史検証で明らかになっている。

 だが実は、高橋蔵相の暗殺によって歯止めがかからなかった「財政ファイナンス」の弊害をその後に引き起こしたのも軍部だった。

 どういうことか。

 事件後、天皇の「統帥権」も利用しつつテロリズムの恐怖によって政治の実権を握るようになった軍部は、財政ファイナンスによって軍事費を膨張させ、軍事体制を確立し、第2次世界大戦に突入していくことになる。当然のことのように戦時国債も、さらには終戦後の復興費用調達などでも財政ファイナンスが行われた。

 これが急激なインフレ発生の原因となった。

 日銀によると、1934~36年の消費者物価指数を1とした場合、1954年には301.8と約8年間で300倍を超える上昇となった。

 戦前・戦中・戦後を通じて発行された国債はデフォルト(債務不履行)することはなかったが、物価の異常な高騰により、事実上“紙屑”となったわけだ。

 日銀は『日本銀行百年史』の中で、国債の直接引き受けについて、

 「本行の歴史始まって以来、最も遺憾とすべき事柄であった」

 と記している。

 だが一方では、高橋是清が財政ファイナンスを断行した際には急激なインフレを引き起こすこともなく、景気を回復に導いた。これをもって、後世のベン・バーナンキ元FRB(米連邦準備制度理事会)議長も、当時の日銀による国債の直接引き受けは有効な政策だったと評価しているように、経済学者やエコノミストの中には、これを是とする声もある。

 しかし、当時の財政ファイナンスでも、国債の大量発行により金利は上昇(価格は下落)していたし、海外市場では、日本国債は投資不適格とされる「ジャンク債」扱いを受けていたこともまた事実だ。

 それでも国債が暴落もデフォルトも起こさなかったのは、日銀が直接引き受けを行った、つまり国債のほとんどが国内で保有されていたことで影響が限定的であり、政府と日銀が一体化していたためであった。

自ら破った「自主ルール」

 確かに、現在でも国債の保有者はほとんどが国内で、海外保有者はわずか7%程度でしかない。このため、日銀が国債買い入れを無制限にすることに対しても、“問題なし”とする声もが多い。

 日銀には、「日銀券ルール(銀行券ルールとも言う)」という自主的に定めた内部規定がある。

 否、正確には、かつてあったと言った方がよい。

 このルールは、

 「金融調節で日銀が買い入れ、保有する長期国債の残高は銀行券発行残高を上限とする」

 というもので、当時の速水優総裁が2001年3月の金融政策決定会合で「量的金融緩和」を決定した際に導入された。

 黒田総裁の前任である白川方明元総裁は、

 「銀行券の量の限界を超えて中央銀行が国債を購入すると、インフレが起こるか長期金利が先行的に上昇する」

 と、ルールの必要性を述べているが、逆にバーナンキ元FRB議長は「合理性がわからない」と述べるなど、経済学者やエコノミストの多くは、経済理論的には意味がないと指摘しており、日銀にとっては言わば“自戒”のようなものであった。

 しかし、この「日銀券ルール」は2013年4月、黒田総裁によって「量的・質的金融緩和」の導入とともに一時停止となっている。「自主的ルール」「自戒」を自ら解いたのである。

独立機関で「財政規律」監視せよ

 繰り返すが、戦前から戦後を通じて行われた日銀による国債の直接引き受け(財政ファイナンス)は、1947年の財政法施行以来、“禁じ手”とされてきた。

 しかし、「日銀の市場からの国債買い入れ」という金融政策手段に名を変え、黒田総裁が「買い入れ枠を無制限」としたことで、いままさに復活しようとしている。

 確かに、ほとんどの国債が国内で保有され、デフレ経済からの脱出がままならない現状では、「限りなく財政ファイナンスに近い日銀による国債の無制限な買い入れ」を実施しても、急激なインフレや金利の急上昇は起こらないかもしない。

 そして、新型コロナウイルスは昭和恐慌以上の経済的脅威を引き起こし、それを乗り切るためには、高橋是清が行ったように財政ファイナンスによる積極的な財政支出政策が必要とされているのかもしれない。

 2012年11月17日、安倍晋三首相は講演で、

 「建設国債をできれば直接日銀に買ってもらうことで強制的にマネーが市場に出ていく」

 と発言したことがある。

 安倍首相によって日銀総裁に任命され“蜜月関係”にある黒田総裁が異例の大規模金融緩和を進めている中で、日銀が国債の無制限な買い入れに踏み込むことで、「財政規律」や「中央銀行の独立性」に懸念を持つのは筆者だけだろうか。

 安倍首相が戦前の軍部のように暴走するとは思えないが、それでも財政規律が破られることで、若い世代に大きな負担を押し付けることになりはしまいか。

 先進国の多くは、財政規律を監視するために「IFI(Independent Fiscal Institution)」という独立した財政機関を設置している。IFIは2008年のリーマンショック後に相次いで設立されており、公的資金で運営される政治的に中立の独立機関で、財政政策、財政規律の分析と監視などを行っている。OECD(経済協力開発機構)によると、2019年9月現在、加盟国36カ国中28カ国がIFIを設置している。

 日本でも、今後の積極的な財政支出政策が予想される現状に鑑み、「日本版IFI」を設立して財政政策、財政規律の分析と監視などを行うべきではないか。(2020年5月)
参照元:禁じ手「財政ファイナンス」踏み込んだ日銀「黒田総裁」に財政規律は効くか
フォーサイト-新潮社ニュースマガジン
鷲尾 香一
「日本はもっと借金しろ」そんなMMT理論の危険な落とし穴
株式バブルが崩壊したらオシマイだ
PRESIDENT Online
河村 小百合
日本総合研究所調査部主席研究員

政府は新型コロナで冷え込む経済対策のため財政支出を急拡大させている。このまま財政拡張路線を取りつづけて大丈夫なのか。日本総研の河村小百合主席研究員は「実体経済が悪いにもかかわらず、株式相場が堅調なのは、行き場のない資金が流入しているからだ。MMT理論の影響で危機感が乏しいが、このままでは日本経済は大変なことになる」と指摘する——。(第1回/全3回)

自国通貨建て政府債務はデフォルトすることはない?

2020年春先以降の新型コロナウィルス感染症の拡大によって、経済と社会の両面で大きな打撃を受けたわが国は、4月に第1次、6月に第2次補正予算を立て続けに組み、2020(令和2)年度一般会計の歳出規模を当初予算から60兆円近く積み増した(図表1)。

これほど大規模な予算が組まれたことは、リーマン・ショック後にも東日本大震災後にもなく、わが国にとって極めて異例の事態と言える。その原資の大部分は当座、国債の増発によって手当てされており、そのコストを最終的に、国民の誰がいつどのようにして負担するかという議論には未だに着手すらできていない。

そして足許では、2021(令和3)年度の予算編成と並行して、総額15兆円ないしは30兆円規模などと囁かれている令和2020年度の第3次補正予算の検討が進められている状況にある。

もともと世界最悪の財政事情にあったわが国が、コロナ禍でこれほどまでに財政事情が悪化しているにもかかわらず、国全体として危機感にはおよそ乏しいのが現実だろう。その背景には、近年、巷でもてはやされている“MMT(Modern Monetary Theory)理論”の影響があるように思えてならない。

財政運営はインフレ率に基づいて調整すべきとするMMT理論に立脚する論者は、中央銀行を政府と一体のものとして捉え、「政府債務は自国通貨建てで発行する限りデフォルト(債務不履行)することはないため、デフレ時には財政赤字や債務残高等を考慮せずに財政政策を拡張すべき」、「インフレのリスクが大きくならない限り、財政赤字はどこまでも拡大可能」、「仮にインフレが進行した場合にも、中央銀行に頼らない財政政策面等でのインフレ抑制策があり得る」といった主張をすることが多いようだ。しかしながら、このMMT理論には、大きな問題点と落とし穴がある。

2つに大別される政府の借金の踏み倒し方

まず、MMT理論の大きな問題点は、その「自国通貨建て政府債務はデフォルトすることはない」という点に関するものだ。

一国の財政運営が行き詰まり、万策尽きた後の最後の手段としては大別して、①外国勢が国債の相当程度を保有している場合に実施される対外債務調整(対外デフォルト)と、②国内の主体が国債の大半を保有している場合に実施される国内債務調整(国内デフォルト)の2通りがある。

①の対外デフォルトの実態や顛末は、欧州債務危機時の2012年にギリシャの2度にわたる事例等があることもあり、比較的よく知られている。歴史的な事例をみても、それが外国勢に対する“債務の踏み倒し”を含むゆえ、英語で書かれた詳細な資料が、当該国内のみならず外国にも残されていることが多い。

他方、②の国内債務調整とは、もはや外国勢は当該国の国債を保有していないため債務調整の利害関係者とはなり得ず、債務調整の負担のすべてを自国内で、自国民が被らざるを得なくなった場合に行われるものである。これは具体的な手法としては必ずしも内国債の債務不履行(デフォルト)に限られるものではなく、国民に対する極端な増税や、政府が支払いを約束していた歳出を突然カットする等の形で実施されることもある。併せて預金封鎖や通貨交換が実施されることも多い。(略)
参照元:「日本はもっと借金しろ」そんなMMT理論の危険な落とし穴
株式バブルが崩壊したらオシマイだ
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河村 小百合
日本総合研究所調査部主席研究員
日銀が買う国債は、誰が責任を負うのか
異次元緩和の「都市伝説」のカラクリ
2015/04/13 6:00 東洋経済ONLINE
土居 丈朗 : 慶應義塾大学 経済学部教授

黒田東彦・日本銀行総裁の下での「量的・質的金融緩和」が始まって2年が経つ。「アベノミクス」3本の矢のうちの第1の矢と位置付けられ、デフレ脱却のカギを握っている。

「満期が来た国債は、元本返済が不要」のカラクリ

異次元緩和政策ともいわれる「量的・質的金融緩和」では、日本銀行が国債を大量に市場で買い入れている。日本銀行が大量に国債を買い入れている間は、国債金利は上昇しにくく、発行した国債が満期を迎えて元本を返済しなければならないものでも、日銀が持っている限り、返済のための税負担は要らない。あくまでも、「日銀が持っている限り」であるが。

そのカラクリはこうである。日銀が国債を大量に買い入れているのは、市中に通貨(マネーストック)を増やしたいからである。市中に通貨を増やすことで通貨価値の低下につながれば、通貨価値と表裏の関係にある物価(ここでいう物価とは、専門用語でいえば一般物価)が上昇する。つまり、物価が下がり続けるデフレから、脱却できる。

そして、異次元緩和政策を続ける限り、日銀は市中に通貨を増やすことを目指しているから、買い入れた国債で満期が来ても、政府に元本の返済を求めても意味がない。なぜなら、仮に満期が来た国債に対して政府に現金償還を求めれば、政府は国民から得た税収を使って現金を日銀に支払うことになるが、それだと市中から通貨が減ってしまうことになるからである。異次元緩和政策を続ける間は、市中から国債を買い入れて通貨を出回せることが狙いなのだから、満期が来た国債の元本返済を日銀が求めては意味がなくなってしまうのである。

ちなみに、日銀が買い入れた国債で満期が来たものを、引き続き借り換えるときには、「日銀乗換」という方法がある。満期が来た以上、いったん返済したことにしなければならない。しかし、その国債を借り換えることにすれば、日銀が買い入れた国債をそのまま保有し続けることができる。そこで、政府と日銀の間で、満期が来た国債と取り換えるように借り換えるための国債を日銀に引き受けてもらうことにしている。これが、日銀乗換である。

だから、異次元緩和政策で日銀が買い入れた国債は、日銀が持っている限り、返済負担が生じない。それなら、いっそのこと日銀が保有する国債は、政府の借金とみなさなくてよいではないか、との声がある。

デフレ脱却後は国民の税負担で返済必要に

だが、それは誤りである。日銀が買い入れている国債は、デフレが脱却できたら、国民の税負担で返済を迫られる。

そもそも、日銀が保有する国債で満期が来ても元本返済が必要ないのは、異次元緩和政策を実施しているためである。では、異次元緩和政策を実施しているのはなぜか。デフレを止めたいからである(異次元緩和政策でデフレを止められるか否かの議論は、ここでは不問とする)。

仮に異次元緩和政策でデフレが止められたとしよう。デフレが止まること、すなわち物価上昇が持続的に起こる状態となる。異次元緩和政策が功を奏して緩やかなインフレにできるか否かは、これまた議論が分かれるところだが、いずれにせよ、デフレが止まれば高率か低率かを問わず物価が上昇する。

そうなれば、まず、日銀は、異次元緩和政策をやめる。いわゆる「出口」である。そこで、国債の新たな買い入れはやめる。問題は、日銀がすでに買い入れた国債の行方である。

物価上昇は、その裏表の関係で通貨価値が下落し始める。お金を貸す側はその通貨価値の下落を補うために物価上昇率よりも高い金利をつけて貸そうとする。預金金利もデフレ期はほとんどゼロだったものがプラスの金利になる。すると、デフレ期に現金を持っていた民間の経済主体は、現金を金融機関に預けたり、プラスの金利がつく金融資産(国債を含む)に持ち替えようとする。民間の経済主体から預金等の形で現金を受け取った金融機関も、現金のまま持つことは望まないので、日銀に現金を引き取ってもらおうとする。

こうして、インフレになると民間の経済主体や金融機関はできるだけ通貨を持たなくなり、日銀は通貨を吸収するため、保有している国債を放出せざるを得なくなって、売りオペレーション(市場で国債を売る)を行うことを迫られる。

インフレになると(それはハイパーインフレでなくとも)、プラスの金利となるので、民間の経済主体は通貨でなく利息等が得られる金融資産を持とうとし、その中で国債は日銀ではなく民間が保有するようになる。民間の経済主体が保有する国債は、満期が来ると元本を(全額でなくとも一部は)返済しなければならず、そのために国民の税負担が生じる。

インフレ甘受なら、結局「インフレ税」で負担することに

したがって、かつて日銀が買い入れた国債といえども、デフレが止まると、民間が保有することになって償還のための税負担が生じることになる。異次元緩和政策の狙いと、その狙い通りになった後のことを考えれば、自明のことである。デフレが止まっても、日銀が買い入れた国債の返済のための税負担が生じない、などということはありえない。

では、日銀は買い入れた国債を売りオペしなければよいのだろうか。そうすれば、インフレ下で、民間が保有する通貨が市中に過剰に残るため、高率のインフレになる圧力がかかることになる。そうなれば、やはり日銀は、物価の安定のために売りオペをして市中の通貨を吸収せざるを得なくなる。

多少高率のインフレを甘受すれば、日銀は異次元緩和政策で買い入れた国債を売らずに済むとみるなら、今度はインフレによる国債の価値の目減りに直面する。確かに、国債の返済負担が、インフレによって実質的に軽くなっているかのように見えるが、その裏表の関係で生じているのは、国民や日本円保有者に対する「インフレ税」の徴収である。

「インフレ税」は、東洋経済オンラインでの本連載の拙稿「経済財政諮問会議の『ゆるい議論』を許すな」(2015年2月23日)でも触れた。日本円を持つ者はインフレによってその通貨価値が奪われ、それと同時に日本国債の実質返済負担が軽くなる。この場合でも、誰かが日本国債の返済負担を負わされることには変わりない。

デフレ脱却は目指すべきである。しかし、デフレ脱却後のことも考えれば、これまでに負った日本国債の返済負担から逃れられないことを肝に銘じなければならない。だからこそ、日本国債の残高の増加は抑えなければならないのである。
参照元:日銀が買う国債は、誰が責任を負うのか
異次元緩和の「都市伝説」のカラクリ
2015/04/13 6:00 東洋経済ONLINE
土居 丈朗 : 慶應義塾大学 経済学部教授

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 久しぶりにこちらの記事を読み返しました。
    良くない象意下でも、それゆえにか結果的には現在逆の事象が起こっている株式市場の奥深さ(ひねくれ具合?)に驚いております。
    果たして今後はどのような経緯をたどるのか興味深いです。
    • 株式市場が上昇しているのは、日本が割安で、長期投資としての旨味があり、ウォーレンバフェットや外国人投資家の投資熱、日本株人気に煽られて、

      日本の投資家自身も日本株に投資しているからかもしれません。

      おそらく、アメリカが2023/11/20から、ラーフ/土星期に入り、不況に入っていくことによって、その資金は一気に引き上げるのではないかと予想します。

      しかし、本当に長期投資の計画を持つ投資家は、それでも引き上げないかもしれません。

      他の記事でも書きましたが、日本は新興国のように安くて旨味のある国になってしまっています。

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