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プーチンのウクライナへの軍事侵攻始まる

2022 2/26


プーチンが2月24日、ウクライナに軍事侵攻した。


侵略が目的ではなく、非軍事化が目的だと言っているが、明らかにロシア軍がウクライナ領内に侵攻している。





ロシアの建国図からウクライナ国境付近に軍を展開して、プーチンは何をするのかを考察してきたが、ロシアの建国図から見ると、現在、ラーフ/月期(2021/7/27~2023/1/26)で、ラーフのディスポジターである土星は6室の支配星で、11室支配の月とコンジャンクトして、6-11の絡みを生じている。


これは近隣諸国(11室)との軍事的衝突(6室)と解釈できる。


ナヴァムシャを見ると、月は戦争を意味する7室の支配星で4室(国土)に在住しているが、戦争で領土を獲得することを表している可能性がある。


3、12室支配の木星も4室に在住しており、12室の支配で4室に在住する木星は外国の土地といった象意になると考えられる。


ラーフ/月期の次は、ラーフ/火星期(2023/1/26~2024/2/13)で、火星は3、8室支配で、やはり戦争の7室に在住している。


然し、この8室支配の火星は、6室支配の土星からのアスペクトを受け、6-8の絡みを7室で生じている。


プーチンが起こしたこの戦争状態は暫く続きそうである。


次の2024年2月13日の木星期は、木星は4、7室支配で10室に在住し、4室にアスペクトバックして4室(国土)が強くなっている。





チャトゥルシャムシャ(D4)では、木星は4、7室支配で4室(国土)で定座に在住しており、ハンサヨーガを形成している。


木星は拡大傾向を表している。



ナヴァムシャでも木星は4室に在住している。



こうしたことを考えると、プーチンは外国に領土を広げる見込みが高いと思われる。


プーチンの目標は、旧ワルシャワ条約機構の復活である。



これまでのロシアの動きを考えると、2008年に南オセチア紛争(ロシア・グルジア戦争)を行なっている。


2008年8月に始まり、陸戦、航空戦、海戦の全てが行われ、グルジア領内を爆撃し、グルジア領内に侵攻して、ポティーやゴリといった都市を占領している。

停戦受け入れ後、ロシア軍はグルジア領内からの撤退を開始したが、アブハジアや南オセチアに接するグルジア領内のポティ、セナキ 、ペレヴィに「軍事中立地帯」と称して軍を残し、2008年8月26日、ロシアは国際的にはグルジア領とされている南オセチアとアブハジアの独立を承認している。


この直ぐ後の2008年10月26日からラーフ/木星期に移行していることから、これはアンタルダシャーの木星の結果、生じた効果だと推測できる。

ロシア建国図の木星期において、プーチンは、占領した地域の独立を承認して、占領ではなく、実質的に自分たちの領土の延長のようにすることに成功してきた実績がある。


その後、プーチンが行っているウクライナ東端の親ロシア派居住区域であるドネツクやクリミア半島なども全く同じ手法で、独立を承認するという形で、侵略戦争であるとの国際社会の非難をかわして、結局、その後、既成事実として認めさせている。


このことから考えると、プーチンは、木星期において、軍事侵攻によってウクライナ首脳部を排除し、その後、目的は果たしたとして、兵を撤退させると共に新ロシア派政権を樹立して、ウクライナから撤退する考えなのだと思われる。


そうした手法によって、実質的にウクライナをロシア領として、併合し、旧ワルシャワ条約機構を復活させるつもりなのである。



プーチンがラーフ/木星期にこうした作戦に成功していることを考えると、ウクライナに対する軍事侵攻も成功を収めそうに思える。






そして、以前のロシア・グルジア戦争の時に南オセチアとアブハジアの独立を勝ち取ったのと同じようにウクライナの親ロシア派政権樹立という成果を成し遂げるのかもしれない。



アメリカは弱腰で、ロシアを非難するバイデンも支持率が低く、米軍に犠牲者が出るような戦闘行為に参戦するリスクを非常に懸念しており、ウクライナの首脳部は見殺しにされる可能性が出て来たと思える。



プーチンは、ウクライナを親ロシア政権にした後、軍を撤退して、西側諸国の非難をかわし、ほとぼりが収まった頃、ドイツとの間に結んでいるロシアからの天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」計画を再稼働させ、安定した経済発展の道を辿り始めるとも考えられる。



プーチンは、NATOを拡大しないとの協定に応じないアメリカに非があるとして責任をかわしていく戦略である。



因みにプーチンは、エリツィン政権下で、首相に就任し、1999年夏からイスラム急進派の排除という名目の下で、チェチェン独立派勢力(チェチェン・イチケリア共和国等)に対して、ロシア軍の全面的な戦闘を行なっている。



この時は、マハダシャー火星期にちょうど入ったタイミングである。



ロシア連邦はまだ成立が新しくプーチンが政治の表舞台に登場したタイミングと建国のタイミングが一致している為、戦争の象意にはプーチンが関与している。



ロシアは、これまでにもロシア領内の分離独立派との間で、内戦を行なって来ている。



このウクライナ問題も旧ワルシャワ条約機構の同盟国であったウクライナが、NATOに加盟するという形で、分離独立運動を起こした為、ロシア側に引きとどめようとする作戦である。



これをロシアの侵略戦争と見なすか、ロシアの国内問題と見なすかは微妙な所でである。



ウクライナは立派な独立国と見なす考えもあるが、ソビエト連邦を構成した一つの国であり、ロシアにとっては旧ワルシャワ条約機構内の同盟国の一つという認識である。



これまでの何度かの内戦において、占領しては、その地域を独立させるという手法にプーチンを非難する声が上がっても、それはいつの間にか消えてなくなり、既成事実として受け入れられていく傾向にある。



然し、私が先日、プーチンのチャートを改めて検討した所、チャラダシャーのロジックなどによれば、プーチンは、2024年で失脚、あるいは引退するはずである。





プーチン個人のチャートによれば、現在、マハダシャー水星期に移行している。



時刻修正が正しければ、水星は、ナヴァムシャやダシャムシャで8室に在住しており、物事の中断、行き詰まりを表している。



水星は、出生図や他の8つの分割図で、同じ天秤座に在住して、ヴァルゴッタマの強い水星である。



天秤座は、駆け引きが得意な為、今回の軍事作戦のように侵略ではなく、新ロシア派住民の保護や非武装化という名目など、国際社会がギリギリ許容できるラインを狙って、微妙な駆け引きを行なっている。



出生図では、水星は8、11室支配で、11室の支配星が12室に在住している為、プーチンは自分の国際社会での評価や利得を失うかもしれない。


但し、8室の支配星が12室に在住して、ヴィーパリータラージャヨーガを形成している為、自分を悩ませる相手や支配する相手には悩まされずに済むかもしれない。


プーチンの8、11室支配の水星は、ヴィーパリータラージャヨーガを形成し、2、5室支配の木星、7室支配の金星と形成する5-7のラージャヨーガに含まれ、また木星との間で、2-11、5-11のダナヨーガを形成している。


従って、引退した後も特に何事もなく、背後で暗躍し続けると考えられる。



私はこれまでロシアの建国図において、木星期が何を表わすのか分からないでいたが、上記のように考えて見ると、やはり、ロシアが広大に国土を広げるようにしか思えない。



然し、そうしたプーチンもやがて引退し、その後は、ドイツとの天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」なども稼働し初め、ヨーロッパ経済圏の一部となっていくのである。



プーチンの戦争行為は、愛国民族主義者の最後のあがきであると言える。



西側諸国がダボス会議を通じて進めるグレートリセット、あるいは、新世界秩序に組み込まれていくことを回避して、プーチンは、ロシアが、優しい全体主義の国家として、自主独立し、生存し続けられるかどうかの最後の抵抗を行なっているのである。




(参考資料)

「ウクライナ人に謝りたい」 ロシア各地で反戦デモ 1700人超拘束
2022/2/25 8:43 産経新聞

ロシアによるウクライナ侵攻への抗議活動が24日、首都モスクワなどロシア各地で行われた。露人権監視団体によると、24日夜(日本時間25日未明)時点で、モスクワで少なくとも956人が治安当局に拘束されたほか、全国44都市で1745人以上の拘束が確認された。

抗議活動に参加した20代の女性会社員は「ウクライナ人の前に立つのが恥ずかしい。謝りたい」と話し、「経済制裁、国際的孤立…。ロシアはこれで終わりだと思う」と話した。

30代の男性会社員は「なぜクレムリン(露大統領府)の誰もプーチン(大統領)を止めないのか。ウクライナとの戦争はロシアの民意ではない」と憤った。

露SNS(会員制交流サイト)上でも議論が起きた。「やった! 早く(ウクライナ政府の)迫害から人々を救い出すべきだ」など侵攻を称賛する声は少数で、「プーチンは戦争犯罪者として処罰されるべきだ」「独裁者はいつも『生存圏』や『自国民保護』という美名の下で戦争を始める。どんな言葉も戦争を正当化できない」「国家的恥辱だ!」など否定的なコメントが多数見られた。(モスクワ 小野田雄一)
参照元:「ウクライナ人に謝りたい」 ロシア各地で反戦デモ 1700人超拘束
2022/2/25 8:43 産経新聞
「ロシアは核保有国」「攻撃を加えれば不幸な結果に」プーチン大統領の演説要旨
2022/2/25 07:14 産経ニュース

ロシアのプーチン大統領が24日に行った演説の要旨は次の通り。

私は21日の演説で、最大の懸念と心配、無責任な西側諸国がロシアに対して生み出してきた本質的な脅威について話した。北大西洋条約機構(NATO)は、軍備をロシア国境に近づけている。

過去30年間、われわれはNATOとの間で辛抱強く合意を試みてきたが、NATOは拡大し続けた。われわれの利益と合法的な要求に対する侮辱的で軽蔑的な態度をどう説明するのか。

答えは明瞭だ。1980年代後半、ソ連は弱体化し崩壊した。自信を失ったのはほんの一瞬だったが、世界の力の均衡を崩すには十分だった。その結果、古い条約や合意は有効ではなくなった。覇権国家の権力者に都合の悪いものは非難され、有用だと見なすものは強制される。

これはロシアだけでなく、国際関係のシステム全体や米国の同盟国にも関係する。イラクや、シリアやリビアなど、米国が法と秩序をもたらした世界の多くの地域では、国際テロ、過激主義が生まれた。しかし米国は依然として偉大な国で、多くの国が彼らのルールを受け入れている。

われわれは2021年12月、NATO不拡大と欧州の安全保障の原則に関し、米国と同盟国と合意ができないかもう一度試みたが、米国は態度を変えなかった。

1940~41年初頭、ソ連は戦争を防ごうとしたが、手遅れだった。41年6月のナチス・ドイツの侵攻に対抗する準備ができていなかった。敵を打ち負かしたが、多大な犠牲も被った。この失敗を再び犯すことは許されない。

ソ連が解体され能力の大部分を失った後も、ロシアは核保有国の一つだ。最新鋭兵器もある。われわれに攻撃を加えれば不幸な結果となるのは明らかだ。同時に、防衛技術は急速に変化しており、周辺に軍事力が存在する限り許容できない脅威であり続ける。

これ以上のNATOの拡大やウクライナ国内に軍事拠点を構える試みは受け入れられない。NATOは米国の道具だ。問題は「われわれの歴史的な土地」で反ロシア感情が生まれていることだ。国外からコントロールされ、NATOの軍隊を呼び込み、最新鋭の兵器を得ようとしている。これはロシアの封じ込め政策で、存在と主権に対する脅威だ。レッドラインで、彼らはこれを越えた。

2014年にウクライナでクーデターで権力を得た勢力は、お飾りの選挙で力を保持し、平和解決の道を放棄した。われわれは平和的に解決する手段を探ってきたが水泡に帰した。ロシアに希望を持つ100万人へのジェノサイド(集団殺害)を止めなければならない。ドンバスの人民共和国の独立を認めたのは、人々の望みや苦痛が理由だ。

NATOの主要国はウクライナの極右勢力とネオナチを支援し、クリミアの人々がロシアに再統合する選択を許さないだろう。彼らはドンバスと同様にクリミアでも戦争を起こし、ヒトラーの共犯者同様、市民を殺害する。ロシアと自国民を守るにはこの手段しかない。ドンバスの共和国はロシアに助けを求めており、迅速な行動が必要だ。

私は、特別な軍事作戦を行うこととした。目的は、キエフの政権に8年間虐げられてきた市民の保護だ。ウクライナの非軍事化に努める。領土の占領は計画していない。(共同)
参照元:「ロシアは核保有国」「攻撃を加えれば不幸な結果に」プーチン大統領の演説要旨
2022/2/25 07:14 産経ニュース
米軍、欧州へ7000人増派 ロシア空爆は160発以上
2022/2/25 09:04 産経ニュース

オースティン米国防長官は24日、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、欧州への米軍7000人規模の派兵を命じた。国防総省高官が明らかにした。ウクライナに隣接する北大西洋条約機構(NATO)の同盟諸国の対露抑止力を増強する。

約7000人は主に米コロラド州カーソン基地の陸軍第4歩兵師団の戦闘部隊で構成し、まずドイツの拠点に派遣される。NATOが近く編成を決めるとみられる即応部隊(NRF)に合流する可能性がある。

国防総省高官は24日、露軍の初期の空爆で発射されたミサイルは160発以上と明らかにした。空爆の対象地域はウクライナの首都キエフ、南部ヘルソン、東部ハリコフなど主要都市の周辺部で、ウクライナ軍の指揮管理機能などが攻撃された。

高官は、露軍の流入が続いているが、ウクライナ国境沿いにはなお多くの露軍が待機していると指摘。一部部隊はキエフに接近し、ハリコフには空挺(くうてい)部隊が投入されたという。

ウクライナ軍については「一部部隊が反撃している」としたが詳細の言及は避けた。車両による避難民のポーランドへの流出も続いているとした。(ワシントン 渡辺浩生)
参照元:米軍、欧州へ7000人増派 ロシア空爆は160発以上
2022/2/25 09:04 産経ニュース
露、ミサイル100発超、ウクライナ指導部排除狙う
2022/2/25 01:55 産経ニュース

【ワシントン=渡辺浩生】米国防総省高官は24日、報道陣にロシアのウクライナ全面侵攻開始についての状況説明した。短距離弾道ミサイルから始まり、中距離弾道ミサイル、巡航ミサイルなど最初の数時間で100発以上のミサイルが発射され、黒海からの海上発射もあったことを明らかにした。

その後北方のベラルーシから地上襲撃が開始。戦闘が首都キエフ周辺でもあったという。高官は「プーチン政権の目標はウクライナ政府の指導部の排除を狙っている」との見方を示した。国防総省はサイバー攻撃、避難民のポーランドなど国外への流出についても注視している。

同省は、欧州駐留米軍の兵力をウクライナやロシアと接するNATO加盟国の防衛強化のために再配置。F35戦闘機6機をエストニア、リトアニア、ルーマニアに各2機配備。アパッチ攻撃ヘリコプターの派遣も進める。ただ米軍はウクライナの戦闘には参加しない考えを改めて強調した。

報道官は、欧州では第二次大戦以来の大規模な紛争となる可能性を示し、「プーチン大統領が多大な流血、犠牲を伴う戦争を選んだ。欧州の安全保障に多大な影響を与える」と語った。
参照元:露、ミサイル100発超、ウクライナ指導部排除狙う
2022/2/25 01:55 産経ニュース
読めば流れが分かる ウクライナ危機の背景 プーチン大統領は何を恐れているのか
2022/02/23 11:00 テレ朝news

ロシアがウクライナの国境沿いに軍を展開し、侵攻が始まるのかどうか、緊迫の状況が続いています。
プーチン大統領はなぜ戦火を交える危険まで冒して、ウクライナのNATO=北大西洋条約機構への加入を阻止したいのか、ANN特派員としてソ連崩壊直後のモスクワに駐在した武隈喜一が解説します。

少し歴史を遡ることから始めてみたいと思います。

第二次世界大戦は、ナチスドイツとイタリア、日本が同盟を結び、英仏露そしてアメリカなどの連合国軍と戦った戦争だというのは周知の通りです。

その最終盤で、ナチスドイツの首都・ベルリンを大激戦の末に陥落させ、ドイツを降伏させた最大の功労者がソ連でした。 ヨーロッパ各国はナチスドイツに屈服して、政権が解体していましたから、まともな軍隊をもつのはイギリスと、真珠湾攻撃をきっかけに第二次世界大戦に参戦したアメリカ、そしてカナダだけだったのです。

英米軍は、1944年6月6日、「史上最大の作戦」でフランスのノルマンディに上陸して、パリを解放します。一方、ソ連はナチスドイツにモスクワ近郊まで攻められましたが、1943年2月2日、7カ月に及ぶスターリングラードの攻防戦でナチスドイツを破って、ドイツへの進軍を始めます。双方で200万人の死傷者が出たという大激戦です。

このあと、ソ連軍の前身である赤軍は、北はポーランドを経由してドイツへ、南はルーマニア、ユーゴ、ハンガリー、チェコ戦線を経由してドイツに入っていきます。各都市を解放するとともに、戦後のことも考えてそれぞれの国に政権を担える共産党系の人たちを擁立していきます。

そして、1945年4月から、これも1カ月の激戦の末、ナチスドイツの首都・ベルリンを陥落させます。

◆欧州を解放した国としての誇り

ソ連は第二次世界大戦で、2000万人を失ったと言われています。ロシア人は「ヨーロッパを解放したのは私たちだ」という誇りをもっているのです。

ソ連の都市にはどこでも第二次世界大戦の碑が建っています。ウクライナ、ベラルーシ、ポーランドにかけてもナチスドイツとの激戦が続いた場所なので、どこでも無名戦士の碑などが建っているのです。

◆戦後の軍事同盟 冷戦の始まり

さて、第二次世界大戦は終わりましたが、すぐにドイツの扱いをめぐって、ソ連とアメリカが対立します。

戦時中最大の発明と言われる、核爆弾やミサイルの開発をナチスドイツは進めていました。戦後、アメリカもソ連もドイツの科学者を競い合うようにそれぞれの国に連れていき、研究をさせてミサイルと核兵器の開発を進めます。

そして、お互いに開発を進めていた、核兵器とミサイルへの恐怖から、軍事同盟が作られます。

アメリカが強力なイニシアチブを取って、1949年4月に西ヨーロッパ諸国と結成したのがNATO=北大西洋条約機構。これに対抗して、ソ連が解放していった東欧諸国の共産党と共産党政権をまとめて1955年にワルシャワ条約機構という軍事同盟を作ります。この2つの軍事同盟により、世界は二分されます。

そしてベルリンが首都としてあった東ドイツの扱いをめぐってアメリカとソ連がもめたのが“冷戦”の始まりです。ソ連はベルリンに壁を建て、東ドイツ側、西ドイツ側に分断しました。1989年にこのベルリンの壁が崩れて東西ドイツが統一されますが、この壁はNATOとワルシャワ条約機構という東西冷戦の象徴だったのです。

アメリカは現在も力を持っていますから、世界の盟主であることは誰もが知るところですが、当時、東側の盟主はソ連だったのです。
今のロシアはGDPで中国の10分の1、軍事力もソ連時代に比べると縮小し、1990年代から2000年代には貧しい時代が続いたので想像しにくいかもしれませんが、実際、1950年代から60年代初頭にかけては、核開発もミサイル開発もソ連がアメリカをリードしていました。ミサイル開発とはつまり宇宙開発のことです。人工衛星を打ち出して、正確な軌道に乗せ、地球に回収していくという技術は、核弾頭を正確に敵の首都に落とすのと同じ技術です。

1954年にソ連が水爆実験を成功させた時には、アメリカで“水爆ショック”というのがありました。ここまで高いレベルで完成させると思わなかったのです。また1957年にソ連が初の大陸間弾道弾を打ち上げて、2カ月後には人工衛星を打ち上げます。これも”スプートニクショック”と言ってアメリカでは衝撃をもって受け止められました。

アメリカの技術開発はソ連の3カ月から1年遅れていたのです。これは危機的な遅れだとアメリカ政府は認識していました。

1940年代後半中国には共産主義国家が成立、朝鮮戦争が勃発して北朝鮮も誕生、南北に分かれた北ベトナムにもやはり共産主義の政権が誕生するというように、世界中にソ連の後ろ盾を得た共産主義の政権がどんどん誕生したのです。

特に、アジア、アフリカの新興独立国の留学生は、モスクワを目指しました。アメリカの帝国主義的な政策を嫌う中南米の国は社会主義革命を目指して、ソ連に支援をあおぎました。

中でも、1959年に起きた「キューバ革命」はアメリカには喉元にナイフを突きつけられたような出来事でした。キューバからアメリカは短距離ミサイルでも届く距離です。1962年10月にはこのキューバにミサイル基地を建設するという情報が明らかになり、ソ連がキューバに核兵器を配備するのではないかと、あわや核戦争の瀬戸際というところまでいきました。このキューバ危機は当時のフルシチョフ首相とケネディ大統領が書簡を交わす中で解決されていきますが、東西対決が核戦争の一歩手前まで行ったのです。

◆ソ連の崩壊 東欧諸国の離反

ところが1991年にソ連が崩壊します。

理由は色々ありますが、核やミサイルの開発、その維持と管理を2つの大国が進めてきた中で、ソ連の経済がもたなくなったのが一因なのは確かです。消費生活が貧しくなり、庶民も耐え切れなくなり、共産党の中では年寄りだけが政権を担っていく形が続いたことが、ペレストロイカ(再改革・建て直し)につながっていきました。その中でレーガン大統領とゴルバチョフ書記長が歩み寄り、デタント(緊張緩和)という「核をなくしていこう」という方向に進んでいきました。

ただし、ソ連は1991年12月に崩壊します。

盟主であるソ連の崩壊とともに、ワルシャワ条約機構は解体します。東欧の国々もソ連のくびきから自由になっていきます。一方でNATOは解体されず残ります。ただし、ソ連がなくなったことで新戦略を提案します。その役割を反共産圏への軍事同盟から地域内の紛争の予防に変えて、域外の紛争についてもロシアと協議するというやわらかな組織になったと言えます。

しかし、ロシア、アメリカ、ヨーロッパの歴史を考える際には大変重要な出来事が起こります。1990年代半ばのユーゴスラビアの内戦です。4つの言語、3つの宗教を持つ国がチトー大統領の元で統一されていましたが、冷戦の崩壊とともに民族主義が台頭して内戦に突入します。 様々な人権侵害などが起きて、1999年NATOは首都ベオグラードを空爆します。ユーゴスラビアはNATOの加盟国ではないのに、国連安保理に諮ることもなく、アメリカ主導でロシアを蚊帳の外にしたまま、空爆を続けました。

ユーゴスラビアの中でもセルビアは、もともとスラブ人が住みロシア人とは民族的にも歴史的にもつながりが強い国です。セルビアのベオグラードが空爆されたことでロシア人は「欧米はスラブの国には冷たい」という危機感を覚えたはずです。

また、この1999年というちょうどこの年に、ポーランド、ハンガリー、チェコといった、かつてワルシャワ条約機構の加盟国だった国がNATOに加盟したのです。

ちょうどこのころ、2000年に大統領になったのがプーチン氏です。

NATOが本来行うはずの協議を行わず、国連安保理にも諮らずユーゴスラビアを空爆した。しかもかつては同盟国だった東欧諸国が逃げるようにNATOに入っていく。さらに、2004年には、残る東欧の国々、スロバキア、ルーマニア、ブルガリア、旧ユーゴのスロベニア、バルト3国もNATOに加わります。バルト3国は旧ソ連の構成国で、当然ロシアと国境を接しています。

プーチン大統領が、ロシアのおかれている安全保障環境が脆弱で、欧米はロシアを潰そうとしているという意識にとらわれたとしても無理はありません。

1991年の崩壊から2010年にかけてのロシアは、大変混乱した国でした。

新しい資本主義を取り入れることにも失敗し、一部の富める人たちのもとに富が集まり、政治家の間でも賄賂が横行、どうやって国を治めていったらいいかという大変難しい状況下で経済的にも落ち込み、軍事的にも弱っていました。

そこに、追い立てるようにしてNATO(=北大西洋条約機構)が、ロシアに鞭を振るったという感覚がプーチン大統領にはあっただろうと思います。

実際、この時ロシアに対して手を差し伸べたというのは、おそらくあのドイツのコール首相だけです。ほかのヨーロッパ各国、それから特にアメリカは、ロシアに対して、水に落ちた犬を打つようにして背を向けたと、プーチン大統領は考えています。

◆ソ連崩壊後の弱体化とNATOの“仕打ち”

ところが、かつてソ連と一緒にワルシャワ条約機構に入っていた東欧の国は、2004年までにほぼNATOに入り、今度はかつてのソ連の一部であったグルジア(ジョージア)という国がNATOに加盟したいと意思表明しました。この時に同じく旧ソ連のウクライナもNATO入りを目指すということを初めて発表しています。

ロシアは、民族紛争を口実にしてグルジアに攻め込み交戦、戦争状態になります。この時、欧米は、ロシアに対して極めて厳しい経済制裁を検討しました。今でもグルジアとロシアの間は緊張状態が続いたままになっています。

ロシアにとっては、自分たちのひとつの国だったグルジアがNATOに入りたいという意思表示をしたことは、東ヨーロッパ各国が入ったこと以上に大きなショックだったと思います。そして、ウクライナもその意思を表明すると言うことで、大変な脅威を感じていました。プーチン大統領はウクライナがNATOに入るのは、ロシアにとっては核爆弾を落とされるのと、同じようなものだというぐらいの危機感を覚えた、と表明したことがあります。

◆ウクライナの独立と分断

22日、プーチン大統領が演説で「ウクライナはロシア革命後にロシアによって作られた。ウクライナという国はもともとなかった」「革命後にレーニンやスターリンの譲歩によってできた」と言っています。これは決して嘘ではなく、歴史的にはそういった部分があります。ただ、ウクライナというのは、戦後はソ連の中の国でありながらも国連に議席を持っていましたし、独自の外交も続けていました。特に1991年からは一つの独立国として、もう30年の歴史を持つことは忘れてはいけないと思います。

ソ連の崩壊を経て1991年にウクライナはおそらく歴史上初めて、独立国家になりました。そして、1994年に「ブダペストの覚書」を交わします。

これは当時、旧ソ連の中ではロシア、ウクライナ、カザフスタン、そしてベラルーシに置かれていた核兵器をすべてロシアに集め、核兵器がなくなるウクライナの安全保障をどう担保するのかということで交わされた覚書です。

ここで、ロシア、アメリカ、イギリスは、ウクライナの独立、領土保全、武力の不行使、核兵器の不使用を保証するという内容になっています。

だから、本当は今ロシアがウクライナに侵攻して、その領土の保全を犯すことは、「ブダペストの覚書」に反することなのです。

さて、2004年までに東ヨーロッパの10カ国、かつてワルシャワ条約機構だった国々がNATOに加盟します。

ウクライナはというと、2008年にNATOに入りたいという希望を表明しますが、もうこの時点では、国内で「NATOに入りたい」という欧米と接近するべきだという人たちと、「いやロシアとともに歴史を歩むべきだ」という親ロシア派とに、大きく分かれていきます。

2004年以降は何度大統領選挙をやっても、親欧米派と親ロシア派が票数ではほぼ拮抗して、その他の様々な要素で政権ができあがっていくという非常に不安定な時代を迎えていきます。

2004年の12月には「オレンジ革命」という民主革命で、欧米派の政権が誕生しますが、この政権も途中で倒れ、次の選挙でも、その次の選挙でもEUとの協定やNATOへの加盟をめぐって、親ロシア派と欧米派が対立するという極めて不安定な状況が続きます。

ウクライナの領土にロシアが侵攻したら「ブダベストの覚書」に反するのではないか、ということについて、プーチン大統領は「『オレンジ革命』によって、ウクライナはもうかつての政権ではない」「革命政権であって、全く別の政権ができあがっているので、覚書にある領土の保全や武力の不行使というのは、すでに適用されない」という考え方を明らかにしています。

◆ロシアによるウクライナ侵攻の始まり

2014年2月に親ロ派と欧米派が対立して「マイダン革命」というキエフの真ん中の広場で民衆が何日にもわたってデモをして、それに対して警察部隊が発砲するとそこにロシアも介入したのですが、親欧米派の政権が誕生しました。

この政権はNATOへの加盟を非常に強く意識した政権だったので、プーチン大統領はそれに対抗してクリミア半島に侵攻して併合していきます。

直接的には、この2014年の「クリミア併合」というのが、現在のロシアのウクライナに対する領土の侵攻につながっています。この年に今、最も緊迫しているルガンスク、ドネツクで親ロシア派勢力が武装蜂起をして、自治区を作っていったわけです。

この翌年、「ミンスク合意」が結ばれますが、この合意はどちらかというと、ロシアに有利な内容でした。東部地域に特別な自治を認めるということで、ロシアとしては早く「ミンスク合意」を実行したい訳です。しかし、ウクライナ側はなかなか実行したくないということで、大きな対立のもとになってきました。そしてこの間もずっとルガンスク、ドネツク地域では、親ロシア勢力と、ウクライナ軍や警察との間で銃撃戦などが続き、この8年間で1万4000人が死亡しているのです。ですから、ウクライナとロシアの戦争、内戦は始まるのかというと、実はルガンスクとドネツクで、もうかれこれ8年間続いてきているのです。ただ、日本でニュースになることはあまりありませんでした。

◆プーチン大統領 真の野望は…?

さて、この間ずっと歴史をお話してきましたが、プーチンは何を望んでいるのか、野望は何なのかという話です。

おそらく近いところでは、ウクライナ東部のロシア人の支配地域をロシアに併合して、自分たちの領土にするということがあり得ると思います。ルガンスク、ドネツクの人民共和国を承認し、そして今、まさしく軍を向かわせているこの2つの地域をロシアの地域として受け入れていこうという準備だと思います。

次にもっと、大きくキエフへ侵攻して、今の欧米寄りのゼレンスキー政権を倒して親ロシアの政権を樹立し、NATOへの加盟を断念させるということを、望んでいるのかどうか。

ここまでに至ると大規模な戦争になって、おそらく欧米の介入を招きます。それから経済制裁もあるでしょう。クリミア半島に侵攻した時のような、軽い経済制裁では済まなくなってくると思います。それをしてまでキエフに侵攻して、親ロシア政権を樹立してNATOの加盟を断念させようとしているのかどうか。

もう一つ、もっと大きな目標、野望が、プーチン大統領にはあるのではないかと思うのです。

プーチンのロシアでは、実はLGBTQの人たちはほとんど犯罪者として扱われてしまっています。つまりプーチン大統領は欧米の自由、民主主義、それから多様性といった価値観というのはまやかしだと考えています。

この30年、ロシアが自由や民主主義の国を目指した時期に、アメリカは全くロシアに手を差し伸べることはなかったではないか。アメリカの自由と民主主義とは一体何なんだというアメリカ的な価値観に対する不信感、そして恐怖感があると思います。

プーチン大統領は、そのアメリカ的な価値観を貶めて、ロシアの歴史的な意義、―前編の最初に言った、第二次世界大戦で2000万人を犠牲にして、現在のヨーロッパを作り上げたロシアの歴史的な意義―、そしてその役割を世界に思い知らせるということが野望の中にはあるのではないかと思います。

プーチン大統領が、2008年と2012年の大統領選挙に出たときのスローガンの一つが「メイク・ロシア・グレート・アゲイン」でした。どこかで聞いたことがあると思うんですが、これはあの「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」と全く相通じるものでプーチン大統領は「強いロシアを取り戻すんだ」ということを、2012年の選挙の時に既に非常に強く言っていました。

プーチン大統領は実は最初からこんなに反米反ヨーロッパではなかったのです。

2000年代はまだ何とかして、世界経済の中に、そして世界の安全保障の枠組みの中にロシアが入っていけるよう、G8の中でも交渉していたのですが、それが果たせない。アメリカもヨーロッパもロシアを一緒にしていくつもりはないというのが分かった時点で、プーチンは「メイク・ロシア・グレート・アゲイン」というスローガンに帰っていったわけです。そこから2012年、クリミアへの侵攻があり、ウクライナをロシアの一部だという言い方を自分の演説の中でも強くするようになっていきました。

プーチン大統領は、この20年の間にどんどん追い込まれ、なおかつ自分たちの価値観は、アメリカ、ヨーロッパとは別にあるんだということを強く国内にも宣伝をして、そのイデオロギーを創り上げてきています。それが現在のロシアの姿だと思います。

テレビ朝日 コメンテーター室 武隈喜一(元ANNモスクワ支局長)
参照元:読めば流れが分かる ウクライナ危機の背景 プーチン大統領は何を恐れているのか
2022/02/23 11:00 テレ朝news
ウクライナ外相「全面侵攻が開始」 内相顧問、キエフに「ミサイル攻撃」
2022.02.24 Thu posted at 13:31 JST

(CNN) ウクライナのクレバ外相は24日未明、ロシアのプーチン大統領がウクライナの全面侵攻を始めたとツイートした。

クレバ氏は「平和なウクライナの都市が攻撃にさらされている。これは侵略戦争だ。ウクライナは自国を守り勝利する。世界はプーチンを止めることができ、止めなければいけない。行動すべきときはいまだ」と投稿した。

内相の顧問アントン・ゲラシュチェンコ氏も24日未明、ロシアの「侵攻が始まった」と述べ、首都キエフへの「ミサイル攻撃」に言及した。

ゲラシュチェンコ氏はフェイスブックへの投稿で、キエフやハルキウの砲撃で飛行場や軍本部などの管理センターが攻撃を受け、国境に沿って砲火があると述べた。
参照元:ウクライナ外相「全面侵攻が開始」 内相顧問、キエフに「ミサイル攻撃」
2022.02.24 Thu posted at 13:31 JST
在日ウクライナ人の〝悲痛〟…「どちらの国民も戦争をやめて欲しいと想っている」 プーチン大統領の一方的な言い分に不信感
2022/2/25 15:30 zakzak

ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始した24日、東京都内在住のウクライナ出身の女性は「遠いところにいて何もできない」と故郷を思い、不安な心境をのぞかせた。そしてプーチン大統領の一方的な言い分に不信感をあらわにする。

「8年前から〝戦争〟は始まっているが、首都キエフまで攻撃されたのにはびっくりした。非常事態宣言で日常生活も変わってくると思う」

こう語るのはウクライナ南西部のカミェニェツ=ポドルスキ出身の海野ジェニアさん(25)。キエフにある大学に在学中の2016年に日本語を学ぶため来日、現在は日本人男性と結婚し、SNSマーケティングの仕事をしている。

ジェニアさんは24日朝から、母親や弟の住む実家に時差もかまわず連絡を入れたという。「ウクライナ人もロシア人もほとんどの国民は戦争をやめてほしいと思っている」と話す。

ロシアが一方的に独立を承認した「ドネツク人民共和国」や「ルガンスク人民共和国」とする地域にも知人や大学の友人もいるが、キエフなどに退避したことはSNSで知ったという。

プーチン氏は21日夜のビデオ演説で、「ウクライナは単なる隣国ではない。われわれの歴史や文化、精神とは切り離しがたい一部なのだ」と主張し、ロシアとウクライナの一体性を強調したが、ジェニアさんは一方的な指摘だと語る。

「ロシアと文化が似ていたり、混ざりあう点もあるが、ウクライナ語もあれば伝統的な衣装も違う。ボルシチももともとウクライナが発祥で広がったものだ」

ウクライナ人の愛国心の違いも大きいという。「14年に(親露派の)大統領を失脚させたマイダン革命では、多くの人がウクライナのために首都に集まるなど、国のために命を賭す心があるが、少なくとも私はいままでロシア人にそういうものを見たことがない」と強調する。

自国の危機に際して、日本人にもメッセージがある。「日本でも『ウクライナ人とロシア人が一緒』と思っている人もいるようだ。知る機会がないので仕方がないが、今回の事態で、少しでもニュースを見てほしい」と訴えた。
参照元:在日ウクライナ人の〝悲痛〟…「どちらの国民も戦争をやめて欲しいと想っている」 プーチン大統領の一方的な言い分に不信感
2022/2/25 15:30 zakzak
プーチンの「焦り」…じつは一番恐れている「ロシア年金問題」の深刻事情
2/22(火) 7:32 現代ビジネス

プーチンはほんとうは「何を」考えているのか

 ウクライナ情勢が世界を騒がせています。

 そのような中、「そうは言ってもプーチンは戦争をしかけないだろう」という観測を表明する専門家の方々が増えています。

果たしてそうでしょうか。

 確かに、ロシア政府はウクライナ東部の国境近くに展開していたロシア軍部隊が演習を終え、部隊の一部が撤退を始めると、2月15日に発表しました。

 また、クリミア半島に展開する部隊も撤収を始めたとNHKなどが報じています。

 ロシアのプーチン大統領は、ドイツのショルツ首相とモスクワで会談し、米欧と協議を継続する姿勢を示しています。ロイター通信によれば、ロシアのラブロフ外相は、プーチン大統領に「対話継続」を進言したとも報道されています。

 一時は16日にも侵攻開始という観測も出ていただけに、目先の懸念はひとまず後退したと解釈できるでしょう。

 しかしながら、ロシア議会は15日に、ウクライナ東部にあるドネツク人民共和国と、ルガンスク人民共和国を独立国として認めるべきだと、プーチン大統領に要請しています。これは、緊張緩和の流れに逆行する動きと言えるでしょう。

 情勢は依然として不透明で、またロシア国内の動きも、一枚岩ではないように見受けられます。

 「ロシアにはもともと戦争をする気はない」という見方も根強くあるのはどうしてでしょうか。

プーチンの「謀略」

 軍事的な脅威をちらつかせ、西側諸国から「譲歩」を引き出す。こうした手法は「瀬戸際外交」と呼ばれ、プーチン大統領の「十八番」とも言われています。

 今回のウクライナ問題についても、アメリカがバイデン政権になって、リーダーシップを欠いているという、西側諸国の「隙」を狙った「高度な外交戦術」という側面があるのは否定できません。

 ウクライナ軍の兵力は約25万人。強力なロシア軍といえども、簡単に勝てる相手ではありません。

 まして、ウクライナはユーラシア大陸ではロシアに次ぐ2番目の面積を誇ります。

 この広大な国土を占領統治するのは、ロシアにとって大きすぎる負担です。現在のロシア軍の兵士数では、占領統治はおそらく不可能だと思われます。

 そのため、ウクライナとの「全面戦争」は、ロシアといえども「無謀」と言って過言ではないと思われます。実際、水面下では、ロシアは米国・バイデン大統領やフランス・マクロン大統領、ドイツ・シュルツ首相と交渉しています。

 これが、軍事的な緊張は「プロレス」に過ぎず、「外交交渉」こそ真の目的という見方のほうが、現実的だと考えられているゆえんです。

 ただ、本当に「プロレス」と考えて良いのでしょうか? 

プーチンが考えている本当の侵略作戦

 西側諸国の予測通りに行動してくれるなら、こんなに楽な話はありません。

 相手は、「あの」プーチン大統領。きっと今回も、あらゆる手練手管で、西側諸国を翻弄してくるに違いありません。ロシアのウクライナ侵攻はないと、本当に断言していいのでしょうか? 

 筆者は、ロシアによるウクライナ侵攻は「あり得る」と考えます。

 それどころか、もしプーチン大統領が本気なら、すぐにでも侵攻するだろうと見ています。

 なぜなら、プーチン大統領には、「いますぐ」ウクライナに侵攻するべき「理由」があるからです。

 その1つ目の理由が、「ロシアの年金問題」です。

 戦争だ、軍事だ、という話をしていたのに、急に「年金問題」が出てくることに、違和感を持たれるかもしれません。ただ、これがいまプーチン大統領にとって大問題となっているのです。

プーチンを追い詰める「ロシア版年金問題」

 世界で断トツの高齢化社会である日本は、公的年金制度をどうするかという問題を抱えていますが、ロシアにも同様の事情があります。

 ロシアの平均寿命は約73歳と、比較的短い部類に入ります。

 ただ、そのロシアも「高齢化問題」に直面しており、2030年までに、人口に占める65歳以上の割合が20%近くになると予測されています。

 それを受けて、プーチン大統領が実施したのが、「年金制度改革」でした。

 女性で55歳、男性で60歳だった年金支給開始年齢を、女性60歳、男性65歳まで段階的に引き上げることを、プーチン大統領は発表します。

 しかし、これによってプーチン大統領は、ロシア国民からの反発を招いてしまいます。

プーチンの「焦り」

 大規模な反政府デモが発生したほか、2014年の「クリミア併合」時に約89%もあったプーチン大統領の支持率は、これによって、約63%にまで低下してしまいます。

 その結果、プーチン大統領のロシアにおける権力基盤は、大きく揺らいでしまいました。

 プーチン大統領にとって、「挽回」のチャンスがどうしても欲しいという状況です。

 そのため、得意な外交によって、目に見える成果を獲たいというのが、プーチン大統領の本音だと考えられるわけです。ただし、プーチンがウクライナに「本気」になるのはそれだけが理由ではありません。後編記事『プーチンの「本音」を知ればわかる、ウクライナ「楽観論」が危ない「3つの理由」』では、さらなるプーチンの本音を見ていきましょう。

立澤 賢一(元HSBC証券社長、京都橘大学客員教授)
参照元:プーチンの「焦り」…じつは一番恐れている「ロシア年金問題」の深刻事情
2/22(火) 7:32 現代ビジネス
プーチンは「焦ってる」…ロシアで起きている「3重苦」の危ない正体
2022/2/8 現代ビジネス 藤 和彦経済産業研究所コンサルティングフェロー

じつは、プーチンは「焦っている」

ロシアが昨年末からウクライナの国境に10万人規模の軍を集結させたことを警戒する欧米諸国は、ウクライナ周辺の東欧地域に派兵する準備に入った。

米国とロシアの関係は冷戦期以来の緊張状態にあると言われている。

ロシアは天然ガスで世界第2位、原油では世界第3位の生産量を誇っており、同国への経済制裁は世界経済全体に悪影響が及ぶ「諸刃の剣」にもなるが、「プーチン大統領にとって欧米諸国の経済制裁も想定内であり、ロシアの攻勢を食い止めるためには強硬な措置が不可欠だ」とする論調が強まっている。

果たしてそうだろうか。

筆者は「ロシア経済は危機に瀕しつつあり、欧米諸国から追加制裁を科されることを非常に恐れている」と考えている。

天然ガスが話題になることが多いが、ロシア経済の屋台骨は原油である。ロシアの石油産業は同国のGDPの15%、輸出の40%、連邦財政の歳入の30%を占めている。

「ソ連崩壊を招いた大本の原因は1980年代後半の原油価格の急落であり、21世紀に入り世界の原油価格が再び上昇したことでプーチン大統領はロシアを大国の地位に復活させることができた」とする説があるくらいだ。

だが、いまそんなロシアの命運を握る石油産業に異変が生じつつある。

ロシアの虎の子が「枯渇」…?

ロシアの昨年12月の原油生産量は日量1090万バレルで前月と同水準だった。

OPECとロシアなどの大産油国で構成されるOPECプラスは毎月日量40万バレルの増産を計画しているが、ロシアは自国に課された生産量の目標に4万バレル届かなかった。

ロシアの昨年の原油生産量は前年比25万バレル増の日量1052万バレルだったが、ソ連崩壊後で最高となった2019年の水準(日量1125万バレル)に達していない。

ロシアのノバク副首相は「今年の原油生産量は日量1080~1120万バレルに増加し、5月までにコロナ禍前の水準に戻るとしている」が、「夏の終わりまでコロナ禍前の水準に戻らない」とする懐疑的な見方が出ている。

ロシアの原油埋蔵量自体が減少していることが明らかになりつつあるからだ。

「経済制裁はなんとしてでも回避したい」本音

ロシアを石油大国の地位に押し上げたのは、西シベリアのチュメニ州を中心とする油田地帯だった。巨大油田が集中し、生産コストが低かったが、半世紀以上にわたり大規模な開発が続けられた結果、西シベリア地域の原油生産はすでにピークを過ぎ、減産段階に入っている(過去10年で約10%減少)。

ロシアが原油生産量を維持するためには東シベリアや北極圏などで新たな油田を開発しなければならないが、2014年のロシアによるクリミア併合に端を発する欧米諸国の経済制裁の影響で技術・資金両面から制約を受け、期待通りの開発が進んでいない。

ロシア政府が2020年に策定した「2035年までのエネルギー戦略」では「2035年時点の原油生産量は良くても現状維持、悪ければ現在より約12%減少する」と予測している。その後ロシア政府高官が相次いで「自国産原油の寿命は20年に満たない可能性がある」とする悲観的な見方を示している。

西シベリア地域の油田の枯渇が進み自国の石油産業がじり貧となるリスクが高まる中で、ロシアにとっての喫緊の課題は、現在欧米諸国から科されている経済制裁の解除だ。

「ウクライナ情勢のせいで欧米諸国から追加制裁を科されることをなんとしてでも回避しなければならない」というのが本音だろう。

さらに、ロシア経済のもう一つの悩みは深刻な人口減少だ。

ロシアを襲う「人口減少」は日本よりヤバい

ロシア連邦統計局は1月28日に、「同国の人口が昨年に100万人以上減少した」と公表した。

減少幅はソビエト連邦崩壊以降で最悪であり、日本の年間の人口減少数をも上回っている。経済が悪化したことで出生率が低下し死亡率が上昇しているロシアに対し、新型コロナのパンデミックが追い打ちをかけた形だ。

ロシア政府は2020年夏に世界で初めて新型コロナのワクチン(スプートニクV)を承認したが、自国産ワクチンに対する国民の根強い不信感から接種率が低迷している(40%台)。このことも出生率に悪影響をもたらしている。

「ロシアはいつでもウクライナに侵攻できる」とする論調が高まっているが、人口減少が深刻化する国が大規模な戦争を遂行できるとは思えない。

それだけではない。

新型コロナ以上に国民生活を苦しめているのはインフレだ。

ロシアでは2020年から食料品を中心にインフレが進んでいる。昨年12月のインフレ率は8.4%と中央銀行の目標値(4%)の2倍以上となった。

ウクライナ情勢の緊迫化により通貨ルーブル安も進み、「輸入品の価格上昇でインフレ率が2桁になる」との懸念が高まっている。

本当は戦争できないロシア

ロシアの中央銀行は昨年12月、主要政策金利を7回連続で引き上げており、金利高による景気悪化も現実味を帯びつつある。

プーチン政権の長期化への不満がこれまでになく高まっている中で、インフレと不景気の同時進行(スタグフレーション)が起きるリスクが生じている。ソ連崩壊後の1990年代前半のインフレや経済の混乱は極めて深刻だった。

忍び寄るインフレの足音がソ連崩壊時の悪夢をプーチン大統領の脳裏に呼び覚ましていたとしても不思議ではない。

強面に映るロシアだが、経済は非常に脆弱なのだ。

窮地のロシア

欧米諸国が追加の経済制裁を発動すればロシアは確実に窮地に追い込まれる。

経済制裁には「効果が強すぎるとその意図に反して相手の軍事行動を惹起してしまう」という深刻な副作用がある。

追い込まれたロシアが経済を度外視した行動に打って出ることがないよう、国際社会は冷静かつ慎重な対応を講じていくべきだ。
参照元:プーチンは「焦ってる」…ロシアで起きている「3重苦」の危ない正体
2022/2/8 現代ビジネス 藤 和彦経済産業研究所コンサルティングフェロー

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コメント

コメント一覧 (6件)

  • プーチンの最後のあがき、という箇所に納得しました

    プーチンは目上に恵まれても、後継者には恵まれないという宿命を背負っているようで(午未空亡)実際メドヴェージェフ大統領のあと、再び自分が大統領に戻ったり

    末代運というか、それまでの流れを最後にまとめる役割があり、次代からは異質な流れとなるようです
    • 後継者に恵まれないと出ている訳ですね。
      プーチンの西側諸国に対する奮闘もプーチン一代で終わり、
      西側の自由主義諸国の秩序に組み込まれていくイメージしかありません。
      • プーチンの晩年というか死に方は、三島由紀夫と同じものが出ているようです(北の偏官)

        武官のような晩年、死に方という出方ですが、三島由紀夫はそこまで強くはなかったので、自らの切腹という範囲にとどまった

        プーチンも愛国主義が晩年になるほど高くなる

        秀吉さんが何度か言及されているグレートリセットと重ねて考えると、

        プーチンの晩年の最後の役割は、グレートリセットにスムーズに移行するために、世界に印象づける愛国主義の独裁者なのかと思えてきます

        そうなると、中国も同じ役割なのかと感じ、習近平の方も確認したところ、やはりプーチンと同じでした(北の偏官)
        • プーチンが、三島由紀夫と同じというのは非常に納得します。

          よく似ていると思います。

          確かにプーチンの今回のウクライナ侵攻が反面教師となって、主権国家の問題点が明らかになり、世界政府、グレートリセットといったものに移行していく一つの流れを作り出す可能性はあります。

          私はプーチンのナヴァムシャが魚座ラグナであるなら、それこそが、プーチンの本質だと思います。

          やはり、古い魚座-蠍座-蟹座の水の星座の封建的、伝統的な価値の保存や存続を望む古い人物だということです。

          プーチンには、巨大で強かったソビエト連邦の時代への郷愁があり、それが旧ワルシャワ条約機構の復活という形で現れたのかもしれません。

          プーチンは西側の新自由主義の流れに飲み込まれるのをオルガリヒの排除など独裁者としての英断で防ぎ、ロシアの愛国民族主義者で、英雄でしたが、時代は移り変わり、インターネットが普及し、Netflixやfacebook、twitterなど、米国のシリコンバレーで生み出されるような新しい文化によって、世界がどんどん変化していく流れに逆行することは出来ず、世界政府、グレートリセットへの流れを食い止めて、時間稼ぎをすることは出来ても根本的にはその流れを変えることは出来なかったということではないかと思います。
          ウクライナも結局、西側諸国のそうした文化的魅力になびいて、ロシアから離れてゆき、それは民衆が選んだことで、防ぎようがないことでした。

          そして、徐々にNATO加盟国が増えて、西側が拡大し、劣勢になっている面はあったかもしれません。

          然し、ロシアがSWIFTを使って、資源を外国に売って、国民が外貨を稼いでいたことから考えると、既に負けていたといっていいかもしれません。

          ソ連崩壊後に西側のシステムに完全に組み込まれるのを食い止めて来たとしても、あくまでもそれは抵抗に過ぎず、根本的にはその流れには逆らうことは出来なかったと思います。

          プーチンの人生の物語とは、そうした抵抗の物語だったかもしれません。

          つまり、長い目でみれば、勝てない戦いをしているということです。

          プーチンがナヴァムシャで、魚座ラグナであれば、6室支配の太陽が5室で蟹座に在住し、かなり偏見の強い愛国右翼思想を表しており、非常に納得できます。
  • 土星と木星の位置が1962年10月の
    キューバ危機と同じですね。
    もう少しで核戦争だったらしい。
    今回は火星の位置が怖いです。
    • 火星が2月28日から山羊座に移動して、その直前から侵攻が始まりましたが、土星は現在、山羊座の25°付近で、火星は4月7日に水瓶座に抜けていきますが、それまでの間は、どんどん土星に近づいていきます。その間、土星と火星の相乗効果で、戦闘は激しくなると思います。

      ラーフ/ケートゥ軸が、3月17日から牡羊座/天秤座軸に移動しますが、そうすると、ケンドラサンバンダ(ケンドラ関係)で、ラーフやケートゥの影響が土星や火星の影響に加わります。
      4月4日-5日辺りは、火星は、28°付近の土星にピンポイントで、コンジャンクトします。

      その後、4月29日辺りから土星は、水瓶座に移動し、水瓶座は国連など各国の連帯を表わし、集団の力を表わす為、戦争を止める為の国際的な連帯の力が強くなると思います。
      この頃までには戦闘が終結し、国連の名の下で、停戦監視団などが派遣されるかもしれません。

      キューバ危機の時は、土星が山羊座をトランジットし、ケートゥも山羊座をトランジットし、火星は水瓶座でした。

      キューバ危機の時には、新月図に土星と火星のコンジャンクとは見られなかった為か、核戦争の緊張は高まりましたが、実際の重火器による戦闘は行なわれませんでした。

      結局、交渉で、アメリカがトルコにあるミサイル基地を撤去することを条件にキューバからミサイルを引き上げることで、話がまとまりました。

      今回は、これだけ激しい戦争となったのは、土星の影響に火星の影響が加わっているからだと思います。

      更に土星は山羊座を抜けてゆく、最後の方の度数(現在、25°付近)を通過しており、これが2020年との違いです。

      土星は星座を抜けてゆくタイミングで、力を発揮します。

      従って、土星が山羊座を抜けてゆくタイミングで、しかも火星の影響が加わったタイミングで、侵略戦争が起こりました。

      火星は、これから土星の度数に徐々に近づいていく為、戦闘はまだこれから激しくなっていくと予想されます。

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