前兆学と占星学

最近、スークシュマダシャー(第4レベル)のケートゥ期が数日間続いていたのだが、ちょうど、これまでずっと暑い日が続いていたにも関わらず、このケートゥ期のうちの何日間かは、曇り空で、雨が降ったりなどして、外の環境も、そして、心の中の心境も静寂に満ちて、静かな幸福感に満たされた。 

雨降りの時は部屋で静かにしていて、特に人からの連絡も来ないことが多く、静かだけに自分の心の動きなどに気づいたり、向き合う時期である。
過去のコラムでも、プラーナダシャーケートゥ期(第5レベル)の時に雨が降ったり、小雨だったりして、同様に静けさに満ちたことが何度もあったため、ケートゥと雨は関係があるのではないかといった認識を綴ったこともある。 

おそらく、雨が降って静かな時というのは、前兆学的には12室やケートゥで表される時なのではないかと思うのである。 

このことから言えることは、私たちが日常体験していることの内容を鋭敏に観察すれば、その体験を惑星やハウス、星座に変換して、その出来事のホロスコープを思い描くことができるということである。

つまり、私たちは、ホロスコープから出来事(前兆も含む)を予測することができるが、逆に出来事からホロスコープを描き出すことができるのである。 

よく漫画やドラマなどで、靴紐が切れることで、この先の災難や凶事を登場人物が感じ取るというステレオタイプ的なひとコマが見られるが、前兆は、私たちが日々、生きて生活している自然や社会生活の中に満ち満ちている。 

靴紐が切れたこの登場人物が、この時、タロットカードを引けば、逆さ吊りの男のカードが出るかもしれず、またこの日の彼の出生図の8室に月がトランジットしているかもしれない。 

タロットカードや易の理論とは、わずか数十枚のカードや数十本の棒の中に、その時にその依頼者の前兆が表れるというものである。 

本来、前兆とは、自然界の中に満ち満ちており、カードなどを引かなくても、人に読み取るだけの能力があれば、今、起こりつつある自然現象(社会現象)が将来、何を引き起こす前兆なのか分かるのである。 

つまり、環境それ自体がタロットカードであるということである。 

タロットカードや易の場合は、宇宙のメカニズムの中の一部として、その時々に合致した前兆を表すことができる。 

つまり、宇宙の中の小宇宙なのであり、両者は連動しているのである。 

自然現象(出来事)から逆算して、ホロスコープを描くことが出来るなら、ホロスコープから出来事を導き出すことも出来るのであり、ホロスコープから出来事を推測したり、出来事からホロスコープを推測するというような、行ったり来たりの繰り返しが、占星術の象徴と実際の出来事の結びつきについて理解するよい訓練になるのである。 

私は日頃、i-phoneの中にタロットのアプリケーションを入れて、毎日のように引いて試しているが、何らかの思いや欲望、意志を抱えた状態で引くと、ほとんど、その内容を暗示(象徴)する結果が出てくるので、いつも驚くのである。 

何故、タロットとは、こんなにも当たるのかと思うのであるが、タロットとは、実は、これまで書いて来たように前兆学なのである。 

i-phoneアプリのプログラミングも、前兆学的な宇宙の中の一部として組み込まれているから、自然の中に表われる前兆と同じように、そこにも前兆が現われるのである。 

これはある想いや欲望、意志が生み出されたタイミングでの前兆学である。 

タロットで、質問者が占い師の前に座る時、ある想いや欲望、意志によって、ある特定の態度を既に決めているのである。実は全く何も決まっていない状態で質問者が座ることはなく、質問者の中では何か決定した想い(態度)が存在している。 

その決定した想い(態度)がどうなのかを聞くために占い師のもとに訪れるのではないかと思うのである。 

そして、タロットとは、その決定された想い(態度)が前兆学的にどうなのかを見るオペレーションである。 

そして、前兆学であるからには、ホロスコープも描くことが出来るのである。 

前兆⇒ホロスコープ、ホロスコープ⇒前兆への変換が可能であれば、ホロスコープが描くことが出来る。 

【想いや欲望、意志】が誕生した瞬間の出生図(ホロスコープ)の中にその【想いや欲望、意志】の運命が記されていると言える。 

想いや欲望、意志は、言い換えれば、質問という形を取るのであり、だから、質問された時にホロスコープを作ったり、タロットを引くのである。 

人間が誕生した時のホロスコープが描けるのと同じように、【想いや欲望、意志】といったものも、あるタイミングで誕生する存在者であって、ホロスコープが描けるのである。 

だから、結局のところ、占星術もタロットも究極的には同じものである。 

占星術で質問された時にホロスコープを作る時、まず、ラグナが決定的に重要である。 

ラグナから見てドゥシュタナハウス(6、8、12室)に惑星が集中していれば、その質問時に生み出された想いや欲望、意志の運命は、前途多難である。 

逆に、ケンドラ(1、4、7、10室)やトリコーナ(1、5、9室)に惑星が集中していれば、想いや欲望、意志の運命の展望は、吉兆である。 

このことは人間が物質界に転生して来たタイミングのホロスコープで、その人間の運命が分かることと何ら違いはないのである。 

質問された時にタロットカードを引くことも、全く一緒である。 

ホロスコープの代わりにカードの中に前兆学的な結果が表れるだけである。 

島田紳助が、突然、引退したが、その引退会見が行なわれた時にトランジットの月は双子座を通過していた。 

この引退劇はまさに8室の突然の中断、災難、破滅(破局)の象意であるから、島田紳助は、蠍座ラグナではないかと考える一つの材料になった。 

実際、過去の経歴やダシャーバランスを検討してみた所、やはり、島田紳助は蠍座ラグナだと過去の出来事がうまく説明出来そうに思われた。 

おそらく島田紳助は突然、吉本興業から呼び出しを受け、暴力団幹部との関係を明らかにするメールを示されて、その前日まで続いてきた活動が突然中断したのであり、まさに8室の出来事が起こったと言える。 

この日、タロットカードを引けば、おそらく8室の象意に相当する死のカードや吊るされた男のカードなどが出たのではないかと思われる。 

あるいは、朝出かける時に靴紐が切れることに似た何か物事がスムーズに行かないちょっとしたトラブルがあったかもしれず、車が渋滞に巻き込まれたり、進路を妨害されたり、天候も悪くて気分が憂鬱になったりなど、何か8室の象意に関する様々なエピソードが生じたかもしれない。 

このように考えると、占星術であろうと、タロットであろうと、易であろうと、占いの結果はすべて同じである。 

それは宇宙は、大宇宙から小宇宙まで、全て連動しているからである。 

だからこそ、占星術の理解によって、タロットも又、深く理解できるのであり、ヴァラーハミヒラの『ブリハットサンヒター』のような自然界の前兆学も占星術と深いつながりがある。 

これらの理解は、相互に関連して促進されるのである。 

ただ、こうした占星術、タロット、易の中でも、まず、人が物質界に転生したタイミングの出生図(ホロスコープ)で、その後のダシャーやトランジットが全て数学的に決定され、何十年も先に起こることが、そのダシャーやトランジットの計算から導き出されるというのは圧巻であり、最も強力で正確な前兆学であると言える。 

勉強したことはないので、よくは知らないが、タロットや易で、質問時に引いた結果というのは、そんなに長期に渡る前兆を表してはいないと思われる。 

タロットに関しては、せいぜい3ヶ月以内の状況を表していると聞いたことがある。 

質問時に生成される想いや欲望や意志などの持続時間がせいぜいそのくらいしかないということではないかと思われる。 

想いや欲望や意志などは、その都度、刻々と変化していくので、それらの前兆は長持ちしないということである。 

このようなことを考えていたら、前兆学と占星学には、原理的にはほとんど違いはないのだということに気がついた。 

ただ占星学とは、究極的に精密な前兆学なのである。 


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