占星コラム


2012/11/8 米大統領選挙-バラク・オバマの勝利宣言-

米大統領選で、民主党のオバマ大統領が、再選を確実にし、米東部時間7日午前、共和党のロムニー候補が敗北を宣言したことを受けて、シカゴで勝利宣言を行った。

このことが、どのような意味を持つのか。

この鑑定家の占星コラムの中でも、バラク・オバマについて再三取り上げてきたが、当初は天秤座として、チャートを作成したものの、後日、読者の方から、バラクオバマの出生証明書が見つかったとの連絡を受け、ラグナを山羊座に訂正した。

【※オバマ氏の出生地に関しては、米大統領の要件である米国内を満たしていないとして、「出生地疑惑」が持ち上がったことがあった。 オバマ大統領の出生地を巡っては、2011年に米国の大富豪で不動産王として知られるドナルド・トランプ氏が、オバマ氏は米国内で生まれておらず、大統領の資格要件を満たしていないのではないかとの疑念を呈示。大統領が自らの出生証明書を提示して疑惑を晴らした一件があった。(CNN記事「出生証明書持ってる?」 オバマ大統領が自身をネタにジョーク 2012.09.10 Mon posted at 16:43 JSTより) 】

その記事は2008年10月4日に書かれたものであり、早いもので、あれから既に4年の歳月が流れている。

2008年11月にバラクオバマは大統領に就任したが、その直後にリーマンショック後の対応で、金融機関に多額の米国民の税金(公的資金)を投入して救済したことで、急激に支持率が低下した。

バラクオバマはゴールドマンサックスをはじめとする金融資本家から多額の選挙資金の援助を受けていたために金融市場に思ったように規制をかけることができず、改革に失敗した。

しかし、今回の再選で、バラクオバマは、「民主党のレーガン」になると評論家が予測している。

それはレーガンが、1期目は支持率低下に苦しんだが、2期目は大きな成果を上げたように、バラクオバマも2期目は大きな成果を挙げるだろうという見通しである。

これはおそらく正しいと思われる。


何故なら、バラクオバマは2012年7月24日から、マハダシャーが土星期に移行している。

土星はラグナロードでラグナに在住しており、シャシャヨーガを形成する強力な配置である。

太陽から見ても7室支配で7室に自室に在住するシャシャヨーガであり、

また月から見ても9、10室支配のラージャヨーガカラカであり、9室で自室に在住して強い配置である。


ナヴァムシャでも月から見て10室支配で自室に在住し、ラグナから見て6室で自室に在住している。ウパチャヤの凶星で敵を粉砕する、敵に打ち勝つ配置である。

またダシャームシャ(D10)においても、ラグナから見て、9、10室支配のラージャヨーガカラカであり、5室に在住し、月から見ても10室支配で6室のウパチャヤハウスに在住している。

選挙で勝つには6室が絡んだ方がよいのだが、その条件を満たしている。

また土星はシャシャヨーガだが、ヴァルゴッタマである為、高揚しているかのように(むしろD1で高揚しているだけよりもずっと強い)非常に強い土星である。


今回、何故、大統領に再選したかというと、現在、土星/土星/土星期であり、シャシャヨーガで、月から10室を支配する強い土星のダシャーで、

更に現在、木星が牡牛座で逆行して、一つ前の牡羊座から天秤座にアスペクトしているため、10室の天秤座に木星と土星のダブルトランジットを形成しているためである。

またチャラダシャーでは山羊座/天秤座であり、天秤座は山羊座からみて10室であり、天秤座からみると、Amkが10室に在住し、AKが11室に在住している。


土星の強いことは何を意味するかというと、大衆から選ばれたリーダーであり、民主主義を体現するリーダーであるということである。

従って、バラクオバマは、富裕層への増税や、市場の規制などを進め、より社会主義的で、セイフティーネットが充実したより健全な政策を進めることが期待できる。

外交的には世界の警察としての立場を維持し、日本やフィリピンなどアジアの同盟国にも注目し、中国の不法行為などを牽制しつつも、基本的には国際協調主義で行くことが期待できる。

オバマが再選したことで、世界がより善く変革できる可能性が出てきたと言える。

アメリカ合衆国のチャートを見ると、双子座に惑星が集中しているが、この双子座は、米国の金融資本家や米国の支配者階級、富裕層を表わしている。

この双子座の勢力にオバマは強く対処できるのが、おそらく今回のシャシャヨーガである山羊座の土星のダシャーの時期である。

何故なら、山羊座は双子座からみて8室であるため、より双子座に強く出ることができる。特に山羊座から見た6室に木星が入室する来年の5月には、金融資本家に厳しく対応することができそうである。その時には土星が乙女座に逆行するので、6室双子座に土星と木星がダブルトランジットする。

これは金融資本家に厳しく規制をかけていくことを意味しているのである。1期目では出来なかったことが2期目では可能になるのだ。

そうして、市場原理主義、株主資本主義といったものが席巻していた市場に規制をかけて、より健全な社会に戻すことが可能になる。


そして、共和党は、妊娠中絶反対とか、キリスト教原理主義的な政策を打ち出してくるのだが、天秤座にダブルトランジットが生じる来年の5月以降は、リベラリズムが花開くことが期待できる。

天秤座は自由を愛する星座だからである。人の自由を尊重し、自分自身も自由であろうとするのが、天秤座である。

だから、妊娠中絶をするかどうかはその妊婦である本人が自由に選択できるとするのが、リベラリズムの考え方である。

従って、まさにリベラリズムを生み出した星座と言ってもいいのが、天秤座なのである。

その天秤座は土星が高揚する星座であり、民主主義が花開く星座でもある。

※キリスト教原理主義を生み出すのは魚座であるが、魚座は天秤座から見ると、6室目であり、リベラリズムが花開く来年はキリスト教原理主義の思想は逆に見下され、軽んじられる立場となる。

バラクオバマの富裕層へ増税し、社会保障制度を充実させ、中間層重視の経済再生策(つまり、富裕層でなく中間層が豊かになることこそより健全な社会を実現する)を掲げ、医療保険制度改革を推進するだろう。

米国の医療保険制度については、マイケル・ムーア監督の『シッコ SiCKO』 という映画でも描かれていたが、医療保険が民営化されてしまったために米国民が安価な医療保険に加入できず、そのため、5000万人に及ぶ医療保険未加入者を生み出し、保険会社は保険金の支払いを拒み、入院費が払えないと病院が患者を道端に放り出したり、患者が手術が受けられなかったり、病人の所に救急車が来てくれなかったりといったことが日常的に起こっている。

従って、より安心して生活できる社会の実現にとっては必要不可欠なものと言える。

また国防費の削減や、景気回復と雇用創出策として、2014年までに輸出を倍増させ、製造業で100万人の雇用の創出を生み出すことを検討している。

この「景気回復と雇用創出策として、2014年までに輸出を倍増させ、製造業で100万人の雇用の創出を生み出すこと」は、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を推進して、アジアに米国の製品を輸出しようとする政策なのであるが、この点だけ、日本にとっては不安な所である。

つまり、日本を米国の商品やサービスの市場と見なしており、関税を撤廃して、日本の市場に米国の安価なサービスが流入してくると、日本はますますデフレに陥って、経済が停滞するといった意見もある。

然し、全体的に見て、バラクオバマが大統領に再選したことは、より健全な世界に向けた一歩であると言える。

来年の5月頃、木星が双子座に入室するが、そうすると、木星がバラクオバマの10室支配の金星にトランジットし、10室にアスペクトし、更に土星が10室の天秤座に入室するので、10室にダブルトランジットが生じ、更に1月の時点で、ラーフが10室に入室する。

従って、来年はバラクオバマが、非常に躍進する時期である。彼が何か大きな志を遂げるタイミングである。

マハダシャーの土星は、ラグナからみても月から見ても、ヨーガカラカであり、ダルマハウスを支配している。

ダルマハウスは正義とか奉仕とか、徳行などを表わしており、理想とか目的を追求することを表わしている。

つまり、バラクオバマは、明らかに大衆の為の政治を目指すのである。

それは昨今、米国でブームとなった市場主義の限界や、コミュニタリアニズム(共同体主義)を主張するマイケル・サンデルの思想に近いものになるだろう。

マイケル・サンデルは、リーマンショックを引き起こす原因となった功利主義やリバータリアニズム(自由至上主義)、市場原理主義といった現在の資本主義社会で猛威を振るい、新自由主義の原因ともなっているこれらの思想について批判的に扱っている。

マイケルサンデルのコミュニタリアニズム(共同体主義)という思想においては、人は他人と共存していくためには、全体の善のために個人の自由が制限される場合もあり得るのである。アリストテレスの目的論に基づいており、基本的にはプラトンのイデアの思想に基づいているといえる。

つまり、道徳的価値が、市場よりも上に置かれるのである。


あるいは、ジョセフ・E・スティグリッツは、IMF、世界銀行体制が、世界に経済的な格差を生み出したとして、グローバリズム、新自由主義経済を批判しているが、バラクオバマは、スティグリッツの思想にどれだけ近づけるかも、注目したい所である。

バラクオバマの民主党が打ち出している「景気回復と雇用創出策として、2014年までに輸出を倍増させ、製造業で100万人の雇用の創出を生み出す」ためにTPPを推進することは間違いないのであるが、このTPPにはISD条項とか、他国を経済的に植民地にするような仕掛けが埋め込まれている。

これに日本が賛同する場合、日本は米国の経済的な植民地とされるのである。だからTPPはグローバリズム、新自由主義そのものである。


バラクオバマは大衆の為の政治を行なう為に富裕層に増税し、金融市場の規制を強化するのだが、米国民のためだけでなく、世界の大衆のための政治をとって欲しいものだ。

最近では米国議会の中からもTPPを批判する論調が出てきているらしいが、これはTPPが結局は経済力のある国が、他国を自国の商品の市場にするという帝国主義の思想に他ならないため、健全な民主主義の感覚を持つ人々から批判が出てきているのだ。

いずれにせよ、バラクオバマは1期目では出来なかった金融業界の規制など、より米国の大衆のための政治を取ることが期待されているし、また土星期にはそれが出来る可能性が高いのである。




(参考文献・資料)

オバマ大統領が特別寄稿 米国、私のビジョン
2012.11.05 Mon posted at 11:51 JST CNN.co.jp

(CNN) この数日間、私たちは皆、今世代最大級の暴風雨にしっかりと目を向けてきた。亡くなった人々を悼むとともに、人生を一変させる被害を受けた人々には復旧と再建に必要な限り、支援を続けることを約束する。

なぜなら困難に見舞われた時にこそ、米国は最大の良さを発揮するからだ。平時に私たちを消耗するささいな食い違いも、瞬時に消えうせる。嵐の間は民主党も共和党もなく、だれもが同じ米国人となる。私たちはこうして力を合わせ、最もつらい時を切り抜けるのだ。
米国は4年前、2カ所での戦争と世界大恐慌以来の経済危機で窮地に陥っていた。だが私たちは力を合わせて闘い、ここまで立ち直った。イラク戦争は終わり、オサマ・ビンラディン容疑者は殺害され、英雄たちが帰還している。産業界では過去2年半のうちに550万件近くの雇用が生まれた。住宅価格や確定拠出年金が上向いて、石油の対外依存度は過去20年間で最低となり、自動車産業も息を吹き返した。
まだ目的地には到達していないが、私たちは確実に前進遂げてきた。そして6日の投票日、米国はその強さの由来を巡る2つの根本的に違うビジョンのうち、いずれかを選ぶことになる。

米国の繁栄の基礎となったのは中間層の強さだと、私は確信している。少数のトップ層が豊かな生活をする一方で大多数が暮らしに困っている状況ではうまくいかない。だれもが公平にチャンスを与えられ、等しく役割を果たし、同じルールに従う時、国全体がより豊かになる。

クリントン元大統領(民主党)は在任中、国民の技能とアイデアに投資すれば、雇用と産業の発展は必ずついてくると考えた。財政赤字の削減と同時に職業訓練や教育、研究、技術開発、医療、退職者支援に予算をかけられるよう、最富裕層に多少の負担増を求める経済政策を取った。その結果どうなったか。2期目が終わるころには2300万件の新規雇用が創出され、所得が増えて貧困率が低下した。財政赤字は転じて史上最大の黒字となった。

ロムニー前マサチューセッツ州知事が示す道は、8年前、クリントン元大統領の退任後に試みられた政策だ。トップ層に一般の人々とまったく違ったルールを認め、財政が苦しいのに富裕層への減税を続け、企業に雇用と利益の国外流出を勧め、大銀行や保険会社の規制を緩和するという考え方だ。これらはそもそも、現在の苦境を招いた政策そのものである。

選挙戦の終盤で、ロムニー知事は変革の旗手を名乗り始めた。私からは以下の言葉を贈ろう。富裕層を中心とした5兆ドルの減税や、軍から求められてもいない2兆ドルの国防費、大銀行や保険会社の権限強化は確かに変革だ。しかし私たちが必要としている変革ではない。
真の変革がどんなものであるか、私たちは知っている。それを今、あきらめるわけにはいかない。

変革とは、どんな年代の人でも、良質な職に就くための技能と教育を得られる国にすることだ。私たちは、銀行が数十年間にわたって学生ローンに過重な金利を課してきた状況を改め、大学に進学する数百万人の費用負担を軽減した。今後は高技術、高賃金の雇用が中国へ流れないよう、数学と科学の教師を10万人採用し、コミュニティー・カレッジでは地域産業界がまさに今必要としている技能の訓練を、200万人の労働者に提供する。

変革とは、米国を次世代の製造業と技術革新の本拠地とすることだ。「デトロイトを倒産させろ」と言ったのはもう1人の候補者であり、大統領として米国の労働力と創意に賭けたのは私だ。次は税制改革によって、海外へ雇用を流出させる企業でなく、国内で雇用を生み出す企業を奨励したい。また、利益をあげている石油企業への補助金を停止し、クリーンエネルギー分野の雇用と技術開発を引き続き支援して、石油輸入を半減させたい。
変革とは、戦争の十年間を終わらせ、自国の国づくりに取り組むことだ。私が軍最高司令官である限り、米国は世界最強の軍によって敵を追い続ける。だが同時に、イラクとアフガニスタンの戦争終結によって生じた余力で負債を払い、米国内の道路や橋や学校を再建すべき時が来ている。
変革とは、支出を削れる所で削り、財政赤字を削減することだ。最富裕層に対し、クリントン政権時代の所得税率に戻るよう求めることだ。私はこれまでに共和党と協力して、1兆ドルの支出削減を達成した。今後もさらに削減を進める。しかし、億万長者への減税を埋め合わせるためにメディケイド(低所得者向け公的医療保険)を受給する何百万人もの貧困層や高齢者、障害者から保険を取り上げたり、メディケア(高齢者向け公的医療保険)をバウチャー方式に変更したりする案に同意するつもりはない。
トップ層の人々は、擁護者をワシントンへ送り込む必要がない。擁護者を必要とするのは、私が夜ごとに手紙を読む人々、毎日遊説で出会う人々だ。ラスベガスのホテルで残業する料理人や清掃作業員、バイオテクノロジー分野のキャリアを目指して教育を受け直す55歳の家具職人、教室にひしめく生徒たち1人1人に十分な時間が費やせないと話す教師。いつか大物になりたいと夢見るその子どもたち。事業を拡大し、従業員たちに報いようとする中小企業の経営者。こうした人々には、ワシントンの擁護者が必要だ。

この人たちが豊かになれば、米国も豊かになる。今必要なのはそういう変革である。私たちが着手したことをやり遂げる時だ。子どもたちの教育、労働者の訓練、雇用創出、新エネルギー、そして新たなチャンス。あなたがだれで、どこの出身で、どんなスタートを切ったとしても、努力すれば成功できる、そういう国であり続けるために。
私たちが信じる米国は手の届く所にある。私たちが望む未来は視野の中にある。だから6日には、皆さんの1票をお願いしたい。

※本文はオバマ大統領が投票前に行なった特別寄稿で、CNN.co.jpから引用抜粋

 

オバマ氏が勝利 ロムニー氏に競り勝ち 米主要メディア報道
2012.11.7 13:20 産経ニュース

 【ワシントン=佐々木類】米大統領選は6日、投開票が行われ、民主党現職のオバマ大統領(51)が共和党候補のロムニー前マサチューセッツ州知事(65)に勝利し、再選が確実になった。景気と雇用が最大の争点となった選挙で、米国民は、4年前の選挙で唱えた「変革」の継続と格差是正による「公正な社会」の実現を訴えたオバマ氏を信任し、今後4年間のかじ取りを託す。

 オバマ氏はバイデン副大統領(69)とともに来年1月に首都ワシントンで就任式に臨む。

 オバマ氏は同日夜、短文投稿サイトのツイッターで、「これが起きたのはあなたのおかげだ。ありがとう」と勝利宣言した。

 開票の結果、オバマ氏は激戦州7つのうち、中西部オハイオ州などで勝利した。

 一方、複数の米メディアはロムニー陣営について『敗北を認める用意ができていない』と伝えている。

 米主要メディアは、日本時間同日午後2時現在、選挙人計538人のうち、当選に必要な270人を上回る選挙人を獲得する見通しとなったと伝えた。

オバマ氏は選挙戦で、一貫して中間所得層重視の姿勢を強調。対するロムニー氏は富裕層を含めた減税や規制緩和など自由な経済活動による活力ある社会の実現を唱え、最終盤に巻き返してオバマ氏と激しくせめぎ合ったが、及ばなかった。

 オバマ氏は、内政面では富裕層への増税や社会保障制度の充実など中間層重視の経済再生策を掲げ、1期目の最大の業績である医療保険改革の推進を目指す。景気回復と雇用創出策として2014年までに輸出を倍増させ、16年末までに製造業で100万人の雇用の創出を図る。財政再建は、10年間で財政赤字4兆ドル(320兆円)を削減。国防費の削減に踏み込む。

 外交・安全保障政策では引き続き国際協調に軸足を置く。アジア太平洋地域で軍拡を続ける中国を念頭に、日本やオーストラリア、フィリピンなどとの同盟関係を強化、同地域への米軍展開能力を高める方針だ。

 

オバマ氏再選で米金融政策・規制めぐる不透明感緩和、株安・債券高の可能性
2012年 11月 7日 17:25 ロイター

 ◎オバマ大統領の再選確定で金融政策や規制めぐる不透明感が緩和
 ◎目先は株式下落・債券上昇の可能性
 [ニューヨーク 7日 ロイター] 米大統領選で共和党ロムニー候補への支持が大半を占めていた市場関係者は7日、再選を決めたオバマ大統領が米経済の混乱を招きかねない財政危機を回避することへの期待を口にした。

 選挙結果を受け、株式先物は約0.5%下落、債券先物は上昇した。

 オバマ氏再選で、規制や金融政策をめぐる不透明感が払しょくされた一方、税政策や経済全体の健全性がどうなるかはまだ分からない。

 過去の例から、投資家はワシントンで起こる問題を軽く見て、議員が重要な事案で合意できない時点になって驚きを示す傾向がある。

 デスティネーション・ウェルス・マネジメント(カリフォルニア州)の創設者で最高経営責任者のマイケル・ヨシカミ氏は「(市場の注目は)政府のこう着状態や財政の崖問題に即座にシフトするだろう。それは株式相場にとって逆風となる」と指摘する。

 投資家の間では、共和党が下院の過半数議席を維持したことで、財政改革をめぐる決着にまだ時間がかかると懸念する声もあり、このことが市場を圧迫し続ける可能性はある。

 ウォール街の元アナリストで共和党支持者のジェイソン・アデール氏は「(オバマ氏にとっての)真の課題は議会との相違点を調整し、仲介することだ」と指摘。「市場は今夜と明日に反射的な反応を見せ、数日かけて支持線を見出すだろう」と語った。

 一方、シティグループのG10外為戦略責任者のスティーブン・イングランダー氏は、財政の崖について「今後のより大きな問題となりうる」とし、「早急な進展がみられなければ、市場は向こう数カ月のリスク・ポジティブ度合いを考え直す可能性がある」と述べた。

 世界の投資家が米国の財政赤字が経済の重しとなると考えた場合、米ドルが売られる可能性がある。

 オバマ大統領への支持を表明していた著名投資家ジョージ・ソロス氏は選挙結果について「より分別のある政治への扉を開いた」と発言。共和党に対しては財政の崖の回避に向けた協力に期待を示した。

 共和党のロムニー候補は大統領選に勝利した場合に連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長を交代させると表明していたが、オバマ氏の勝利でFRBの政策をめぐる不透明感は払拭された。

 バーナンキ議長のハト派金融政策は、ここ数年の米国の債券および株式相場は上昇を後押ししてきた。

 米S&P総合500種.SPXはオバマ大統領の就任以来、67%上昇。昨年の米国格下げにもかかわらず、米国債ベンチマークの利回りは過去最低水準を記録した。

 ダブルライン・キャピタル(ロサンゼルス)の国債ポートフォリオ・マネジャー、グレゴリー・ホワイトリー氏はFRBの政策が据え置かれることで債券相場が若干上昇する可能性があると指摘。ただ、オバマ政権のもとで増税が予想されることや市場の規制強化によって米経済の低迷が続く可能性はあるとの見方を示した。

 

米大統領選はオバマ大統領が再選、ロムニー氏が敗北認める
2012年 11月 7日 15:44 ロイター

[ワシントン 6日 ロイター] 米主要メディアは6日、大統領選で民主党のオバマ大統領が共和党のロムニー候補に勝利したと伝えた。
オバマ氏は、激戦州のオハイオ、ウィスコンシン、アイオワ、ペンシルベニア、ニューハンプシャーの各州を僅差で制し、当選に必要な選挙人(270人)を獲得した。

ロムニー候補は敗北を認め、オバマ大統領に電話で祝意を伝えた後、支持者に対し、「米国にとって今は大いなる試練のときだ。大統領がこの国を首尾よく導いてくれることを祈る」と述べた。また、「与野党で対立している場合ではなく、指導者は党派を超えた協力目指すべきだ」と表明した。

オバマ氏は、MSNBCが再選を報じると、ツイッターで「皆さんのおかげだ。ありがとう」とコメントした。

ロムニー候補は、一部の共和党関係者がオハイオ州でのオバマ氏勝利を疑問視したことを受けて敗北宣言を遅らせていたが、その後、主要メディアがコロラド州、バージニア州でもオバマ氏が勝利したと報道。オハイオ州の勝敗が逆転しても、ロムニー氏が当選に必要な選挙人を獲得することは不可能になった。

ロムニー候補が勝利を収めた激戦州は、これまでのところノースカロライナ州のみ。ロムニー陣営のボストンのイベント会場には重苦しい空気が漂った。

オバマ大統領は2期目となる4年間に、年間1兆ドルに上る巨額赤字の削減、16兆ドルに達する債務の削減、コストが膨らんでいる社会福祉プログラムの改革、米議会における民主党と共和党の対立解消といった困難な課題に取り組むことになる。

また、2期目のオバマ政権は、歳出、税制、医療保険制度、政府の役割、中国の台頭やイランの核問題などを背景に難しさを増す外交問題などについて、米国が向かう方向性を決めることになる。

メディア予想によると、大統領選と同時に6日に行われた連邦議会の上下両院選は、民主党が上院で過半数を維持、共和党も下院で過半数を維持した。

「財政の崖」が迫るなか、議会の「ねじれ」状態は少なくともあと2年続くことになる。

上院選では、民主党はマサチューセッツ州とインディアナ州で共和党の議席を奪い、ウィスコンシン、バージニアを含む他のほとんどの州ですでに保有している議席を維持した。

上院の勢力図に変化はないとみられるものの、民主・共和両党とも穏健派が減り、上院はより分極化する可能性がある。

特にマサチューセッツ州では、活動家のハーバード大学教授、エリザベス・ウォーレン氏が穏健派のスコット・ブラン氏を下した。テキサス州は、保守派の草の根運動「ティーパーティー(茶会)」が推すテッド・クルス氏が、退任する共和党のケイ・ベイリー・ハチソン氏の議席を獲得した。

ミズーリ州では、民主党のクレア・マカスキル議員が議席を維持。「本物のレイプなら妊娠しない」と発言し、物議をかもしたトッド・エイキン候補を破った。

インディアナ州でも、民主党のジョー・ドネリー氏が共和党のリチャード・マードック候補を破り、民主党が数十年ぶりに共和党から議席を奪取した。共和党候補のマードック氏は、先月23日にレイプによる妊娠も「神の意思だ」と発言したことが世論の反発を招き、その後支持率が低下していた。

下院の現有勢力は、共和党240・民主党190・欠員5だが、選挙後もこの構成に大きな変化はないもようだ。

共和党のベイナー下院議長は、支持者に対して「(共和党は)解決策を示してきた。国民は解決策を望んでいる。今夜、共和党に下院過半数を引き続き与えることで、国民はその意思を明らかにした」と述べた。 ベイナー議長は「いかなるパートナー」とも協力する、と述べる一方で、富裕層への増税を目指す民主党の動きには引き続き断固として反対するとけん制。「国民は選挙で、増税にノーを突き付けた」と語った。