鈴木敏文





・カリスマ経営者の突然の辞任

セブン&アイ・ホールディングス(HD)の会長兼CEOの鈴木敏文会長が、4月7日の取締役会の結果、緊急会見で辞任を表明した。

2月に現在、セブン&アイ・ホールディングス(HD)社長の井阪隆一氏に社長交代の内示を出した所、その場では『わかりました』と回答した井阪氏が『あの内示は受けられない』として、2日後に反旗を翻し、会長の命令に従わない意向を示し、現代ビジネスの記事によれば、『私はまだ若いし、マンションの支払いもあります。セブンイレブン一筋でやってきました』と主張したという。

その為、鈴木敏文氏は、社長交代の人事案を取締役会にかけることにしたが、4/7の取締役会で、挙手による多数決ではなく、無記名投票による多数決が提起され、それにより、反対多数で人事案が否決された。

人事案を否決されたことにより、井阪隆一氏が、取締役での権力闘争に勝利する形となり、結果として、鈴木敏文氏が潔く辞任することを表明したということである。

特に鈴木敏文会長の交代決議案が出されて、それが可決された訳ではないが、自ら出した人事案を否決されるということは、ほぼそれに等しいことであり、自分の意志が通らなくなったことを受けて、鈴木敏文氏は自ら潔く会長を退いたということである。

この取締役会の決定の前に井阪氏の社長交代が内示された後で、井阪氏の続投を支持した取締役会のメンバー(反鈴木派)が、セブン&アイ・ホールディングス(HD)に出資している外資系ファンド・サードポイントに井阪氏交代の人事案などの情報をリークし、それに批判をさせることで鈴木敏文氏がワンマンで全てを決めてきた体制に揺さぶりをかけたということである。

この取締役会の場面を思い浮かべると、自分の命令に全て従うと思っていた部下たちが、勝手に示し合わせて徒党を組んで、反旗を翻したという状況であり、権力闘争の生々しい一場面である。

・牡羊座ラグナ

この状況から、私は以前見た映画『アレキサンダー』で、アレキサンダーが部下たちに毒殺される場面を思い浮かべた。

カリスマ的な指導者で独裁者であったアレキサンダーの独断についていけないと考えた部下たちが、毒殺により、そのリーダーを取り除いたという結末である。

このアレキサンダーは領土を拡大してインドまで攻め込んで東西をつないでオリエント文明圏を創造した。

こうした何か巨大な領土の拡大や帝国を創造するカリスマ的指導者というものは典型的に牡羊座の象意である。

織田信長も日本を統一したカリスマ的指導者で、独裁者であったが最後は部下の謀反にあって謀殺されている。

そこで私は、鈴木敏文会長は、牡羊座ラグナではないかと考えたのである。

そして、結婚のタイミングや、子供の誕生のタイミング、そして、今回の辞任のタイミングを検討した結果、実際、牡羊座ラグナで正しそうである。



・日本初、業界No.1、コンビニ文化の創造

鈴木敏文会長は、日本初のコンビニエンスストア「セブン-イレブン」を立ち上げ、その後も、POS(販売時点情報管理)システムを導入し、そこから得た情報をマーケティングに使うなど、世界初の試みをしている。

そして、業界でも初めて、アイワイバンク銀行(セブン銀行)を設立して、ATMを店内に導入したが、今ではコンビニにATMがあるのは当たり前のことになった。

そして、最近はコンビニに設置してある専用端末から劇場のチケットが買えたり、宅配の受け取りが出来るなど、テレビ、ラジオ、ダイレクトメール、カタログからコンピューター、スマートフォンなどからのインターネット通信まで、あり得る全ての販路を統合して、同じデータベースを使って在庫管理を一元化するというオムニチャンネルの構築も試みている。

周囲の反対を押し切って創業

鈴木は1973年、日本初のコンビニエンスストア「セブン-イレブン」を立ち上げた。当時の親会社イトーヨーカ堂は大規模小売店「イトーヨーカドー」の出店スピードを上げている時期で、アメリカに倣ったコンビニエンスストア業態の導入は時期尚早との意見が強かった。しかし鈴木は中小小売店の経営を近代化すれば大型店との共存共栄は可能だと考えた。

ドミナント戦略

セブン-イレブンの出店に当たってはドミナント戦略を徹底している。地域に集中的に出店することで、専用工場や専用配送センターの使用率を上げている。

POSシステムを導入

1982年10月、セブン-イレブンにPOS(販売時点情報管理)システムを導入した。全店に導入したのは1983年。 アメリカではPOSシステムが普及しつつあったが、当時のPOSはレジの打ち間違いなどを防止するのが主な目的だった。鈴木はPOSから得た情報をマーケティングに使うことを考えた。これは世界でも初の試みだった。

セブン銀行を設立

2001年4月、株式会社アイワイバンク銀行(のちの株式会社セブン銀行)を設立。 周囲からは「素人が銀行をやっても上手く行かない」と止められた。しかしセブン-イレブンでは電気・ガス料金の収納代行を1980年代から行っており、コンビニ店内で夜中も日曜もお金を下ろせれば便利だろうと考えた。

オムニチャネルの構築

2013年9月、セブン&アイグループ各社の幹部社員約50名をアメリカに派遣。グループを挙げてオムニチャネルを構築することとした。

(wikipedia 鈴木 敏文より引用抜粋)


これらの「日本初」、「世界初」、「業界初」といったキーワードは、何でも一番が好きな牡羊座のキーワードである。

そして、「統一」や「統合」というのも牡羊座のキーワードである。

鈴木敏文氏は、日本に24時間営業のコンビニ文化を創造し、POSシステムを導入してマーケティングを行なったり、ドミナント戦略によって専用工場や専用配送センターの使用率を上げて、効率のよい経営を行うなど、全てのリソースを上から俯瞰する能力にも優れている。

またセブン銀行を設立し、コンビニATMも普及させ、オムニチャンネルを構築して、在庫管理などを徹底させて無駄を省く試みをしている。

また2015年2月期決算でチェーン全店で、4兆82億円の売り上げを上げており、2位のローソン(1兆9327億円)を大きく引き離している。

この業界NO.1というのも牡羊座の特徴であるが、それをもたらしている上から俯瞰するマインド、大きなビジョンにも注目する必要がある。

これらは全て牡羊座の能力としか考えられない。

単に会社を経営して物を売っているのではなく、新しい文化や制度、ライフスタイルを創造しているのである。

その影響力、影響範囲は非常に大きいのである。

 

・バラニーの特徴

そして、更に検討すると、鈴木敏文氏のラグナはバラニーではないかと考えられるのである。

例えば、2016年4月19日の現代ビジネス『鈴木敏文・電撃退任の舞台裏!〜カリスマ経営者は「クーデター」に倒れるのか』には以下のように記されている。

(略)前出のイトーヨーカ堂の元幹部が語る。

「もともと、鈴木さんは『後継者で優秀な奴が出てきたら、俺はそいつをつぶすだろう。それでもつぶれない奴がいたら、それが俺の辞め時だ』と周囲に公言してきました。だから、後進の育成にも積極的でなかったし、1月に辞任したイトーヨーカ堂の戸井和久前社長の件にしても、今回の井阪さんの件にしても、後継者つぶしのような人事をすることがある。


バラニーの特徴として、自分よりも部下が優秀だと、その能力に嫉妬して潰しにかかるという特徴があるのである。

従って、宿曜占星術の解説書にはバラニーの前では、実力を隠さないと嫉妬してつぶされると書いてある。

バラニーの周囲には自然とイエスマンが囲むようになり、バラニーはワンマン独裁者になっていくのである。

取締役会で人事案が否決される前の鈴木敏文氏はまさにこの状態ではなかったかと思われる。

鈴木敏文氏が何かを言えば、必ず通る体制だったのである。

 

イトーヨーカドーの中で、皆の反対を押し切って、コンビニを開業したのも、主流や体制側に属さないバラニーの特徴である。

業界の異端児で、当時、コンビニ業態は日本にはまだ早いと考えられていた。

そうした周囲の反対を押し切って行動するなど、常にバラニーの歩みというのは、反体制的である。

また鈴木敏文氏の最後の退任の仕方は、突然、不名誉な形でやってきたが、これもバラニーの特徴である。

このような不名誉な突然の退任ということで言えば、相撲界の異端児・元横綱の朝青龍もそうである。

朝青龍の引退も突然、不穏な形で訪れた。

2010年/引退

2010年1月場所は千秋楽前の14日目、日馬富士に1分13秒の大相撲の末下手投げで下して優勝を決め、2場所ぶり25度目の優勝を果たした。しかし千秋楽結びの一番では、白鵬に寄り倒されて13勝2敗の成績となった。特に本割での白鵬戦は7連敗となり(但しその間に優勝決定戦で2回勝利)、横綱同士での対戦成績としては男女ノ川が双葉山に喫したワースト記録に並んだ。また、これが結果的に横綱・朝青龍として現役最後の一番となってしまう。

1月場所中の7日目(1月16日)未明、泥酔して暴れる騒動を起こしたと写真週刊誌に報じられ、同1月場所の千秋楽翌日の1月25日に、日本相撲協会の武蔵川理事長から厳重注意処分を受けた。ところがそれから3日後の1月28日、同日発売の週刊新潮の記事によるとその被害者は、当初名乗り出た一個人マネージャーではなく、一般人の男性だったことが発覚。2月1日には、同協会の(理事選挙後の)新理事会で、調査委員会の設置が決まった。被害者男性は元暴走族(関東連合)のリーダーであり、2011年に知人男性を暴行した傷害容疑で逮捕されている。

2010年2月4日、日本相撲協会の理事会で事情聴取を受けた後、突如暴行問題の責任を取る形で現役を引退することを表明した。同時に横綱審議委員の鶴田卓彦委員長(元日本経済新聞社社長)からは横綱として初の「引退勧告書」が提出されている。この引退表明は大きく報じられ、一部の新聞では号外も発行、繁華街や都市部で配布されたほか、テレビ各局の同日夕方以降のニュース番組で緊急特集が組まれた。

同じくモンゴル出身で、この日から事実上の一人横綱となった白鵬は同日中に宮城野部屋で緊急記者会見を開き、「信じたくない。まだやり残したことがあったと思う」と涙ながらに語るなど、先輩横綱の突然の引退による衝撃をうかがわせた。次の2010年3月場所の大相撲番付表は、番付編成会議の数日後ながらも横綱・朝青龍の四股名は完全消滅し、東横綱に白鵬ただ一人の名前が記された。

(wikipedia 朝青龍より引用抜粋)


朝青龍は、月が牡羊座バラニーである。

 

このようにバラニーの最期は決して、祝福された形ではやってこない。

必ず不穏な形で終わるのである。

例えば、アドルフ・ヒトラーもそうである。

ラグナが天秤座ラグナで、ラグナロードの金星が牡羊座バラニーに在住しているので、典型的なバラニーの特徴を示している。

最期は連合軍に敗北して拳銃自殺している。

また部下に暗殺されそうにもなっており、部下の裏切りに遭うという牡羊座の典型的な特徴も示している。

 

また鈴木敏文氏は『挑戦我がロマン 私の履歴書』 (日本経済新聞出版社 2008年)という書籍を出版しているが、本書の中で、自分について語っている。

ヒトラーの『我が闘争』のように自分について語るという牡羊座バラニーの特徴をよく示している。

このように鈴木敏文氏は、セブン&アイ・ホールディングス(HD)の創業者にして、恐ろしく先見の明があり、才能のあるカリスマ経営者であったが、ワンマン経営の独裁者であり、牡羊座に典型的な人物である。


次に鈴木敏文氏のチャートの特徴について見ていくと共にいくつかの主要な出来事についてダシャーとトランジットの検証をしてみたい。

 

・美佐子夫人との結婚

『挑戦我がロマン 私の履歴書』によれば、1959年の春に姉の嫁ぎ先の紹介で2歳年下の美佐子夫人と見合いし、10月に結婚したという。

ダシャーはラーフ/土星期であり、その直前がラーフ/木星期である。

1959年7月1日のトランジット図を作成して検討すると、 木星は7室と7室の支配星にトランジットし、1室にアスペクトしている。

土星は逆行して、ラグナロードの火星にアスペクトしており、1室(7室から見た7室)にダブルトランジットが生じている。


その後、1959年9月1日の時点で、木星は蠍座に移動し、土星は射手座で逆行して2室(結婚生活)にダブルトランジットしている。




そして、ラーフ/土星期に結婚していることから、今回はナヴァムシャのラグナを乙女座に設定している。

出生図のラグナを牡羊座バラニーの第2パダに設定し、ナヴァムシャのラグナを乙女座に設定すると、ラグナから7室にラーフと土星が在住し、この時期に結婚したことが理解できる。





また『挑戦我がロマン 私の履歴書』によれば、結婚した2年後に長男が誕生したと書いてあり、その記述からすると1961年のラーフ/土星期に長男が誕生している。

サプタムシャ(D7)を見ると、マハダシャーのラーフは5−11室の軸にあり、5室支配の木星からアスペクトされており、アンタルダシャーの土星はサプタムシャ(D7)のラグナに在住している。






・次男、鈴木康弘氏の誕生


次男が誕生した時、トランジットの木星は牡羊座で、土星は水瓶座であり、5室の獅子座にダブルトランジットが生じている。

5室には9室支配の木星も在住しているため、5室と9室にダブルトランジットが形成されている状況である。




また牡羊座ラグナであれば、火星も次男が誕生したその日、5室をトランジットしている。

次男が誕生した時、ダシャーは、ラーフ/ケートゥ期であり、ケートゥはサプタムシャの5室に在住している。


何故、今回、突然の辞任騒動になったかというと、まず、現在、月から見て8室に木星がトランジットし、土星もアスペクトしているので、8室にダブルトランジットが生じている。また2016年1月からラーフが獅子座に入室して、その8室の象意を強調している。

8室は障害を表しており、中断のハウスである。陰謀などによって失脚するタイミングである。


また現在、土星がラグナから8室をトランジットしているため、この土星の位置によっても中断するタイミングである。

現在、牡羊座ラグナにとっては、中断のタイミングである。


・辞任騒動の真実



因みに2014年3月1日〜2015年5月28日にかけて、鈴木敏文氏は、次男である鈴木康弘氏を関連会社のセブン&アイ・ネットメディア代表取締役社長からセブン&アイHD執行役員CIOに抜擢し、更にセブン&アイHD取締役執行役員CIOに就任させている。

2014年 3月1日 株式会社セブン&アイ・ネットメディアが株式会社セブンネットショッピングを吸収合併。次男の鈴木康弘氏がセブン&アイ・ネットメディア代表取締役社長に就任。 水星/月      
2014年 12月 次男の鈴木康弘氏がセブン&アイHD執行役員CIO就任。 水星/月      
2015年 5月28日 次男の鈴木康弘氏がセブン&アイHD取締役執行役員CIO就任。 水星/月      


この一連の動きは、次男である鈴木康弘氏をセブン&アイHDの代表取締役に就かせるための布石であったと見なされている。

因みにこの頃のトランジットを確認すると、鈴木康弘氏が、セブン&アイHD執行役員CIOに就任した2014年12月と、取締役執行役員CIOに就任した2015年5月28日は、木星は蟹座を、土星は蠍座をトランジットして、8室の蠍座と10室の山羊座にダブルトランジットが生じている。



蠍座8室には5室支配の太陽と3、6室支配の水星が在住している。

5室支配の太陽(息子)が8室に在住して、6室支配の水星と接合して、火星からアスペクトされて傷ついている。


この頃、鈴木康弘氏を抜擢して、康弘氏はオムニ7というネットショッピング事業を統括していたが、2015年度は80億円以上の赤字を出し、経営手腕に疑問符が付いていたという。

つまり、明らかに手腕の足りない自分の息子を抜擢するという間違った人事を行い、迷走した経営を始めたのがこの頃だと考えられるのである。

あるいは抜擢した息子(5室)に振り回されている(8室)時期であると言えるのである。

5室支配(判断力、識別力)の太陽が8室に在住して傷ついている結果である。



今回の辞任劇では、創業家の伊藤家との確執があったとも伝えられている。

現代ビジネスの記事によれば、雅俊氏の次男である順朗氏と、敏文氏の次男、康弘氏が共にホールディングスの取締役・執行役員についており、二人の間に確執が高まっていたという証言があるそうである。

そして、伊藤家の順朗氏は周囲の人望も厚く、今後ホールディングスの経営の中心人物になっていく可能性が高いと見なされていた一方で、康弘氏を社長の器であると考える社員はほとんどいなかったという。

「康弘氏はオムニ7というネットショッピング事業を統括していましたが、昨年度は80億円以上の赤字を出し、経営手腕に疑問符がついている。にもかかわらず、今回の人事案が出る10日ほど前から『セブンの社長は、ワンクッションおいて俺で決まり』と社内で吹聴していた。

(2016年4月19日 現代ビジネス 『鈴木敏文・電撃退任の舞台裏!〜カリスマ経営者は「クーデター」に倒れるのか』より引用)

つまり、康弘氏は、父親の威光によって、次期社長のポストは自分で決まりだと吹聴するような人物であったということであり、社内での評価も低かったようである。

このような息子を社長に就けるためにまずは、井阪隆一氏を社長の座から下ろそうとしたようである。

つまり、長く社長を務めてきた井阪隆一氏がこのまま続投すると、息子の社長就任にとって障害があるとみなされたのかもしれない。

鈴木敏文氏はそうした世襲の意図を否定しているが、そうした動機があった可能性があるのである。

それは水星が3、6室支配で5室支配の太陽と8室に在住しているからである。


つまり、今回のクーデター劇(人事案否決)は、そのような鈴木敏文氏の経営者としての変節と、息子などの親族をひいきして抜擢するなどの経営判断などを見て、危惧していた取締役によって、伊藤家や、出資元の投資ファンド・サードポイントの承認の元ですすめられた措置であった可能性があるということである。

かつては、鈴木敏文氏に経営を全て任せていた伊藤家も、マハダシャー水星期に入ってからのまずい経営判断や人事案を承認することは出来なかったということである。

そうしたまずい経営判断が、鈴木敏文氏の中に5室支配の太陽と接合して、火星からアスペクトされる3、6室支配の水星期に出て来たということである。


・辞任のタイミング

因みに辞任時のダシャーは、水星/火星期である。

マハダシャーの水星は3、6室の支配星で8室に在住し、アンタルダシャーの火星は8室の支配星で、3、6室支配の水星にアスペクトしている。

つまり、マハダシャー、アンタルダシャー共に8室(失脚)に絡んでいる。

2016年 2月15日 鈴木はセブン-イレブン・ジャパン社長の井阪隆一に対して退任を内示。一旦は井阪から了承を得た。しかし後に井阪が態度を変える。 水星/火星      
2016年 3月 鈴木は3月に取締役候補の指名・報酬委員会を設置、ここで社長交代を提案する。しかしセブン-イレブンの業績が好調だったことなどから、社外取締役の一部が反対。鈴木は社長交代案を取締役会にかけることにした。
水星/火星      
2016年 4月7日 取締役会での採決方法は挙手を予定していたが、社外取締役から異論が出て無記名投票に変更。取締役会の雰囲気は一変する。投票結果は賛成7票、反対6票、白票2票。賛成が総数15票の過半に届かなかったため否決された。

緊急記者会見を開いた鈴木は引退を表明。「反対票が社内から出るようなら、票数に関係なく、もはや信任されていない」旨を述べた。創業家伊藤雅俊名誉会長との確執も示唆した。
水星/火星      

そして、この記事を書いている2016年4月20日現在、トランジットの木星は獅子座で逆行しているため、8室の蠍座にダブルトランジットしている。

つまり、今は8室の象意(スキャンダル、失脚)が生じる時期であったということである。

部下(6室)、あるいは、弟子(5室)の謀反(8室)によって、失脚する(8室)タイミングであったということである。


辞任会見を行った4/7のトランジットを確認すると、8室に土星と木星がダブルトランジットしており、また鈴木敏文氏にとってのラグナロードの火星が8室をトランジットしている。


また月と太陽は、12室をトランジットし、隠遁、引退のタイミングを示唆している。







・天才的な経営判断、先見の明、創造の力

鈴木敏文氏は、自らの経営哲学を元に実際に経営する実践家でもある。

中央大学経済学部を卒業しているため、経済や経営の分野を学んだと推測される。

『鈴木敏文語録 イトーヨーカ堂社長・セブンーイレブンの生みの親 「自分を変える」「人間の心理をつかむ」』増補版 緒方知行責任編集 1999年 祥伝社文庫
『鈴木敏文経営を語る』江口克彦著 PHP研究所、2000年 のち文庫 
『商売の原点』緒方知行編 講談社、2003年 のち+α文庫 
『商売の創造』緒方知行編 講談社、2003年
『鈴木敏文考える原則』緒方知行編著 2005年 日経ビジネス人文庫
『なぜ売れないのかなぜ売れるのか』講談社、2005年
『商売の創造』緒方知行編 2006年 講談社+α文庫 
『鈴木敏文語録集によるマーチャンダイジング教科書 セブン-イレブンの商品開発と品揃え革新を支える原点 いま最大の経営課題競争優位と顧客支持力づくりの決め手!!』
月刊『2020 value creator』編集部編 緒方知行監修 オフィス2020新社、2006年
『鈴木敏文語録「チャンスは君のそばにある」』国友隆一著 あさ出版、2006年
『図解鈴木敏文の「商売の人間学」 なぜ、買うのか売れるのか』勝見明著 大和書房、2006年 のち文庫 
『なぜ買わないのかなぜ買うのか』 講談社、2006年
『挑戦我がロマン 私の履歴書』 日本経済新聞出版社、2008年
『朝令暮改の発想 仕事の壁を突破する95の直言』 新潮社、2008年 のち文庫 
『鈴木敏文の実践!行動経済学 経営学』勝見明構成  朝日新聞出版、2012年 朝日おとなの学びなおし!


ラグナロードの火星は5室に在住し、9室支配の木星と接合して、1−9、1−5、5−9のラージャヨーガ、ダナヨーガを形成している。

5室に火星と木星が絡んでいる為、マネジメント、商取引、バンキングなどの専門教育を表している。

通常、木星は哲学の惑星であるが、テクニカルプラネットの火星やケートゥが絡んでいる為、マネジメント、商取引、バンキングなどのマーケティングの専門知識を表している。

セブン-イレブンの成功はドミナント戦略にあったと自身で語っているようだが、地域に集中的に出店することで、専用工場や専用配送センターの使用率を上げるなどの微細な経営戦略を練り、またPOSシステムを導入したり、銀行を設立して、ATMを導入したり、オムニチャネルの構築を推進するなど、IT戦略に強いのは、火星やケートゥなどのテクニカルプラネットの影響があるからだと思われる。

それらは11室にアスペクトしているため、評価や称号のハウスを強めている。

株式会社セブン&アイ・ホールディングス代表取締役会長といった肩書に加えて、『経済団体連合会副会長、日本チェーンストア協会会長、学校法人中央大学理事長等を歴任、勲一等瑞宝章受章』といった数々の称号に表されている。

また5室は純粋な学問のハウスでもあるため、自らの経営実践を通して、身に着けた経営哲学などを沢山の著作で示している。


また土星が10室の自室に在住して、シャシャヨーガを形成している。

この10室で強い土星は大変なハードワーカーの配置である。


・マラヴィアヨーガと、シャシャヨーガ

ラグナから見て7室、月から見て10室でムーラトリコーナの座にある金星はマラヴィアヨーガを形成し、強力である。

10室の金星はホテルマネジメントなどを表すが、百貨店など、物流業において良い品質の嗜好品を扱うことのできる配置である。

またラグナから見て10室、月からみて1室で、シャシャヨーガを形成する土星も強力である。

これらの金星と土星がケンドラの位置関係で、定座に在住している配置は強力な配置である。




・木星/土星


1974年5月にセブン-イレブン1号店を東京都江東区に出店したり、1975年6月に福島県郡山市でセブン-イレブンの24時間営業を開始した時のダシャーが木星/土星期であり、この創業時の負荷が高い時期に実際に自ら指揮を執って、ハードに実務を行ったと考えられる。

マハダシャー木星期は、セブン-イレブンを創造した時期と位置づけられる。



・土星期〜

そして、マハダシャー木星期が終わって、次の10室でシャシャヨーガを形成するマハダシャー土星期がキャリア上の最もピークの時期である。

11室支配の土星が10室で自室に在住して強いため、株式会社イトーヨーカ堂代表取締役社長に就任し、セブン-イレブンの本体の方の経営も任され、株式会社セブン &アイ・ホールディングス代表取締役会長、同社最高経営責任者(CEO)にも就任して、イトーヨーカドーとセブン-イレブンの両方の経営を任されている。

そして、土星期の終わりの2006年3月には株式会社イトーヨーカ堂(新設会社)代表取締役会長、同社最高経営責任者(CEO)に就任している。

これらが、経営者としての地位、肩書きの頂点である。

これらがマハダシャー土星期にもたらされたことに注目である。

・土星/木星期

マハダシャー土星期の中で、アンタルダシャーが木星期の時期に母校である中央大学の理事長を務めたのが、土星/木星期である。

教育機関に務めたのは、教育の表示体である9室支配で5室に在住する木星期であったからである。




・水星期〜 取締役会における社長交代案の否決と辞任

2016年5月8日に初版発行された『セブンイレブン 鈴木敏文帝国 崩壊の深層』 渡辺仁著 (株)金曜日によれば、鈴木敏文の経営手法は、独裁的で問題があり、その創業当初から加盟店から度々、訴訟を起こされていたようである。

マハダシャー水星期に入ってからの2014年頃から鈴木敏文氏が推し進めてきたフランチャイズ商法の問題点が日米で大規模な紛争の火種となり、もはやその法的・社会的責任を免れ得ない”末期症状”を呈し始めたという。

2007年2月からマハダシャー水星期に移行し、こうした経営手法の問題が進行し、 2014年になって水星/月期になって、これが噴出してきたようである。

また次男をオムニチャンネル戦略で抜擢し、世襲を行なおうとしたのもこの水星期に入ってからである。

水星は3、6室支配で5室支配(判断力、識別力)の太陽と8室に在住して、8室支配の火星からアスペクトされているため、明らかに経営判断に問題が生じていたことが分かる。

2014年7月下旬には米国セブン加盟店協会メンバーがプラカードを掲げて、鈴木敏文と米国側CEOの退陣を求めた抗議活動を起こしていたようである。


『セブンイレブン 鈴木敏文帝国 崩壊の深層』の内容を取材したジャーナリストの渡辺仁氏は、この書が発刊される前に亡き人となっていたようだが、亡くなる数年前からセブンイレブンの経営の問題点をフランチャイズ加盟店のオーナーなどに取材しながら調査を進めていたようである。

明らかにジャーナリストの渡辺仁氏は、鈴木敏文氏の出生図の3、6室支配で8室に在住する水星の表示体である。


そして、創業家の伊藤家や出資元のサードポイントなどからも見放された結果、計画的に取締役会で、人事案を否決され、辞任に追い込まれたようである。

つまり、昨今、自身の経営に問題が生じていたので、本人にも危機意識があったようである。

そのため、人事案を否決された時点で、自ら辞任を選んだと理解できる。

その次に来るのは取締会での鈴木敏文氏の解任決議案だが、動議が出される前に自ら辞任した形である。

これが水星/火星期に生じたのは、既に上述したが、水星は3、6室支配で8室(失脚、スキャンダル)、火星が8室の支配星だからである。


但し、水星は6室支配で8室に在住しているので、ヴィーパリータラージャヨーガ(逆転のラージャヨーガ)も形成している。

水星/火星期に取締役会で、失脚はしたが、その後の新人事で、最高顧問という形で、ポストが与えられている。

これは部下(6室)から与えられる(8室)配置の効果ではないかと考えられる。


・ナヴァムシャのラグナの検証


因みにナヴァムシャのラグナを乙女座に設定すると、マハダシャー水星期は1、10室支配の水星が6室(訴訟)に在住し、12室(海外)に在住する3、8室(中断)支配の火星と相互アスペクトする形となる。

鈴木敏文氏の経営が破綻しはじめたのが、マハダシャー水星期からで、それは米国での加盟店の大規模な抗議活動などから始まっている。

従って、12室(海外)から3、8室支配の火星が10室(事業)の支配の水星にアスペクトしていることに納得できる。

そして、火星は3、8室(失脚)支配で12室(引退)に在住しているので、今回、辞任となったものと思われる。

(資料)

西暦 月日 出来事 ヴィムショッタリダシャー チャラダシャー ヨーギニダシャー トランジット
1952年   長野県小県蚕業高等学校(現在の長野県上田東高等学校)卒業。 火星/金星    
1956年   中央大学経済学部卒業、東京出版販売(現トーハン)に入社。 ラーフ/ラーフ
ラーフ/木星
     
1959年 10月 姉の嫁ぎ先の紹介で見合いし、2歳年下の美佐子夫人と結婚。 ラーフ/木星
ラーフ/土星
     
1961年   長男誕生。 ラーフ/土星      
1963年 9月 株式会社イトーヨーカ堂入社。 ラーフ/水星      
1965年 2月28日 次男、鈴木康弘氏、誕生。(長男、鈴木隆文氏の誕生日は不明) ラーフ/ケートゥ      
1971年 9月 株式会社イトーヨーカ堂取締役。 ラーフ/火星      
1973年 11月 セブン-イレブンを展開する米サウスランド社と提携し株式会社ヨークセブン(のちの株式会社セブン-イレブン・ジャパン)を設立、専務取締役に就任。 木星/木星      
1974年 5月 セブン-イレブン1号店を東京都江東区に出店。 木星/土星      
1975年 6月 福島県郡山市でセブン-イレブンの24時間営業を開始。

木星/土星

     
1977年 9月 株式会社イトーヨーカ堂常務取締役。 木星/水星      
1978年 1月 株式会社ヨークセブンを株式会社セブン-イレブン・ジャパンに改称。 木星/水星      
1978年 2月 株式会社セブン-イレブン・ジャパン代表取締役社長。 木星/水星      
1983年 4月 株式会社イトーヨーカ堂専務取締役。 木星/太陽      
1991年 3月 米サウスランド社の経営権を取得。 土星/土星
土星/水星
     
1992年 10月 株式会社イトーヨーカ堂代表取締役社長。 土星/水星      
2001年 4月 株式会社アイワイバンク銀行(のちの株式会社セブン銀行)を設立。 周囲からは「素人が銀行をやっても上手く行かない」と止められた。しかしセブン-イレブンでは電気・ガス料金の収納代行を1980年代から行っており、コンビニ店内で夜中も日曜もお金を下ろせれば便利だろうと考えた。 土星/火星      
2003年 5月 株式会社イトーヨーカ堂代表取締役会長、同社最高経営責任者(CEO)、株式会社セブン-イレブン・ジャパン最高経営責任者(CEO)。 土星/ラーフ      
2005年 9月 株式会社セブン&アイ・ホールディングス代表取締役会長、同社最高経営責任者(CEO)。 土星/木星      
2005年 11月 母校の中央大学で理事長を務める。(〜2008年5月) 土星/木星      
2006年 3月 株式会社イトーヨーカ堂(新設会社)代表取締役会長、同社最高経営責任者(CEO)。 土星/木星      
2013年 9月 セブン&アイグループ各社の幹部社員約50名をアメリカに派遣。グループを挙げてオムニチャネルを構築することとした。 水星/太陽      
2014年 3月1日 株式会社セブン&アイ・ネットメディアが株式会社セブンネットショッピングを吸収合併。次男の鈴木康弘氏がセブン&アイ・ネットメディア代表取締役社長に就任。 水星/月      
2014年 12月 次男の鈴木康弘氏がセブン&アイHD執行役員CIO就任。 水星/月      
2015年 5月28日 次男の鈴木康弘氏がセブン&アイHD取締役執行役員CIO就任。 水星/月      
2016年 2月15日 鈴木はセブン-イレブン・ジャパン社長の井阪隆一に対して退任を内示。一旦は井阪から了承を得た。しかし後に井阪が態度を変える。 水星/火星      
2016年 3月 鈴木は3月に取締役候補の指名・報酬委員会を設置、ここで社長交代を提案する。しかしセブン-イレブンの業績が好調だったことなどから、社外取締役の一部が反対。鈴木は社長交代案を取締役会にかけることにした。
水星/火星      
2016年 4月7日 取締役会での採決方法は挙手を予定していたが、社外取締役から異論が出て無記名投票に変更。取締役会の雰囲気は一変する。投票結果は賛成7票、反対6票、白票2票。賛成が総数15票の過半に届かなかったため否決された。

緊急記者会見を開いた鈴木は引退を表明。「反対票が社内から出るようなら、票数に関係なく、もはや信任されていない」旨を述べた。創業家伊藤雅俊名誉会長との確執も示唆した。
水星/火星      
wikipedia 鈴木敏文より引用抜粋、一部編集 

 

鈴木敏文・電撃退任の舞台裏!〜カリスマ経営者は「クーデター」に倒れるのか
2016年4月19日 11時0分 現代ビジネス

なにからなにまで異例づくめの退任会見だった。セブンイレブンという巨大な流通組織を一から作り上げたカリスマは、なぜ玉座を追われることになったのか。関係者たちが語る騒動の舞台裏とは?

■自社の社長をボロカスに批判
「(セブンイレブン社長の井阪?一氏は)一生懸命やってくれたんだろうが、COOとしての役割を果たしてくれていたかといえば、やはり会社全体としては物足りなさがあったことは事実。なんとか育てていきたいと思いましたが、7年も社長を務めたのだから、もういいだろうと(社長交代の)内示を出した。

その場では『わかりました』ということだったが、2日経って、『あの内示は受けられない』という。『(自分は)こんなことをやってきた。あんなこともやってきた』と並べ立てるんだが、それは違うだろうと。

そうしたら『私はまだ若いし、マンションの支払いもあります。セブンイレブン一筋でやってきました』と食ってかかってきた。ケンカ腰なんです。ああいう姿は見たことがなかった」

およそ、日本を代表する企業の会長が行う記者会見とは思えないほど、赤裸々な内容だった。口調は終始穏やかなものの、語っている内容はまさに自らの会社の部下に対するダメ出し、批判のオンパレード。異例の「ブチ切れ会見」であった。

4月7日、東京・八重洲。集まった200人近い記者たちの熱気がこもる部屋で、セブン&アイ・ホールディングスのCEO(最高経営責任者)で日本のコンビニ文化の立て役者である鈴木敏文会長(83)が、退任を表明した。

■鈴木家vs.伊藤家
鈴木氏は同日午前の取締役会で、セブンイレブン社長兼最高執行責任者(COO)の井阪氏を退任させ、後任に古屋一樹取締役執行役員副社長を昇格させる人事案を提出した。しかしそれが否決されたため、自らセブン&アイの経営から身を引く決意を固めたと述べた。セブン&アイの幹部が語る。

「井阪社長を退任させるという人事案が取締役たちに知らされたのは、わずか3日前の4月4日のことでした。米国の投資ファンドでセブン&アイの大株主であるサードポイントが鈴木会長の人事案を批判していることは知っていましたが、まさか、この取締役会で鈴木さんと反対派が決裂するとは思ってもみませんでした。対立があっても、話し合いでうまく乗り切れるはずだと考えていた」

この会見で明らかになった、もう一つの意外な事実-それは鈴木氏とイトーヨーカ堂の創業家である伊藤家との確執だ。名誉会長の伊藤雅俊氏(91)は、イトーヨーカ堂出身でセブン&アイをここまで大きく育てた鈴木氏の経営手腕に全幅の信頼を置いていると見られてきた。

だが、鈴木氏の側近たちが今回の人事案に関して名誉会長の承認を得ようとしても、伊藤氏のハンコが押されることはなかった。イトーヨーカ堂の元幹部が語る。

「'92年に総会屋問題が起きて経営責任が問われたとき、鈴木さんが『私がやめます』と申し出たにもかかわらず、当時オーナー社長だった伊藤さんは『自分が辞めるから、あとの経営を頼んだ』と鈴木さんに全権を委任しました。これまでも伊藤さんが鈴木さんの経営戦略に口を出すことはなかった。しかし、今回の人事案で伊藤さんは鈴木さんの反対に回った。これは50年以上二人で一緒にやってきて、初めてのことでしょう」

鈴木氏は会見で「創業家との関係」について問われ、「世代が変わった」という意味深な言葉で説明した。意図するところは正確にはわからない。ただ、雅俊氏の次男である順朗氏(57)と、敏文氏の次男、康弘氏(51)は共にホールディングスの取締役・執行役員についており、二人の間に確執が高まっていたという証言もある。セブンイレブンの関係者が語る。

「康弘氏はオムニ7というネットショッピング事業を統括していましたが、昨年度は80億円以上の赤字を出し、経営手腕に疑問符がついている。にもかかわらず、今回の人事案が出る10日ほど前から『セブンの社長は、ワンクッションおいて俺で決まり』と社内で吹聴していた。

敏文会長は会見で世襲の思惑を否定していましたが、心の片隅に息子に継がせたいという気持ちがなかったと言えば嘘になるでしょう。でも康弘氏が社長の器だと考える社員はほとんどいなかった。

一方、順朗氏は周囲の人望も厚く、今後ホールディングスの経営の中心人物になっていく可能性が高い」

会見で、敏文氏は「ここではお恥ずかしくて申し上げられないのですが、『獅子身中の虫』がおりまして、情報をいろいろと外部にもらしていた」とまで述べた。ここで、鈴木氏が『虫』と指摘したのは、伊藤家の取り巻き、そして反鈴木派であることは間違いないが、とりわけ外資系ファンドのサードポイントに情報漏洩していた人物のことだろう。

■やれるならやってみろ!
サードポイントのCEOダニエル・ローブ氏は、3月27日、セブン&アイの取締役に対して、書簡を送り、敏文氏の人事案に関する噂に言及している。一部抜粋する。

「弊社は取締役執行役員副社長の古谷一樹(あるいは別の幹部)が、セブン・イレブン・ジャパンの暫定社長に就任することで、鈴木会長がご子息である鈴木康弘氏を将来のセブン・イレブン・ジャパン社長に、そして、やがてセブン&アイ・ホールディングスのトップに就ける道筋を開くという別の噂も耳にしています。

この噂が真実だとすれば、鈴木会長のトップとしての適性と判断力に重大な疑問が生じ、会長がグループのために的確な判断を下しているのかどうかが疑われることになります」

このように反鈴木派は、外資系ファンドを巧みに利用しながら、これまで鈴木氏の独断だったセブン&アイの人事について揺さぶりをかけたのだ。

会見で鈴木氏は何度も、「ずっと最高益を続けてきた」と強調した。自分は最高の経営を行ってきたし、今後の見通しも明るい。なのになぜ、信頼関係を築いてきたはずの創業家や海外のファンドにケチをつけられるのか-そんな気持ちがにじみ出ていた。

また、「最高益が出ている中だからこそバトンタッチしたい。調子が落ちてきたから逃げるのではない」とも述べた。これは裏返せば、「俺がいなくても、同じように経営できると思うなら、自分たちでやってみろ」という挑戦状のようにも取れる。前出のイトーヨーカ堂の元幹部が語る。

「もともと、鈴木さんは『後継者で優秀な奴が出てきたら、俺はそいつをつぶすだろう。それでもつぶれない奴がいたら、それが俺の辞め時だ』と周囲に公言してきました。だから、後進の育成にも積極的でなかったし、1月に辞任したイトーヨーカ堂の戸井和久前社長の件にしても、今回の井阪さんの件にしても、後継者つぶしのような人事をすることがある。

今回の一件で、最高益を出し続け、大成功を収めているように見えるセブン&アイの経営体制がいかに危ういものかということが明らかになりました」

経営のグローバル化や企業ガバナンスの強化が声高に叫ばれる昨今、鈴木氏のようなカリスマが独断で経営を進めるのは難しい時代になったのは確かだ。セブン&アイも今年3月8日に、取締役を指名し、その報酬を決める「指名・報酬委員会」を設置したばかり。その委員長や委員を務める外部取締役が、今回の鈴木氏の人事案の反対に回っている。

■引退か、逆襲か?
ジャーナリストで鈴木氏に関する著書も多い勝見明氏が語る。

「鈴木氏は、周囲のだれもが反対する事案を押し切って事業を成功させてきた『逆説の経営者』です。セブンイレブンも、コンビニATMを中心とするセブン銀行も、最初は皆が反対した。まさに天才的感覚の持ち主で、一般人の見えないところを見ているのです。今回の井阪社長の交代にしても、普通に考えれば『業績は絶好調なのになぜ代えるのか』ということになるが、凡人にはわからない視点で見ていたのかもしれません」

だが、そのようなカリスマの意見はしばしば直観的なもので、必ずしも社外取締役や外資系ファンドを納得させられる客観的論理に支えられたものではない。鈴木氏のワンマン経営は素晴らしい業績を残したが、今後もそれを続けることは時代が許さなかったともいえよう。

気になるのは、今後、鈴木氏がすんなり経営陣から退くのか、あるいはそれはブラフで、返り咲きを狙っているのか、という点だ。前出のセブンイレブン関係者が語る。

「イトーヨーカ堂はもともと、三井系の会社。三井物産元社長の井澤吉幸氏が日本法人会長を務める国際資産運用会社ブラックロックとサードポイント、それに三井系企業と伊藤家がかなりの数の株を押さえています。仮に鈴木氏が人事案をゴリ押ししたとしても、株主総会で否決されることは明らかです。

そこで、鈴木氏は退任会見を開いて世論の後押しを得て、社内やフランチャイズ店から鈴木復活待望論が巻き起こるのを待っているのではないか。

伊藤家としては最大の功労者である鈴木氏に、いい形で勇退してほしいと考えているはずですが、ここまでこじれてしまうと、それも難しい」

そのような意見とは逆に、前出の勝見氏は「鈴木氏は会社にしがみつくタイプではない」と見る。

「若い頃から周りの反対を押し切っても成功できたのは、地位に汲々とする性格ではなかったからでしょう。院政をしくこともなくすっぱり辞めて、リタイア生活を送るのではないでしょうか」

鈴木氏と一緒に退任会見の席に座った村田紀敏セブン&アイCOOも、自身の退任を表明している。今後の人事がどうなるかはまだわからない。コンビニという巨大な流通網を築いた偉大な経営者はこのまま表舞台から去るのか。それとも逆襲の一手はあるか。

「週刊現代」2016年4月23号より