門馬寛明(もんま かんめい)

出生日時: 1921年1月18日AM6:11 福島県浪江町
経歴、職業:西洋占星術師、明暗塾創始

手元に一冊の本がある。
『西洋占星術-あなたを支配する宇宙の神秘-』光文社 という本である。この本を見ると、門馬寛明氏は、オーソドックスな西洋占星術師であるという印象を受ける。明暗塾を主催し、弟子の中にはプロの占星術師を大勢輩出しているようである。



『西洋占星術-あなたを支配する宇宙の神秘』光文社
1966年6月20日初版1刷発行
1999年5月5日118刷発行


『占い読本』に門馬寛明氏の出生データが掲載されていたため、チャートを出力してみた。
ラグナが射手座で、ラグナロードの木星が9室獅子座に在住して、ラグナと5室在住の月にアスペクトしている。
さらに3室に在住する金星、火星にもアスペクトし、逆行しているため、太陽、水星にもアスペクトしている。

9室に在住する吉祥の木星は幅広い保護と幸運をハウスと惑星に振りまいている。
木星は月をラグナとして、9室支配で5室に在住しており、ナヴァムシャでも月からみて9室支配で5室に在住している。
非常に木星の配置が良いことが分かる。

まず木星が強く、ラグナロードが9室に絡み、さらに1室や月にアスペクトを返しているため、健康面での強い守護を受けるはずである。
また9室の状態が良い場合、信仰、宗教活動、奉仕、慈善活動、高度な学問、海外生活、グル(師匠)との関係などの9室の象意に恵まれるはずである。

そして、ラグナロードが在住する部屋の象意はその人の基本的な興味や活動の方向性を表す傾向があるため、9室というのが彼の人生の活動領域であることが予想される。

実際、 彼は”神学校を卒業して、満州で布教活動をしていた”という経歴からすると、まさに彼の人生が神や信仰を求め、満州(海外)で布教活動(慈善、奉仕)をするというように彼の人生のテーマが全体として9室の象意によって表現されていることが分かる。

布教者とは神に仕える身であり、神との関係も密接であり、また正しく生きることを実践していくのである。
そして、その生活は非常に道徳的、倫理的になるはずである。 木星が強い人は常に道徳的倫理的であり、グル(教師)や上司との関係も良好である。グル(教師)とは神が表現される経路であると考えられるため、非常に神や精神的源との関係が良好であることを指している。

また木星は子供のカラカである。あるいは弟子や生徒のカラカである。9室で強い木星は5室にもアスペクトし、彼が弟子や生徒に恵まれ、かつ恩恵を与え、弟子や生徒との関係が良好であることを表している。従って、彼の門下生たちに立派な占星術師が育っていることも、この強い木星の恩恵によるものである。彼はこの強い木星によって、神との良好な関係を保ち、インスピレーションに恵まれ、高度な学問、運命学の機会を与えられ、かつ自分自身も良い教師となって、多くの優秀な弟子たちを育成しているのである。

布教活動中に「満州の星の美しさに魅せられたこと」、神学校時代にテトラビブロスを読んでいたことが占星術を学ぶことになるきっかけだったと資料に書かれているが、満州の星の美しさに魅せられるというように大自然(神の創造物)に対する畏敬の念と、それらから来るインスピレーション、そして、テトラビブロスのような古典中の古典と出会い、高度な学問への憧憬をもたらされたことは彼がやはり、並々ならぬ、神の恩恵、幸運、9室の象意に恵まれた人物であったとしか考えられない。普通の人はテトラビブロスなどという高尚な書物と出会うことは非常に難しいのである。それらは恩寵(9室)によって与えられたのである。

戦後、占い師に転じて明暗塾を設立したと、書かれており、占星術など高度な学問、運命学に取り組んだのも、この強い9室の象意であると言える。彼の経歴全ては一言で言えば、9室木星である。彼は9室木星の人であると言える。

流智明氏、訪星珠氏などの占星家としての名前をよく見かける有名占星術師も彼の弟子であり、彼は優秀な生徒に恵まれる最高の教師である。

次に彼の10室を見ると、逆行する土星が在住している。土星は山羊座の水星と2室と10室で星座交換している。
この水星と土星は土の星座に在住し、またアルタハウスでもあるため、非常に地に足がついた実務的、実践的な象意を示している。
仕事はハードワークであることを表しており、経理とか、事務とか、きちっとした時間を管理された仕事、秘書とか、サービス業のような下請け的な仕事を表している。実際、彼がどんな仕事をしていたのかは分からないが、かなり働き者で、忙しい人ではなかったかと思われるのである。10室の支配星が2室に在住していることから、彼は自分の両親、家族(2室)がいるようなプライベートな空間で働き、また勤め人ではなく、自営業や出来高の仕事(2室)であるのかもしれない。

9室支配の太陽が2室に在住してダナヨーガを形成して、7、10室支配の水星が2室に在住していることから、彼の仕事は運命学とか占星術のような高度な学問に関する文筆業で、自分の自宅で、身近な家族に囲まれながら、そして、自宅にビジネスパートナーを迎え入れて、行うような仕事によって、収入を得ていたと思われる。明暗塾という占星学教室の運営もこの2室が表しているように思われる。これらは彼の収入源であり、ダナヨーガを形成しているので、かなり発展したことが考えられる。彼の働き方は、上記での述べたように乙女座や山羊座の象意が表す非常に実務的で忙しいものであったことが予想される。

彼の3室を見ると、3室には6、11室支配の金星と、5、12室支配の火星が在住してコンジャンクトしている。
3室は食欲や性欲を表す低次欲求のハウスである。3室はトリシャダハウスであり、欲望、消費の部屋である。
野心、願望を表し、雑誌、書籍などの媒体を通じて、自己表現したいという野心や欲求も表している。

そして、金星と火星の絡みは激しい恋愛や性的関係などを示しており、こうした組み合わせが彼の欲求を表している。
先に紹介した彼の書籍(『西洋占星術-あなたを支配する宇宙の神秘-』光文社)の内容を見ると、各星座の性行為についてまるで体験したかのように詳細に記されており、彼がこうした分野について、非常に詳しいことを物語っている。

彼のナヴァムシャを見ると、ラグナロードの金星が7室支配の火星と6室でコンジャンクトしている。
1室と7室、金星と火星の絡みが生じている。彼は非常に正しく生きる信仰者ではあっても、一方では非常に性的誘惑にさらされることが多かったのではないかと思われる。

ラシチャート上でも月をラグナとした場合、ラグナロードの火星と7室支配の金星が11室でコンジャンクトしている。いずれも1−7室、金星と火星の絡みがラシチャート上でも、ナヴァムシャ上でも確認できる。従って、彼はセックスに関して強い関心のある人物であり、実際、そのような体験の機会が多かったことを物語っている。然し、こうした金星と火星に対して、木星がラシチャートでもナヴァムシャでもアスペクトして、保護しており、最終的には彼は道徳的に振舞うことを表している。

然し、ラシチャート上で、5室支配の火星が3室に在住し、8室支配の月が5室に在住していることは彼が弟子の誘惑を受けたかもしれず、また弟子のことで悩んでいたことを示している。6−11室支配の金星は3室に在住することによって、トリシャダとドゥシュタナの最悪の絡みを生じている。6室は対人関係の部屋であり、訴訟や闘争を表しており、11室は願望を表しており、3室は欲望を表している。従って、これらの絡みから生じる象意はあまり良いものではないことが分かる。然し、こうした絡みから生じる結果を木星がアスペクトすることで、緩和して、最悪の事態を免れることが可能であったかもしれない。

門馬寛明氏のチャートの大きな特徴を挙げるとすれば以下の3点である。

仕事、職業

太陽と水星は2室でダナヨーガを形成しているが、月から見ると、10室に在住しており、太陽と水星が彼の職業を表しており、金銭を稼ぐ手段であることを表している。太陽も水星も仕事のカラカであり、さらに10室に在住することで仕事のハウスとも絡んでいる。また水星はラグナから10室の支配星であり、10室に在住する土星と星座交換しているため、やはり水星が10室と絡んでいる。従って、彼の仕事が占星術とか、文筆業であることが分かる。

ダーシャムシャ(10分割)を見ると、ラグナ、月から見て、10室に9室支配の木星が在住しており、4室から水星、太陽がアスペクトしている。10室に在住する木星は成功した占星術師を表しており、インドの占星術界で高い名声を得ているK.N.ラオ氏や、B.V.ラーマン氏と同じ配置である。そして、木星に対する水星の相互アスペクトは占星術の絡みである。

従って、ラシ、ナヴァムシャ、ダーシャムシャのいずれのチャートでも水星が絡んでおり、また木星や太陽も絡んでおり、文筆、占星術、運命学が職業であることが分かる。また太陽はリーダーシップや管理力、マネジメントを表すため、彼が人にアドバイスをし、多くの人間を管理することが仕事上可能であったことを表している。

人生の目的

人生の真の目的は神や信仰、精神性の追求、慈善活動や奉仕活動、高度な学問、運命学の探求であり、高い精神的価値観に基づいて、正しく生きることが彼の目的であったと考えられる。それはラグナロードの木星が9室に在住していることで表されている。

欲望、心の不安定さ

上記で述べたように3室には彼の欲望が示されており、それによって、彼は忍耐し、苦労したことを物語っている。
この部分や彼のネックとなる部分であるが、然し、木星のアスペクトがあることで最終的にこのことがもたらす問題から保護されたことが考えられる。

 

ヴィムショッタリダシャー

次にヴィムショッタリダシャーで彼の人生の推移を見ていくと、生まれて直ぐにマハダシャー金星期に入っている、金星は6、11室の支配星で3室に在住し、火星と接合して、土星からのアスペクトを受けている。ナヴァムシャでも火星と接合して土星からアスペクトされており、ラグナから6室に在住している。従って、生まれてから20年間の時期は欲望が強く、またトラブルも多かったことと思われる。
彼の精神的傾向、霊的傾向はこの幼年期、青年期の後悔や反省をきっかけとしている可能性もある。出生時間が正しく、ラグナの位置と月の位置に問題がなければ、金星期は煩悩の時期である。ラグナから見ても月から見てもそうである。

1941年10月頃にマハダシャー太陽期にシフトしているが、太陽は9室の支配星であり、彼はこの時期から非常に精神的になり、海外にも縁が出来たり、リーダーシップを発揮して、自ら率先して行動したのかもしれない。太陽期の特徴として、決断したり、地位が上がり、威厳が出てきた時期ではないかと思われる。

1947年10月からマハダシャー月期にシフトしている。月は蟹座8室の支配星で牡羊座5室に在住している。牡羊座の月の時期は何かと新しいことを始めたり、企画して、自ら取り組んだ時期であったことが予想される。然し、8室の象意である不自由や中断、束縛に悩まされた可能性もあったと思われる。

そして、火星期を経て、1964年10月からマハダシャーラーフ期が訪れている。
1966年頃に『西洋占星術-あなたを支配する宇宙の神秘』を出版して、占いブームとなったようであり、ラーフ期に入ってから、占いがブームになり、彼の活動も非常に世俗的で、社会的に活発になり、11室に在住するラーフが示すように収入への関心が強まり、人との交流が盛んに行われ、社会的評価も高まり、世俗的な意味での名誉欲が出て来た時期であったと思われる。

そして、1982年10月からマハダシャー木星期が訪れている。
つまり、61歳頃である。この時期に人生最良の時期を迎えている。彼が積極的に教えたり、自分の奉仕活動を発展させようとしたのはこの人生の晩年においてだったと思われる。 然し、9室は10室を損失する部屋であり、9室は特徴として地味である。
従って、晩年、地味ではあったかもしれないが、教育熱心に活動したものと思われる。

最近まで健在であったというため、彼は非常に良い晩年を過したことが分かる。

 

 

(資料)

孤独と放浪の星のもとに 著者 門馬寛明
 私は、大正十年一月十八日午前六時、山羊座の星のもとに生まれました。そのとき、金星と火星と天王星が魚座にあり、孤独と放浪の運命を暗示していました。はたせるかな、三歳で両親を失い、満州をひとり転々とすることになりました。
 占星術に魅入られたのは、この放浪中のことです。あるとき、国境近くの小さな村に着いた私に、ひとりの老人が、「水星が止まった。あなたは日本に帰らないと災難に遭う」と言うのです。村が匪賊に襲われて全滅したのは、私が帰国のため、馬でモンゴルを横断していたときです。
 当時、日本には占星術師はおろか、訳本とてなく、苦心して手に入れたトレミーの『テトラビブロス』(占星術の古典)を苦心惨憺して読みました。だから、私にとって師と仰ぐのは、トレミーのほかありません。
 私のホロスコープは96歳以上を生きる運命を示唆し、死は書斎にある書類ケースと机の間に居るときに訪れることを予言しています。
<著者略歴>
キリスト教伝道者だったが、占星術を信じたため破門さる。著書に、『ジプシー占い』『LOVE占星術』(いずれもカッパ・ブックス)などがある。現在、日本占星学協会会長

(『西洋占星術-あなたを支配する宇宙の神秘』光文社 裏表紙より引用抜粋)

門馬寛明 (1921-) 日本の占星術の草分けのひとり。福島県(樺太との説も)の出身で神学校を卒業後満州で布教活動をしていたがその時期に満州の星の美しさに魅せられたことと神学校時代にテトラビブロスを読んでいたことが占星術を学ぶようになったという。戦後占い師に転じて明暗塾を設立。流智明、訪星珠らが彼に学んだ。また明暗塾の占星学の教科書は日本語で本格的に占星学を学べる貴重な本であった。[ ffortune.net占星学用語辞典より引用抜粋( http://www.ffortune.net/fortune/astro/index.htm )]