手元に一冊の本がある。
『占い読本』に門馬寛明氏の出生データが掲載されていたため、チャートを出力してみた。 まず木星が強く、ラグナロードが9室に絡み、さらに1室や月にアスペクトを返しているため、健康面での強い守護を受けるはずである。 そして、ラグナロードが在住する部屋の象意はその人の基本的な興味や活動の方向性を表す傾向があるため、9室というのが彼の人生の活動領域であることが予想される。 実際、 彼は”神学校を卒業して、満州で布教活動をしていた”という経歴からすると、まさに彼の人生が神や信仰を求め、満州(海外)で布教活動(慈善、奉仕)をするというように彼の人生のテーマが全体として9室の象意によって表現されていることが分かる。 また木星は子供のカラカである。あるいは弟子や生徒のカラカである。9室で強い木星は5室にもアスペクトし、彼が弟子や生徒に恵まれ、かつ恩恵を与え、弟子や生徒との関係が良好であることを表している。従って、彼の門下生たちに立派な占星術師が育っていることも、この強い木星の恩恵によるものである。彼はこの強い木星によって、神との良好な関係を保ち、インスピレーションに恵まれ、高度な学問、運命学の機会を与えられ、かつ自分自身も良い教師となって、多くの優秀な弟子たちを育成しているのである。 布教活動中に「満州の星の美しさに魅せられたこと」、神学校時代にテトラビブロスを読んでいたことが占星術を学ぶことになるきっかけだったと資料に書かれているが、満州の星の美しさに魅せられるというように大自然(神の創造物)に対する畏敬の念と、それらから来るインスピレーション、そして、テトラビブロスのような古典中の古典と出会い、高度な学問への憧憬をもたらされたことは彼がやはり、並々ならぬ、神の恩恵、幸運、9室の象意に恵まれた人物であったとしか考えられない。普通の人はテトラビブロスなどという高尚な書物と出会うことは非常に難しいのである。それらは恩寵(9室)によって与えられたのである。 戦後、占い師に転じて明暗塾を設立したと、書かれており、占星術など高度な学問、運命学に取り組んだのも、この強い9室の象意であると言える。彼の経歴全ては一言で言えば、9室木星である。彼は9室木星の人であると言える。 次に彼の10室を見ると、逆行する土星が在住している。土星は山羊座の水星と2室と10室で星座交換している。 9室支配の太陽が2室に在住してダナヨーガを形成して、7、10室支配の水星が2室に在住していることから、彼の仕事は運命学とか占星術のような高度な学問に関する文筆業で、自分の自宅で、身近な家族に囲まれながら、そして、自宅にビジネスパートナーを迎え入れて、行うような仕事によって、収入を得ていたと思われる。明暗塾という占星学教室の運営もこの2室が表しているように思われる。これらは彼の収入源であり、ダナヨーガを形成しているので、かなり発展したことが考えられる。彼の働き方は、上記での述べたように乙女座や山羊座の象意が表す非常に実務的で忙しいものであったことが予想される。 彼の3室を見ると、3室には6、11室支配の金星と、5、12室支配の火星が在住してコンジャンクトしている。 そして、金星と火星の絡みは激しい恋愛や性的関係などを示しており、こうした組み合わせが彼の欲求を表している。 彼のナヴァムシャを見ると、ラグナロードの金星が7室支配の火星と6室でコンジャンクトしている。 ラシチャート上でも月をラグナとした場合、ラグナロードの火星と7室支配の金星が11室でコンジャンクトしている。いずれも1−7室、金星と火星の絡みがラシチャート上でも、ナヴァムシャ上でも確認できる。従って、彼はセックスに関して強い関心のある人物であり、実際、そのような体験の機会が多かったことを物語っている。然し、こうした金星と火星に対して、木星がラシチャートでもナヴァムシャでもアスペクトして、保護しており、最終的には彼は道徳的に振舞うことを表している。 然し、ラシチャート上で、5室支配の火星が3室に在住し、8室支配の月が5室に在住していることは彼が弟子の誘惑を受けたかもしれず、また弟子のことで悩んでいたことを示している。6−11室支配の金星は3室に在住することによって、トリシャダとドゥシュタナの最悪の絡みを生じている。6室は対人関係の部屋であり、訴訟や闘争を表しており、11室は願望を表しており、3室は欲望を表している。従って、これらの絡みから生じる象意はあまり良いものではないことが分かる。然し、こうした絡みから生じる結果を木星がアスペクトすることで、緩和して、最悪の事態を免れることが可能であったかもしれない。 門馬寛明氏のチャートの大きな特徴を挙げるとすれば以下の3点である。 仕事、職業 太陽と水星は2室でダナヨーガを形成しているが、月から見ると、10室に在住しており、太陽と水星が彼の職業を表しており、金銭を稼ぐ手段であることを表している。太陽も水星も仕事のカラカであり、さらに10室に在住することで仕事のハウスとも絡んでいる。また水星はラグナから10室の支配星であり、10室に在住する土星と星座交換しているため、やはり水星が10室と絡んでいる。従って、彼の仕事が占星術とか、文筆業であることが分かる。 ダーシャムシャ(10分割)を見ると、ラグナ、月から見て、10室に9室支配の木星が在住しており、4室から水星、太陽がアスペクトしている。10室に在住する木星は成功した占星術師を表しており、インドの占星術界で高い名声を得ているK.N.ラオ氏や、B.V.ラーマン氏と同じ配置である。そして、木星に対する水星の相互アスペクトは占星術の絡みである。 人生の目的 人生の真の目的は神や信仰、精神性の追求、慈善活動や奉仕活動、高度な学問、運命学の探求であり、高い精神的価値観に基づいて、正しく生きることが彼の目的であったと考えられる。それはラグナロードの木星が9室に在住していることで表されている。 欲望、心の不安定さ 上記で述べたように3室には彼の欲望が示されており、それによって、彼は忍耐し、苦労したことを物語っている。
ヴィムショッタリダシャー 次にヴィムショッタリダシャーで彼の人生の推移を見ていくと、生まれて直ぐにマハダシャー金星期に入っている、金星は6、11室の支配星で3室に在住し、火星と接合して、土星からのアスペクトを受けている。ナヴァムシャでも火星と接合して土星からアスペクトされており、ラグナから6室に在住している。従って、生まれてから20年間の時期は欲望が強く、またトラブルも多かったことと思われる。 1941年10月頃にマハダシャー太陽期にシフトしているが、太陽は9室の支配星であり、彼はこの時期から非常に精神的になり、海外にも縁が出来たり、リーダーシップを発揮して、自ら率先して行動したのかもしれない。太陽期の特徴として、決断したり、地位が上がり、威厳が出てきた時期ではないかと思われる。 1947年10月からマハダシャー月期にシフトしている。月は蟹座8室の支配星で牡羊座5室に在住している。牡羊座の月の時期は何かと新しいことを始めたり、企画して、自ら取り組んだ時期であったことが予想される。然し、8室の象意である不自由や中断、束縛に悩まされた可能性もあったと思われる。 そして、火星期を経て、1964年10月からマハダシャーラーフ期が訪れている。 そして、1982年10月からマハダシャー木星期が訪れている。 最近まで健在であったというため、彼は非常に良い晩年を過したことが分かる。
(資料) 孤独と放浪の星のもとに 著者 門馬寛明 (『西洋占星術-あなたを支配する宇宙の神秘』光文社 裏表紙より引用抜粋) 門馬寛明 (1921-) 日本の占星術の草分けのひとり。福島県(樺太との説も)の出身で神学校を卒業後満州で布教活動をしていたがその時期に満州の星の美しさに魅せられたことと神学校時代にテトラビブロスを読んでいたことが占星術を学ぶようになったという。戦後占い師に転じて明暗塾を設立。流智明、訪星珠らが彼に学んだ。また明暗塾の占星学の教科書は日本語で本格的に占星学を学べる貴重な本であった。[ ffortune.net占星学用語辞典より引用抜粋( http://www.ffortune.net/fortune/astro/index.htm )] |