占星コラム


2013/4/28 ファーストリテイリング会長・柳井正氏について



ユニクロを展開するファーストリテイリング会長・柳井正氏の世界同一賃金構想の発言が物議を醸している。

最近、ユニクロの離職率の高さが話題となっており、ブラック企業ではないかという批判が高まってきている。

このように柳井氏への批判が高まってきたのは、現在、土星が天秤座をトランジットし、ラーフも天秤座に入室したからである。

批判をされる時、人は6室の象意を経験していることから、おそらく、柳井正氏は、牡牛座ラグナだろうという推測がついた。



ユニクロのここ最近の高い離職率に対して、24日付の日刊ゲンダイが「ユニクロショックは地獄の始まり 年収100万円時代にのみ込まれる」との見出しで批判的な記事を掲載しており、ニュースメディア「税金と保険の情報サイト」は、25日の記事は「ユニクロ柳井会長が労働法規無視」と批判している。

「仕事を通じて付加価値がつけられないと、低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化するので、年収100万円のほうになっていくのは仕方がない」と主張する柳井氏に対し、朝日新聞の記者が「付加価値をつけられなかった人が退職する、場合によってはうつになったりすると」と返すと、「そういうことだと思う。日本人にとっては厳しいかもしれないけれど。でも海外の人は全部、頑張っているわけだ」と応じたという。

つまり、様々なメディアが柳井氏への批判の記事を掲載するようになっている。

それに対して、柳井氏は特に臆する様子もなく、強気の返答をする様子が見られるが、それはおそらく6室にラーフと土星が在住し、ウパチャヤ凶星で敵を粉砕する配置になっているからである。

6室の凶星は激しい闘争心、敵を粉砕する強さをもたらすのである。

批判を受けつつも、その批判を強い気の発言で押し返すといった現われ方はまさに6室の凶星の象意である。

部下が離職していくというのも、離婚と同じで6室の象意である。

そうした元ユニクロの従業員だった人物が、就業当時の職場環境などを、この柳井氏が批判を受けているタイミングで、匿名で、インターネット上に投稿するといったことも6室の象意である。

柳井氏の結婚の時期についての情報が得られていないが(後に判明)、現在、2012年の時点で、長男の柳井一海氏が38歳で、1974年生まれ、次男の柳井康治氏が35歳で1977年生まれであるとの記事がネット上で確認できる。

1974年は木星は山羊座9室をトランジットし、土星は双子座をトランジットし、9室支配の土星にアスペクトして、9室にダブルトランジットが生じている。

1977年は土星が蟹座をトランジットして、5室と9室にアスペクトし、木星が牡牛座から5室と9室にアスペクトして、5室と9室にダブルトランジットを形成している。

柳井氏は月が牡牛座にあるため、牡牛座から6室に土星とラーフがトランジットしていて批判を受けているということは、月ラグナとしての効果とも考えられるが、然し、子供の誕生についての5室や9室へのダブルトランジットは通常はラグナから検討するものである。

従って、柳井正氏は、月が牡牛座であるばかりでなく、ラグナも牡牛座であると推測できる。

柳井正氏の父親は、山口県宇部市にアパレルメーカー「小郡商事」を創業した人物で、1984年に父の後を受け小郡商事社長に就任している。

この1984年頃は、ラーフ期の終わり頃であり、木星期に移行する直前である。

大学時代の柳井氏は、全く仕事をする気がなく、麻雀やパチンコで無為に過ごし、卒業後に父親に進められて入社したジャスコも働くのが嫌で6ヶ月で辞めたという。

この当時、おそらく牡羊座に在住する12室のラーフ期だったと推測される。

12室のラーフは目的が定まらず悶々としているような時期である。

そして、ジャスコを辞めた柳井氏は友人の家に居候して、友人が仕事に行った後、ぶらぶらしていたという。

この象意がまさに12室のラーフっぽい象意である。

つまり、友人が出勤した後の部屋に1人残されて悶々として社会的には居場所がない12室の印象である。

この状況に嫌気がさして、実家に戻って父親の「小郡商事」に入社して、それで後に社長に就任していることから、父親の恩恵が厚いことが伺える。

牡牛座ラグナであれば、9室にラグナロードの金星、2、5室支配の水星、4室支配の太陽が在住して、ラージャヨーガダナヨーガを形成している。

これは父親の恩恵を表わしており、彼がまさに父親が創業した「小郡商事」の基盤の上に現在の成功を築いたのであって、父親の遺産の継承者なのである。

wikipediaによれば父親の遺産は27億円であり、彼は既に当時小郡商事が展開していた店舗「メンズショップOS」を日常的なカジュアル衣料の販売店に転換して全国展開したのである。

純粋にゼロからの創業ではなく、父親の厚い恩恵があったからこその成功だと言える。

そういう視点で考えると、牡牛座ラグナで、9室でラージャヨーガ、ダナヨーガを形成し、また8室で、8、11室支配の木星が自室にあるという配置が、父親からの恩恵にも遺産にも恵まれたということをよく表わしている。

1984年に「小郡商事」の社長に就任した直後にマハダシャー木星期が始まり、木星は8、11室支配で8室で自室に在住している。

そして、マハダシャーの木星をラグナとすると、2室に水星、金星、太陽が在住して、ダナヨーガを形成している。

まず、木星期に何が起こったかを考えると、まず、射手座の跳躍力によって、カジュアル衣料の販売店として全国展開するという高い目標を設定し、そして、実際、この時期には銀行が資金をよく貸してくれて、全国展開が思うようにいき、上場後は株価も上がって、資金が自由自在に手に入ったということである。

ユニクロの路線が日の目を見るのが1991年頃で、木星/水星期であり、木星からみて水星は10室支配で2室に在住している。

木星/木星⇒木星/土星⇒木星/水星という流れで、水星期に事業が軌道に乗ったというのはよく理解できる。

マハダシャーの木星から見ると、2室に惑星集中しているが、衣料品の小売業というのはまさに2室の象意であり、売れば売っただけ儲かる自営業を表わしている。 そして、ユニクロは強い射手座の木星の象意によって、マハダシャー木星期の間、拡大、成長を続けてきたのである。 2002年頃に柳井氏は、代表取締役会長兼最高経営責任者に就任して、一旦、社長を退いているが、この頃にマハダシャー木星期から土星期への変化を経験している。

ちょうど転機の時期であったことが分かる。2005年に再び、社長に復帰して持ち株会社制への移行を受けて、グループ各社の会長職を兼務しているとwikipediaには書いてある。

土星は9、10室支配で4室に在住し、7室支配で10室に在住する火星と相互アスペクトしている。

この土星はラグナと、月からみて9、10室支配で10室にアスペクトバックして、7室支配の火星とも相互アスペクトする強力なラージャヨーガカラカである。

ラグナ、月、太陽からみてヨーガカラカであり、強力な機能的吉星である。

この土星期に入る直前の2000年に柳井氏は、元々徳川家の土地で、敷地面積約2600坪の大邸宅を渋谷区から一般競争入札で購入している。



この大邸宅については、大学生の侵入事件で報じられたので話題になったが、巨大な敷地と高い塀と門構えは、まさに獅子座に在住するラージャヨーガカラカの土星期に建設した邸宅であることを物語っている。この威厳のある古風な門構えが獅子座の特徴がよく出ている。

この土星期に社長を退いて、会長職に就任し、自分の地位を更に上位に設定したのもそれが為である。
(火星がアスペクトしているので不動産の購入を表わしている)

このように柳井氏の牡牛座ラグナという線はかなり可能性として高いのであるが、元々、アパレル関連の経営者は牡牛座が多いのではないかというのは推測がつく。

服飾を作成する人が、牡牛座ラグナで、服飾を身につけるモデルが天秤座ラグナであるという記事を書いたことがあるが、ファッションショーなどを見ても、服飾を身につけたスタイルや容姿の良い女性たちに君臨する形で、最後にデザイナーが登場するが、デザイナーというのは服飾の素材や作り方に詳しく、実際、アパレルメーカーとして自分のブランドを販売している経営者も多い。

であるから、アパレルメーカーの社長というのは典型的に牡牛座ラグナの象意なのである。

この柳井正氏が、世界同一賃金構想なるものを発表したが、これがまさにグローバル資本主義の思想そのものである。

人、物、金が国境を超えて、行き来し、賃金なども国際的に均一化するというグローバリズムの思想そのものである。

そして、彼は山羊座に太陽が在住し、山羊座に水星、金星が在住して山羊座に惑星集中している。

山羊座は火星が高揚する星座であり、ハードワークで実行力がある星座である。

仕事をして自分の努力で成功を勝ち取るというタイプであり、その為にはハードワークに耐え抜き、それができる体力もあるし、実行力もある。

そういった人物は、努力次第で成功も失敗もするという自己責任型の新自由主義思想を抱きやすい。バリバリの資本主義思想家である。

リバータリアニズムの体現者である。競争を奨励し、その競争の中で、自分が勝ち抜ける自信があり、実際に勝ち抜いてきた人物である。

これは山羊座−蟹座の軸から出てくる傾向である。

私は以前から蟹座は典型的なリバータリアニズム思想の持ち主であり、個人主義で自由主義であることを理解してきたが、山羊座の惑星は蟹座にアスペクトするため、やはり、山羊座もリバータリアニズムに行き着く可能性が高い。

そして、彼の10室に在住する火星は司令官であることを表わし、支配者の星座である獅子座の土星がアスペクトしている。



この水瓶座に対する火星と土星の影響はハードである。

彼の「世界同時賃金構想」と、「年収100万円」は、水瓶座−獅子座軸のグローバリズムと、蟹座−山羊座の軸の市場原理主義思想の両方が表れたものである。

ユニクロは国内発の国際企業とかよく言われるし、またユニクロは積極的に外国人を採用し、社員にも海外に行くことを奨励している。

発想が非常に国際的である。

また社員の賃金や雇用について無慈悲なまでに市場原理主義的であり、これが高い離職率をもたらし、批判にもつながっている。

彼の発言や経営方針を見ていると、水瓶座や山羊座の理念が見られ、特に国際主義やグローバリズムは、彼の仕事を表わす10室が水瓶座であることから、強く感じられる。

そこには火星と土星が絡んでおり、ハードである。水瓶座の理念をハードに表現するのがおそらく、これらの星座に影響する凶星である。

実際、社会というものは彼が推進する方向性に進むことは避けられないだろう。

先進国と発展途上国で賃金水準に差がなくなり、評価も全く同じ基準によって為されることになる。

実際、日本人がぬるま湯に浸かっているというのは彼の言うとおりなのであるが、彼は獅子座の土星期に入ってから、経営者としての地位を確立したと同時に、彼には従業員に対する思いやりが欠けてしまったと言わざるを得ない。

敵対星座の獅子座に在住して、逆行し、太陽と星座交換する土星は、ラージャヨーガカラカで、自室にアスペクトバックして強いので、グローバル資本主義の勝者にはなったのであるが、そこには傷ついて逆行する土星の凶意が現われている。



ナヴァムシャを見ると、月が水瓶座に在住しており、土星が月からみて6室の蟹座に在住している。

従業員に厳しく、従業員が鬱などの精神疾患にかかり離職していくというのはこうした配置のためである。

ナヴァムシャでは、木星は蠍座に在住して魚座で高揚する金星にアスペクトしているため、木星期にはこうしたことはなかったと思われる。

実際、ネット上の元従業員の話を読んでみると、入社当初は、あまり規則もなく、ゆるかったのが、だんだん柳井正氏が店舗内の規則についても強く口を出すようになり、規則やサービス残業が多くなっていったのだという。

つまり、おそらくマハダシャー木星期から土星期に移行したタイミングで、柳井氏が獅子座で逆行する土星の人格に変貌し、社員に過酷な労働を課すようになったのだと考えられる。

出生図で土星をラグナとすると、太陽、金星、水星が6室に惑星集中しているため、これは従業員を酷使する配置である。

因みに柳井氏はジャスコを退職後、夫人との結婚を考えていたが、小郡商事を営んでいた父親が仕事をしていない柳井氏を見かねて「結婚を許すから実家に戻って会社を継げ」と言ったため、それで実家に戻ることにしたようである。

そうすると、おそらく現夫人と結婚したのは大学卒業後、6ヶ月ジャスコで働いて、6ヶ月友人の家でぶらぶらしたため、大学卒業後+1年である。大学卒業が23歳であれば、24歳で実家に戻ったため、1973年であり、22歳で卒業であれば、1972年である。

1973年のトランジットを見ると、土星が牡牛座1室を通過し、木星が9室を通過して、ラグナロードの金星と接合し、ラグナにアスペクトしていたため、1室にダブルトランジットを形成していた。

つまり、結婚のタイミングである。

1972年のトランジットを見ても木星が射手座8室で逆行し、土星が牡牛座1室を通過しているため、1室と7室にダブルトランジットを形成している。

ダシャーはラーフ/木星期であり、木星は結婚生活の8室を支配し、結婚のハウスである2室にアスペクトしている。

ラーフ期はしばしば結婚をもたらし、ラーフ/木星期はセカンドアンタルダシャーである。

従って、ラーフ期に入った後に、結婚したというのは、ダシャーからもトランジットからも納得できる。

このように最終的に結婚した時期も分かったため、そのタイミングについて検討してみても、牡牛座ラグナということで納得できる。

おそらく、柳井正氏は、現在、土星/太陽期である。

太陽は土星から見て6室に在住しており、土星と星座交換している。それで批判を受けているのである。

アンタルダシャーが太陽期であるため、柳井氏も批判を受けつつも、それに対して強気で対応していると言える。

その前は土星/金星期で、その前が、土星/ケートゥ期、その前が、土星/水星期である。

つまり、土星/水星期も水星は6室に在住し、土星/ケートゥ期はケートゥが土星からみて3室、土星/金星期は土星からみて金星が6室に在住し、2002年にマハダシャー土星期に入ってからずっと、6室(あるいは3室)の象意を経験してきたことが分かる。

つまり、非常にここ数年間、従業員を酷使してきたのである。

それがここ数年の高い離職率として現われたのである。

離職とは離婚と同じ象意であり、それは6室の象意である。



西暦 年月 出来事 V.Dasha C.Dasha Transit
1972年or 1973年 現夫人と結婚。 ラーフ/木星
1974年 第一子誕生(柳井一海) ラーフ/土星
1977年 第二子誕生(柳井康治) ラーフ/水星
1984年 父の後を受け小郡商事社長に就任。 ラーフ/太陽
ラーフ/月
1984年 6月 広島市にユニクロ第一号店を開店 ラーフ/月
1988年 香港に現地法人を設立 木星/木星
木星/土星
1991年 社名を「ファーストリテイリング」に変更 木星/土星
木星/水星
1997年 アメリカの衣料品小売店、GAP(ギャップ)をモデルとした製造型小売業 (SPA)への事業転換を進め、経済の状況にマッチした低価格・高品質商品の展開、また広告代理店と提携、クリエイティブディレクターにタナカノリユキを招き明確なメッセージを発信したPRなど、戦略を次々と刷新 木星/金星
木星/太陽
1998年 2 - 3万枚売ればヒットと言われるフリースを目標200万枚完売。 木星/太陽
木星/月
1999年 フリースを目標850万枚完売。 木星/月
木星/火星
2000年 2000年秋冬にはCMモデルに松任谷由実らを起用し51色に展開、2,600万枚という驚異的セールスを樹立。 木星/火星
木星/ラーフ
2001年 8月 売上、経常利益ともピークに達し、イギリスへ進出。 木星/ラーフ
2002年 9月 中国上海市に出店。 木星/ラーフ
2002年 代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)に就任。いったん社長を退く。 土星/土星
2002年頃から日本では在庫が急増、英国での業績も振るわず2002年、2003年8月期と利益が大きく落ちこむ。 土星/土星
2005年 再び社長に復帰。同年、持株会社制への移行を受けて、グループ各社の会長職を兼務。 土星/土星
2005年 9月 香港に、そしてロッテとの合弁で韓国ソウル市にも出店。 土星/土星
2006年 11月 ニューヨークのソーホーにグローバル旗艦店を出店する他、上海にもアジア旗艦店を出店し、世界進出を加速。 土星/水星
2012年末〜2013年初頭 ユニクロの高い離職率が話題に登る。各メディアがユニクロの企業体質について批判。ブラック企業ではないかとの指摘が上る。 土星/金星
土星/太陽
wikipedia 柳井正 , wikipedia ユニクロ より引用抜粋



(参考文献・資料)

ユニクロ「やはりブラック企業」の批判 柳井氏の世界同一賃金構想が大炎上!
2013.04.27 Business Journal

ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が「世界同一賃金」を導入する考えを示したことが、物議をかもしている。22日の朝日新聞によれば、店長候補として採用した全世界で働く正社員すべてと役員の賃金体系を統一する構想で、すでに役員や上級部長らには実施し、今後は一部の店長まで広げるという。

 翌23日付の朝日新聞に掲載された柳井氏のインタビューでは、「グローバル経済というのは『Grow or Die』(成長か、さもなければ死か)」「新興国や途上国にも優秀な社員がいるのに、同じ会社にいても、国が違うから賃金が低いというのは、グローバルに事業を展開しようとする企業ではあり得ない」などと説明された。

 これに対し、コラムニストの小田嶋隆氏が投稿した「世界同一賃金って、要は最貧国水準の賃金体系ってことだよね」というツイートに象徴されるように、「まさにブラック企業の発想だ」という声が多く聞かれる。

 朝日新聞のまとめによると、ファーストリテイリング社の新卒社員が入社後3年以内に退社した割合(離職率)は、2006年入社組は22%だったが、07年入社組は37%、さらに08〜10年の入社組は46〜53%と高まっており、休職している人のうち42%(店舗勤務の正社員全体の3%にあたる)がうつ病などの精神疾患。「社員を酷使する『ブラック企業』との批判は、こうした中で高まってきた」(同紙)としている。

 24日付の日刊ゲンダイは「ユニクロショックは地獄の始まり 年収100万円時代にのみ込まれる」との見出しで、「弱肉強食の競争社会で富を得るのは、一握りの『勝ち組』のみ。彼らとて『寝てない自慢』だけが喜びで、多くが家庭不和を抱えている。真の幸福とは程遠い暮らしが、『世界同一賃金』でエスカレートしていく」と断じている。

 また、経営者のためのニュースメディア「税金と保険の情報サイト」は、25日の記事で「ユニクロ柳井会長が労働法規無視」と批判。「最低賃金などは、各国の労働法規によって定められている。それぞれの国の物価や生活水準に配慮した金額となっており、これを均一化するのは単純な違法行為」であり、コンプライアンスを無視してまでグローバル化におびえる理由は見当たらない、と指摘している。同記事は「結局、柳井会長兼社長の『グローバル化』はワタミの渡邊美樹会長が語る『夢』と同じく、社員を使い捨てにするための『免罪符』にすぎない」と締めくくられた。

 再び朝日新聞のインタビューを見てみると、「仕事を通じて付加価値がつけられないと、低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化するので、年収100万円のほうになっていくのは仕方がない」と主張する柳井氏に対し、記者が「付加価値をつけられなかった人が退職する、場合によってはうつになったりすると」と返すと、「そういうことだと思う。日本人にとっては厳しいかもしれないけれど。でも海外の人は全部、頑張っているわけだ」と応じている。

 こうした直接的な物言いに対し、個人投資家の山本一郎氏は25日の「やまもといちろう 無縫地帯」で、「ユニクロ・柳井正会長はモノの言い方を考えないのか」と、コンプライアンスの面から疑問を呈した。

これまで、ブラック企業経営者とされる人々は、社会に対して何らかのエクスキューズの幅を持たせる発言をしてきたが、「柳井さんの一連のインタビューは、世間的なイメージとしてのブラック企業・ユニクロを追認するような、苛烈な内容」であり、「ブラック企業そのものの金満体質を隠さず披露するなどというのは社会からの報復も恐れないということであろうか」「同じことを言うにも言い方があるでしょうし、これでブラック企業批判はより一層高まるでしょうね」とまとめている。

 世界同一賃金の導入は、日本企業のグローバル化対応に先鞭をつける妙手となるのか、日本の賃金下落を招き、社員を疲弊させることになるのか。少なくとも、後者を懸念する声が大きいことは間違いないようだ。

(文=blueprint)

ユニクロ子会社会長に長男を抜擢、柳井氏の胸中
2011年11月01日 東洋経済新報社

「絶対に世襲はない」。かねてからそう宣言してきたファーストリテイリング(FR)の柳井正会長兼社長(62)。だが、10月12日に世襲への布石とも受け取れる発表をした。長男である一海氏の抜擢人事だ。

一海氏は11月1日付でFR子会社のリンク・セオリー・ジャパンの会長に就任する。リンク・セオリーは百貨店などを中心に「セオリー」ブランドのアパレルを展開。米国での事業も含めればグループの年間売上高は約500億円と国内外のユニクロに次いで大きい子会社だ。同社の会長職には現在、柳井社長自身が就いており、その役職を一海氏が引き継ぐ。

米国の大学を卒業後、一海氏は金融大手ゴールドマン・サックスの投資銀行部門を経て、リンク・セオリー・ジャパンの前身へ入社。09年にFRがリンク・セオリーを完全子会社化したことで、結果的にFR傘下の一社員となっていた。

今回会長に就任するが、代表権は持たず、CEO(最高経営責任者)などの経営の舵取りを行う立場にも就かない。柳井社長は息子について、以前から「株主の代表として経営を監視できる立場として勉強させたい」と話していた。一海氏はFRの株式4・5%を保有する第4位株主。社長の言葉を素直に受け取れば、後継者としてではなく、経営感覚を養うために、一社員から経営を俯瞰できる立場へ異動させたということになるだろう。

社内での育成を強化

ただ、今回の人事は後継者選びに失敗した際の“保険”との見方もできる。

柳井社長はこれまで後継者選びに苦労してきた。2002年に一度社長を退き、IBMから玉塚元一氏(現ローソン副社長)を招き、社長へ据えた。が、玉塚氏は3年で辞任。事実上の解任となったその理由を柳井社長は「急成長ではなく安定成長を描いたため」と説明する。

05年以降は日本ゼネラル・エレクトリック副社長だった松下正氏(現コクヨ取締役)を筆頭に、大企業の役員クラスをスカウト。しかし数年で退職する者が相次いだ。

現在は外部から招聘するのではなく、社内から選ぶ方針へ転換している。10年には幹部養成機関を設立し、選抜した社員の教育を始めた。今後はニューヨークや上海など海外にも設置し、幹部の育成を強化する方針だ。

「65歳までには経営執行から退きたい」と語る柳井社長。一方で、20年に現在の約6倍となる売上高5兆円の目標を掲げており、後継者に課すハードルは高い。社内で育成できなければ、オーナー一族として一海氏が登板する可能性もありそうだ。

ユニクロ“年収1億〜100万円”の衝撃 「世界統一賃金」導入へ
2013年04月24日 ZAKZAK

ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が、全世界の正社員と役員の賃金体系を統一する方針をぶち上げ、波紋を広げている。

 衣料品大手「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長(64)が、全世界の正社員と役員の賃金体系を統一する方針をぶち上げ、波紋を広げている。日本で採用された社員も外国人の社員と同じ基準で評価されるようになる。ただ、それに伴って将来的に、年収が1億円か100万円に分かれるなど極端な二極化が進む恐れもあるという。前代未聞の構想の行方は…。

 大胆過ぎる賃金制度。ユニクロの正社員ならずともビックリだ。

 ファーストリテイリングでは、欧米や中国など13カ国・地域で採用した正社員すべてと役員を「グローバル総合職」(約4900人)とし、職務内容で19段階に分けた「グレード」ごとに給与などを決めている。

 現在、グレードの最上位から7段階に入る執行役員や上級部長は、どの国でも評価が同じであれば報酬や給与を同額にしている。23日付の朝日新聞によると、最上位は柳井氏で4億円という。

 新たな方針では、上から8、9段階に約60人いる部長級にも適用を拡大する計画。上から8〜14段階の約1000人には「実質的な同一給与」の導入を目指し、各国の物価水準などを反映して「実質的に同じ生活」ができるようにする。15〜19段階に関しては今後検討する。

 海外事業展開を拡大するため、高水準の給与を払って新興国などでも優秀な人材を確保し、国際競争に勝てる人材を育成することが狙い。

 ただ、全世界の社員同士で競争が激化するのは必至で、デキる社員とそうでない社員が二極化しそうだ。同日の朝日新聞で、柳井氏は〈年収1億円か年収100万円に分かれて、中間層が減っていく〉可能性を一般論として示唆。〈グローバル経済というのは『Grow or Die』(成長か、さもなければ死か)〉〈変わらなければ死ぬ、と社員にもいっている〉との持論を明かしている。また、同社がブラック企業との批判が出ていることについて〈我々が安く人をこき使って、サービス残業ばかりやらせているイメージがあるが、それは誤解だ〉と反論した。

 この「世界統一賃金」を専門家はどうみるか。

 帝国データバンク名古屋支店情報部の中森貴和部長は「ユニクロは常に新しいことをやってきた。製造業はすでに国内では頭打ちでアジアや世界を舞台にやっていかないと難しい。そういう意味では先見の明はある。ただ、これがいいのかどうか。判断しづらい」。

 経済ジャーナリストの荻原博子氏は「新機軸としては悪くはない。グローバル企業なので海外の人も多く、賃金を一緒にして能力主義にしようというのは評価できる。ただ、ユニクロの離職率は高いといわれる。皆が幸せになる企業の方向性を目指し、まず足元の企業環境を整えるべきなのでは」と話している。