占星コラム


2011/11/24 大王製紙元会長について

「エリエール」などのブランドで知られている大王製紙の創業家の長男・井川意高(いがわもとたか)氏が、特別背任容疑で東京地検特捜部に逮捕されたとニュースが伝えている。

子会社などから100億円以上の個人的な借り入れをして、マカオのカジノなどでギャンブルに使い、会社に損害を与えたという容疑である。

私はこの大王製紙の御曹司が起こした事件を記事で見て、直ぐに井川氏が蠍座ラグナではないかと検討をつけた。

何故なら、土星が天秤座に入室したタイミングで、会長職の辞任や逮捕監禁(12室)、刑事告訴(6室)などが生じているからである。

蠍座ラグナに設定すると、ラグナロードの火星が8室に在住し、7、12室支配の金星、ラーフと接合している。

このラグナロードが8室に在住する配置は支配者に貢ぐ配置である。

それでは誰に貢ぐかと言えば、金融関係者とかあるいは、カジノ(※金融関係の一種) や、ナイトクラブなどである。

双子座というのは金融資本家の星座であり、8室で金星、火星、ラーフが絡んでいる配置は、ナイトクラブなどで金を派手に使って豪遊する配置ということができる。

まさにそのような象意を想定する場合の典型的な絡みがここに示されている。

ラグナロードの火星が8室に在住して、7、12室支配の金星、8室の支配星として振る舞うラーフと8室で接合している絡みは、酒、女、ギャンブルなどに狂ってしまい、身を破滅させる絡みであるということができる。

産経ニュースの記事には以下のように井川氏の常識はずれの豪遊ぶりが明らかにされている。

東京・麻布の深夜の高級クラブ。極彩色のドレスを着込んだホステスのグラスに、なみなみとシャンパンが注がれた。グラス 下にはコースター代わりに一万円札が10枚置かれていた。

 通称「意高コースター」。酒を飲み干せば、全額が懐に入るという余興だ。ホステスが目の色を変えて杯を空にする様子を、 井川容疑者は笑みを絶やさず見つめていたという。

 常識外れの金銭感覚を示す象徴的なエピソードとして、周囲に知られている。本人も酒豪で、高級な洋酒を何本も空けていた 。

(2011/11/22 産経ニュースより抜粋)

こうしたカジノでの遊びに導いた芸能関係者や金融関係者がいるらしく、以下の記事でそれが指摘されている。
おそらくこうした人々が8室の表示体であり、井川氏を「カネ払いのいい客」として周りを取り囲んだ人々である。

井川氏を海外でのカジノ遊びに導いたのは、六本木でナイトクラブを経営していた元俳優の男性と書かれているが、こうした人々が井川氏が抗えなかった支配者であり、彼らは容易に井川氏を操り、彼らの導きに誘導されるようにして、ギャンブルにはまっていったと考えられる。

そして8室は中毒性があり、薬物中毒なども8室が象意となるが、逃れることができないのが特徴である。

カジノに導いた“闇の紳士“たち 芸能界とつながり深い元俳優、金融業者…

2011.11.22 11:16 産経ニュース

 大王製紙創業家の3代目として、エリート街道を邁(まい)進(しん)してきた前会長の井川意高容疑者(47)。御曹司は なぜ常識外れの巨費を投じてカジノにおぼれたのか。その水先案内人になったのは、都心の繁華街に根を下ろす“闇の紳士”た ちだった。

有象無象

 井川容疑者は、大王製紙創業者である故伊勢吉氏の直系の孫で、3代目に当たる。名門・筑波大付属駒場高校から東大法学部 に現役で進学。卒業後の昭和62年に大王製紙に入社し、わずか4年で常務に昇格するなど、常に日の当たる道を歩んできた。

 「柔らかい物腰で、部下の意見にもきちんと耳を傾け、ワンマンといわれた父で元社長の高雄氏とは対照的なタイプだった」 (同社関係者)。

 だが、夜な夜な豪遊を繰り返す別の顔もあった。“本拠地”に据えたのは東京・六本木や麻布周辺の繁華街。井川容疑者に近 い関係者は「高雄氏ら会社関係者が顔を見せる銀座を避け、気にせずに遊べる場所を探して六本木周辺にたどり着いたようだ」 と明かす。

 政治家や高級官僚、経済人など幅広い人脈を誇った井川容疑者だが、“毛色”の違う有象無象の人物たちも群がってきた。「 カネ払いのいい客」。そんな風評が定着したからだ。

深い穴

 関係者によると、井川容疑者を海外でのカジノ遊びに導いたのは、六本木でナイトクラブを経営していた元俳優の男性とされ る。

 男性はかつて健康食品販売会社の代表取締役も務め、いまだ芸能界ともつながりが深い。この男性と極めて近い間柄の金融業 者はたびたび井川容疑者とマカオに渡航。カジノの負けで困窮した井川容疑者に資金を融通したこともあるという。

 カジノ旅行を手配する業者とも、こうした人物らを通じて知り合ったとみられる。業者は客から現金を預かり、渡航チケット や宿泊先を確保。現地ではカジノで使う資金の立て替えなどを行う。井川容疑者は数年前からマカオに渡航する際に、仲介業者 に依頼。4回にわたって、1回当たり少なくとも5億円を入金し、現地でほとんどを使い果たしていた。

 「(井川容疑者は)学生時代から高レートのマージャンを繰り返すなどギャンブル好き。“繁華街人脈”の手引きで、どんど ん深い穴にはまっていった。酒や女性だけでは、エリート企業人としてのストレスや孤独感を紛らわすことができなかったのだ ろう」。知人の一人は残念そうに語った。

井川氏はマハダシャー水星期に入って、セカンドアンタルダシャーの水星/ケートゥ期に大王製紙に入社し、わずか2か月ほどで、専務や常務、専務取締役などを経験しており、社長になるための最短での人事異動の日程をこなしている。

そして、もしダシャーバランスが正しければ、水星/ラーフ期に大王製紙の第6代社長に就任している。

おそらくこの社長に就任した直後からの3年間で、ギャンブルで巨額の借金をしてしまったと思われる。

この期間が、水星/ラーフ期であり、ラーフは8室に在住し、ラグナロードで6室支配の火星と、7、12室支配の金星と接合している。
この水星/ラーフ期で、株式の先物取引やFX取引などの金融博打で大金を失い、またマカオやラスベガスなどの博打場に出入りして、偶々勝ったりしたことがきっかけで、どんどん深みにはまっていったと思われる。

8室は不労所得のハウスであり、8室に金星やラグナロードが在住していることから、ギャンブルから思いがけない収入も多少は入ってきたのかもしれないが、然し、ダナヨーガも形成しておらず、6室や12室が絡んでいるため、収入よりも損失の方が、高くついたと思われる。

特に8室は突然の災難や破産のハウスでもあるため、ギャンブルで、一瞬のうちに何億という大金を失うようなこともあったと思われる。



週刊誌で孤独からギャンブルに手を出したというような評価も見られるが、月がケーマドルマヨーガであり、ケンドラに惑星の在住があるので、バンガされてはいるが、心理的に孤独な配置である。

そもそも蠍座ラグナというのは金融関係者に最も依存しやすく、騙されやすいラグナである。

そして、騙されやすいと同時に騙しやすいとも言える。

(※例えば、堀江貴史などの『新・資本論 僕はお金の正体がわかった』という書籍の中で展開されているお金に関する考え方は、お金は信用を数値にしたものであって、借りればいいのだという考え方である。 つまり借りられる金額がその人の社会的信用なのであり、その人の器であるというのである。借金に関して全く否定的な考え方がない。つまり、借金について依存的である。この考え方から、リーマンブラザーズに800億円の買収資金を借りるという発想となったが、一般株主がその借金の埋め合わせをした)

だから、ベンジャミン・フルフォードの書籍の中で、山口組(蠍座)はロスチャイルド(双子座)の下請けであるというような話が出てくるのである。

ラーフは6室の支配星や12室の支配星と8室で絡んでおり、おそらくこの水星/ラーフ期に巨額の損失を被るのである。

然し、その後、水星/木星期となって、木星は5室の支配星で、水星からみて5室支配で9室に在住しているため、一時的に井川氏の状況はよくなったのではないかと思われる。 以下の写真を見ると、水星/木星期の写真からは幸福感が感じられ、ヨーガカラカとしての木星の効果が感じられる。

一番左から、2008年1月18日に古紙配合率偽装問題で会見した時の写真(水星/ラーフ期)、 2009年5月時の写真(水星/木星期)、そして、一番右が最近の2011年10月時の写真である。 水星/木星期の写真から調子が良さそうな印象を受ける。水星/ラーフ期の写真からは不安定さが、 そして、最近の水星/土星期の写真からは印象に大きな変化が感じられる。 4室の土星のため、好印象ではないが、心理的にすわった頑なな印象を受ける。


2010年に水星/土星期になると、子会社から個人的に23億5000万円を借り入れている。

水星/土星期はマハダシャーロードの水星が8、11室の機能的凶星で、アンタルダシャーロードの土星が3、4室支配の機能的凶星で、 水星からみて土星は6(借金)、7室支配で12室支配の月と共に7室に在住している。

水星からみた場合に土星は6室を支配しており、借金を表している。

土星は4室から10室にアスペクトして、10室に在住する8、11室支配の水星と相互アスペクトしている。

従って、この時期は井川氏のキャリア上の中断、変化を表していたと考えられる。

それで、水星/土星期に入った後で、以下の経歴の時系列で明らかなように土星が天秤座への影響を発揮し始めた今年の9月頃に井川氏は会長職を辞任している。大王製紙も事件が公になったので、井川氏を刑事告発する準備を進め、実際に土星が天秤座に移行した11月15日以降の11月22日に特別背任容疑で逮捕されている。

土星が天秤座12室に入室して、今年の5月から牡羊座に入室している木星との間で、6室、12室のダブルトランジットを形成している現在、井川氏は東京地検特捜部によって、逮捕監禁され、起訴され、そして、刑事訴訟を争うことが予定されている。

これらが6室と12室の象意である。

そして、2012年4月30日に入ると、井川氏はマハダシャーケートゥ期に入り、隠遁の時期に入るのである。

今後、7年間は、家族、親族の監督下で、反省して、謹慎しなければならない。これが今後の井川氏のスケジュールである。

ケートゥは2室に在住し、8室から7、12室支配の金星や1、6室支配の火星からのアスペクトを受けている。

また木星が6室からケートゥにアスペクトしている。

従って、今回の事件では動機が未熟さからくるもので、悪意がなく、また本人も返済を希望していることから、執行猶予などがついて、それ程、厳しい判決は下らないと思われる。 お詫びの全文が掲載され、はっきりとカジノで行ったことについて謝罪の意も示していることも影響すると思われる。

井川氏はマハダシャー水星期に大王製紙の社長に就任しているが、水星は8室(相続)の支配星で、11室(獲得、称号、肩書)の支配星でもあり、それで地位を表す10室に在住しているため、水星期に大王製紙の社長、会長として君臨したが、それは相続のようなものであったと思われる。

ダシャーバランスがこれで正しければ、水星/ラーフ期に社長に就任しており、水星は8室の支配星で、ラーフは8室に在住しているため、従って、相続なのである。

そして土星が12室を通過するタイミングは、キャリアの終焉や辞任などを表している。

井川創業家はこの事件をきっかけに大王製紙の経営から締め出されるようである。

従って、今後、復帰することはなく、これがキャリアの終焉(12室)を表している。

西暦 年月 出来事 V.DASHA C.DASHA TRANSIT
1988年 4月

大王製紙に入社
三島工場次長、常務取締役、専務取締役などを経る

土星/月 牡牛座/魚座
牡牛座/水瓶座
 
1998年 6月 代表取締役副社長に就任 水星/ケートゥ 魚座/蠍座  
2006年 4月 子会社であった名古屋パルプの社長を約1年間務める 水星/ラーフ 水瓶座/獅子座  
2007年 6月 大王製紙の第6代社長に就任 水星/ラーフ 水瓶座/天秤座  
2010年   約23億5,000万円個人的に借り入れた 水星/土星 水瓶座/水瓶座
山羊座/射手座
木星:魚座
土星:乙女座
DT:5室、11室、1室
2011年 4月 2011年4月からの半年間に約60億円を個人的に借り入れた

無担保での借り入れは、借入先が8社以上の連結子会社で2010年(平成22年)4月から翌年9月までの総額で105億円となる
水星/土星 山羊座/射手座 木星:魚座
土星:乙女座
DT:5室、11室、1室
  9月 この無担保借入の事実が発覚し、就任していた代表権のある会長職を辞任する 水星/土星 山羊座/蠍座 木星:牡羊座
土星:乙女座
DT:6室、12室
  10月 事件が公になった後、大王製紙は井川を刑事告発する準備をすすめ、翌10月には東京地方検察庁が特別背任容疑での捜査に着手することが報じられた 水星/土星 山羊座/蠍座 木星:牡羊座
土星:乙女座
DT:6室、12室
  11月21日 大王製紙は井川氏が子会社7社から合計85億8,000万円を不正に借り入れたとして告発 水星/土星 山羊座/蠍座 木星:牡羊座
土星:天秤座
DT:6室、12室、2室
  11月22日 会社法違反(特別背任)の容疑で東京地検特捜部に逮捕される
東京都渋谷区広尾にある井川の豪邸や、四国中央市の実家などが家宅捜索を受ける
水星/土星 山羊座/蠍座

木星:牡羊座
土星:天秤座

DT:6室、12室、2室

wikipediaより引用抜粋、一部編集


その他、wikipediaから井川氏の私生活について触れた箇所がいくつかあるので抜粋するが、 ラグナロードの火星が8室で金星、ラーフと接合する絡みとの関連で見ると興味深い。

・父親の井川高雄は「超ワンマン経営」で知られたが、井川意高は大学在学中から父親の金を使い、銀座の高級クラブで豪遊するなどしていたという。

・小学生時代から東京の学習塾に飛行機で通っていた。

・ 交友関係は派手であり、国会議員では、大学で同級であった浅尾慶一郎や、高校の後輩にあたる後藤田正純らとの仲が良い。また、2007年(平成19年)に行われた社長就任パーティーには、元首相の中曽根康弘、サントリー社長の佐治信忠、タレントの神田うのら、各界の大物が列席した。

また、その豪遊ぶりでも知られ、六本木などでの夜毎の酒宴や、日本国外でのギャンブル、女性タレントや女性モデルとの交際などを盛んに行っていた。グラビアアイドルとの飲食を自慢することもあった。遊びでは、とりわけカジノを好み、マカオやラスベガスを度々訪れ、ラスベガスのホテルで行われるショーでは、VIP席が用意されるほどの上客であった。

また、井川はタレント・加護亜依の愛人として知られる男性らが東京・西麻布で運営する違法カジノに係わっていたほか、多くの芸能人、政治家、マスコミ関係者らを接待漬けにしており、借り入れ資金の使途の一部となっている可能性が報じられた。


蠍座ラグナに設定すると、来年の4月から、マハダシャーケートゥ期に移行することが、今、逮捕監禁されて、キャリアが終焉していくタイミングと一致していることが大きい。

また蠍座ラグナにすると、何故、FXや先物などの金融賭博にはまって、またカジノなどにもはまって、そこで酒や女に狂って、身の破滅を招いたのかが、納得できるのである。

古典にもラグナロードが6、8、12室などのドゥシュタナに絡んで、さらに凶星と接合などして絡んでいる場合、 例えば、”身を破滅させる”とか、”王様でも乞食に転落する”とか、そうした表現が使われているようだが、まさに今回の井川氏の一件は、こうした古典の記述の典型例ではないかと思われる。

8室には木星のアスペクトもないので、救いも働かなかったのである。

然し、井川氏は来年の4月からケートゥ期に入り、ケートゥは木星からアスペクトされているため、公判が進行する過程で、木星の保護を受けることになる。

従って、それ程、重い刑にはならないと思われる。また世間も、それ程、井川氏に厳しくはならず、同情的な世論が形成されるのではないかと思われる。(現にそのような論調である)

またもう一つ、蠍座であることの根拠として、彼が東大法学部出身であるということである。

蠍座ラグナに設定すると、学習を表す5室支配の木星が訴訟の6室に在住し、4室支配で4室に在住するシャシャヨーガの強い土星からアスペクトされている。

5室と4室が結びついて学習にとってよい絡みが生じており、また木星と土星の絡みは法律を表している。

木星はナヴァムシャで射手座でムーラトリコーナの配置にあり、木星からみて7室の定座の水星と相互アスペクトして強いため、その辺りで、法学部に進んだことが納得できるのである。

牡牛座ラグナであれば5室の支配星は水星であり、 水星は4室に在住して、木星や土星、月のアスペクトを受けている。

この場合でも、木星や土星という要素は見られるが、5室の支配星が水星であるため、他の影響も重なってくるため、必ずしも法学でなければならないということにはならない。

また牡牛座ラグナだと2室でラグナロードの金星と7、12室支配の火星とラーフが同室することになるが、身を破滅させるような配置ではなく、むしろ、ダナヨーガが形成されて、お金がもたらされる配置である。

従って、そうしたダシャーバランス、身の破滅を招いたコンビネーション、学習という観点から考えて、井川意高氏は蠍座ラグナである。


(参考資料)

wikipedia 井川意高

孤独なエリートの破滅 大王製紙前会長、「刺激欲しさ」の代償大きく
  2011.11.22 22:23 産経ニュース

 製紙業界大手の巨額融資問題に22日、司直のメスが入った。東京地検特捜部に会社法違反(特別背任)の疑いで逮捕された 大王製紙前会長の井川意高(もとたか)容疑者(47)は、創業家3代目の「エリート御曹司」として常に日の当たる道を歩み 、企業家としても手腕を発揮。その一方で、孤独を感じていたのか、夜の街やカジノでしか見せない別の顔も持ち合わせていた 。

 ●常識外れ

 東京・麻布の深夜の高級クラブ。極彩色のドレスを着込んだホステスのグラスに、なみなみとシャンパンが注がれた。グラス 下にはコースター代わりに一万円札が10枚置かれていた。

 通称「意高コースター」。酒を飲み干せば、全額が懐に入るという余興だ。ホステスが目の色を変えて杯を空にする様子を、 井川容疑者は笑みを絶やさず見つめていたという。

 常識外れの金銭感覚を示す象徴的なエピソードとして、周囲に知られている。本人も酒豪で、高級な洋酒を何本も空けていた 。

 幅広い交友関係も井川容疑者の自慢だった。豪遊を通じて政治家や芸能人、高級官僚にも人脈を持った。

 有名歌舞伎俳優が殴打された事件では、自らが知った“内幕”を、製紙業界の懇親会の場で上機嫌に語った。「仕事の話はそ っちのけ。事件の話を興奮して話していた」。取引先関係者はそう振り返る。

 別の関係者は「社内で豪遊三昧をいさめる人はいなかった。冷笑まじりに『裸の大王』とささやかれていた」と話した。

●プライド

   井川容疑者は大王製紙創業者である故伊勢吉氏の直系の孫で、3代目に当たる。

 愛媛県を拠点とする大王製紙は、井川容疑者の父親で元社長の高雄氏のもとで急成長した。「エリエール」ブランドを軸に昭 和61年、ティッシュペーパーのシェアで国内トップに躍進。期待の嫡男である井川容疑者に高雄氏は、将来の社長にすべく帝 王学をたたき込んだ。「愛媛から東京までジェット機で塾通いをさせ、東大卒の社員を家庭教師につけていた」(同社関係者)

 井川容疑者は名門・筑波大付属駒場高校から東大法学部へ進学。62年に大王製紙に入社し、4年で常務に昇格するなどエリ ート街道を突き進んだ。

 企業人として名を知らしめたのが、平成18年8月。業界最大手の王子製紙が業界5位の北越製紙に敵対的TOB(株式公開 買い付け)を仕掛けた際、当時副社長の井川容疑者は徹底抗戦の論陣を張った。「市場価格を決定できる支配力を持つようにな り、消費者の不利益になる」として公正取引委員会まで巻き込み、TOB破談の一翼を担ったのだ。

 「俺は東大法学部を出ている。ほかの企業の創業家一族とは違うんだ」。近代的経営感覚の自負とプライドを、そんな言葉で 漏らしていたという。コンプライアンス(法令順守)やコーポレートガバナンス(企業統治)を体現するビジネスエリート。業 界内外ではそう見る人もいた。

 ●家訓

 だが、ギャンブルを知ってから、道をそれ始めた。借入金100億円超の大半の使途とみられるのが海外でのカジノだ。その水先案内人になったのは、都心の繁華街に根を下ろす“闇の紳士”たち。特に六本木でナイトクラブを経営していた元俳優の男 性は指南役だったとされる。

関係者によると、井川容疑者はマカオで1枚1000ドル(現在約7万7000円)のチップを惜しげもなく積み、バカラなど に没頭した。一度の渡航で5億円を超える現金を注ぎ込んだこともあった。

 知人の一人は、カジノ通いの目的を「とにかく刺激を欲していた」と述懐する。「本当の友達らしい人も少なかった。名門の家に生まれ育ったゆえ、孤高かつ孤独だったのかもしれない」

 今回の問題を調査した大王製紙の特別調査委員会の報告書では、井川家に対して「絶対的に服従するという企業風土があった 」と指摘。高雄氏が顧問職を解任されるなど、井川家は経営の中枢から排除された。

 井川家には初代の故伊勢吉氏が残した「井川家の心」という家訓がある。

 〈井川を存在させるために、会社があるのではない〉

 大王製紙関係者はこう皮肉った。「井川が大きくした会社で、その信用を失墜させたのも井川だった。会社を自分の財布だと 思っていた意高さんにとって、家訓は無意味だったようだ…」

ギャンブル研究、ギャンブル依存症などに詳しい大阪商業大学の谷岡一郎学長(社会学)の話

 創業家3代目の御曹司、東大出身という経歴をみると、井川容疑者は負けたことがなく、プライドが高い人のようだ。こうい う人は負けを認めず、カジノで負けても「こんなはずはない。取り戻そう」という発想にとらわれる。ギャンブル依存症に多く 、倍賭けて取り戻そうとする。

 「ばれないうちに穴埋めしよう」という気持ちに襲われると危ない。取り戻せなければ「次はこうすればいい」という幻想に とらわれ、自分のやり方に固執する。借金が雪だるま式に膨らんでいく人特有の考え方だ。

 カジノにはジャンケットという世話係がおり、井川容疑者の場合は、一般客がいないVIPルームに案内されていたのではな いか。ディーラーと1対1でバカラをすることもできただろう。だがバカラの控除率(胴元の取り分)は低く、100億円も負けたとは信じられない。

 (一般の人たちも)途中でやめる勇気を持つことが大切だが、現実を思い出すために、財布の中に家族の写真を貼っておくこ とも有効だ。
大王製紙の井川前会長を逮捕 特別背任容疑で東京地検
2011年11月22日15時2分 asahi.com(朝日新聞社)

 大王製紙(東証1部上場)の子会社から巨額の借り入れを行い、32億円の損害を与えた疑いが強まったとして、東京地検特 捜部は22日午前、大王製紙前会長の井川意高(もとたか)容疑者(47)を会社法違反(特別背任)容疑で逮捕し、発表した 。特捜部の調べに対し、井川前会長は容疑を認めた上で、「借入金のほとんどは海外のカジノでのギャンブルに使った」と話しているという。

 特捜部はまた、東京都渋谷区の井川前会長の自宅などの捜索に乗り出した。子会社からの借り入れの経緯や借入金の使途など について、全容解明を目指す。

 井川前会長は、自ら役員を務める連結子会社7社から、昨年5月〜今年9月に計26回にわたり、取締役会の承認を得ないま ま、無担保で計約106億8千万円を借り入れた。現金と株式の形で一部は返済されたが、大王製紙は株式での返済を認めず、 85億8千万円を損害額として特捜部に21日に告発していた。

 このうち特捜部は、今年7〜9月に、4社から7回にわたって借り入れた32億円分を逮捕容疑とした。

 井川前会長が借りた資金のうち約8億5千万円は、前会長が指定したカジノ運営会社の口座に振り込まれた。残る約98億3 千万円は前会長の個人口座に振り込まれたが、最終的にほぼ全額がカジノ運営会社の口座に入金されていたという。

 特捜部は、井川前会長がマカオやシンガポールでの私的なカジノ賭博に使うために借り、返済の見通しもないとみている。

 井川前会長は創業者・井川伊勢吉氏(故人)の孫で、07年6月に42歳で社長に就任したが、業績不振の責任を取って今年 6月に退任。その後は会長職に退いたが、9月に問題が発覚して会長も退いた。

 同社が設置した特別調査委員会が先月28日に公表した報告書は、今回の問題の背景として、井川前会長と、その父親で同社 顧問だった高雄氏(74)に「絶対的に服従する企業風土があった」と指摘。高雄氏も前会長への貸し付けの増加を防げなかっ た責任を問われ、顧問を解任された。

 大王製紙は1943年に製紙14社が合併して誕生した国内3位の総合製紙会社。本社と主力の生産拠点は愛媛県四国中央市 にあり、「エリエール」のティッシュペーパーなどで知られる。

 この問題で大王製紙は、上場廃止のおそれがあると投資家に注意を促す「監理銘柄」に指定された。来月14日までに決算を 発表できなければ上場廃止となるため、井川前会長への貸し出し分を決算に反映させる作業が続けられている。
大王製紙の井川前会長、マカオでカジノに20億円 遊興仲介業者聴取へ 東京地検特捜部
2011.10.21 11:13 産経ニュース

 総合製紙大手の大王製紙の井川意(もと)高(たか)前会長(47)が連結子会社から巨額の現金を借り入れていた問題で、 井川前会長がマカオに複数回渡航し、カジノのギャンブルで少なくとも20億円を使っていたことが20日、関係者の話で分か った。遊興費の原資の大半は子会社からの借入金とみられる。

 東京地検特捜部は、カジノでの遊興を仲介していた業者が、借入金の支出先の詳細を知っていると判断。この業者を週内にも 聴取し、前会長が海外で使った資金の解明を目指す。

 仲介業者は客から現金を預かり、渡航チケットや宿泊先を手配。現地ではカジノで使う資金の立て替えなどを行う。関係者に よると、前会長は数年前からマカオに渡航する際に、仲介業者に依頼。これまで5億円を4回にわたり入金し、ほとんどを使い 果たしたこともあったという。

 前会長は9月末の大王製紙の特別調査委員会の聴取に対し、借入金の使途について明言を避け、その後は「調査委は経営陣側 の意向に沿った結果を目指している」として聴取に応じていない。前会長は周辺に「借入金は個人的に使った。(借り受けが) 特別背任にあたるとの認識はある。責任は免れない」と話しているという。

 前会長をめぐっては大王製紙が9月、子会社7社から総額84億円の貸し出しがあり、うち約55億円が返済されていなかっ たと発表。その後の調査委の調べで、昨年夏ごろ、84億円とは別に前会長の関連会社を迂(う)回(かい)させる方法で約2 2億5千万円の貸し出しがあったことも分かった。貸し出し総額は判明分だけで、計106億円超となる。井川前会長や親族は 、所有する自社株などで全額を弁済する意向を示している。

 調査委は今月末をめどに、再発防止策を盛り込んだ調査報告書を取りまとめて公表する予定。調査委関係者は「創業者一族と いう力を背景にトップダウンで現金を借りた。そのことは(貸し出しを決めた)議事録などからもうかがえる」としている。調 査委は一連の借入金全額を対象にして、会社法違反(特別背任)罪で、前会長を刑事告訴する方針を固めている。

 特捜部はすでに同法違反容疑で、前会長の立件を視野に子会社幹部らの聴取を開始。前会長名義の銀行口座の出入金記録や、 子会社と交わした貸借を証明する書類なども調べている。
大王製紙、逮捕された井川前会長「お詫び」全文
2011年11月22日(火)13:19 読売新聞

 会社法違反(特別背任)容疑で東京地検特捜部に22日に逮捕された大王製紙前会長の井川意高容疑者は同日、弁護士を通じ 、「お詫び」と題したコメントを発表した。

 その全文は以下の通り。

     ◇

 お詫び

 大王製紙株式会社

 前代表取締役会長

      井川 意高

 この度は、私と大王製紙株式会社(以下、大王製紙)の関連会社との借入問題に関しまして、世間の皆様を大変お騒がせいた しておりますこと、心からお詫び申し上げます。

 大王製紙の会長、また同社関連会社の会長等役職にあったものとして、このような不祥事を起こしたことにつきまして、大王 製紙並びに関連会社の皆様、長年にわたりご信頼頂きお取引させて頂いておりました皆様、そして同社の商品をご愛用いただい ている皆様など全ての関係者の方々に対して申し訳なく、深くお詫びを申し上げるより外ございません。

 私が大王製紙の関連会社から、のべ100億円余りの融資を受け、これを全て私の個人的用途に使ったことは事実でございま す。また、これらの借入金の殆どをカジノでのギャンブルに使ったことも事実です。

 きっかけは、私が株式の先物取引、FX取引で多大な損失を出した後に偶々訪れたカジノで儲け、当初、大きな利益を得るこ ともあったことによりその深みにはまったものですが、全ては私の不徳の致すところであり深く反省しております。

 本件の借入れは全て私が一人で行ったことであり、融資をしてくれた大王製紙の関連会社等の担当役員らは単に私の要請に応 じてくれたに過ぎず、私一人に責任があるものと考えております。結果的にこれら関係者の方々にも多大な迷惑をかけることと なり、誠に申し訳なく思っております。

 今回の関連会社からの借入金の残金につきましては、私が保有する関連会社の株式及び現金により返済する旨を関連会社に対 して既に通知しておりますが、種々の問題により具体的返済に至っていないのが実情です。

 なお、本年10月28日、大王製紙は特別調査委員会が提出した同月27日付調査報告書を受けて、「特別調査委員会からの 報告を踏まえた当社の対応について」を公表しました。特別調査委員会は、私井川意高、父である井川高雄大王製紙元顧問及び 弟である井川高博同社元関連事業部担当取締役を一体として「井川父子」と捉え、その支配力の強さが今回の貸借問題の原因で あったという報告書を公表し、同社は、この報告を受けて父を顧問から解嘱し、弟を無任所取締役に降格しました。

 本件は、本年3月に私の借入について父から叱責を受けたにもかかわらず、その後も借入を続けた私自身の問題であって、同 年4月以降の借入については9月まで父も弟も知らなかったものであり、その責任は全て私にあります。本件が、「井川父子」 、或いは、創業家の支配力の問題等とされてしまうことにより、大王製紙が、今後、コンプライアンス及びコーポレートガバナ ンスを立て直してゆくための道筋を誤ることがないことを心から希望しております。もとより、かような事態の原因を作った者 として深くお詫び申し上げるところですが、何卒、大王製紙が信頼を回復できるよう、関係者のみなさまに衷心よりお願いする 次第です。

 この度の私の不祥事について皆様に多大なるご迷惑とご心配をお掛けし、お騒がせいたしましたことを重ねてお詫び申し上げ ます。

          以上