占星コラム


2010/11/12 結婚における8室の役割について

8室というのは、とかく最も不幸なハウスであるというイメージが強いハウスであるが、Z.アンサリの結婚のタイミングに関する研究では、結婚についての2次パラメータとして挙げられており、また結婚が長続きするかは、このハウスで見るとのことである。

8室は7室(パートナー)をラグナとした場合の2室であり、パートナーの両親、家族、財産を表わすハウスである。

おそらく8室が傷ついていたら、パートナーの両親、家族との関係に苦労したり、パートナーから得られるもの(お金、人脈)などに恵まれないということになる。

然し、そもそも8室に惑星が在住していなかったり、アスペクトしていなければパートナーから得られるものに無関心で期待もそれほどしていないのである。

然し、8室に惑星が在住している人は、パートナーから得られるものを意識し、その事が切実な問題になってくるのではないかと思われる。

8室に惑星が在住していて、8室で惑星が定座にあったり、強い配置で吉星の同室や吉星からのアスペクトを受けている場合、パートナーから得られるものに関心があり、しかもそれらを得られるのである。

逆に8室の惑星が減衰や敵対星位にあり、凶星の同室や凶星からのアスペクトを受けている場合、パートナーから得られるものに関心があるが、それらを得ることに苦労したり、問題が発生するのではないかと思われる。

結婚生活とは多かれ少なかれ、お互いに相手に依存し、束縛し合うことを表わしている。

その典型的な例が、婚姻した男女が家を買うときに、お互いに生命保険をかけ合って、どちらが倒れた場合でも、もう片方が生き続けることができるように手堅く手続きすることである。

これこそが完全な意味での相互依存であり、一生婚姻関係を続けることを前提とした長期的な措置である。
相手が死ぬまでつき合います、あるいは、自分が死ぬまで(死んだ後も)相手の面倒を見ますという意思表示である。

だから8室が結婚のパラメーターとして重要だというのはよく理解できるのである。

私の友人も8室の支配星のダシャーの時期に結婚している事例をよく見るそうである。

然し、8室の状態がより重要になるのは、女性においてではないかと思われる。

家を購入して夫が生命保険に入ることを条件に結婚した女性の事例が、以前の職場関係でいたことを思い出すのである。

普通の場合、妻子を養なう夫の方が生命保険に入って自分が働けなくなった場合の妻子の生活を担保するのである。

生命保険が存在しなかった昔は、夫がいなくなれば、夫側の実家の両親が夫の妻子の面倒を見たのである。

相手と結婚した場合に自分の未来がどうなるかということは、大抵、8室で考えているのである。

相手の両親の家柄(8室)とか、財産(8室)とか、そういったものを意識して、それにこだわるのである。

従って、名家同士が子息や令嬢を結婚させる場合、相手の家柄、資産関係などを探偵まで雇って詳細に調べるのではないかと思われる。

相手方が少しでも問題がありそうな家の場合、結婚を認めないのである。

だから、8室を意識する結婚とは、相手の家や両親との結婚でもあるのである。

夫に養ってもらうことを考える女性は、結婚する時に夫とだけ結婚している訳ではなく、夫の両親や家と結婚しているのである。

夫の両親や家に恵まれていれば、婚姻関係は幸せで安定し、持続性があり、長続きするのである。

夫の両親や家に問題があれば、婚姻関係は不安定で、持続性がなく苦悩に満ちたものになるのである。

そういった意味で、結婚が長続きするかどうかは、8室で見るということの意味がよく分かるのである。

このように常に結婚というものは、相手の両親や家族との存在を意識するものであるため、結婚と恋愛は全く違うものである。

男女が恋愛から結婚に移行していく時に、そこには明らかに変容(8室)があり、それまで楽しかった恋愛関係の突然の変化(8室)を経験するのである。

恋愛している時には良かったが、結婚したらこんなはずではなかったというようなケースが多々あるのはその為である。

恋愛しているときは、5室の象意で純粋に好きだという気持ちだけでつき合っていればいいのである。

相手の両親や財産などを意識する打算が働かない、純粋さがあり、美しい関係である。

それを貫き通せれば素晴らしいのであるが、だんだん家(柄)や両親の問題という現実が頭をもたげて来て、それに負けてしまうのである。

そうした恋愛の純粋な美しさが、家族、両親の圧力のもとに屈して、最終的に悲恋に終わるという物語は昔から舞台や映画などで取り上げられたテーマではないかと思われる。

その時、その純粋な恋愛を美しいままで結晶化させて終わらせようとする行為の一つに駆け落ちがある。

あるいは、駆け落ち、心中である。

『失楽園』で渡辺淳一が描き出したあの世界である。

(あるいは『失楽園』が趣味に合わないという人は『ロミオとジュリエット』でもいいのである)

それは純粋で美しいが、現実が伴わないだけに危うく崩壊する運命(さだめ)にあるのである。

家族とか両親とか、わずらわしいものから逃れ、純粋な恋愛を貫き通そうとする必死の抵抗である。


それは現実逃避でもあるのだが、何から逃げているかと言えば、8室の魔の手から逃げているのである。

最近、日本版ロミオとジュリエットであるとして前評判が高かった映画『雷桜』も結局は、そのような恋愛(5室)と相手の両親、家柄(8室)の狭間で苦しむ男女の物語である。



『雷桜』で、この問題をどのように解決するのかは見ものである。

結局、8室の魔の手は決して逃れることのできない天敵であり、支配者(苦悩、天災)であるのだが、それから逃れようと男女が必死にもがき苦しむ所にドラマ性があり、見る者の深い共感と感動を呼ぶのである。

通常は、男女の死や破局、強制的な別離といった形で終わるのが常である。

5室の金星


私の友人によれば、古典によると5室の金星は、結婚にはわるいそうである。

5室の金星とは相手の両親とか家族とかそういった重たいもの(8室)を背負い込まないで、またそういった相手の両親や家族からの恩恵にも頼らず(期待せず)に恋愛の最も甘美な喜びだけを味わおうとする配置である。

ある意味、おいしい所取りであると言える配置である。

然し、8室とはモクシャハウスでもあり、束縛を受けるかわりにそこから学ぶこと、悟ること、得られる精神的恩恵も大きいのである。

然し、5室の金星はパートナーから純粋な恋愛の喜びや楽しさだけを求めるため、結婚には結びつかないのである。

おそらく、このような恋愛は衣食住の経済的負担や地縁血縁的束縛から完全に解放された未来社会によってのみ大規模に可能となる恋愛である。


6室に惑星が在住、あるいは惑星集中する人


8室に惑星が何も在住しておらず、6室に惑星が在住して6室が強調されている人に顕著な特徴は自立していることである。

相手の両親とか家族(8室)、相手からもらえるもの(8室)に期待も依存もしておらず、興味もないため、相手とつき合う基準というものは、相手のことが好きかどうかというものである。

然し、6室は部下や目下の者を表わす為、自分より格下の相手だったり、能力的にも下なので、相手に対して不満やストレスなども感じるのである。

従って、不満やストレスが大きいと自分からさっさと別れて、関係を解消することが多いのである。

相手から得られるものに依存も期待もしておらず、自立しているので、わりと簡単にあっさりと別れるのが特徴である。

だから6室に惑星が在住する人は、つき合うが別れも多くなるのである。

最も結婚が長続きしないのが6室というパラメーターである。

通常、マハダシャーやアンタルダシャーが6室の支配星で、6室や6室の支配星にダブルトランジットしている時期は結婚している人にとっては離婚の時期である。

6室に惑星が在住している人の特徴は、その人自身は相手に不満があって結婚に消極的であるが、相手は結婚したがっているということである。

それは6室に惑星が在住している人は相手から見ると8室に該当するため、相手はこの人から得られるものに期待して結婚したいと思うようである。

女性の場合でも6室に惑星が在住している人は、相手に対して不満やストレスを感じると、すぐに離婚に踏み切ることが多く、自立していて、相手の男性の方が未練がましく依存的なのが特徴である。

従って、このような場合の女性は結婚するのに相応しい、いい相手がいないと感じたり、嘆いていたりすることが多いものである。



8室に惑星が在住、あるいは惑星集中する人


8室に惑星が集中する人は、相手に依存的で、相手から得られるものに期待や依存をしており、相手の家族や家柄、財産などに対して意識的である。

然し、自分が6室に該当するため、相手からしばしば軽んじられており、相手はこの人との関係に不満やストレスを感じており、しばしば不倫などをして、ストレスを解消するのである。

あるいは、相手は結婚や交際が続いている間でも、別の人と交際を始めたりして関係が事実上、破綻したり、あるいは相手の不満やストレスから別離を切り出されたりするのが8室に惑星が集中している人の特徴ではないかと思われる。

然し、こうした場合でも8室に惑星が集中している人は、相手に対する依存傾向が未練となって完全な別離に至らずに腐れ縁が続いていくことが多いのである。

とっくに関係が破綻して、事実上、別離をしているのにそれでも一緒に家庭内別居しながら、同居していたり、別れて、相手には別のパートナーがいるにも関わらず、時々、会ったりなど、関係を完全に切ることが出来ずに、時には関係が復活したりなど、煮え切らない関係が続いていく。

その関係は決して幸福ではないのであるが、何故か関係が継続し、腐れ縁が細く長く続いてゆくのである。

結婚における8室の役割を考える時に、その対となる6室についても考察する必要が出てくるので、6室についても多く言及したのであるが、7室から見た8室である2室に在住、あるいは惑星集中している人の事例を次に見てみたいと思うのである。



2室に惑星が在住、あるいは惑星集中している人


2室に惑星が集中している人は、2室が富や財産のハウスであるため、2室にダナヨーガが形成されて、資産家、富裕者になるのである。(もちろん、吉星が在住あるいはアスペクトして強いか、凶星が在住あるいはアスペクトして傷ついているかによって資産家になるかどうかは条件付けられる)

以下は、画家の藤田嗣治のチャートである。



天秤座ラグナで2室に金星、太陽、月、水星Rが集中し、経済的に成功して資産家となる配置である。



実際、彼の絵はフランス、パリで売れに売れて、経済的に成功したようである。


wikipediaに彼のパリでの成功が以下のように描写されている。

パリの寵児

面相筆による線描を生かした独自の技法による、独特の透きとおるような画風はこの頃確立。以後、サロンに出すたびに黒山の人だかりができた。サロン・ドートンヌの審査員にも推挙され、急速に藤田の名声は高まった。

当時のモンパルナスにおいて経済的な面でも成功を収めた数少ない画家であり、画家仲間では珍しかった熱い湯のでるバスタブを据え付けた。多くのモデルがこの部屋にやってきてはささやかな贅沢を楽しんだが、その中にはマン・レイの愛人であったキキも含まれている。

彼女は藤田の為にヌードとなったが、その中でも『Nu couche a la toile de Jouy(寝室の裸婦キキ)』と題される作品は、1922年のサロン・ドートンヌでセンセーションを巻き起こし、8000フラン以上で買いとられた。

このころ、藤田はそのFoujitaという名から「FouFou(フランス語でお調子者)」と呼ばれ、フランスでは知らぬものはいないほどの人気を得ていた。1925年にはフランスからレジオン・ドヌール勲章、ベルギーからレオポルド勲章を贈られた。

この配置は、女性から見たら願ってもない理想的な配置であり、普通の安定志向の女性であれば、彼と結婚することに対する期待感は自然と高まるのである。

実際、彼の婚姻歴を見ると、モデルなど魅力的な女性と次々と結婚と離婚を繰り返していることが分かるのである。

・1912年 女学校の美術教師であった鴇田登美子と結婚(フランス行きを決意し、1年余りで破綻)する

・1917年3月にカフェで出会ったフランス人モデルのフェルナンド・バレエ(Fernande Barrey)と二度目の結婚をする(急激な環境の変化に伴う不倫関係の末に離婚)

・フェルナンドと別れた後、藤田自身が「お雪」と名づけたフランス人女性リュシー・バドゥと結婚(酒癖が悪く、再び不倫の末に離婚)

・1931年に新しい愛人マドレーヌを連れて個展開催のため南北アメリカへに向かう

・1935年に20数才離れた君代と出会い、一目惚れし翌年5度目の結婚、終生連れ添った

(wikipediaより引用、編集)


2室は7室をラグナとする場合の8室である。

女性の8室に惑星が在住する場合、セックスアピールが強くなるのであり、そうした魅力的な女性たちがパートナーの富や財産などから得られるものにひかれて、時には彼の所有物、財産(2室)として囲われる傾向にあったことを表わしているのである。

然し、2室から見た7室は6室なので、女性に対して不満やストレスを感じると、やはり別離することになるのであるが、その場合、慰謝料などを渡して、わりと簡単に関係を終わらせるのがこの場合の傾向ではないかと思われる。



(参考文献)

藤田嗣治 wikipedia