占星コラム


2010/10/20 映画「(500)日のサマー」に学ぶ

最近、視聴した恋愛映画で非常にお勧めなのが、(500)日のサマーである。



何がお勧めかというと、この映画で天秤座の女性と、魚座の男性(おそらく)の恋愛模様を見ることが出来るからである。

あらすじは、カード製作会社に勤める主人公のトムが、会社に新しく入社してきたアシスタントのサマーに恋をして、飲み会でのやり取りなどを通じて親しくなり、交際するが、感性や価値観が合わずにすれ違い、最後に哀しい別れを遂げるという悲恋の物語である。

然し、そのような悲恋を現代の若者に受けそうな軽いタッチで描いており、楽しめる映画である。

冒頭で、ヒロインであるサマーの経歴や特徴について、ナレーションが説明するくだりがあるが、その説明から直ぐに典型的な天秤座の女性であると分かるのである。

サマー・フィンは女だ
身長は平均 体重も平均
靴のサイズは平均より少し上
どの点から見ても ―
サマーは普通の女の子
だが 実際は違った
1998年卒の高校のイヤーブックに ―
ベル&セバスチャンの歌詞を引用した
”トラブルまみれの人生を”
とたんに彼らのアルバムが地元でバカ売れ
業界人も首をかしげた
サマーが大学2年の時にバイトした店は ―
なぜか売上げが212%もアップ
サマーが借りたアパートは ―
家賃を相場より9.2%も安くしてくれた
通勤バスの乗客は ―
1日平均18.4回
彼女を振り返った
この”サマー効果”は―
すべての男子が
一生に一度は体験するものだ
トムの住む街には
40万の職場があり ―
ビルは9万1000棟
人口は380万人だ
彼女と出会った理由は1つ
”運命だ”

(冒頭のナレーション字幕より)

このナレーションで強調されていることは、サマーが美形でルックスがよく、モデルか、アイドルのように大勢の人を夢中にさせる典型的な天秤座の女性であるということである。

2人の最初の接触は、エレベータの中で、トムが聴いていた音楽(ザ・スミス)が好きだとサマーがトムに話しかける所から始まる。

トムはサマーとの立ち話で、建築家になる夢があったが、カード製作会社に不本意に勤めていることを明かす。

サマーは「カードライターがお似合いね」と茶化すのだが、トムはサマーが去った後で、自分のデスクで、建築のスケッチをカードに書いて、昔の夢を思い出しかけるが、 見られていないか周囲を確認した後で、スケッチを丸めてゴミ箱に投げ捨ててしまう。ここでトムは建築家になる夢をまだ持っていることと、サマーがそれを思い出させるくらいに影響力があることを表わしている。

トムは会社の同僚に以下のように告げるのである。

ハマッた
完全に恋した
あの笑顔 髪の毛
ヒザも好きだ
胸元のハート形のアザも
話す前に唇をなめる癖も好きだ
笑い声も
眠ってる時の顔も
彼女を思って この曲を聴く
サマーがいると まるで・・・
不可能が可能になる
生きがいを感じる

友人は完全にはまってしまっているトムの有様をみて ひと言「ヤバイ」とつぶやく。
トムはサマーに恋をしたのである。
トムは言わば、ロマンチストで、一目ぼれをしやすい魚座の典型である。
サマーを理想の恋人として偶像化し、信者のように崇拝して(ハマって)しまうのである。

エレベーターの中で、サマーと会ったトムは、サマーに週末はどうだった?と聞くが、

サマーは「最高だった」と(最高)を強調して言う。

ジムであった男とデキてしまったらしいのである。

トムは会社の同僚に彼女のことはやっぱりやめた、尻軽女はごめんだと言う。

天秤座ラグナの女性はしばしば八方美人で尻軽な所があるのは確かである。

このようにして作品が展開されていく中で、サマーは天秤座の典型であることが明らかになってくるのである。


次にサマーの考え方や価値観が分かるシーンが出てくるのだが、

会社主催の飲み会で、トムとサマーとトムの同僚が3人で会話を交わす以下のようなシーンが出てくる。

(同僚)    恋人は?
(サマー)   いないわ
(同僚)    何故?
(サマー)    欲しくないの
(同僚)     信じられない
(サマー)   女性の”自由と自立”に反対?
(同僚)    レズビアン?
(サマー)   違うわ
        恋人になるのはイヤなの
        誰かの所有物になるのは最悪

(同僚)    理解できないね
(サマー)   そう?
(同僚)     ああ
(サマー)    じゃ説明するわ
(同僚)    頼むよ
(サマー)   自分自身でいたいの
         恋愛関係は面倒だし傷つくのもイヤ
         私たちは若いし
         ここは世界一美しい街
         人生は楽しまなくちゃ
         倒なことは後回し
(同僚)     言ってくれるね 男まさりだ
(トム)      待て 恋に落ちたら どうする?
(サマー)    ははは
(トム)      何?
(サマー)    恋を信じるの?
(トム)     サンタは信じないけど
(サマー)   どういう意味? 恋は長続きしないわ
         結婚しても別れるカップルが大半よ
(トム)     両親もそうだ
(同僚)    レディーはムキになってる
(サマー)    なってないわ
         愛は絵空事よ
(トム)     君は間違ってる
(サマー)    いいわ
         どこが間違ってるの?
(トム)     愛を感じれば分かる
(サマー)   そこが意見の相違ね
(トム)     ああ
(同僚)    よし 次は誰だ・・・
(サマー)   ”若きウェルテル”よ
(トム)     酔い足りない
(サマー)   バーテンさん

このやり取りの中で、トムはナイーブで恋愛を信じる男性であり、サマーは自由と独立を愛し、束縛されることを嫌い、恋愛を信じない女性であるという対比がなされ、センスや価値観の違いが浮き彫りになっている。

ここでも、トムは感傷的で水の星座が強そうな男性で、ロマンチストである為、おそらく魚座の男性であると推測され、サマーは自由と独立を愛し、束縛を嫌う典型的な天秤座の女性であることがよく分かるのである。

ルックスがよく全ての男性から好かれるのは、この天秤座タイプの女性である。

モデルとか、女優、アイドルはこの星座に多いと思われるが、外見だけで人から一目ぼれされやすいのが、このタイプではないかと思われる。

また相手にうまく合わせて調和を図るため、相手に自分に気があると誤解させる星座である。

また誘われると断りきれずについつい付き合ってしまうというのも、優柔不断なこの天秤座タイプである。

太陽が減衰する星座である天秤座は自分の主張をせずに、しばしば相手に合わせてしまう所があるようである。

これは天秤座の男性にも言えるかもしれないが、 従って、実際はあまり気が合わないのになんとなく、付き合ってしまうというケースも天秤座の場合、多いようである。


この映画でのトムとサマーの関係性であるが、トムはサマーに恋をし、サマーはトムに友達としての面白味と新鮮さを感じて、交際がスタートするが、トムは運命の出会いだと信じ、サマーはあくまでも友達として付き合いたいのであって、結婚までするような真剣な恋愛だとは思っていないのである。そして、そこに感性、考え方の違いによるすれ違いが生じてくる様が描かれている。

それは交際を始めた当初からそうであったと予想されるのであるが、だんだんサマーが相手に合わせるのが疲れてきて、別れを切り出すのである。

然し、恋をしているトムは最後まで、未練がましくサマーとヨリを戻したいと考えている。


この映画は、天秤座でルックスがよく愛嬌があり、男性に一目ぼれをさせる美しい女性の典型であるサマーが、サマーに一目ぼれして、恋に落ちたトムに興味を感じて交際するものの、決して真剣には付き合わずにあくまでも遊びで、付き合い、最後に別れて別の人と結婚するという残酷な物語である。

これは天秤座ラグナのような、ルックスとは裏腹にクールでドライで理性的な女性が、魚座のナイーブで、ロマンチストで、感傷的な夢みる青年を振り回して、最終的に別れるという残酷な物語であり、天秤座と魚座の6−8の男女関係を典型的に表現した優れた作品である。

作品に出てくるエピソードは細部に渡ってリアルであり、完成度が高く、この映画が低予算のインディペンデント映画であるにも関わらず、多くの賞を受賞したというのもよく理解できるのである。

おそらく原作を書いた人は、このような恋愛を実際に経験したのだろうと思われる。 (後にwikipediaで確認した所、実際に脚本家の自伝的作品だったようである)

然し、このような6−8の男女関係を通じて、トムとサマーはお互いに成長したとも思えるのであり、この失敗にも意味があったと思うしかないのである。

脚本が語るようにこの出会いも完璧な”出会い”であったと思われるが、6−8の関係を体験する運命の出会いである。

神はこのような残酷で哀しい体験も用意しているのである。


現在、天秤座ラグナから見ると、6室と12室、そして2室にダブルトランジットしており、天秤座ラグナの人たちの今の時期の交際とは、このようなすれ違いを伴なうものになりやすいのであって、この映画が封切られたタイミングはそうした意味で絶妙である。

また現在、6、8、12室にダブルトランジットが生じている牡羊座ラグナの私にとっても、この映画は衝撃的で共感に値する作品である。

この映画は天秤座と魚座の悲しい恋愛模様を描いたまさに教科書的な作品なのである。


実は、60年代から70年代のカウンターカルチャーや、ベトナム反戦運動などの平和運動、女性の権利拡大、男女平等(フェミニズム運動)、性の解放(フリーセックス)などは、天秤座(水瓶座、双子座も含む)から出てきた理念である。

特に性の解放(フリーセックス)という理念は、天秤座から出てきた理念で、天秤座は、結婚するまでは性行為をしないというキリスト教原理主義(魚座)的な考え方を見下して軽んじる星座である。(注1)

一方で、この世に唯一の運命の相手(パートナー)と出会い、その相手と結婚するという非常にロマンティックな男女関係の理想、恋愛観というものは魚座がもたらしたものである。(注2)

その運命の相手と出会ったら、永遠の愛を誓って結婚するという思想は、魚座がもたらしたロマンティックな恋愛観の産物である。

サマーは典型的な天秤座であるため、映画の中では、性に開放的で自由な女性として描かれている。

そして、トムと交際する中で、トムは交際のゴールとしての結婚を意識するため、ただの気軽な友人として付き合いたい、サマーとの間で、感性、価値観のずれによる破綻が生じるのである。

天秤座の恋愛とは、気軽で、肩の凝らないものであり、情念的に対象に固執しないものであるが、魚座はナイーブで、対象に対する未練や執着も強いのである。

そして、魚座と天秤座の恋愛では圧倒的に天秤座が強者として支配者として振る舞い、魚座はただ天秤座に支配され、振り回される哀れな存在であるということが、この映画を見てよく理解できるのである。

まさに魚座と天秤座の6−8の恋愛劇の顛末を鮮やかに描き出した傑作である。

その辺りの星座による恋愛観や感性、価値観の違いというものが、浮き彫りに出ていたのがこの映画である。


映画の中で、トムを演じたのは、ジョゼフ・ゴードン=レヴィット、最近では、映画「インセプション」に脇役として出演している。

サマーを演じたのは、ズーイー・デシャネルで、最近では「イエスマン」でジム・キャリーと共演していたのを見たが、天秤座や風の星座が強そうな女性である。

脚本は、スコット・ノイスタッター&マイケル・H・ウェバーによるもので、wikipediaによれば、この映画のストーリーは、スコット・ノイスタッターのロンドン・スクール・オブ・エコノミクスでの実際のロマンスに基づいているようである。

細部までリアルで脚本の完成度が高いのは実際にあった苦々しい体験を綴ったものだからである。




(注1)例えば、モルモン教徒などがそうである。
(注2)例えばおそらくソウルメイト探しというのも究めて魚座的な発想である。


(参考文献)

wikipedia (500)日のサマー