占星コラム


2009/11/13 市橋達也容疑者のチャートについて

市橋容疑者が逮捕され、マスコミが大きく報道している。

市橋容疑者:大阪市内で逮捕 英女性遺棄容疑
2009年11月10日 19時30分 毎日新聞社

 千葉県市川市で07年3月、英会話学校講師の英国人女性、リンゼイ・アン・ホーカーさん(当時22歳)が殺害され遺体で見つかった事件で、死体遺棄容疑で指名手配されていた市橋達也容疑者(30)が10日午後、大阪市住之江区内で逮捕された。市橋容疑者は先月下旬、名古屋市内で整形手術を受け、捜査本部が11月5日に最新の写真を公開して情報提供を求めていた。

 大阪から新幹線で移送された市橋容疑者は10日午後11時58分、黒いジャンパーを頭からかぶり、両脇を捜査員に抱えられるようにして東京駅のプラットホームに降りた。報道陣から「後悔していますか」などと問いかけられたが、無言のまま警察のワゴン車へ。11日午前0時46分に捜査本部のある千葉県警行徳署に到着した。

 捜査本部によると、市橋容疑者は容疑について「弁解することは何もありません。何も話したくありません」と供述しているという。

 捜査本部などによると、市橋容疑者は10日午後6時44分、大阪市住之江区の南港フェリーターミナル付近にいるところを「市橋容疑者に似た男がいる」と110番された。駆け付けた大阪府警住之江署員に任意同行を求められ、同署で指紋を照合後、午後8時17分に逮捕された。市橋容疑者はフェリーで那覇に向かう予定だったという。

 逮捕容疑は07年3月下旬、当時住んでいた市川市福栄2の自宅マンションのベランダに置いた浴槽内に、リンゼイさんの遺体を遺棄したとしている。捜査本部はリンゼイさん殺害についても何らかの事情を知っているとみて調べる。

 指名手配を受けた市橋容疑者は2年7カ月余りにわたって行方をくらませていたが、先月24日に名古屋市内のクリニックで鼻の整形手術を受けていたことが、クリニックの通報で判明。捜査本部が今月5日にクリニック訪問時の写真を公開すると、新たに▽08年8月から約1年2カ月にわたり大阪府茨木市の土木会社の寮に住み込みで働いていた▽名古屋で整形手術を受けた前後、市橋容疑者とみられる男が福岡市内のインターネットカフェなどに立ち寄っていた−−などが分かり、各地に派遣された捜査員が行方を追っていた。

 捜査本部によると、リンゼイさんは東京都内の英会話学校で講師を務めていたが、07年3月26日午後、行方が分からなくなったとの連絡が勤務先の職員から県警に寄せられた。千葉県船橋市のリンゼイさんの自宅から市橋容疑者の電話番号や名前などが書かれたメモが見つかったことから、捜査員が26日午後9時40分ごろ、市橋容疑者の自宅を訪れて玄関前で職務質問をしたところ、市橋容疑者は逃走した。

 捜査員は市橋容疑者宅のベランダに置かれた浴槽からリンゼイさんの遺体を発見。首を強く絞められ殺害されたとみられ、県警は翌27日に市橋容疑者を指名手配していた。

彼の整形前の写真と、整形後の写真がテレビで報道され、また全国指名手配で、懸賞金が1000万円となるなど、非常に扱いが大きいのが特徴で、彼が行徳警察署に移送された際に、待ち構えていた市民は彼に罵倒を浴びせて大騒ぎになったり、ネット上では彼をヒーロー扱いする論調も見られる。

出生時間が分からないので、12時でチャートを作成したが、こうした大きく取扱いが為されて、有名人となったのは、月から10室の射手座に太陽、火星、水星が集中していることから納得できるのである。

10室は人から隠れることのできない注目を浴びる大舞台である。

今、日本国民の大多数が、彼の整形前の写真と、整形後の写真を見ているはずである。

それくらいあらゆる人から見られ、知られて有名となる配置をしているのである。

市橋容疑者が、千葉県警の捜査員を振り切って逃走した2007年3月26日のトランジットを見ると、土星が逆行して、月から6室にアスペクトし、火星も月から6室にアスペクトしている。


この時のトランジットは、月から6室に在住する土星とラーフが示す、暴力のカルマを噴出させたことを説明可能である。

ちょうど、押尾学が、月、太陽からみて、ラーフが在住する6室に土星が入室し、ダブルトランジットしている現在、一緒にいた銀座のホステスを不注意か、監督不行き届き、あるいは、彼が積極的に薬物を勧めたのかは分からないが、死亡させてしまったことと比較されるのである。

この土星は月から11室と12室を支配し、6室に在住しており、彼の評価に傷がつき、また12室は損失、隠遁の象意であるため、彼は逃亡して行方をくらましたのである。

その後、トランジットの土星は月から6室に入室したが、その間は、2008年中は木星も射手座から6室にアスペクトして、6室にダブルトランジットが形成していたのであるが、彼はこの土星が月から6室をトランジットしている間、警察を出し抜いて、逃亡生活を続けたことになる。

従って、6室というのは勝負強いハウスであることが分かる。 彼は警察に簡単には捕まらず、警察を出し抜いて、警察に競り勝ったとも言えるのである。

6室は否定的なカルマを築いてしまうハウスであるが、その象意を経験している時は本人自身は8室の象意として表わされ、支配者としての悪のカリスマ性を発揮して、悪運が強く容易には負けないのである。

従って、彼は6室に土星がリターンして、ダブルトランジットが6室に形成されている間、警察から逃げのびたのである。

然し、この間の彼の生活は、土木建設会社に住み込みで働いたり、整形手術をしたり、忍耐や苦難を伴うものだったと思われる。

然し、それをやり抜いたということがやはり悪の強さを発揮する6室の特徴ではないかと思われる。

6室に凶星が在住し、敵を粉砕する配置である。この場合、敵というのは警察(土星)かもしれない。



そして事件当時は、6室にダブルトランジットが形成されていたことの他に木星は月から9室をトランジットしており、土星は5室をトランジットしており、5室に土星と木星のダブルトランジットも形成していたようである。

木星と土星のトランジットで、9室と5室が強調されており、特に9室(先生)に木星(先生)がトランジットしているので、先生と関わる時期である。また5室にダブルトランジットしているので英語の学習に熱心となり、またその過程は通常5室が持つ娯楽とか恋愛とかいった要素もあったかもしれない時期である。

9室には8室支配の金星が在住しているが、金星は女性の表示体でり、女性の星座である蠍座に在住している。

そして、この9室の蠍座は情念を表す水の星座でもある。


彼は当時、被害者であるリンゼイ・アン・ホーカーさんを英語講師として、英会話学校の授業の他に個人的にも英語を教えてもらう約束をしていたようである。


ここで、8室支配の金星が9室に在住していることが注目されるのである。

8室は通常、支配者であり、束縛して、翻弄する相手だったり、自分が依存せざるを得ない相手である。

そして、8室の相手とは濃密な愛憎交えた関係を築きやすいのである。

従って、彼らが英会話学校の他にも、個人的にも英語のレッスンを受ける契約を結んでいたというのが、ビジネスライクな公的関係の枠組みから逸脱して、さらに踏み込んだ濃密な個人的な関係にすすんでいたことが伺えるのである。

これは、以前、魚座ラグナで、8室支配の金星が9室に在住していた事例から同じような状況を確認している。

その事例では、実際、蠍座ラグナの女性から、二股をかけられたり、翻弄されて、散々振り回されて心を支配され、悩まされた経験があったようである。

従って、この市橋容疑者と リンゼイ・アン・ホーカーさんの関係においても、 リンゼイ・アン・ホーカーさんが教師として、あるいは支配者として振る舞い、市橋容疑者は振り回されて、心を翻弄され、悩ませられたのではないかと思われる。

そして、その関係性の屈辱の中で、怒りに我を忘れて、彼はリンゼイ・アン・ホーカーさんを殺害した、いや、殺害してしまったという方が事実ではないかと思われる。

実際、学生時代の同級生が、市橋容疑者は、非常に怒りやすく、キレやすい性格だったと証言している。

市橋容疑者が千葉大学園芸学部に在籍していた時に一緒に空手の稽古をしたという本山直樹教授(現:東京農業大学客員教授)が、インターネット上に掲載した市橋達也容疑者に宛てた手紙が掲載されているが、以下の掲載文を読むと、その中で、「〜彼女との間によっぽど君の尊厳が傷つけられるような何かがあったのだろう〜」といった一文が見られる。

この身近に接していた本山氏の推測は、信頼できるのではないかと思われる。 やはり、よほどのことがない限り、このような事件を起こすはずがないというのが、身近な目から見た一般的な見解なのだろうと思われる。

それだけ、8室支配の金星によって翻弄され、女性との間で恋愛問題における苦しみを経験したのではないかと思われる。

そして、おそらく暴力を振るっていることから、欲望の苦しみからさらにカルマを形成してしまう、ドゥシュタナハウス(8室)と、トリシャダハウス(6室)の絡みがあったのではないかと推測されるのである。

本山直樹 Website

市橋達也君に告ぐ
(2009年11月8日)

君が整形手術の予約をインターネットでしたと新聞に載っていたので、もしかしたら本サイトを見てくれる機会があるかもしれないと思って、これを書くことにしました。数えてみれば、事件が起こってから3年近く、君が大学を卒業してからもう5年近くが経っていることに、時の流れの速さを感じます。私は昨年3月に千葉大学を定年退職し、今は東京農業大学の客員教授になってまだ農薬の研究を続けています。

市橋君、君はいったいどうしてしまったのだ。君と私の接点は、私の研究室で卒業論文の研究をしたのでもなく、私の授業を受けたのでもなく、ただ園芸学部の道場で一緒に空手の稽古に汗を流しただけだったけど、そのことを私は今でも大変なつかしく思っています。同好会のような小さなクラブ(確か君がいた時代の部員数は5〜10名程度だった筈)で、週2回、昼休みだけの稽古だったけど、皆で稽古の前には必ず道場の床の雑巾がけをし、稽古の後はシャワー室でシャワーを浴びて、研究室や教室に戻る前に更衣室で着替えながら雑談をするという何気ない活動が1年ちょっとくらい続いただろうか。卒業の少し前に、卒業後はどうする予定なのかと君に訊いたら、緑地環境学科で庭園デザイン学を勉強した君は、市川か浦安の辺りに住んで設計事務所でアルバイトをしながらさらにデザインの実務経験を身につけると言ったのを覚えています。英語を習っていたのは、将来海外に留学することも君の計画にはあったのだろうか。

それ以来君とは一度も会っていないので、卒業後何があったのか全くわからないが、報道されているような事件を犯したのだとしたら、彼女との間によっぽど君の尊厳が傷つけられるような何かがあったのだろう。この頃、毎日のように新聞やテレビに出る君の昔の顔と今の顔を見ると、本当に君はいったいどうしてしまったのだろうと思ってしまいます。逃げ切れるものではないし、例え逃げ切れたとしてもそんな逃亡生活の惨めさはすでに君自身が十分経験している筈です。彼女との間にどんな問題があったにせよ、君が今やるべきことは自ら出頭することです。そして、彼女のご家族に心から謝罪して、犯した罪の償いをきちんとして、その上で君はまだ若いのだから残りの人生をしっかりやり直すことです。そうすることが、君を育ててくれたご家族の名誉を回復し、君の友人たちの名誉を回復し、何よりも君自身の名誉を回復することになります。責任を回避して逃げ回ることは、君らしくない、人間として恥ずかしいことです。今の君が何に影響されているのかわからないけれど、自分自身の心をとりもどして下さい。

つい先日、園芸学部は創立100周年記念事業をやりました。その少し前には、天皇・皇后両陛下が戸定歴史館と園芸学部を訪問されました。そのためにキャンパス内や周辺環境の整備がすすんで、以前とは見違えるほどきれいになりました。最近のキャンパスの写真を何枚か貼付します。ちょうどA棟前のサンクガーデンや生協前広場のサルビアの鮮やかな赤い花が最盛期です。正門の上の猫は野良猫で、近所に餌をやる人がいるものだから、何匹も住みついて困っています。道場では今でも時々汗を流しています。このサイトには私への連絡方法(メールアドレス)も書いてあるので、もし君がこれを見る機会があったら、連絡して下さい。君と是非話をしたいと思っています。

http://sites.google.com/site/naokimotoyama/ichihashi より引用抜粋

市橋容疑者の出生時間を0:00:01から23:59:59の間で、可能な範囲を検証すると、事件が起こった2007年3月26日は、マハダシャーがケートゥか金星かのどちらかである。出生時間が7:23以降なら、マハダシャー金星期である。

この場合、女性の英語教師との間に起こした事件であるから、既にこの頃にはマハダシャー金星期に入っていたと思われるのである。

従って、出生時間は7:23以降であり、 星座で言えば、時計回りに射手座〜獅子座に絞り込まれる。


上記の本山直樹教授が書いているように、以前の彼とは別人のようになっているということから、おそらく、この英会話学校講師のリンゼイ・アン・ホーカーさんと出会った頃か、それ以前に、マハダシャー金星期への変わり目が来ていると思われるのである。

そのようなことから、彼のラグナはおそらく双子座の可能性が高いと思われる。

毎日新聞社の記事によれば、彼の父親は医者で、母親は歯科医であるそうである。

市橋容疑者:「医者になれなかった」 死体遺棄は黙秘
2009年11月10日 19時30分 毎日新聞社

 千葉県市川市で07年に英国人女性の他殺体が見つかった事件で、死体遺棄容疑で逮捕された市橋達也容疑者(30)が県警行徳署捜査本部の取り調べの際、職業について「(医者に)なれませんでした」と供述していることが捜査関係者への取材で分かった。市橋容疑者の両親は医師で、捜査員が「医者にならなかったのか」などと問いかけた際に答えたという。容疑については依然黙秘している。

 捜査関係者によると、取り調べ時の市橋容疑者は自ら話をすることはないが、家族構成や出身地を問われると答える時がある。捜査員が両親の職業について「医師か」と聞くと「そうです」などと応じたという。

 関係者によると、市橋容疑者の父は医師、母は歯科医師。市橋容疑者自身は岐阜県の高校を卒業後、東京都内の私立大に進学したが中退。千葉大園芸学部を卒業後も定職についていなかった。

 捜査幹部によると、行徳署に拘置されている市橋容疑者は睡眠は取っているが、12日の夕食も手をつけず、10日夜の逮捕以来食事を取っていない。「なぜ食べないのか」と聞かれても無言で、泣いたり取り乱すこともない。逮捕時はミステリー系推理小説の文庫本も持っていたという。【神足俊輔、中川聡子、斎藤有香】

ネット上には彼の父親が外科部長であるとの情報が掲載されている。

外科というのはメスなど鋭利な刃物などの道具を使う技術的な仕事であるため、火星がその表示体となるが、彼の10室を職業人としての父親のハウスとすると、10室の射手座に火星と太陽と水星が在住している。

9室支配の火星が10室に在住して、7室支配の水星と絡んでいることから、クライアントに外科的手術を行なうことを表していると考えられる。

また外科部長で管理職であるが、それは10室に在住する太陽や火星が表していると考えられる。
水星は太陽と接合して、ケートゥのナクシャトラに在住しており、ケートゥは水瓶座に在住して、 数学の能力が高いように思われる。

母親に関しても同様で、4室を母親のラグナとすると、10室支配の水星が4室で、火星、太陽と接合して、技術職であることを表している。


市橋容疑者のラグナを 双子座ラグナとした場合に、木星が2室に在住していることは、おそらく彼が大学に入学しても、親が生活費10万円を仕送りしてくれて、全く働く必要がなかったことに表れていると思われる。

然し、この木星は7、10室という2つのケンドラを支配して吉意を失っており、さらに6室支配の火星と8室支配の土星と絡んでおり、木星としての吉意を著しく失っていることが分かる。この場合、木星が高揚していることはマイナスに働き、むしろ、凶星としての木星の力を強く発揮している印象である。

従って、市橋容疑者に生活費10万円をただ与えて甘やかした両親は経済力があって社会的地位もあるが、全く、市橋容疑者にとっての真の保護者とはなり得なかったことを表している。

従って、後から述べるが、リンゼイ・アン・ホーカーさんを表示していると思われる、6室在住の金星にアスペクトしても保護の力を発揮しなかったのではないかと思われる。

彼が親の希望である医者になることが出来ずに千葉大の園芸学部に入学したのは、5室支配の金星が水の星座である6室に在住し、水の星座の蟹座で高揚する木星からアスペクトを受けているからではないかと解釈できる。

5室は専門教育を表し、二つの吉星と絡んでおり、金星はテクニカルプラネット(土星、火星、太陽、ラーフ、ケートゥ)の影響を受ける場合、ガーデニングとか、植物学、園芸、農業を表すようである。

金星は土星のナクシャトラに在住し、土星はラーフと接合し、3室から5室にアスペクトしている。

従って、5室には金星、木星、土星(ラーフ含む)の影響が見られ、園芸学部というのは双子座ラグナであれば納得できるのである。

このように彼が千葉大の園芸学部で専門教育を受けているため、5室と金星が絡んでいなければならないと思われるが、その他の手がかりとして、彼が非常に絵が上手いことも5室と金星が絡んでいることの証拠ではないかと思われる。(また9室支配の土星が3室から5室にアスペクトして、5室への金星と土星の影響によるものではないかとも思われる)

然し、太陽、火星、ラーフ、土星がナクシャトラの支配星を通じて、金星との関係を示しているため、そう考えると可能性の範囲が広がってしまうのであるが、直接、5室と金星が絡むパターンを考えていくと、可能性が限られてくるのである。

千葉大学の園芸学部に入学した時にこのマハダシャー金星に移行していたと思われるが、金星は2室(両親)で高揚する木星からアスペクトを受けているので、千葉大学・園芸学部の学費を親が出してくれて、そのお金で、おそらく、リンゼイ・アン・ホーカーさんが所属する英会話学校に通っていたのである。

この6室の金星は女性の表示体であり、6室に金星が在住する場合、女性への暴力を表す配置である。

あるいは女性を支配する配置と言えるかもしれない、お金を支払って、女性を雇う場合、このような配置になるかと思われる。

従って、月からみた場合、金星は8室支配で支配者となるが、ラグナからみた場合、女性の方が支配される側となり、被害者となるようである。従って、彼はリンゼイ・アン・ホーカーさんに授業料を支払うことによって、雇い主として支配する立場となったと理解でき、それがこの6室在住の金星で表わされていると考えることができる。

因みにこのマハダシャー金星期にこの事件のカルマが噴出してきたと考えられるが、この金星は火星の星座に在住し、土星のナクシャトラに在住している。

そして、土星、ラーフはプールヴァパールグニーに在住して、金星が支配するナクシャトラに在住し、火星、太陽もプールヴァアシャダーに在住して、金星が支配するナクシャトラに在住している。

従って、この土星、ラーフ、火星、太陽という4つの凶星は、金星と絡んでいるのであり、これは注目すべきポイントである。

逆に言えば、金星はナクシャトラを通じて、この4つの凶星と絡んでおり、傷ついていると言えるのである。


傷ついて凶星化した金星のマハダシャーの時期にしばしば犯罪が行われることが確認されているようである。
それは女性が絡んだ殺人事件など、金星の象意と関係するような犯罪である。

性犯罪などはまさにそうした金星が絡んだ事件ではないかと思われる。

 

このように双子座ラグナに設定すると、様々なことが説明可能である。

例えば、ラグナロードの水星が7室に在住し、6室支配の火星と3室支配の太陽と7室で接合している。

これはパートナー関係において、かなり、積極的に関わっていく、コミットしていく配置である。

そして、双子座ラグナに設定すると、事件を起こした2007年3月26日は、金星/火星期である。

マハダシャーロードの金星は6室に在住し、アンタルダシャーロードの火星は6室の支配星で7室に在住し、さらに金星から見ると、火星は6室支配で2室に在住している。

従って、ダシャーロードに6室が絡んでおり、彼はやはり暴力を振るうカルマの中にあったと言えるのである。

火星はもともと暴力の表示体で、6室の表示体である。

従って、ダシャーバランスから考えても、双子座ラグナの可能性が高くなってくるのである。

因みに彼が逃走中に整形手術をしたのは、火星が肉体を表すラグナロードの水星と接合して、ラグナにアスペクトし、さらに火星は顔を表す2室支配の月と、2室にアスペクトしているからではないかと思われる。また火星はマハダシャーロードの金星からみて2室に在住して、2室と絡んでいる。

従って、火星のアンタルダシャーの時期に暴力事件を起こして、整形手術もしたのだと考えられるのである。

 

そして、逮捕された現在は、金星/ラーフ期である。

アンタルダシャーロードのラーフはメディアの3室に在住し、制限、束縛などを示し、刑務所への留置、拘束を表していると思われる土星と接合している。土星は支配者を表す8室の支配星である。

また金星から見ると、ラーフは3室支配の土星とともに10室に在住している。

 

従って、現在、整形手術を図った市橋容疑者の顔写真が、警察からマスコミにリークされ、彼は激しくマスコミに露出して、全国指名手配されたことが理解できるのである。そして、最終的に懸賞金目当てに多くの人からの目撃情報があったためか逮捕まで行きついたようである。

そして、彼の顔は日本国民であれば知らない人はいないというほどに、市橋容疑者は有名人となってしまった。

これは金星からみて10室に在住するラーフの働きによるものであると考えられる。

もちろん、月からみた10室に惑星集中しているため、もともと、目立ちやすいカルマを持っていると言える。

 

トランジットの土星が獅子座にいる間は全く彼は逮捕されずに、警察を手玉に取って、逃げのびていたのであるが、土星が7室に移動して、ラグナと月にアスペクトし始めた段階で、彼は逮捕されたようである。

そして、木星が彼の8室にトランジットしているので、やはり、彼にとって、命運尽きたタイミングである。

これは牡牛座ラグナの小室哲哉が8室の射手座に木星がトランジットしていた時に逮捕されたことを考えてみればよく理解できる法則である。

そして、4室に土星と木星がダブルトランジットしているため、彼は引越しの時期でもあり、彼は逮捕された時、まず大阪からフェリーで那覇に向かう予定だったようである。南港フェリーターミナル付近にいた所を駆け付けた警察に逮捕されている。

そして、大阪から東京に新幹線で移動し、車で、捜査本部のある千葉県警行徳署に移送されている。

乗り物(4室)に乗って、あちこち移動して、居場所(4室)が落ち着かない日々を過ごしている。

これは土星が4室にトランジットして、4室にダブルトランジットが形成された効果である。

 

然し、すでにフェリーで那覇に向かおうとしていた所から、居場所が居心地がわるくなり、住み家を変える準備をしていたことが分かる。

 

また彼は、昔から何かと目立つタイプで人気もあったようである。

おそらくそれは10室に月が在住しているからである。

そして、月から見ても10室に火星、太陽、水星が惑星集中しており、さらに金星/ラーフ期で、マハダシャーロードの金星からみて10室にラーフが在住していると考えられるのである。

そのような配置が彼の報道がここまで大きくなった理由ではないかと思われる。

従って、彼はおそらく犯罪者であるが、しかし10室に月が在住しているので人気者なのである。

このように双子座ラグナの可能性を検討してみたが、当初、蟹座ラグナの可能性も検討していたのである。

蟹座ラグナでも5室と金星が絡み、6室に惑星集中して暴力的な性質やカルマを示していると考えられたからである。

然し、1室と9室で星座交換し、ラージャヨーガカラカの火星が6室から9室にアスペクトする配置は決して、わるい配置とは言えず、木星が機能的吉星化して1室に在住することが理解できなくなるのである。

また、事件を起こした時のトランジットが蟹座だと木星が5室に在住しているが、5室に在住しているよりも、双子座ラグナで、木星が6室をトランジットしていたと考えた方が理解しやすいのである。

実際に全ての可能性を検討している訳ではないため、これで決定できるかは分からないが、

双子座ラグナの可能性は高いのではないかと思われる。

そして、もし双子座ラグナであれば、ラグナが在住するナクシャトラは、双子座6°40'〜20°00'のラーフを支配星とするアールドラーではないかと思われる。

アールドラーは、 以前、ネット上で見つけた解説(現在見当たらず)には、「偉大な指導者と天才的な悪人のどちらにもなり得る性質をもった人」とか、「古くなったものを吐き出し、来るべき新しいものの為の革命という仕事が宿命」とか、「とても深い愛情をもっているが故に、初婚で失敗する人が多い」と解説されている。

あるいは別の資料では、平和であるよりも悪くてもいいから何か事件があった方がパワーが出るとか、異性とのトラブルが多いと解説されている。

春日秀護氏の『インド占星学』(魔女の家BOOKS)には、涙の星宿、浄化の星宿と呼ばれ、 『 嵐(浄化)を必要とするほどに汚れている、「汚れの極」であるということ、また、それを根こそぎ浄化し、「清浄」になりたいという「両極」をもつことになる』と解説されている。

おそらくこうした大事件を起こして、逃走するという徹底した行動には、まさにこのアールドラーの象意である、偉大な指導者と天才的な悪人のどちらにもなり得る性質が含まれていると思われる。

従って、何かこの逮捕劇を見ている一般の聴衆も、市橋容疑者から何かただならぬ非凡な何かを見ているのかもしれない。

そのようにして、ラグナをアールドラーの第1パーダに設定すると、ナヴァムシャのラグナは射手座で、金星/火星期は、2006年10月2日から始まるようである。


【2009年11月17日追記】

市橋容疑者の人物像について補足

本コラムの冒頭で、当初、月ラグナにより、チャートの検証をスタートさせたが、その後、マハダシャー金星期の変わり目について検討することで、市橋容疑者の双子座ラグナの可能性が推測されたのである。

然し、事実関係について、もう少し収集すると、冒頭で記載した事実関係には間違いがあったことが分かった。

【市橋容疑者逮捕】リンゼイさん似顔絵で口説いた
2009.11.13 産経ニュース

英警察が公表したリンゼイ・アン・ホーカーさんの写真(AP) 約2年7カ月の逃亡生活後、10日に逮捕された市橋達也容疑者(30)。事件について口を閉ざしているが、そもそも、遺体で見つかった英会話講師、リンゼイ・アン・ホーカーさん(当時22)に声をかけて“ナンパ”。自身の電話番号などを記した似顔絵を贈ったことが、関与への手がかりになった。医師の両親を持つ、市橋容疑者の“素顔”とは−。

 取り調べには“寡黙”な市橋容疑者だが、女性へのアプローチは“意外な手段”で、積極的だったようだ。

 2007年3月21日、市橋容疑者はJR西船橋駅前でリンゼイさんに声をかけ、全てはここから始まった。

 当初リンゼイさんが相手にせず、自転車で去るのを走って追いかけ、「水を飲ませて欲しい」と頼み込み、リンゼイさんも同居人がいた安心感で自宅に上げた。英語の個人指導を頼んで断られた市橋容疑者は、リンゼイさんの似顔絵を描いて、そこに自身の名前や住所、電話番号を書き込んだ。根負けし、気を許したリンゼイさんは個人指導を了承、同25日に個人指導の約束をした。

 この似顔絵が、市橋容疑者の“常套手段”だった。周囲からも、似顔絵が上手なことで知られており、事件発生前にも、県内の路上や飲食店で外国人を含む女性数人に声をかけ、自分の連絡先や相手の似顔絵を描いたメモを渡していたという。

 市橋容疑者は、外科医の父と歯科医の母を持つ裕福な家庭に育ち、小学校時代に岐阜県羽島市に転居。小4の時の文集に、将来の夢を「総理大臣」と書いた。中学時代はバスケ部で副キャプテン、県立高校では陸上部員として活躍するとともに、進学クラスに入り文武両道ぶりを見せた。

 卒業後に上京。一度は都内の私立大に入学するが、千葉大学園芸学部に再入学した。4年在学時の2004年5月、行徳駅前の漫画喫茶店内で、男性会社員の1万円入りの財布を盗んだ窃盗容疑で逮捕されたことがあった。05年に卒業したが、一度も就職した形跡はなく、親から月十数万の仕送りで、祖父母名義とみられる市川市内の3LDKマンションに暮らしていた。

事件後の逃亡生活中、市橋容疑者と見られる男は昨年2月から6月まで神戸の土木会社で住み込んで働いていたが、そこでは「浜崎あゆみが好き」「彼女はいない」、漫画好きなど、素顔の一端を垣間見せていた。
市橋やっぱり“金髪フェチ” 逃亡先に「なじみの接客嬢」
2009.11.14 ZAKZAK

英国籍の英会話講師、リンゼイ・アン・ホーカーさん=当時(22)=の死体遺棄事件で逮捕された市橋達也容疑者(30)が一時潜伏していた大阪・西成の歓楽街「飛田新地」で、ひいきにしていたという接客嬢が“金髪”だったことが夕刊フジの取材でわかった。また、隣接する「あいりん地区」で、欧米系の女性バックパッカーをナンパしていたことも判明。文字通り“金髪フェチ”だったようだ。

 地下鉄動物園前駅近くで、百数十軒の“飲食店”が営業している飛田新地。

 市橋容疑者は大阪府茨木市の建設会社で勤務していた当時、同僚に「なじみの店がある」と話していたが、同店で入れあげていた接客嬢について、地元事情通はこう証言する。

 「源氏名はユカ。20歳をすぎたばかりで、金髪にしてました。サービスが終わった後、(市橋容疑者が)ユカちゃんの似顔絵を描いて喜ばせていたと聞いています」

 同店は、20代中心の若手接客嬢が集まる「青春通り」にあり、15分1万1000円・20分1万6000円で“昇天”できる、いわゆる“ちょんの間”の1つ。ところが、ユカ嬢は「今年夏に辞めた」(同店関係者)という。

 「金髪」「似顔絵のプレゼント」とくれば、被害者のリンゼイさんとも共通するが、よほど金髪女性に執着していたのか、別の地元関係者は次のように話す。

 「西成の宿泊所やホテルは格安のため、労働者のほかに、最近では長期出張のビジネスマンや学生、欧米系外国人のバックパッカーが利用するんですが、市橋容疑者がその女性バックパッカーをナンパしていたのを何度か見ましたね」

 このうち1人は、リンゼイさんと同じ20歳代前半の英国人女性。昨年7月ごろに宿泊所を拠点に関西周辺を観光していたという。

 これは、市橋容疑者が神戸市内の土木会社を辞めた昨年6月から、大阪府茨木市の建設会社の仕事に就く8月までの期間と合致している。

 逃亡中の市橋容疑者にとって、西成周辺は“つかの間の天国”だったようだ。


市橋容疑者は、英会話教室でリンゼイさんと出会ったわけではなく、

記事によれば、市橋容疑者は2007年3月21日にリンゼイ・アン・ホーカーさんにJR船橋駅で声をかけたのだという。

まさに市橋容疑者が一方的に、駅前の路上を歩いていたリンゼイさんを呼び止めたのである。

ここから推測されることは典型的にこれは火の星座のアプローチであり、射手座のアプローチである。

射手座は野山を駆け巡って、獲物を弓で射るケンタウロスの象意であり、射手座のアプローチとは、まず獲物(目標物)を見つけて、それに対して、果敢にアプローチするというものである。

記事によれば、

『当初リンゼイさんが相手にせず、自転車で去るのを走って追いかけ、「水を飲ませて欲しい」と頼み込み、リンゼイさんも同居人がいた安心感で自宅に上げた。英語の個人指導を頼んで断られた市橋容疑者は、リンゼイさんの似顔絵を描いて、そこに自身の名前や住所、電話番号を書き込んだ。根負けし、気を許したリンゼイさんは個人指導を了承、同25日に個人指導の約束をした。』

とのことである。

自分から積極的に話しかけない限り、何も始まらないような街の屋外での活動である。

いわゆる通常、ナンパと呼ばれるような活動は射手座の象意であると改めて思うのである。

射手座のアウトドアで活動的で、屋外でのフィールドワークを好むという性質がよく出ているようである。


以下のニュース記事にも、市橋容疑者の女性に対するアプローチは積極的だったと評価されており、対人関係において積極的にコミットメントしていくタイプであったことが分かるのである。

また、金髪の外国人女性に異常な執念を燃やして、アプローチしたことも記されている。

その為、ZAKZAKの記事によれば、欧米系の女性バックパッカーにアプローチしたり、風俗店に出入りしていた事実も記載されており、『県内の路上や飲食店で外国人を含む女性数人に声をかけ、自分の連絡先や相手の似顔絵を描いたメモを渡していた』と書かれている。

こうした対人相手に積極的にアプローチしていくことは双子座ラグナで、ラグナロードで、10室支配の水星が7室に在住していることで説明されるのである。

ラグナロードが7室に在住すると、自分からパートナーに積極的にアプローチして、パートナーを支配する傾向が生じるのである。

逆に7室の支配星がラグナに在住する場合、パートナーから支配される、パートナーによって寿命が縮むという象意があるのである。


そして、そうしたラグナロードの水星が7室に在住しているのが射手座のため、上述したように駅前の公的スペースで、声をかけて、無視されたのに家まで追いかけて行って水を飲ませてもらうなどという大胆不敵な行動につながってくるのである。

そうしたラグナロードの水星と共に、3室支配の太陽と、6、11室支配の火星が在住して、7室には、3室、6室、11室というトリシャダハウスの支配星が接合している。

7室は欲望のカーマハウスで、トリシャダハウスは欲望(性欲)、怒り(暴力)、貪りの三欲のハウスであり、このハウスを支配する惑星は凶星化するのである。

また火星は暴力の表示体であり、暴力の6室を支配して、さらに6室から6室目で6室の本質のハウスである11室を支配している。

従って、火星は暴力の象意を強く表現する表示体となって、7室のパートナーのハウスに絡んでいる。

あと、もう一つ重要なのが、6室に在住する金星の考え方である。

6室に金星が在住している人は女性をペットとして支配する配置である。

6室の象意としては、ペット、奴隷、愛人、サラリーマン(労働者=現代の奴隷)などを表しているが、

6室に金星が在住している配置は、女性と雇用契約を結んで従業員として雇ったり、愛人契約を結んだり、契約を結んでお金を支払って、何か奉仕をしてもらうという関係が多いようである。

何故なら、6室の側にとっては8室はパートナーのお金(7室から2室目)になるからである。

従って、市橋容疑者が、金髪の女性がいる風俗店に通っていたというのはよく理解できるのである。

お金を支払って相手の奉仕(6室)を買うのである。

あるいは、彼がリンゼイ・アン・ホーカーさんを追いかけて、英語の個人指導を依頼したというのも、結局、彼がお金を支払って、

リンゼイさんから個人指導という奉仕を買ったのであり、6−8の関係というのは基本的にお金の貸し借りとかお金で買ったり、

買われたりするような関係である。

そのようにして関係が生じるが、真の信頼関係とか安らぎなどが存在しないような関係である。

彼が金髪の外人女性ばかりに執着したというのは、おそらく、外国人を表すラーフが月から6室に在住して、金星のナクシャトラに在住していたり、もし双子座ラグナだとすると、ラグナから6室に在住する金星が土星のナクシャトラに在住し、土星がラーフと絡んでいることなど、細かい所での、金星とラーフとの結びつきなどが考えられる。



(資料1)

『市橋容疑者:「医者になれなかった」 死体遺棄は黙秘』  2009年11月10日 毎日新聞社

『市橋容疑者:大阪市内で逮捕 英女性遺棄容疑』2009年11月10日 毎日新聞社

本山直樹 Website 『市橋達也君に告ぐ』(2009年11月8日)
http://sites.google.com/site/naokimotoyama/ichihashi より引用抜粋

『インド占星学』 魔女の家BOOKS 春日秀護著

 

(資料2)

大阪南港「沖縄行きフェリー乗り場」逮捕劇、千葉県警が捜査した30の偽名、大阪で持っていたコンドームの使い道、懸賞金1000万円の行方ほか
【逮捕!】市橋達也「整形逃避行2年7ヵ月」《全情報》

逃亡から2年7ヵ月、顔を変え名前を変えて生活していた市橋達也容疑者(30)が逮捕された。いったいなぜ、リンゼイさんは死んだのか、行徳駅前で行方をくらませてどのように暮らしていたのか、疑問は山ほど残る。ただ、市橋容疑者の両親は「事件の真相を正直に語ることが償いの第一歩」と語った。市橋容疑者の辿った道を徹底追跡した。

「大阪南港から沖縄行きのフェリーの受付は午後6時30分から7時30分でした。その前に神戸のフェリーターミナルの職員から『市橋達也容疑者(30)に似た男性がそちらに行くかもしれない』と連絡を受けていたので、午後5時30分過ぎに南港フェリーターミナルの待合所を見渡したんです。すると、グレーのニット帽、オレンジ系ミラーになったサングラス、グレーの服を着た長身の男性がイスに座って本を読んでいました。テレビの報道にあったようなマスクはしていませんでした」(警察に通報したフェリー会社の職員)

 この職員が市橋容疑者の逮捕直前の様子をさらに詳述する。

「神戸から連絡のあった人物に違いないと確信したんですが、まだ一般のお客様の可能性がある。そこで受付時に確認してから判断しようと思ったんです。午後6時30分にすべてのお客様の受付が終わったんですが、市橋容疑者と思われる人は受付に来る様子がない。そこでもう一度見に行くと、チケットも買わず今度は寝ているようでした。近くで見ても怪しい感じだったので、もしやと思い、警察に通報しました。市橋容疑者に似ていると電話で説明している間に、制服の警官がやってきたんです」

 市橋容疑者は制服の警察官に話しかけられると、「市橋です」と素直に答えた。警官が身体検査をすると、おもちゃのピストルを2丁持ち、茶のビニール製ペンケースに包んだ所持金31万円を、ズボンにはさみ込み持っていた。神戸から大阪までタクシーで移動するなどカネに困った様子はなかった。

 11月10日、市橋容疑者が大阪市内のフェリーターミナルで逮捕された。10月24日、名古屋市内の美容整形外科で鼻の整形手術を受け、そこで2年7ヵ月、行方をくらましていたシッポを掴まれたのだ。その病院で整形手術する前に撮られた写真が公開されてから、わずか5日後のスピード解決だった。

 身柄が確保された住之江署から所轄の千葉県警行徳署への移送は、最終の新幹線が使われた。市橋容疑者が乗り込んだのは、11号車と12号車の間にある多目的室。気分が悪くなった乗客や授乳の女性客のために用意されている部屋だ。シートは2名分。ここに市橋と捜査員2名が“籠城”し、そのデッキの周りにも捜査員が立った。

「車内の市橋容疑者は両手に手錠を掛けられ、ほぼ無言。うつむいたままじっと座っていたそうです。ピリピリしていたのは捜査員で、もう一度逃げられでもしたら大失態とずっと市橋を抱えていたようです(全国紙社会部記者)

 逮捕翌日、行徳署に留置された市橋容疑者は、朝食も昼食も食べることなく緑茶を一杯飲んだだけ。午後1時過ぎには風呂に入らせてほしいと言いだしたという。取り調べに対しては、プロフィールは小声で応じるものの、事件のことや逃亡生活のことになると無言のまま。

 市橋容疑者がイギリス人の英会話講師・リンゼイ・アン・ホーカーさん(当時22)の死体を遺棄し、千葉県警の捜査員を振り切って逃亡したのは'07年3月26日。この時の所持金は5万円。キャッシュカードやクレジットカードも持っていたが、一切使った形跡はなかった。

 整形費用は鼻と顎にプロテーゼを注入するのに各35万円。目を二重まぶたにするのに安くて10万〜25万円。唇を薄くするのに15万円。100万円はかかる計算だ。いったいどのように、逃亡資金を稼いでいたのか。

 現在判明しているのは、大阪府茨木市の建設会社に住み込みで働いていたことだ。

「'08年8月19日に西成区で募集をしたところ、『一生懸命働くから雇ってくれ』と言ってやってきた。その時のカッコは、赤いキャップに黒縁メガネ。短パンにTシャツ姿だった。仕事ぶりはまじめ。『30年間引きこもりをしていたから、親に温泉でも行かせたい』と言って、仕事を入れてくれと話していた。目標額は100万円だとももらしていた」(建設会社の上司)

 この建設会社の日当は1日1万円。寮費や食事代を引かれるので手取りは月に10万〜15万円だった。「井上康介」という偽名で働いていたが、この会社にはもう一人井上がおり、背が高い市橋容疑者は「大ちゃん」と呼ばれていた。そして今年10月の給与を受け取ると行き先も言わずに出て行ってしまったのだった。

 市橋容疑者の暮らしぶりは至って質素だったという。酒も呑まず、たばこも吸わず仲間からの誘いにもほとんど応じなかった。唯一、社員同士で付き合ったのは、ボーリング大会の時のみだった。会社近くのボーリング場で行われた大会ではストライクを何度も出すほど上手く、2次会のカラオケでは英語の歌を歌って周囲を驚かせた。

 この会社に勤める前、2月28日から6月26日には、神戸市内の建設会社にいた。

「西成区でウチの社員と出会って、雇うことになった。その時の名前も井上康介。仕事ぶりはまじめで、メガネを掛けていたが帽子はなし。髪の毛は後ろにまとめて結んでいた。この4ヵ月で渡したカネは手取りで54万円。しっかりと貯めていた」(建設会社専務)

 ほとんどの整形は、この会社に勤めるまでに終わっている。いったいこの整形費用はどこから出たのか。本誌は市橋容疑者の両親に直撃した。

「みなさん、本気でそう(親が出していると)思っているんですか。私たちにはこれまで一切連絡はなかった。資金援助をしていることなど一切ない」

 と完全否定するのだった。

【部屋にあったコンドーム】

 大阪の建設会社で働いていた市橋容疑者は、自分の部屋にコンドームを置いていた。

「警察から聞いたんやけど、鞄の中にコンドームが入っとったそうや。何個かなくなっていたと聞いた。彼女がいたという話は聞いたことないけどなあ」(潜伏先の建設会社上司)

 千葉県市川市の市橋容疑者のマンションからは、女装用のカツラとゲイバーが多く集まる新宿2丁目の店のレシートが発見された。そのため、女装癖があったり、“両刀遣い”だとする報道もあった。'08年10月にはハッテン場で「私は市橋の中でイッた」と称する人物を引っ張り出してきて、男性相手に売春する「売り専ボーイ」だと報じたテレビ局もあった。だが、市橋容疑者の母親はこの「売り専」情報を否定する。

「テレビですごいこと言われてたけど、息子がそんなことだったとは信じられない。ウソだと思ってます」

 その一方、11月3日、福岡市内のラブホテルで市橋容疑者と見られる男が目撃されている。

「上下黒っぽい服を着た長身の男性が、男の後ろから入ってきた。ずっとうつむき加減で、髪を耳にかけ、黒いリュックを背負っていた」(捜査関係者)

 翌4日、市橋容疑者は福岡市内のコンビニ前の路上を歩いている姿を防犯カメラに捉えられているが、ラブホテルの男と、コンビニの男の服装は酷似している。

 ちなみに建設会社の同僚は、市橋容疑者からいわゆる「ちょんの間」と呼ばれる売春宿が並ぶ飛田新地へ行くと言われたという。

「飛田新地には夜遅くまでやっている店がある。そこに行くこともありますよ」

 女が好きとされる市橋容疑者だが、行き場に困ると男に頼っていたのだろうか。

【「チョウ」という偽名】

 '07年3月の逃亡から'08年2月に職を得るまでの足取りはまだ分かっていない。しかし、本誌は気になる証言を得た。

「名古屋で整形手術を受けたという報道があってから、捜査員が聞き込みにきたんです。捜査員は顧客名簿と照合してほしいとA5の紙に印刷された約30人の名簿を渡されました。その紙には、建設会社で使っていた“イノウエコウスケ”や“イイダ”“フジイ”という名前もありました。“イチハシタツヤ”の名前は、名簿の3番目にありました」(福岡市内のインターネットカフェ店員)

 この店員はその名簿の中で目立つ名字があったと続ける。

「中国か韓国か分かりませんが、“チョウ”という名前が3つもあったことです。同じ名字はこの“チョウ”だけでした」

 名古屋で整形手術したとの情報が出てくるまで、全国47都道府県から約6000件以上の情報が集まった。そのなかでもっとも多かったのが「池袋にいる」との情報だった。

「市橋が犯行前に通っていたのは、新宿ではなく池袋だったことが分かっています。池袋からは40件の情報が寄せられていた。そこで捜査員には池袋を徹底的に洗えとの指令が出ていた。池袋は今やチャイナタウンとも呼ばれる町。チョウという男の名を使ったのもそのためでしょう」(全国紙社会部記者)

【プロファイリング】

 これまで判明している市橋容疑者の逃亡先は、大阪市西成区、大阪府茨木市、福岡県福岡市、愛知県名古屋市、兵庫県神戸市、そして逮捕された大阪府住之江区である。千葉県警の科学捜査研究所は市橋容疑者の立ち回り先をこう推測していた。

「市橋は用心深い性格のため、一ヵ所に長く潜伏せずなじみのある場所を選択して逃走していると考えられる。これまでに旅行したことがあるのは、北海道や、大阪、京都などの関西、四国、長崎などの九州方面である」

 実家は岐阜県羽島市にあり、名古屋市もなじみのある場所。プロファイリングは当たっていたことになる。他に市橋容疑者はどのような仕事についていた可能性があるのか。

「聞き込みにきた捜査員はインターネットカフェの従業員名簿を提出してくれと言ってきたんです」(前出・福岡市内のインターネットカフェ店員)

 以前からインターネットカフェやマンガ喫茶に通っていたという。やはりなじみのある場所で働いていたと考えられていた。

【逮捕後の「親バカ」】

「弁解することはありません。ただ、今は何も言いたくありません」

 逮捕され、所轄の千葉県警行徳警察署で取り調べを受け、こう供述したという。

 自分の部屋に連れてきて殺害する一方、自分の名前を書いた似顔絵を渡していたことなど犯行に計画性は感じられない。母親は嗚咽おえつしながらこう訴える。

「一人しか住んでいない部屋に女のコを連れていくことは許されないことで、そのことでは何も言い訳できないことは私も分かってるんですよ。だけど、(殺人のために)連れていったんじゃないとは信じている。なにかウチの子がヘンな勘違いをしちゃってこんなことになったと思ってます……親バカだけど」

 親に言わせると命の大切さもしっかり知っていたという。

「事件の前年'06年の10月か11月に、達也が18年間飼っていた犬が死んだんです。そのことを千葉にいた達也に知らせると、そのまま処分しないでくれと言うんです。それで犬の遺体を保冷剤で保存して達也が実家に戻ってくるまで待ってました。達也に会ったのはそれが最後でした」

 命の尊さを理解できるのであれば、逃げずに人の死にも正面から向きあうべきだろう。

 県警が想定していたもう一つの可能性が、ホームレスとして暮らすことだった。それに対し母親はこう反論したという。

「ウチの子は汗っかきの子だから、お風呂にも入れない、拾った物を食べるようなこともできない。そんなことをするぐらいなら死んじゃうような子だと思う」

 逮捕後、両親はインタビューにこう答えた。

「罪の償いをするのは当然のこと。整形手術をして逃亡したのは卑怯だ」

 通常であれば、逃亡したことを「卑怯」と考えるのが当然だろう。しかし、市橋容疑者の父親はこう付け加えた。

「私は息子を卑怯な男だとは思っていない。整形手術をしたのが卑怯だと思っている」

 この親にしてこの息子ありなのである。

【懸賞金は誰に】

 '07年に導入された捜査特別報奨金制度、いわゆる懸賞金制度が実施されて初めて犯人が逮捕された。懸けられた懸賞金は破格の1000万円。犯人逮捕に結びついた有力情報の提供者にこの懸賞金が支払われる。

 いつ、誰に、いくら支払われるのか懸賞金を懸ける警察庁に聞いたが、支払うかどうかもまだ決まっていないという。

「対象となるのは、整形手術に来たことを通報した名古屋の美容整形クリニック、大阪府茨木市の建設業者、そして直接逮捕の情報となったフェリー会社の社員です。おそらくこの3者に等分に支払われるのではないでしょうか」(全国紙社会部記者)

 ただし懸賞金をもらえると素直には喜べないようだ。通報した建設会社の社員が語る。

「身元不明な人間を雇っていたという理由で、報道されてから取引停止になったお得意がたくさんある。その損失額は1000万円を超えそうです。私個人がもらえることになったとしても、会社に寄付します」

 懸賞金制度も改良の余地がありそうだ。
Internet Friday より引用抜粋