占星コラム


2009/3/27 映画「Kissing ジェシカ」に学ぶ



最近、同性愛のテーマを扱う『Kissing ジェシカ』という作品を見たのだが、非常に面白い作品だった。


映画を見る際には何らかの賞を受賞しているかどうかを基準にしている。
批評家たちから評価されている作品は実際に質が高く、面白いものが多いからである。

この作品も以下のように賞を受賞しているので、それなりの作品なのだろうと思い、手に取ったのである。

ロサンゼルス映画祭観客賞<最優秀映画賞>受賞       
        審査員特別賞<演技&脚本賞>受賞

ルイビル・ユダヤ映画祭最優秀映画賞

マイアミ映画祭観客賞<監督賞>受賞

純粋にストーリーの面白さというだけでなく、占星術的な観点から見ても非常に面白い作品であった。

同性愛をテーマにしているが、あまり深刻な作品ではなく、コメディタッチで描かれている。


まず、(あらすじ)をフォックス社のHPから以下に引用する。

ジェシカ・スタイン(ジェニファー・ウェストフェルト)は28歳。ニューヨークの新聞社に勤める知的なジャーナリストだが、恋人は今いない。職場では言葉の正しい意味にこだわり、上司のジョシュ(スコット・コーエン)に勝手に記事を変えられては怒る日々。兄のダニーから電話で婚約したことを聞いて、気分はいっそう暗くなる。
 リルケの詩を読みながら、ため息をつくジェシカ。このままじゃダメ! 心機一転、何人かの男性とデートをしてみたが、マッチョだったり、サラダみたいに植物的だったり、お金に細かすぎたり……結果はどれも悲惨なものだった。

 そんな時、ジェシカは新聞の恋人募集広告であのリルケの詩が引用されているのを見つける。もしかしたらこの人は私の運命の人? だけどその相手はなんと“女性の恋人を探す女性”だった! この広告を出したのはギャラリーでアシスタント・ディレクターとして働く女性へレン(ヘザー・ジャーゲンセン)。ギャラリーのボスと不倫し、バイク便の若い黒人とセックスして退屈さを紛らわせながらも、どこか満たされないヘレン。彼女はゲイの友人たちに薦められ、知的な言葉で“ストレート”の女の子の心をつかむためにこの詩を引用したのだ。

 母親ジュディ(トーヴァ・フェルドシャー)は恋人を作れとうるさく言うけれど、イイ男には当たり前のように恋人がいる。何かと知性をふりかざし、いつも他人をネガティブに批評するジェシカを見て、ジョシュは「君は心を開いていない」と忠告する。アナイス・ニンが書いているように「人は自分を通してしか人を見ない」のだ。

 あのリルケの詩の広告に惹かれたジェシカは、「心を開いて」ヘレンと会うことにした。バーで彼女を見た途端、「こういうことは向いてないわ」とあわてて帰ろうとするジェシカ。しかし、ヘレンの巧妙な会話とバッグの中身を落とす戦略で、ジェシカは「気持ちを熟成させる」ことに同意する。男性観、幸福論から化粧品までとりとめのない楽しい会話と、インド・レストランでの食事……。思いがけなく心が昂揚したその夜は、ヘレンのキスでクライマックスを迎えた。ジェシカの頭はヘレンのことでいっぱいだった。もちろん同性愛には抵抗があったが、ヘレンの家のソファーに緊張して座っている感覚は恋に間違いなかった。ヘレンはうぶで古風なユダヤ女性ジェシカの“じらし”に苛立ちながらも、少しずつ愛のレッスンを施していった。10日後、ヘレンは友人としてジェシカの実家での安息日のディナーに招かれ、その夜、二人は初めて結ばれた……。

ジェシカ役を演じるジェニファー・ウェストフェルトと、ヘレン役を演じるヘザー・ジャーゲンセンは、この映画の共同脚本、共同制作を手がけており、そして、自ら、主人公の2人の女優を演じている。従って、この作品のキャラクターについて、脚本の段階から多くの女性にリサーチを重ねて生み出されているため、女性のレズビアン傾向についての一般的なあり方を脚本の中に描き出すことに成功していると思われる。

この脚本家兼女優であるジェニファー・ウェストフェルトと、ヘザー・ジャーゲンセンの2人がインタビューの中で以下のようにそのことについて述べている。

この映画はニューヨークのライトアークシアターで5日間だけ上演された、コメディ・スケッチを集めた“Lipschtick”という舞台劇としてスタートしました。私たちが寸劇のアイデアとして考えたのは、ローラ・アシュレー(花柄と女性的なデザインで知られるあの有名ブランド)を着た少女っぽい女性がスパで待ち合わせをしてレズビアンになる方法をあれこれ話し合うというものでした。  でも、このアイデアについて考えれば考えるほど、私たちは表面的なジョークを捨ててストーリーの根底にある真実をリサーチするようになったのです。様々な女性にインタビューした結果、このシナリオは私たちが想像していたよりも一般的であることが分かりました。私たちの文化では、男性よりも女性の方が自由に性的嗜好を探究することが許されているようで、彼女たちはそれを実践しているのです。「Kissingジェシカ」は、焦り(ジェシカ)と退屈(ヘレン)という間違った理由から同性との恋愛と言う“実験”を試みた二人の女性の物語へと変わっていきました。そして、彼女たちはこれまで経験したことのない、深くて純粋で完璧なものを発見するのです。

(20世紀フォックス公式サイト『Kissing ジェシカ』より引用抜粋)

この登場人物の女性たちの心理についてよく研究した2人が、自分たちで書いた作品を自分たちで演じることで、この作品のリアリティーが非常に高まっており、作りものでない、実際に存在する人間がよく描けている。


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【2009/4/15 追加更新】

そして、占星術的観点からみてこの映画の何が面白いかというと、これは牡牛座の女性と乙女座の5−9の関係を描いているのである。

典型的な牡牛座の女性と、典型的な乙女座の女性の2人が、精神的感化を与えあう師弟関係や、恋愛関係、友人関係などのまじりあった関係を結んでいることが分かるのである。

例えば、これは実際に映画を見ていただくと分かるが、28歳になって恋人のいないジェシカは典型的な乙女座の女性なのである。

彼女は男性に対して批判的で欠点がすぐに目につくため、交際しても長く続かないのであるが、それは乙女座ラグナの批判的な性質を表している。

彼女は新聞社(トリビューン社)で編集係を勤める知的な女性で、言葉の正しい使い方にこだわる完璧主義の女性である。

言葉の正しい意味にこだわるところなどはまさに乙女座らしい性格である。

水星は文筆や通信、コミュニケーションを表わしており、乙女座ラグナは水星が10室を支配するため、乙女座ラグナはそうした水星が表すコミュニケーション関連の仕事を選ぶのである。編集というのは水星の仕事であり、まさに乙女座ラグナの適職と言える。

しかし、彼女はパソコンが嫌いで、メールも受けるだけで返事は出さないという、凝り固まった、保守的で消極的で古風な考え方の持ち主でもある。

一方のヘレンは画廊(シューラー画廊)でアシスタントを務める女性で、絵画など芸術品をいつも取り扱うような仕事をしている。
身につけている服装もファッショナブルでセンスがよく、ワインを好み、自宅の椅子や家具などのインテリアには凝っており、口紅は3種類をブレンドして使うという卓越した趣向を持っている。

これらの性質は牡牛座の特徴である。

また、彼女は性的欲望が強く、画廊の支配人や郵便配達人など複数の男性と性的に関係を結ぶことも全く抵抗がないようである。
彼女はセクシーな醜い男が好きである。ミックジャガーやハーヴェイカイテル、 ジェームスウッズなどの例を挙げる。

牡牛座ラグナだと、7室は火星が支配する蠍座になり、蠍座は水の星座でもあることから、性的欲望も強いと考えられる。
彼女の布団が豹柄なのは蠍座っぽい性的な雰囲気を伝えている。

彼女が、醜い男でセクシーな男性を好むというのは7室蠍座のことだと分かるのである。

この辺りは、叶姉妹の姉の叶恭子の男性遍歴などにも比較できるのである。

彼女は男性との肉体関係を次々にゲームのように楽しんで、それを誇らしげに自慢するようなパーソナリティーであり、官能的な体験を追求することは当たり前の日常生活のようである。 叶恭子も牡牛座ラグナだと思われるが、牡牛座ラグナの人はパートナーとの官能的な関係を求めるものなのである。

一方、ジェシカの方は7室は木星が支配しているためか、男性の理想は高く、中々好みと現実の相手が合致しないようである。

またジェシカは性的、肉体的関係を重視していないのである。それはおそらく7室が木星が支配する魚座だからである。
理想化して、パートナーとは精神的つながりを重視するのである。

従って、それが後々、同棲した際のヘレンの方の不満となったようである。

ヘレンは牡牛座ラグナであり、肉体の快楽を求め、五感が満足することを求めるのである。
従って、肉体関係というものを重視している。しかも7室が火星が支配する蠍座なので、自分から積極的で能動的である。

ジェシカとヘレンが最初に会った日にインド料理の店にディナーに行き、その帰りに道を歩いていた時に宗教的な踊りを踊っている人たちがいるのをみて、軽蔑したように「社会に何の役にも立っていない人たち」としてジェシカは凝り固まった自分の狭い人生観を暴露する。

ヘレンがヨガをしていることを聞くと、体験してもいないのにそれを否定するのである。

(因みにこの人たちは「ハーレークリシュナ」と唱えて、クリシュナを讃えて踊る、クリシュナ意識協会の人たちのように見えるのである)

ヘレンは踊っている人をみてとても幸せそうだと言って、肯定するのである。

ここで、分かるのはヘレンはジェシカに精神的な価値観に目覚めさせる教師の役目を果たしているということである。

ここに5−9室の関係が見られるのである。

ジェシカが絵を描くことを知ったヘレンは自分の画廊でジェシカの作品を展示するのである。

ここで、ヘレンという存在がジェシカにとっては自分が人生で本当にやりたかった絵画への道を開かせて、導いてくれる保護者として働いていることが分かる。

ジェシカが絵を描くということは日頃は会社では全く見せない姿である。
それは自分の本当に好きな活動であり、お金を目的としない活動である。

従って、後に会社を辞めてしまって、絵を描きながら生活していくのである。


これはヘレンとの出会いをきっかけとしている。

ヘレンとの出会いをきっかけとして、自分自身の本当のセクシャリティー(性的嗜好)に気づいたり、本当にやりたかった絵画への道が開かれるのである。ヨガをやったり、また以前、メールを受けることしかしなかった保守的な考え方を改めて、メールを活用したり、生き方そのものがヘレンとの出会いによって変わってしまうのである。

以前、踊っている人を馬鹿にしたり、自分が社会で役に立っている存在として、頑なに信じて、広い価値観に心を閉ざしていたようなそうしたあり方が一変してしまうのである。

これは9室との関わりを表しており、これは教師との出会いだったのである。
ヘレンとの出会いというのは教師との出会いであり、師と弟子の関係というのは5−9室の関係であるが、5室は恋愛を表すため、師と弟子の関係は恋愛関係にも似ているのである。

9室は10室から12室目で10室を損失するハウスであることから、絵を描いて生活するために新聞社を辞めてしまうのである。

ジェシカが書いた素晴らしい絵画を見て、かつての恋人で会社の上司であるジョシュは感化され、彼もかつて自分が目指していた作家への道を再び、目指し始める。

つまり、ジェシカが9室の支配星のダシャーの時期に入ったとすると、ジョッシュもまたそれに影響されたのである。

ジョッシュもまた人生の真の目的を追求したくなって、ジェシカとヘレンの交際を知った後、暫くして会社を辞めてしまうのである。


9室の支配星の時期(金星期?)に入ったジェシカは周りの人々も感化していくのである。


このように、この物語のセクシャリティは、副線であって、神と交流する媒体となって、精神的な価値観や真の人生の目的に目覚めさせてくれた重要な人物との出会いというのが隠された真のテーマではないかと思うのである。

それこそがこの物語の真のテーマであり、脚本家兼女優のジェニファー・ウェストフェルトと、ヘザー・ジャーゲンセン自身もこのことはあまり意識していなかったかもしれない。彼女たちは同性愛についてリサーチして、いくつかの事例を蓄積しながら、意識せずして、そうしたストーリーを書き上げたと思われる。

その重要な人物との関係は恋愛関係であっても友人関係であっても、たいした違いはないのである。
だから、最初、師弟関係と恋愛関係が混在していたような関係で、同性愛という表面上の形式を試してみたものの、映画の最後の場面で幸福な友達関係ということで落ち着いたのである。

師弟関係、恋愛関係、パートナー関係、友達関係など、目に見える形では、いろいろ形態を変えるかもしれないが、根本的に一貫して流れるテーマは5−9の関係なのであり、幸福な関係なのである。

乙女座というのはもともと”乙女”という名前がついているごとく、女の友達同士の付き合いで、手紙を交換し合ったり、物品などを交換しあったりして、ささやかな交際を楽しむのである。そして、野卑な男や威張った男を嫌うので、同性の女性の友人を好むのである。

従って、乙女座は生来的にレズビアン傾向があるのである。7室の支配星が木星であることもこれに拍車をかけており、パートナーに対する理想主義が、肉体関係を低俗な関係と考えるのである。 だからこそ、乙女座は、”処女宮”と呼ばれるのである。

この物語は、乙女座ラグナの女性と、牡牛座ラグナの女性の出会いの物語であり、占星術的な視点で見ると、これらの星座の象意を学ぶのには絶好の教材である。

まさに典型的な乙女座と牡牛座のキャラクターが織りなす、きわめて洗練された作品である。

もし占星術を学ぶのに適する映画を挙げるとすれば、私ならこの作品を必ず、エントリーすると思われる。

 

(資料)

21世紀フォックス Kissingジェシカ公式サイト