占星コラム


2007/9/3 ウォルフォウイッツ世界銀行総裁辞任

今年の6月末に交際相手の女性職員シャハ・リツァへの厚遇問題で世界銀行総裁を辞任に追い込まれたウォルフォウィッツのチャートである。出生時間が分からないため、12:00でチャートを作成してある。
彼のようにスキャンダルが元で致命的な傷を負って失脚に追い込まれる人物はどのような配置を形成しているのか非常に興味深いのである。そうした意味で、既にタイムリーなニュースでは無くなっているが検証して見たいのである。

まず、容易に想像がつくのは女性関係におけるスキャンダルであることと、また致命的な傷をもたらし、辞任に追い込まれた所から、7室と8室の絡みが考えられる。

実際、チャートを確認すると、月から8室に逆行の土星と火星が在住しており、8室を傷つけている。火星は7室の支配星であり、8室に在住して、7、8室の絡みを生じている。従って、火星期や土星期には月から8室の象意が顕現し、そこに7室も絡んでくることが予想されるのである。8室は暗殺とか、致命傷を表し、このハウスの象意というのは必ず、致命的な結果をもたらし、辞任とか失脚、あるいは死をもたらすのであり、徹底的な結果をもたらすのである。

彼はブッシュ大統領の元でイラク戦争を推進した立役者の一人であり、思想的にはネオコン(新保守主義)に属している。ネオコンはアメリカの理想を他国に力で押しつけ、軍事力でもって積極的にアメリカの覇権を拡大していくことによってローマ帝国のように世界に均一な政治経済体制を広めようとする好戦的な思想集団である。中東においては親イスラエル的なタカ派的な外交政策を取ることが特徴である。 『中東民主化』とは彼らの独善的な理想主義の一つである。
イラク戦争は石油利権の確保を目的とし、サダムフセインが原油をユーロ建てで決済し始めたことへの懲罰でもあったと分析もされている。原油が米ドルで決済されることによって世界の基軸通貨としての米ドルの価値を維持しているのであり、ブッシュ政権はその米ドル体制に従わないフセイン政権を初めから転覆させることが課題であったようである。そのために先に戦争をしかけることを決めてから、後から大量破壊兵器の存在とか、いろいろ戦争するための口実や理由を探しはじめたことが、今ではホワイトハウス入りした元閣僚の証言などによって明らかになっている。

ウォルフォウィッツは、2001年1月からブッシュ大統領の国防副長官に就任しているが、この時既に上述したようにいかにイラクと戦争してフセイン政権を転覆させるかということが彼の仕事のようなものであったと推測されるのである。

12:00作成のチャートだと、2001年1月は水星/月期であるが、次の水星/火星期が2002年1月から始っている。火星は水星から6室目に在住し、水星、火星ともヴァルゴッタマである。ラシとナヴァムシャで同じ配置で、同じ象意を繰り返している。

6室というのは闘争を仕掛けたりする訴訟のハウスである。彼が一生懸命イラクと戦争するために策を練っているということが推測されるような配置である。水星からみて5室支配の火星が6室に在住して識別力に障害が出ていることが推測されるのである。

そして、興味深いのはこの同じ2001年頃に、世界銀行職員であるシャハ・リツァと交際し始め、妻とは別居したとウィキペディアに記されている。つまり、この時期に私生活においても彼は妻との間で離婚訴訟のような状態となり、結果として別居をもたらしたことが推測できるのである。結局彼が、公的に行っているイラク侵攻計画と、私生活上の離婚訴訟などのように異なったレベルで2つの似通った出来事が起こっていたことが分かる。

つまり、身近な小さなエピソードを知ることによって、もっと大きな出来事の前兆を知ることが出来るのである。

水星/火星期の後は水星/ラーフ、水星/木星、水星/土星期と続くが、アンタル木星期をのぞいて水星から見て6室や8室目である。実際に2001年が水星/火星期になるかは分からないが、おそらくイラク戦争が行われていた時期はマハダシャー水星期であると思われ、そして水星から見ると6室に火星と土星が在住している。従って、彼は闘争的な時期におり、またナヴァムシャで水星から10室に土星が在住することから注目を浴びてもいたのである。

彼は不満の高まっていた世界銀行職員の内部告発メールによって彼の公私混同が広く世間に暴露される結果となり、最終的に辞任に追い込まれたのである。一つのメールによって葬られたのであり、暗殺に近いものがある。8室とは蠍の毒であり、一撃で致命的打撃を加えてくるのである。しかもそれは本人に見えない所で密かに行われるため、全く防ぎようがないのである。

現在、交際相手のシャハ・リツァも、何か公の場で堂々と活動することが出来ない片身の狭い状況に追い込まれていると考えられ、ウォルフォウィッツとシャハ・リツァ共々不幸な心中のような結果になったようである。 この状況は7室と8室が星座交換して強力に絡んでいた太宰治の不幸な恋愛を想起させるのである。

出生時間が分からないため、実際、水星/火星期に彼の国防副長官就任があったのか確かではないが、彼のチャートを一瞥すると、まず、水星、太陽と、火星、土星が6−8の関係であり、火星、土星と月、金星も6−8の関係であり、水星、太陽とラーフや、ケートゥと木星も6−8の関係である。ダシャーの巡りによって、6−8の関係が絶えず、顕現するのであり、戦争を引き起こして世界の平和と調和を破壊する思想と行動の持ち主であることが理解できるのである。
彼は現在、マハダシャー水星とマハダシャーケートゥ期の境目におり、ケートゥ期の直前か、あるいは既にケートゥ期に入っているかもしれない。つまり、今回の辞任劇は引退を物語っており、ブッシュ政権がまもなく終わるために彼の政界への復活はあり得ないことがよく分かる。ネオコンとしての彼の国際社会での活動はこれで終わりである。

(資料)

世銀理事会は総裁の女性職員厚遇問題で、「昇給は独断」と発表 - 米国 2007年04月13日 16:03 発信地:米国 関連写真 1枚 写真は、シンガポールで開催された国際通貨基金(IMF)・世銀合同年次総会の際、記者会見に臨むウルフォウィッツ総裁(2006年9月18日撮影)。(c)AFP/TENGKU BAHAR 【ワシントンD.C./米国 13日 AFP】世界銀行(World Bank)理事会は13日、ポール・ウルフォウィッツ(Paul Wolfowitz)総裁が交際相手の女性職員の給与を厚遇していたとされる疑惑で、同総裁は昇給の申請許可すら得ていなかったことを明らかにした。  24人の理事からなる世銀理事会は、ウルフォウィッツ総裁がリビア出身の女性職員シャハ・リツァ(Shaha Riza)氏を厚遇していたとされる問題について調査を実施してきた。  調査結果を公表する声明の中で理事会は、同総裁が世銀人事担当者に対し、「女性職員(リザ氏)と話し合いの上、昇給の条件や期間などを決めるよう」メモで指示したと報告。  また、ウルフォウィッツ総裁の側近らは、「女性職員への厚遇について、世銀倫理委員会が了承済み」と主張していたが、調査の結果、未承認であることが明らかになったという。  「倫理委員会は当該女性職員との話し合いには同席しなかった。女性職員の昇給の条件ならびに期間は、倫理委員会も、委員会長も、理事会も承認を行っていない」としている。  写真は、シンガポールで開催された国際通貨基金(IMF)・世銀合同年次総会の際、記者会見に臨むウルフォウィッツ総裁(2006年9月18日撮影)。(c)AFP/TENGKU BAHAR

あるスキャンダルの覚書 世銀総裁が辞任するまで――フィナンシャル・タイムズ 2007年5月18日(金)18:57 (フィナンシャル・タイムズ 2007年5月16日初出 翻訳gooニュース)

世界銀行は17日、同行のポール・ウォルフォウィッツ総裁が6月末に辞職すると発表した。辞任に至ったスキャンダルの流れを時系列でまとめた。

2003年3月:戦争 イラク侵攻が始まる中、当時、国防総省の副長官だったポール・ウォルフォウィッツ氏は、同省が外部委託する業務内容に、当時から世銀職員だったシャハ・リツァ氏が参加できるよう、「副長官自ら」働きかけた。ウォルフォウィッツ氏とリツァ氏、そして世界銀行の業務が、からみあうこととなる。

2005年3月:総裁指名候補 ジョージ・ブッシュ米大統領が、世界銀行総裁にウォルフォウィッツ氏を指名。激しい賛否両論がまき起こる。

2005年春:利害の対立 ウォルフォウィッツ氏は、自分が世銀職員のリツァ氏と恋愛関係にあると、同行倫理委員会に報告。総裁は、人事関係の決定判断に自分は関与しないようにする一方で、リツァ氏との職務上のやりとりは継続すると申し出る。倫理委員会は、それでは不十分だと返答。 銀行の弁護士を排除 ウォルフォウィッツ氏は、世銀の人事責任者に対し、今後のことについて同行の法務責任者に知らせてはならないと指示。 ウォルフォウィッツ氏が指示 ウォルフォウィッツ氏は人事部に対し、国務省に出向することになったリツァ氏のために、内規を上回る高額の昇給と昇進パッケージをまとめるよう指示。

2006年春:内部告発 出向に伴うリツァ氏の昇給・昇格に憤慨した世銀職員が、世銀理事会に告発の電子メールを匿名で送付。不満が組織内でくすぶり、徐々にブログや新聞などに事実関係がもれ始める。

2007年春:隠蔽工作 ウォルフォウィッツ氏の側近たちが、ワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズ、フィナンシャル・タイムズなどの活字メディアに対し、リツァ氏の出向条件は理事会と倫理委員会が承認あるいは指示したものだと説明。 年次総会 IMF・世銀春季総会が始まる当日朝、フィナンシャル・タイムズは、リツァ氏の出向条件を決めたのはウォルフォウィツ氏自身だったと報道。ウォルフォウィッツ氏は同日中に、世銀職員に謝罪する。 外交局面 ホワイトハウスは、ウォルフォウィッツ氏留任を各国がどの程度支持するか量るため、外交努力を展開。しかしドイツのアンゲラ・メルケル首相を筆頭にした欧州各国が、総裁留任に強く反発。

2007年5月14日(月曜) 世銀はこの日、総裁が世銀の行動規定に違反し、3点について職員規則に違反し、自らの契約内容にも違反したとする調査報告書を発表。

2007年5月17日(木曜) 恋愛関係にある世銀職員の出向条件について、総裁自らが昇進・昇給に関与したとする決定的な調査報告書の発表を受けて、ポール・ウォルフォウィッツ氏は6月30日に世銀総裁を辞任すると発表した。