占星コラム
2007/3/29 12室と寄付、献金について
先日、経営コンサルタントで、慈善活動家の杉崎 仁志さんとお会いする機会を得たのである。 鑑定後、贈呈くださった新刊『貧乏社長の法則-絶対に失敗しない法則-』長崎出版 によると、杉崎氏の経歴は以下のように紹介されている。
経歴を見ても分かるようにバリバリの営業マンであり、自ら経済的に成功するとともに人の成功をお手伝いするという能力開発系の自己啓発活動家であることが分かる。鑑定依頼を受けてから、私はそのような経歴については全く知らずに鑑定準備に入ったのである。 チャートを作成すると、まず、ケンドラに吉星が3つ在住しており、4室の木星は2、5室支配で4室に在住し、ヴァルゴッタマで非常に強いことが分かる。ナヴァムシャにおいても木星は1、10室支配で月からみても1、4室支配で機能的吉星化している。また土星や火星にも傷つけられておらず、非常に木星は強くて良い配置であることが分かる。 この配置から彼が母親、家、土地、不動産に恵まれることを表しており、また4室は心の部屋であり、喜びの部屋(House of Joy)と呼ばれるため、彼は非常に幸福で幸せな生活を送っている人であることは想像できたのである。 また7室で金星が自室に在住していることから、パンチャマハープルシャ・マラヴィアヨーガを形成している。 実際、会社のオフィスに伺ってみると、6名程の秘書の方々が出迎えてくださり、やはり杉崎氏の周辺には常に美しい女性が多いことをはっきりと示していた。これは鑑定前に杉崎氏のチャートの特徴を実際に検証できたようなものだった。 鑑定前の準備作業の話に戻ると、7室に10室支配の太陽が在住し、また7室に惑星集中していることから、彼は非常に対人関係が多い人で、仕事は常に多くの人と会うことではないかと思われた。また、その中には美しい女性も多く、非常に華々しい世界であることを想像したのである。 然し、私はこの7室からはあまり真の精神的満足感を得られないのではないかと思われた。それは7室には1、5、9室が全く絡んでいないからである。7室はカーマハウス(欲望のハウス)であり、土の星座に在住しているため、物質的な成功や快適さを与えてくれるが、真の精神的な満足には結びつかず、ただの欲望の消費的な活動に終始することに結びつくと思われたのである。また7室には8、11室支配の水星が在住しているが、この8室支配の水星が彼に対人関係上の問題や悩みを引き起こしているのではないかと思われたのである。8、11室支配の水星は機能的凶星で、カーマハウス(欲望)とドゥシュタナハウス(不幸)が絡んで欲望が不幸を生み出していく苦しい状況を生み出すのである。 私が対人関係では物質的な満足や感覚的快楽には恵まれるが決して精神的な満足感はないのではないかと伺ったところ、杉崎氏はそれに同意され、事実であるとのことであった。 実際、杉崎氏は経済的に成功すると、金目当てで近づいてくる人間も多く、そうした人達に悩まされたという。また最初は利益を度外視して、ボランティアで応援してくれた人達も、金を要求するようになったり、ずっと自分について来てくれると思っていた人達が皆離れていき、裏切られ、人間不信に陥ったりしたこともあったという。つまり、この象意こそが、8、11室支配の水星の象意である。水星はお金やビジネスの表示体であり、また11室は収入や利益、共同体の部屋であり、8室は苦悩、不幸、悪意、陰謀、裏切りなどを表している。つまり、お金の絡みで対人関係に生じる不幸や苦悩である。 これは感慨深かったが、彼が、自分の奥さんさえも、お金目当てで付き合ってるのかもしれないとさえ思うとか、本当に心を許して何でも相談できる相手がいなくて孤独であると私に告白してくださった時には、お金で結ばれた計算高い関係がいかにむなしいものであるかを教えられた感じがしたのである。 チャートの特徴の分析に戻ると、基本的なところで、ケンドラへの吉星の集中、そして、ウパチャヤ3室への土星やケートゥの在住などにより、ラオ先生のいうチャートを保護する特徴に恵まれており、またケンドラに惑星が集中しているため、大変派手で、影響力のある人物であることは理解できたのである。そして、実際にお会いしてみると、その通りであった。 そして、杉崎氏の4室には5室支配の木星が在住して、ラージャヨーガを形成しているが、4室も5室もプライベートな部屋である。 4室はアシュラムの部屋であり、もし4室に火星が在住かアスペクトすればそれがもし宗教家であるならば、巨大な宗教施設(寺院など)を建設し、アシュラムを開くとラオ先生のテキストに書いてある。私も実際にそれは何例かで確認している。杉崎氏の場合、火星は在住していないが、ヴァルゴッタマの強い木星が在住している。従って、建物は建てなくても自分のホームグラウンドで、精神的な教育的活動(木星)を行っているのである。そして、それは全く彼のプライベートな活動であり、そこでの活動は幸福なひとときであるはずである。木星は凶星に傷つけられていないため、非常に良い象意が期待できるのである。 このようにまさにチャートは杉崎氏の人生そのものを示しており、私は鑑定がうまく行っている手ごたえを感じていた。 杉崎氏のラグナは蠍座ジェーシュタであるが、このナクシャトラの人は常に物質的成功と、精神的成功の二つを追い求め、また表の顔と裏の顔を持つのである。ナクシャトラがそうした性質を持つと同時に、チャート自体が7室惑星集中が主に物質的成功面を表しており、ラグナロードで5室支配の火星、5室支配で4室在住の火星、9室支配で12室在住の月などが主に精神的成功や満足を追い求める配置であることをさらに表していたのであり、 この物質面と精神面の区別は非常にくっきりと表れていたのである。
そして、ここから本題に入っていくが、杉崎氏のチャートは、9室支配の月が12室に在住し、5室支配の木星と、1室支配の火星からアスペクトされており、12室の月に1、5、9室の全てのトリコーナが絡んでいて、月はケーマドルマヨーガである。 私は鑑定準備時に、この月はケーマドルマヨーガではあっても、全てのトリコーナの惑星からアスペクトされて、良い影響を受けており、大変に幸福なのではないかと考えた。また杉崎氏は一人でいるとき、自分の部屋に居たり、人から離れて隠遁的な環境にいる時に最も精神的に幸福なのではないかと思われたのである。また12室は出費のハウスであることから、献金をするのではないかと思われたのである。 杉崎氏にそのことを伺うと、その通りであるとのことであった。 実際、彼は家族が寝静まった後に一人で瞑想するのが最高の幸せだそうである。また一人になるためにマンションを借りて、そこで日頃は一人で隠遁的に過しており、会社も今では人が育って任せることができるため、会社には月に2、3回しか来ないそうである。ほとんど隠居して最近の流行の言葉で言えば、リタイアしている状態である。 そして、献金については彼のオフィスには献金した団体からの感謝状が飾られており、 主にユニセフや国境なき医師団などへの献金活動を行っているそうである。年間1千万円程は献金するそうである。そして、その献金先は主に海外であり、将来は海外に病院を建設したいそうである。 彼は学校の建設や教育よりも人の命を救いたいのであり、命を救うシステムを作り、将来にわたって永続する人救い、徳積みを行いたいとのことであった。この辺り、献金先も12室の象意である海外、そして、病院も12室が表すことを考えると、非常に占星術的にも全てが整合的に説明できることが分かる。 杉崎氏は現在、8億の個人資産を持ち、外国為替取引、海外ファンドなどでの金利収入で月間200万円程度が自動的に入ってくるそうであるが、彼は自分が死ぬ前に大部分の資産は海外の慈善活動に使いたいそうである。 12室は全てのトリコーナが絡んでおり、9室支配の月が在住し、土星と木星のダブルトランジットも成立して、非常に強力であるが、このような強い12室の配置こそが、慈善活動に進んで献金する人のチャートなのだと、非常によく理解できたのである。 こうして、私は杉崎氏にとっては献金などの慈善活動こそが、もっとも精神的に幸福な活動であることを説明し、その日の対面セッションを終えたのである。 因みに話が脱線するが、チャートの惑星配置で注目すべき箇所であるが、杉崎氏は権利収入に大変恵まれており、何も働かなくても200万円程度の収入が得られるのであるが、月をラグナとすると、ラグナロードの金星が8室で自室にあり、9室支配の水星と11室支配の太陽と接合している。8室で強いダナヨーガが出来ており、さらに8室の支配星が8室に在住して8室自体が非常に強いことが分かる。さらにラグナロードが8室に在住することによって、人生の基本的な活動の分野、居場所が8室の相続、贈与、権利収入などの不労所得であることが分かる。
話のテーマが一貫しないが、ここで取り上げたいテーマが12室と献金である。 12室が献金という自己放棄してお金を人のために費やす行為となるには、おそらく1、5、9室や木星のような吉星の影響が必要なのである。 1、5、9室はダルマハウスであり、宗教的行為、精神的探求の部屋である。従って、12室がこの崇高な宗教的目的に影響されなければそれは献金という行為にはならないのである。もし、カーマハウスが在住していたり、絡んでいたならば、それはむしろ、金銭の損失であり、浪費による出費につながることがこのことから容易に推測できる。 従って、人生の活動領域である、ダルマ(精神修行)、アルタ(蓄財)、カーマ(消費、欲望)、モクシャ(解脱)という分類は非常に重要である。
次にもう一例のチャートをサンプルとして、プロ野球の松井秀喜選手のチャートを挙げてみたい。 3月28日のニュースで次のような記事が配信されていた。
スマトラ沖の地震の際にも彼は5000万円の災害義援金を日本赤十字社を通じて寄付したことは皆の知るところである。
彼の場合、1室支配の木星と、5室支配の月が12室に在住し、9室支配の火星が12室にアスペクトすることで、1、5、9室のトリコーナの支配星、ダルマハウスの支配星がやはり12室に絡んでいるのである。 この松井選手の12室へのハウスの絡みを確認した結果、やはり、今回私が鑑定した杉崎氏と同じように同じ12室のハウスであっても、どのハウスの影響を受けているのかどうかが重要であることがよく理解できる。 因みに松井選手の場合は彼の海外での活躍や慈善活動自体も人々によく知られ、有名になっているが、それは彼の1室の支配星が同時に10室の支配星で12室に在住して絡んでいるからではないかと思われる。通常、12室の象意とは人に知られないプライベートな活動であって、縁の下の力持ち的な活動を指しており、人々には知られない個人の秘密を表している。然し、それが一般の人に広く知られているのは10室の象意が絡んでいるからであると思われる。10室は注目を浴びる大舞台を意味し、皆に知られ見られる部屋である。 一方、杉崎氏の場合は10室にはプライベートを表す月のみが在住し、12室の支配星が7室で10室の支配星とは接合しているが、12室に直接絡んでいないようである。彼の著書を見てもいろいろ経済的に成功するためのノウハウや心構えなどの自己実現に関するテーマは書かれており、冒頭で紹介したようなプロフィールも書かれているが、決して、ユニセフや国境なき医師団への寄付などのことは書かれていない。また杉崎氏本人に伺っても、献金や寄付の活動はあまり多くの人に知られていないとのことであった。 それは12室がプライベートな活動であり、通常は人に言わないで、秘密にしておく活動であるからである。 然し、全てのトリコーナ、全てのダルマハウスが絡む部屋の象意はその人の最も幸福で、精神的な目的であり、それは人に知られていなくても最も重要な活動であり、本質的な活動である。他の活動は全く本質ではなく、その活動こそが本質なのである。ダルマ、アルタ、カーマ、モクシャという4つのプルシャルタは最終的に1、5、9室のダルマハウスに収束していくのであり、ダルマハウスは人生の真の目的を表している。特に9室は今生で積む徳を表している。それは最も崇高で、霊的に価値の高い活動だと言えるのである。 |