占星コラム


2007/3/29  12室と寄付、献金について

 

先日、経営コンサルタントで、慈善活動家の杉崎 仁志さんとお会いする機会を得たのである。
秘書の方より鑑定の依頼を頂き、杉崎氏の会社事務所に伺って対面鑑定をさせて頂いたのですが、大変有意義な時間を過せたと我ながら満足のセッションでした。
杉崎氏に関しては会うまではどのような方なのか知らなかったのであるが、ネットで検索してみると、 かなり有名な方なのだと後で知ったのである。

鑑定後、贈呈くださった新刊『貧乏社長の法則-絶対に失敗しない法則-』長崎出版 によると、杉崎氏の経歴は以下のように紹介されている。

株式会社リリーフ 代表取締役

杉崎 仁志 (すぎざき ひとし)

東京に生まれる。
帝京大学経済学部、卒業。
大学卒業後、一時サラリーマンになるが、独立。失敗し、多額の借金を負う。

日本能率協会の経営コンサルタント企画室にて活躍。主な担当企業には、ヤマハ発動機株式会社、株式会社豊田自動織機など。

32歳にして、再度、独立。過去の失敗の経験と独自の経営ノウハウで、たちまち優良企業を数社束ねるグループトップに。10年余りの間に150億円の売り上げをあげる。

現在、グループ内部留保15億円強。個人金融資産8億円余り。
税法関係にも強く、税務署はもちろん国税の調査も2度受けるが、何も出てこなかった。国税からは調査後、感謝の手紙が来たという。もちろん前代未聞である。

また運用にも才能を発揮し、現在月の運用利益200万円をあげる。
著作も多く、代表作に「蘇れ!伝説の成功新理論」「他人まかせの成功術」「意識が変わればあなたも億万長者」(=以上リフレ出版)、「億万長者が教える!貧乏生活脱出法!」(=以上文芸社)、「億万長者が教える!寝ている間にあなたも億万長者!」(=以上コスモ・テン)があり、いずれもベストセラーに。現在、総著作数23点。
 2003年6月、民間のノーベル賞といわれる「東久邇宮記念賞」受賞。
 2006年、経営するグループ会社をすべて信頼できる後進に譲り、東京都中央区銀座6−6−1に株式会社リリーフを設立。
 「もはや、一生食っていけるだけの資産は築けた」

 今、人生最後を様々な起業家たちの成功に捧げるために、あえて採算を度外視した団体を作る。

株式会社リリーフ http://relief21.jp/

『貧乏社長の法則-絶対に失敗しない法則-』長崎出版 より

経歴を見ても分かるようにバリバリの営業マンであり、自ら経済的に成功するとともに人の成功をお手伝いするという能力開発系の自己啓発活動家であることが分かる。鑑定依頼を受けてから、私はそのような経歴については全く知らずに鑑定準備に入ったのである。

チャートを作成すると、まず、ケンドラに吉星が3つ在住しており、4室の木星は2、5室支配で4室に在住し、ヴァルゴッタマで非常に強いことが分かる。ナヴァムシャにおいても木星は1、10室支配で月からみても1、4室支配で機能的吉星化している。また土星や火星にも傷つけられておらず、非常に木星は強くて良い配置であることが分かる。

この配置から彼が母親、家、土地、不動産に恵まれることを表しており、また4室は心の部屋であり、喜びの部屋(House of Joy)と呼ばれるため、彼は非常に幸福で幸せな生活を送っている人であることは想像できたのである。

また7室で金星が自室に在住していることから、パンチャマハープルシャ・マラヴィアヨーガを形成している。
これは金星の象意が非常に力を発揮する配置であるが、7室に在住しているため、配偶者とかビジネスパートナーというような分野において金星の象意におけるあらゆる幸福を味わうことを表している。そして、10室支配の太陽も7室に在住して、金星、水星とコンジャンクトしていることから、彼の職場には常に若い女性がいて、その女性たちは美容や健康に関心の高い美しく実務的な女性たちが多いのではないかと思ったのである。

実際、会社のオフィスに伺ってみると、6名程の秘書の方々が出迎えてくださり、やはり杉崎氏の周辺には常に美しい女性が多いことをはっきりと示していた。これは鑑定前に杉崎氏のチャートの特徴を実際に検証できたようなものだった。

鑑定前の準備作業の話に戻ると、7室に10室支配の太陽が在住し、また7室に惑星集中していることから、彼は非常に対人関係が多い人で、仕事は常に多くの人と会うことではないかと思われた。また、その中には美しい女性も多く、非常に華々しい世界であることを想像したのである。

然し、私はこの7室からはあまり真の精神的満足感を得られないのではないかと思われた。それは7室には1、5、9室が全く絡んでいないからである。7室はカーマハウス(欲望のハウス)であり、土の星座に在住しているため、物質的な成功や快適さを与えてくれるが、真の精神的な満足には結びつかず、ただの欲望の消費的な活動に終始することに結びつくと思われたのである。また7室には8、11室支配の水星が在住しているが、この8室支配の水星が彼に対人関係上の問題や悩みを引き起こしているのではないかと思われたのである。8、11室支配の水星は機能的凶星で、カーマハウス(欲望)とドゥシュタナハウス(不幸)が絡んで欲望が不幸を生み出していく苦しい状況を生み出すのである。

私が対人関係では物質的な満足や感覚的快楽には恵まれるが決して精神的な満足感はないのではないかと伺ったところ、杉崎氏はそれに同意され、事実であるとのことであった。

実際、杉崎氏は経済的に成功すると、金目当てで近づいてくる人間も多く、そうした人達に悩まされたという。また最初は利益を度外視して、ボランティアで応援してくれた人達も、金を要求するようになったり、ずっと自分について来てくれると思っていた人達が皆離れていき、裏切られ、人間不信に陥ったりしたこともあったという。つまり、この象意こそが、8、11室支配の水星の象意である。水星はお金やビジネスの表示体であり、また11室は収入や利益、共同体の部屋であり、8室は苦悩、不幸、悪意、陰謀、裏切りなどを表している。つまり、お金の絡みで対人関係に生じる不幸や苦悩である。

これは感慨深かったが、彼が、自分の奥さんさえも、お金目当てで付き合ってるのかもしれないとさえ思うとか、本当に心を許して何でも相談できる相手がいなくて孤独であると私に告白してくださった時には、お金で結ばれた計算高い関係がいかにむなしいものであるかを教えられた感じがしたのである。

チャートの特徴の分析に戻ると、基本的なところで、ケンドラへの吉星の集中、そして、ウパチャヤ3室への土星やケートゥの在住などにより、ラオ先生のいうチャートを保護する特徴に恵まれており、またケンドラに惑星が集中しているため、大変派手で、影響力のある人物であることは理解できたのである。そして、実際にお会いしてみると、その通りであった。

そして、杉崎氏の4室には5室支配の木星が在住して、ラージャヨーガを形成しているが、4室も5室もプライベートな部屋である。
彼は日頃の啓蒙活動として、利益を考えないで、会社の地下にある道場に親しい会員の方を招いて、勉強会を開催しているとのことである。

4室はアシュラムの部屋であり、もし4室に火星が在住かアスペクトすればそれがもし宗教家であるならば、巨大な宗教施設(寺院など)を建設し、アシュラムを開くとラオ先生のテキストに書いてある。私も実際にそれは何例かで確認している。杉崎氏の場合、火星は在住していないが、ヴァルゴッタマの強い木星が在住している。従って、建物は建てなくても自分のホームグラウンドで、精神的な教育的活動(木星)を行っているのである。そして、それは全く彼のプライベートな活動であり、そこでの活動は幸福なひとときであるはずである。木星は凶星に傷つけられていないため、非常に良い象意が期待できるのである。

このようにまさにチャートは杉崎氏の人生そのものを示しており、私は鑑定がうまく行っている手ごたえを感じていた。

杉崎氏のラグナは蠍座ジェーシュタであるが、このナクシャトラの人は常に物質的成功と、精神的成功の二つを追い求め、また表の顔と裏の顔を持つのである。ナクシャトラがそうした性質を持つと同時に、チャート自体が7室惑星集中が主に物質的成功面を表しており、ラグナロードで5室支配の火星、5室支配で4室在住の火星、9室支配で12室在住の月などが主に精神的成功や満足を追い求める配置であることをさらに表していたのであり、 この物質面と精神面の区別は非常にくっきりと表れていたのである。

 

そして、ここから本題に入っていくが、杉崎氏のチャートは、9室支配の月が12室に在住し、5室支配の木星と、1室支配の火星からアスペクトされており、12室の月に1、5、9室の全てのトリコーナが絡んでいて、月はケーマドルマヨーガである。

私は鑑定準備時に、この月はケーマドルマヨーガではあっても、全てのトリコーナの惑星からアスペクトされて、良い影響を受けており、大変に幸福なのではないかと考えた。また杉崎氏は一人でいるとき、自分の部屋に居たり、人から離れて隠遁的な環境にいる時に最も精神的に幸福なのではないかと思われたのである。また12室は出費のハウスであることから、献金をするのではないかと思われたのである。

杉崎氏にそのことを伺うと、その通りであるとのことであった。

実際、彼は家族が寝静まった後に一人で瞑想するのが最高の幸せだそうである。また一人になるためにマンションを借りて、そこで日頃は一人で隠遁的に過しており、会社も今では人が育って任せることができるため、会社には月に2、3回しか来ないそうである。ほとんど隠居して最近の流行の言葉で言えば、リタイアしている状態である。

そして、献金については彼のオフィスには献金した団体からの感謝状が飾られており、 主にユニセフや国境なき医師団などへの献金活動を行っているそうである。年間1千万円程は献金するそうである。そして、その献金先は主に海外であり、将来は海外に病院を建設したいそうである。

彼は学校の建設や教育よりも人の命を救いたいのであり、命を救うシステムを作り、将来にわたって永続する人救い、徳積みを行いたいとのことであった。この辺り、献金先も12室の象意である海外、そして、病院も12室が表すことを考えると、非常に占星術的にも全てが整合的に説明できることが分かる。

杉崎氏は現在、8億の個人資産を持ち、外国為替取引、海外ファンドなどでの金利収入で月間200万円程度が自動的に入ってくるそうであるが、彼は自分が死ぬ前に大部分の資産は海外の慈善活動に使いたいそうである。

12室は全てのトリコーナが絡んでおり、9室支配の月が在住し、土星と木星のダブルトランジットも成立して、非常に強力であるが、このような強い12室の配置こそが、慈善活動に進んで献金する人のチャートなのだと、非常によく理解できたのである。

こうして、私は杉崎氏にとっては献金などの慈善活動こそが、もっとも精神的に幸福な活動であることを説明し、その日の対面セッションを終えたのである。

因みに話が脱線するが、チャートの惑星配置で注目すべき箇所であるが、杉崎氏は権利収入に大変恵まれており、何も働かなくても200万円程度の収入が得られるのであるが、月をラグナとすると、ラグナロードの金星が8室で自室にあり、9室支配の水星と11室支配の太陽と接合している。8室で強いダナヨーガが出来ており、さらに8室の支配星が8室に在住して8室自体が非常に強いことが分かる。さらにラグナロードが8室に在住することによって、人生の基本的な活動の分野、居場所が8室の相続、贈与、権利収入などの不労所得であることが分かる。

 

話のテーマが一貫しないが、ここで取り上げたいテーマが12室と献金である。
結論を先に言えば、私は今回のケースを通じて、12室に1、5、9室の支配星、すなわち、トリコーナの支配星やヨーガカラカが絡むと、それは献金を示すのだということが分かったのである。

12室が献金という自己放棄してお金を人のために費やす行為となるには、おそらく1、5、9室や木星のような吉星の影響が必要なのである。
12室に惑星が集中していたり、在住している人のチャートは今までも見てきたが、必ずしも全員が献金をするわけではなかったことを確認している。

1、5、9室はダルマハウスであり、宗教的行為、精神的探求の部屋である。従って、12室がこの崇高な宗教的目的に影響されなければそれは献金という行為にはならないのである。もし、カーマハウスが在住していたり、絡んでいたならば、それはむしろ、金銭の損失であり、浪費による出費につながることがこのことから容易に推測できる。

従って、人生の活動領域である、ダルマ(精神修行)、アルタ(蓄財)、カーマ(消費、欲望)、モクシャ(解脱)という分類は非常に重要である。

 

次にもう一例のチャートをサンプルとして、プロ野球の松井秀喜選手のチャートを挙げてみたい。

3月28日のニュースで次のような記事が配信されていた。

松井選手が1000万円寄付 能登地震で故郷に災害義援金 [ 03 月28日 22時03分 ] 共同通信  

米大リーグ・ヤンキースの松井秀喜選手は28日、能登半島 地震の災害義援金として、石川県共同募金会に1000万円を 寄付した。松井選手の母さえ子さんが同日、出身地の石川県能 美市にある同会能美市会を訪れ、小切手を手渡した。県共同募 金会は29日に松井選手に感謝状を贈る。

スマトラ沖の地震の際にも彼は5000万円の災害義援金を日本赤十字社を通じて寄付したことは皆の知るところである。
また彼は「松井秀喜ホームラン基金」を通じて慈善活動を行っているようである。

「松井秀喜ホームラン基金」の助成 阪神地域の共同作業所 28か所へ 総額280万円  米大リーグ、ニューヨーク・ヤンキ―スの松井秀喜選手が、 読売巨人軍のとき、巨人軍とともに寄付金を積み立てている「 松井秀喜ホームラン基金」の第7回助成先が、阪神大震災で被 災した小規模共同作業所28か所に決まり、2003年11月 20日、贈呈式が神戸市長田区の「長田むつみ会」で行なわれ ました。  贈呈式では、「くららベーカリー」など神戸、尼崎、西宮、 芦屋、三田の各作業所代表が出席し、各10万円、総額280 万円が贈呈されました。  松井選手はこの贈呈式のために、ニューヨークから自筆のメ ッセージを事業団大阪支部にファクスで寄せ、「神戸の作業所 のみなさん 逆境にめげず ますますがんばってください ニ ューヨークから応援しています 松井秀喜」との内容が、多田 正俊・事業団大阪支部前事務局長から、披露され、コピーが各 代表に配られました。  出席者はみんな感激し、お礼の言葉を色紙にしたためました 。「女の子ばかりの作業所です。電子レンジを購入します。あ りがとうございました。世界の松井さん、応援しています」( みくら作業所 福祉の店 花)「阪神フアンですが、松井選手 のフアンになりました」(ゆとり作業所)など用紙2枚に感謝 の言葉が並びました。  この基金は、松井選手が巨人在籍時、1本塁打ごとに販売さ れたチャリティー・テレホンカードのロイヤルティー収入が「 松井秀喜ホームラン基金」として積み立てられ、その運営は読 売光と愛の事業団が行なっています。  基金から小規模作業所への助成累計は、これで208か所、 総額2,660万円となりました。

読売新聞大阪本社サイトより(http://www.osaka-event.com/hikari/matsui_kikin.html)

彼の場合、1室支配の木星と、5室支配の月が12室に在住し、9室支配の火星が12室にアスペクトすることで、1、5、9室のトリコーナの支配星、ダルマハウスの支配星がやはり12室に絡んでいるのである。

この松井選手の12室へのハウスの絡みを確認した結果、やはり、今回私が鑑定した杉崎氏と同じように同じ12室のハウスであっても、どのハウスの影響を受けているのかどうかが重要であることがよく理解できる。

因みに松井選手の場合は彼の海外での活躍や慈善活動自体も人々によく知られ、有名になっているが、それは彼の1室の支配星が同時に10室の支配星で12室に在住して絡んでいるからではないかと思われる。通常、12室の象意とは人に知られないプライベートな活動であって、縁の下の力持ち的な活動を指しており、人々には知られない個人の秘密を表している。然し、それが一般の人に広く知られているのは10室の象意が絡んでいるからであると思われる。10室は注目を浴びる大舞台を意味し、皆に知られ見られる部屋である。

一方、杉崎氏の場合は10室にはプライベートを表す月のみが在住し、12室の支配星が7室で10室の支配星とは接合しているが、12室に直接絡んでいないようである。彼の著書を見てもいろいろ経済的に成功するためのノウハウや心構えなどの自己実現に関するテーマは書かれており、冒頭で紹介したようなプロフィールも書かれているが、決して、ユニセフや国境なき医師団への寄付などのことは書かれていない。また杉崎氏本人に伺っても、献金や寄付の活動はあまり多くの人に知られていないとのことであった。

それは12室がプライベートな活動であり、通常は人に言わないで、秘密にしておく活動であるからである。
完全に裏方の仕事であり、縁の下の力持ちとして、その活動は評価されないのである。

然し、全てのトリコーナ、全てのダルマハウスが絡む部屋の象意はその人の最も幸福で、精神的な目的であり、それは人に知られていなくても最も重要な活動であり、本質的な活動である。他の活動は全く本質ではなく、その活動こそが本質なのである。ダルマ、アルタ、カーマ、モクシャという4つのプルシャルタは最終的に1、5、9室のダルマハウスに収束していくのであり、ダルマハウスは人生の真の目的を表している。特に9室は今生で積む徳を表している。それは最も崇高で、霊的に価値の高い活動だと言えるのである。