研究コラム

 

 

 


2005/2/7  映画「アレキサンダー」に学ぶ

 

オリバー・ストーン監督作品「アレキサンダー」を見たが、この作品は占星術的に非常に興味深い作品である。

英国占星術協会の指導者が占星術を勉強する人たちに映画を沢山見るようにと勧めているのを協会の機関紙の中で読んだ気がするが、それは正しいと思われる。

私も映画を見ることは、占星術象意のデータベースを増やし、様々な人間の典型についての理解を深めてくれると思う。

アレキサンダーは牡羊座であり、この映画は牡羊座の典型を知る為の最高のテキストである。

この映画を見ていて、アレキサンダー大王とは実在の人物ではあるが、牡羊座を象徴する神話であると感じた。

【ガウガメラでペルシャ軍を前にし、兵士の士気を鼓舞するアレキサンダー】

 

アレキサンダーは紀元前356年にマケドニア王、フィリッポスとその妻オリンピアの間に生まれ、父フィリッポスが何者かに暗殺されたことにより、弱冠20歳で王位を継ぎ、巨大帝国ペルシアの統治者ダレイオスをガウガメラの戦いで破り、10年でギリシア、エジプトから西インドに至る大帝国を築いた人物である。

その歴史的評価は様々で「百戦百勝の軍事的天才」「東西文明融合の推進者」との賞賛の声がある一方で、「きわめて残忍な野蛮人」「自己中心的」などといったマイナスの評価も受けているようである。

映画は冒頭で、母であるオリンピアが寝室で、その息子・アレキサンダーを可愛がる場面から始まる。オリンピアは蛇を飼育しており、その蛇をアレキサンダーの体に這わせて慣れ親しませている。この母オリンピアは夫であるフィリッポスを憎み、蔑み、恨んでいた。寝室に怒鳴りこんで来て、乱暴を働く野卑な夫フィリッポスに対し、オリンピアは復讐してやると怒鳴りちらす。夫は西方の王国出身の彼女にとっては敵であり、憎しみの対象だったのである。この嫌いな夫から虐げられる不幸な母親・オリンピアは陰謀、悪意、恨み、復讐心の象徴である。息子アレキサンダーを嫉妬深い愛情で溺愛し、その耳元で周囲の裏切りや陰謀、謀反の動き、夫への疑問、不信、恐怖、復讐心、野望などを囁き、彼の思考に毒を吹き込むのである。そんな母親はアレキサンダーにとっては苦悩、悲しみの8室の表示体であった。アレキサンダーは牡羊座であり、牡羊座から見ると、8室は蠍座で月が減衰する部屋である。したがって、苦悩は母親に関係するものである。母オリンピアは蛇を飼育しており、まさに蠍座の象徴として描かれていた。

【息子アレキサンダーに自分の野望を託す母親オリンポス】

 

・母・・・・不幸な人、息子を溺愛、嫉妬深い愛情、陰謀、悪意、恨み、復讐心、霊能力

マケドニア王に即位したアレキサンダーは東方のペルシア帝国のダレイオス1世を打ち破り、その首都バビロンへ凱旋する。そこは富、権力、快楽の宝庫であったがそうしたものには目もくれずに撤退したダレイオス1世を追跡して、東へと進軍し、その後、異民族の国々を征服しながら、東へ東へと進み続けるのである。この一つところに留まらずに常に移動し続け、征服しつづける性格はまさに火の星座で運動星座の牡羊座の性格である。太陽は牡羊座で高揚し、支配と権力、統治の象徴となるが牡羊座であるがゆえに常に先頭にたって突き進むのである。

【ガウガメラの戦闘シーン。ペルシャ王ダレイオスに迫るアレキサンダー】

 

このアレキサンダーの部下達は東方への進軍を続けるのに嫌気がさし、バビロンやマケドニアに帰りたがるのであるが後にアレキサンダーの死後、相争って、マケドニアを4つに分割しそれぞれを統治するのである。この部下は牡羊座から5室目の獅子座が表わし、固定星座で移動を嫌い一つの場所に定住して統治するのを好むのである。また獅子座には策略に長けるという特徴があるようだが、アレキサンダーの進軍に嫌気がさした部下達は、アレクサンダーを毒殺しようと企てるのである。

アレキサンダーは部下の陰謀により毒杯をあおって死亡するのであるが、牡羊座ラグナは、1室の支配星が同時に8室を支配し、母親に関して苦悩し、悲しんだり、陰謀によって突然死を迎えるというのは、牡羊座ラグナにとっての元型なのかもしれない。

映画の中で父であるフィリッポス王を慕う場面が出てくるが、父親は弱小国であったマケドニアの軍を再建し、20年でギリシアを統一したのであり、アレクサンダーの父の表示体である太陽が強いことが予想されるが、映画の中では父親に反発することがあっても父親を慕い、敬愛する様子が描かれていた。基本的に太陽は吉星でおそらく高揚しているのである。

【父王フィリッポスと息子アレキサンダー】

 

・父・・・・偉大な父親、強い父親、野卑で粗野な人物、母親を警戒し疑う、息子にギリシャ神話を話して聞かせる

そして、映画の中では全ギリシアを統一し、統治者として戴冠式に出て行く父親に対して、自信を持って一歩ずつふみだすようにアドバイスしているが、まるで父親に対して部下のように接しているのである。牡羊座にとって太陽は5室の支配星である。

さらに映画の中で、アジア侵攻の途中バクトリアの王女ロクサネと結婚するがそれは母親に似て気性の激しい女性であった。妻は結局は月が表わしているということの表れと考えることができる。この映画に限らず、男性は母親と似ている人を妻に迎えるようであり、この映画で言えば、ロクサネはアレキサンダーに情熱的な思いを寄せる女性で、蠍座的で嫉妬心も深いのである。つまり、月が8室蠍座に在住していると想定することができる。

そして、映画の中ではフィリッポス王が暗殺された際に妻オリンピアは平然としており、彼女が黒幕として絡んでいたという風に描いているが、この時、父親が暗殺されたおかげでアレクサンダーはマケドニア国の王位を継承したのであり、王国を相続したのである。8室は人の死によって得る金銭などを表わし、それは蠍座であり、蛇使いである母親の象徴であるから母親が関与していたという風に映画で描かれていたのは的を得ていたのである。

そして、8室に母親が絡んでいるとなると、4室支配の母親・心が8室に在住するかたちになり、アレクサンダーの心は孤独、不信、猜疑心に満ちていたと思われる。

映画では彼の東方への遠征は母親から逃げようとする行為だったと解釈しているようであるが、実際、月が8室で傷ついていれば母親との関係は悪くなるし、苦悩の象徴となる。

また8室の凶星支配の部屋への在住と8室孤独・瞑想などの象意から、厭離の傾向も生じており、バビロンでの安定した生活や母親を象徴する、家、土地を求める気持ちを捨てさせ、出家して、故郷や親元から離れたいという孤独な出家修行者の象意を示している。

彼が執拗に東方遠征にこだわったのは牡羊座・運動星座的な移動の欲求に加えて、こうしたサンニャーシヨーガの出家修行者的な欲求もあったのではないかと思われる。

長い旅路の末にインドに辿り着いたアレキサンダーは部下に対して、君は故郷をもう見つけたのか?と聞く。部下は私の故郷はマケドニアです。と答える。アレキサンダーは故郷を見つけるために旅をしているのであったことが分かる。然し、彼は見つけたと思うとそれが幻想であったと分かるのである。つまり、牡羊座の本質は移動であり、定住はできないのである。彼には故郷は存在しないのである。

また映画ではアレキサンダーの同性愛に触れており、幼き頃からの親友・ヘファイスティオンへの恋愛にも似た友情を描いているがヘファイスティオンは天秤座的な気の優しいハンサムな男性として描かれており、牡羊座ラグナにとっての7室天秤座の象意を表わしているようである。つまり、全く対照的な性格のパートナーとして描かれており、人は基本的に自分とは対照的な人物をパートナーに選ぶという出生図上の定義にもかなっていた。

またアレキサンダーが騎乗していた愛馬・ブーケファラスとの出会いのエピソードが映画で描かれていた。アレキサンダーが10代半ばの時に、誰も乗りこなせなかったこの荒馬を見事に手なずけ、それからは大事な“戦友”となるのであるが、牡羊座のアシュビニーには馬という象意がある。

牡羊座の象徴である戦闘時に馬を駆って攻め込んでいく英雄・豪傑は皆、良い馬との出会いというエピソードがあるようである。中国・三国志の呂布における赤兎馬などもそうである。

インドに遠征したアレキサンダーはついに象を操って迎え撃つ敵軍との戦闘の中で、敵の弓矢にあたって倒れてしまう。一命は取り止めるが、ついに彼はバビロンに戻ることを決意するのである。

然し、先へ進軍しないで、後ろに戻ることを決めたアレキサンダーはもはや燦然と輝く太陽の力と悪霊、邪神を退ける力を失い、その命運も尽きたのか部下の陰謀により毒杯を仰いで死んでゆくのである。

このようにアレキサンダーの生涯はまさに牡羊座の典型であり、その象意の数々は人間の世界の出来事というよりも、既に神話的でさえある。

 

因みにアレキサンダーが活躍した紀元前300年頃は春分点がまだ牡羊座にあった時代であり、戦乱の時代だった。中国では春秋戦国時代で秦の始皇帝が中国全土を統一した頃で、それより少し前になるがエジプトではモーゼがイスラエルの民を引き連れてエジプトから脱出した(出エジプト記)時代、そして、インドでは仏陀が活躍した時代である。力の行使によって世界が統一されようとした時代である。「アレキサンダー」はまさに牡羊座の時代における牡羊座の物語である。

 

※神話というのは人間界における様々な出来事を極限的に象徴しているのであって、神話の勉強はやはり占星術の勉強には欠かせない。

 

(資料)

アレキサンダー誕生 紀元前356年、マケドニア王国にて、王フィリッポス(ヴァル・キルマー)とその妻オリンピアス(アンジェリーナ・ジョリー)との間にアレキサンダーが生まれる。しかし、両親は絶えず争いを続け、母は我が子を王にすることだけに情熱を燃やしていた。−−数年後、やがて10代半ばとなったアレキサンダーは、ヘファイスティオンをはじめとする同年代の友人の友情に心の平安を見出していく。 アレキサンダーvs.ペルシア帝国 すべてが一変したのは紀元前336年。フィリッポスが何者かに暗殺されたのだ。20歳の若さで即位したアレキサンダー(コリン・ファレル)は、ペルシア帝国を攻略すべく、アジア各地に進軍、24歳でエジプトの王となる。そして、ついにガウガメラの地でダレイオス王率いるペルシア帝国との会戦を迎える。味方は4万、対するペルシア軍は25万。独自の戦術とアレキサンダー軍の奮闘に恐れをなしたダレイオス王は一目散に逃亡する。紀元前331年、世界最強のペルシア帝国が壊滅した瞬間であった。 世界征服の旅へ 戦いに勝利したアレキサンダーは、世界征服を目指しさらに西へと向かう。「これからも制覇した国の人々を解放し、学問を広めて彼らの精神も解放したい」。そんな野望を秘めるアレキサンダーだったが、アジア侵攻の途中バクトリアの王女ロクサネ(ロザリオ・ドーソン)を第一夫人に迎えたことで、彼に対する側近たちの不満が爆発する。彼らにとってアジア人との子供が次の王になるなど、到底許せないことだった。そんなある日、差し出された酒の香りに異変を感じたアレキサンダーは、命を狙われたことに気付く。暗殺の首謀者たちを処刑し、ついにインドへ辿り着いた彼を待っていたものとは……? それから40年後。アレキサンダーの謎が明かされる アレキサンダーが32歳の若さで亡くなってから、40年後。部下だったプトレマオス(アンソニー・ホプキンス)は、王の生涯を記録に遺そうとしていた。父の死の真相、母の企み、反対された結婚、禁断の愛、暗殺未遂、そして前人未到の世界征服の旅。果たしてアレキサンダーが遺したものとはなんだったのか? プトレマオスは遂に、王の生涯に隠された“謎”に触れようとしていた……。 (YAHOO Movieより)

ラジー賞『アレキサンダー』『キャットウーマン』が総なめ!? アレキサンダー役を大熱演したコリン・ファレル  1月24日、第25回ラジー賞のノミネートリストが発表された。ラジー賞とは2004年に公開された映画の中から最低な作品を選ぶというもので、この賞に名前が挙がるだけで大変不名誉な賞だ。マドンナやジェニファー・ロペス、ベン・アフレックなどが常連。  今回やり玉に挙げられたのは日本での公開が間近に迫っている『アレキサンダー』だ。作品賞、主演男優賞、監督賞、助演男優賞、助演女優賞、脚本賞ら主要6部門を完全制覇した。巨匠オリバー・ストーンが200億円の製作費で演技派コリン・ファレルを主演に迎えての超大作だけに関係者には気の毒。しかし、同時にこの作品への注目度が高いことの証拠でもあり、日本公開に向けて話題になることだろう。  そのほか対抗馬には7部門にノミネートしているハル・ベリー主演『キャットウーマン』と5部門ノミネートの『華氏911』が有力視されている。発表はアカデミー賞前夜の2月27日(日本時間)。 [ 1月25日20時34分 更新 ] -------------------------------------------------------------------------------- 「アレキサンダー」が「バットマン」と戦って骨折? 「アレキサンダー」のPRのため来日したオリバー・ストーン監督(左)とコリン・ファレル  史上初めて世界を統一した歴史上の王の謎に迫る歴史超大作「アレキサンダー」のPRのため来日した、アカデミー賞監督オリバー・ストーンと主演のコリン・ファレルが1月14日、東京・新宿のパークハイアット東京で記者会見を行った。  今回が初来日となるファレルは、2300年前に実在した偉大な王を演じたことに対し、「1年前に撮り終えてから2作も映画を撮っているのに、いまだにアレキサンダーを自分の中に感じるよ」と役への入れ込み様を熱く語った。また、撮影中に骨折したことを聞かれると「実はあれは撮影中じゃなくて、(共演者の)バル・キルマーと飲んでたときの怪我なんだ。バットマンとは飲まない事だね」と告白した。  一方、「エニイ・ギブン・サンデー」以来5年ぶりの来日となったオリバー・ストーン監督は、少年の頃から自身のヒーローであったアレキサンダー王の魅力について「歴史上、彼ほどのことをやってのけた人物はいないんだ。誰も持たない視点で世界を見て、32歳で帝国を築き上げた。僕が今まで読んできた物語の中で一番エキサイティングな物語だ。そして何が凄いって、これは実話なんだよ。『グラディエーター』や『トロイ』とは違うんだ!」自信たっぷりに語った。2月5日より公開。