ノーベル文学賞受賞・作家 カズオ・イシグロのチャートについて その2


カズオ・イシグロが双子座ラグナである理由について、「週刊現代」2017年10月28日号の記事『カズオ・イシグロの親族が明かした「一雄くんのこと」祖父は伊藤忠「伝説の商社マン」』が参考になる。(末尾に参考文献として掲載)


名家での誕生

この記事によれば、カズオ・イシグロの日本語名は、石黒一雄で、石黒家は代々由緒ある名家だったという。


そして、カズオ・イシグロは、5歳まで、長崎県のレンガ造りの純和風の武家屋敷のような3階建の邸宅で暮らしていたようである。


祖父は優雅な生活で、豊田家との関係も深く、トヨタ関連の株の配当だけで生活していたと記されている。


こうした家族の元で、何不自由ない幼少期を過ごしたカズオ・イシグロは2室(両親、家族)が強いはずである。


もし双子座ラグナなら2室で木星が高揚し、2室支配の月が木星と星座交換しているため、非常に強い配置となる。


また11室支配で高揚する火星と相互アスペクトもしている。


2室で木星が高揚し、2室支配の月が木星と星座交換する配置は、名門で何不自由ない生活を送ったように見える配置である。





当初、蟹座ラグナの可能性を考えたが、蟹座ラグナにすると結婚したタイミングで、7室に木星がトランジットし、土星が5室からアスペクトして、7室にダブルトランジットが生じる為、蟹座ラグナでも若干、出来事が説明できる。


結婚した時のダシャーが金星/水星期で、ナヴァムシャだと金星がラグナに在住する為、多少、蟹座ラグナの可能性も考えることになったが、然し、蟹座ラグナだと2室支配の太陽が4室で減衰し、7、8室支配の土星とコンジャンクトし、3、12室支配の水星とコンジャンクトして、激しく傷ついている。

これだと名家に生まれた幼少時の恵まれた生活が説明出来ない。


蟹座ラグナだと3、12室支配の水星が4室で傷ついた配置になるが、カズオ・イシグロは5歳の時に生まれ育った長崎県からイギリスに移住して、そこで英国籍を取得して、英国人として永住することになっている。


これは人生の大きな変化であり、5歳頃のダシャーに出ていなければならないと考えた。


そうすると、ちょっと見た目には、3、12室支配で4室に在住する水星が、そうした外国(12室)への移住(4室)をもたらしたのではないかと考えることも出来る。


それで蟹座ラグナか、双子座ラグナでかなり迷うことになった。


然し、カズオ・イシグロが水星期に日本を離れて英国に移住したのは、主に月から見た4室支配の水星が8室に在住し、12室支配の土星とコンジャンクトし、6室支配の太陽とコンジャンクトしていることによって生じたのである。


4室の支配星が8室に在住して、突然の家の変化を表わし、外国を表わす12室の支配星と絡んでいる。


これは自分の長崎の生家、母国を失うことを意味している。



また双子座ラグナから見ても4室の支配星が8室の支配星とコンジャンクトすることによって突然の住まいの変化を表わしている。


また4室の支配星が、8、9室支配の土星とコンジャンクトすることは父親の海外赴任の都合で、この引っ越しが避けられなかったことを意味している。



それであえて蟹座ラグナにしなくても、この英国への移住は説明出来ることが分かった。


実際に英国に移住をしたのは、水星/木星期であるが、木星は出生図で7室の支配星で、7室は4室から4室目で住まい、引っ越しの本質のハウスである。


蟹座ラグナに設定すると、5室に金星が在住することから音楽の趣向が説明出来そうだが、4、11室支配の金星期に大学院の創作学科で小説を書く専門教育を受けたということは説明しにくい。



このように蟹座ラグナかどうか迷ったことで、暫くカズオ・イシグロのラグナについての結論が出なかったが、最近、再び、見返してみて、やはりカズオ・イシグロは、双子座ラグナでしか説明出来ないと改めて思った。





また今回、名門の家に生まれたことなど、新しい事実関係が明らかになった結果、双子座ラグナで正しいと判明した。



蟹座ラグナで4室が傷ついている場合、この4室はカズオ・イシグロの人生に何も栄光をもたらさないのである。



小説の創作でノーベル文学賞まで取得したのであれば、双子座ラグナで5室にクリエーターとしての強い配置がなければならない。



ラグナロードが5室に在住して、人生を小説の創作に捧げていなければならないのである。



蟹座ラグナではその辺りが全く説明出来ていない。



蟹座ラグナではラグナロードが9室に在住して、9室の支配星と星座交換する為、人生を宗教の探究や霊的探究に捧げているような配置である。



そうではなく、カズオ・イシグロは人生を小説の創作に捧げているのである。



だから双子座ラグナで間違いないのである。





カズオ・イシグロの作風

前回も作風について触れたが、カズオ・イシグロの作品は、ノスタルジーに溢れていると評価されているようである。


wikipediaによれば、ノスタルジーとは、異郷から故郷を懐かしむこと、過ぎ去った時代を懐かしむことと定義されている。

この過ぎ去った時代の思い出に浸る行為とは、記憶と感情が結びついた現象である。


昔の故郷の自然や人々の記憶が、心地よい感情と共に蘇るのである。


そういう意味ではノスタルジーに浸れる能力とは、感情が豊かで、感情自体も強いことを表わしている。


再び、繰り返しになるが、これはカズオ・イシグロの5室支配の金星が水の星座である蠍座に在住し、月から5室で高揚する木星からアスペクトされている為である。

特に蠍座は、感情保持能力が高く、感情が中々消えることがなく、持続する星座である。


だから人に対して、いつまでも感謝したり、あるいは、人を恨むといつまでも忘れない。


従って、ノスタルジーという形で、心地よい感情を伴った美しい過去の記憶が表現される場合、それは水の星座に吉星が在住している場合である。


もし凶星が在住して水の星座が傷ついている場合、ノスタルジーといった心地よい文学的な表現にはならず、過去の過酷な出来事についての恨みの思い出として残るはずである。


こうした水の星座に吉星が在住する配置は、伝統社会の中で、古き良き時代に幸福な経験を沢山したことを意味している。


その為、それがノスタルジーになるのである。


こうした感性は、古き良き伝統への回帰を求めるロマン主義にも通じる所があるが、カズオイシグロの場合、それらの古き良き時代は二度と戻って来ないという諦め、ペシミステックな哀しさというものに溢れている。


その辺りは冷静な分析をする双子座の達観性がある。仏陀もほぼ運命論者であり、占星術を重視したようだが、双子座/水星というのは、達観した知性であるため、運命に逆らうという発想にならない。


例えば、『日の名残り』では、時代の変化についていけない執事の男性の哀しみを描くのであるが、その執事が最後に前向きに生きようとする姿勢を描くことで小説を締めくくっている。



映画『日の名残り』より



主人公のスティーブンスは、かつての同僚であり、自分に好意を抱いていたミス・ケントンをもう一度、屋敷に呼び戻そうとして再会を果たすが、ミス・ケントンは既に結婚しており、子供の為に生きなければならず、もはや失われた時間を取り戻すことは出来なかった。


『スティーブンスは、不遇のうちに世を去ったかつての主人や失われつつある伝統に思いを馳せ涙を流すが、やがて前向きに現在の主人に仕えるべく決意を新たにする。屋敷へ戻ったら手始めに、アメリカ人であるファラディ氏を笑わせるようなジョークを練習しよう、と。』(wikipedia 日の名残り より引用抜粋)

小説家にとって登場人物は、自分が生み出した子供のようなものであり、創作物である。



それは5室の象意である。



カズオ・イシグロの場合、5室支配の金星は、6室に在住して逆行しており、土星、太陽、ラーフに挟まれて、パーパカルタリヨーガを形成し、傷ついている。


従って、5室が完全に幸福な思い出だけで形成されている訳ではないのである。



この5室の支配星が若干、傷ついて奮闘の6室に在住していることが、古き良き時代や失われつつある伝統に思いを馳せる傷心を表わしているのである。



これがカズオ・イシグロの傷心でもあるのだが、この古き良きものを失いつつある哀しみを『日の名残り』の主人公であるスティーブンスに体験させているのである。



そして、その6室に在住する金星は、弱い者、虐げられた者への奉仕を表わし、また木星のアスペクトによる保護もあるため、最後にスティーブンスが、『アメリカ人であるファラディ氏を笑わせるようなジョークを練習しよう』と前向きに考える場面で、小説を閉じている。


この辺りには、古き良きものを失って傷ついた弱者である主人公のスティーブンスに対する思いやりが感じられる。



この古き良きものを失いつつある人間の哀しさというものは、長崎で5歳まで幸福な生活を送ったカズオ・イシグロがいきなり父親の仕事の都合で、英国に移住しなければならなくなり、それまで親しんだ邸宅や交友関係などを全て失った体験に通じるものがあるかもしれない。


これが原体験が、カズオ・イシグロの作品に表わされているのではないかと思われる。



従って、まとめると、カズオ・イシグロのノスタルジー小説は、5室支配の金星が水の星座の蠍座に在住し、月から5室で高揚する木星からアスペクトされていることで、古き良き時代の幸福で豊かな体験が元になっているが、この金星は、6室に在住し、パーパカルタリヨーガを形成していることで、若干、傷つけられていることがポイントである。


これが古き良き時代を失う経験であり、そうした経験をする登場人物(5室)を生み出す創作力(5室)なのである。



つまり、ノスタルジー文学とは、5室と生来的吉星、水の星座の組み合わせに若干の傷が付いているコンビネーションではないかと思われる。




実業家や社会革命家、進歩的文化人のようなタイプに言わせれば、過去の思い出話ばかりする人間は、役立たずなのである。


こういった人々は常に前だけを向いており、変化を求めている。


然し、こうしたタイプの人々には、古い愛着のある品物を捨てられない気持ち、古い時代の思い出を大事にする気持ちが理解出来ない。


水の星座が強い人々は保守的で感傷的ではあるかもしれないが、人の感情を大事にし、記憶と感情、物と感情が強く結びついている。


それが水の星座、ブラーミンの特徴なのであり、優美な人々なのである。


癒しの力というのもこの人々が持っている。



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