西部邁の死について


日本の保守論客の一人、西部邁が多摩川河川敷から入水自殺し、関係者の間で、衝撃が広がっている。


評論家・西部邁さん死去 多摩川で自殺か 78歳、正論執筆メンバー
2018.1.21 16:26 産経ニュース

保守派の論客として知られる評論家の西部邁(すすむ)さん(78)=東京都世田谷区=が21日、死去した。

警視庁田園調布署によると、同日午前6時40分ごろ、東京都大田区田園調布の多摩川河川敷から「川に飛び込んだ人がいる」と110番があった。飛び込んだのは西部さんで、署員らが現場に駆け付け病院に搬送されたが、死亡が確認された。

同署によると、目立った外傷はなく、付近で遺書のような文書が見つかった。自殺を図り、溺死したとみられる。

西部さんは21日未明から行方不明になっていた。同居する家族が探していたところ、多摩川で流されている西部さんを発見し、通報したという。

西部さんは北海道出身。東大経済学部に在学中、全学連中央執行委員として安保闘争に参加し、学生運動の指揮を執った。大学院では経済学を専攻し、横浜国立大や東大などで教鞭(きょうべん)をとる傍ら大衆社会論を軸とした評論活動を開始。「経済倫理学序説」で吉野作造賞、「生まじめな戯れ」でサントリー学芸賞を受賞した。

東大教授時代の昭和63年、助教授の推薦をめぐって教授会で否決されたことに抗議して辞任。以降、テレビの討論番組などに定期的に出演し、晩年は自ら発刊した雑誌を舞台に言論活動を展開した。

正論執筆メンバーで、平成4年には戦後日本でタブー視された改憲論を正面から取り上げるなどの精力的な評論活動により、第8回正論大賞を受賞した。

私が知っているのは、「朝まで生テレビ」で保守論客の一人として参加する西部邁であり、また小林よしのりの漫画の中で、風刺される姿だけである。
 
保守言論人としての西部邁しか知らない。
 
西部邁について調べてみると、非常に興味深いことに学生時代に和歌山の被差別部落に入って子供たちに勉強を教えたり、共産主義者同盟に加入し、全学連の中央執行委員などを務め、60年安保闘争にも参加し、身分制度や階級的不平等に反対し、社会正義(平等)を目指した左翼活動家であったということである。
 
然し、1961年3月に左翼過激派と決別し、1972年に連合赤軍の集団リンチ事件の報道に触れて、この頃に完全に左翼への共感が失われたようである。(何があったかは分からないが、左翼への幻滅があったと考えられる)
 
そして、その後、思想転向して保守論客の一人として言論活動を行ってきたのである。
 
「朝まで生テレビ」などで人気が出たのは、その思想転向した後の姿である。
 

この西部邁の左翼から右翼への転向は、知識人にしばしば生じる典型的なパターンである。
 
若い頃にマルクス主義に傾倒し、平等な社会(社会正義)を志すも途中で現実に直面して挫折し、渡辺恒雄のように資本主義の怪物に変貌したり、保守思想家に転身する。
 
多かれ少なかれ、このパターンを辿ることが多いようだが、もし思想転向しなかったとしても左翼の過激派から環境保護や消費者運動のようなよりソフトな活動家に転向する場合がある。
 
西部邁の場合は極端な一例である。
 
  
 
  
西部邁のチャートを見て気づくのは、木星が水瓶座に在住していることである。
  
水瓶座は自由、平等、博愛などフランス革命をもたらしたリベラル左翼の星座であり、共産主義思想は、この星座から出て来るのである。
  
また木星は社会奉仕や慈善の惑星であり、教育、教師の表示体である。
  
  
従って、西部邁が学生時代に被差別部落に入って子供たちに勉強を教えたのは、この水瓶座の木星が働いたと考えられる。
  
マルクスやレーニンといったイデオロギーの問題ではなく、ただ純粋、素朴に被差別部落の人々に奉仕したいという気持ちからではないかと思われる。
  
然し、そうした西部邁も大学で共産主義者同盟や全学連に加入して活動する中で、マルクス・レーニン主義などのイデオロギーにも関わることになるのだが、このようなイデオロギーに関わることによって左翼過激派への失望が生じたのではないかと思われる。
  
何故なら、本来、木星が水瓶座に在住する西部はイデオロギーというよりも社会的弱者に対する直感的な反応であったと思うからである。
  
理論というよりも彼の流儀、あるいは行動規範といったものではないかと思うのである。
  
  
例えば同じ水瓶座でも土星や火星、ラーフ、ケートゥ、太陽などの凶星が在住することでカルマを形成している場合、権力闘争、暴力革命理論や過激派のリンチや粛清といった表現になるため、そうした配置を持つ人々と共に活動することで、彼の純粋な理想や慈善心などが傷つき、挫折し、打ち砕かれたのではないかと考えられるのである。
  
従って、保守言論人に転向してからの西部は、民主党に政権交代した時に日本の伝統が失われてしまうことに警鐘を鳴らしたのである。
  
それは学生時代に左翼の過激派が何も建設せずに破壊を繰り返したという当時の悪夢が記憶に残っているからである。
  
この左翼活動家への失望が大きかったが故に保守思想家に転向したのである。
  
  
この西部邁の思想転向の理由を占星術的な観点から検討すると、魚座に土星、太陽、水星が在住しているのが分かる。

魚座は春分点が過去およそ2000年の間、通過してきた星座であり、封建的な価値観や伝統社会を表している。

身分制度など古い秩序を維持しようとする星座である。


従って、西部邁のチャートでは革新と保守が共存していることが分かる。

水瓶座の木星や天秤座で木星からアスペクトを受けるラーフなどは革新であり、リベラルである。

然し、魚座の土星、水星、太陽は、封建的、保守的であり、そして、山羊座の月と金星も古風で家父長制的秩序を重んじる保守的な星座である。

従って、これらの保守と革新の要素がダシャーの推移に対応して顕現するのである。

西部邁は、マハダシャーラーフ期や木星期には、マルクス・レーニン主義的な左翼活動に入れ込んだのであるが、マハダシャー土星期になると、土星は魚座に在住しているため、保守言論人に転向したと考えることができる。


然し、西部邁の興味深い所は、『産経新聞』『正論』『諸君!』などを中心とする日本の親米保守の知識人たちと一線を画している所である。

2003年のイラク戦争の時にこれらの親米保守知識人たちが、アメリカの選択を支持したのに対して、西部邁は、イラク戦争がアメリカの侵略戦争であると批判している。

おそらく水瓶座に在住する木星がより公平な正義という理念、そして、国際法や国連決議を尊重する姿勢をもたらすからである。

また皇位継承問題に関して、「血」統よりも「家」系を重視する方向において、よりよく維持されると思われることを理由に「女系」にも「女子」にも皇位継承が可能なように(皇室典範第二条の)「継承の順位」を変更した方がよいと述べ、一部から「左に回帰した」と批判されたようである。

おそらく(正統派?)親米保守知識人にとっては、「血」の問題は絶対であり、必ず、天皇は「男系」でなければならないのであるが、性別や人種(血液)にこだわらないリベラル左翼的な理想を水瓶座の木星がもたらしたからではないかと思われる。

また民主党政権ができる前から民主党が「必ずや日本を解体に導きます」と述べていたようである。

然し、2006年6月号の雑誌『時局』の中で、民主党へのかすかな期待について論じており、その態度は首尾一貫していない。


おそらくこのように保守言論人の中でも親米保守の主流派とは一線を画したり、時に左に回帰したような思想を示すのは、水瓶座の木星と魚座の土星が星座交換しているからではないかと思われる。


星座交換していることによって、どちらの影響も感じられるのである。



そのため、マハダシャー土星期になって、イラク戦争や皇位継承問題に関して、リベラル左翼的な発想が出て来るのである。


また土星は出生図では魚座に在住しているが、ナヴァムシャでは水瓶座でムーラトリコーナに在住して強力である。

従って、土星においても本質的には水瓶座の影響が強いのである。


従って、最近の19年間の歩みの中で、保守言論人として活動して来たが、実はリベラル左翼的な考えにも心が開いており、そのため、思想的に保守と革新の間を揺れ動いていたのである。

「朝まで生テレビ」で田原総一郎とのやり取りなどもなごやかであり、非常に友好的である。


また2001年8月に船橋市立西図書館のある司書が、同館所蔵の西部らの多数の著書(107冊)を廃棄基準に該当しないにも関わらず、除籍、廃棄した事件(船橋市西図書館蔵書破棄事件)が起こっている。


この事件に対して、wikipediaによれば、西部邁は以下のように回答している。

つい先だって、船橋の市立図書館で、私の書物が一冊を除いてすべてひそかに廃棄されるという扱いを受けたが、次の焚書に当たっては、本書(『知性の構造』ハルキ文庫版)がその一冊の例外になるという名誉にあずかれればと切望する。坑儒されてみたいくらいに思っている私がなぜこんなことをいうのか。それは、本書がどこかに残っていれば、その作成に携わってくれた皆様に――単行本を物にしてくれた小山晃一氏を含めて――ささやかな返礼ができると思うからである。

―西部邁『知性の構造』ハルキ文庫、2002年、270頁

…図書館の収蔵能力にも限界がありますので、図書館員の好みに合わぬ書物はどんどん廃棄処分されていくしかないのです。

―西部邁『人生読本』ダイヤモンド社、2004年、129頁

どこかの公立図書館で、僕の著書が五十冊ばかり、(いわゆる左翼の)図書館員によって勝手に廃棄されていると報道されたとき、僕は、「載断(せつだん)するなり焼却するなり、どうぞお好きなように」と応えました。

―西部邁『妻と僕 寓話と化す我らの死』飛鳥新社、2008年、215頁

自分の言説が受け入れられなくても、私は痛痒を感じません。それどころか私は、若いときからずっと、「坑儒」(知識人への生き埋め)されるのはちとつらいが「焚書」されるくらいはまったく平気、という種類の人間なのです。事実、どこかの図書館で、私の五十冊ばかりを含めて、左翼の気に入らない書物が勝手に廃棄されたとき、それに抗議する原告団に私は加わりませんでした。いくつかのメディアがそれについて取材してきた折にも、これはホンネではなかったのですが、「坑儒されても文句はいいません」と虚勢を張っておりました。

―西部邁『どんな左翼にもいささかも同意できない18の理由』幻戯書房、2013年、42頁

この西部邁の対応は、大変おだやかで、異なる思想を持つ人間に対して寛容であり、非個人的である。

従って、これは純粋なリベラル左翼的対応と言ってもいいかもしれない。

相手を尊重する大人の態度が人格に表れており、その行為がリベラルの本来の理想を体現しているのである。


従って、西部邁は保守言論人ではあるが、人格や行為のレベルにおいて、そして、時には思想のレベルにおいても成熟したリベラルなのである。

西部邁の本質は、保守思想の中にリベラルに対する感受性を持つ思想家である。


wikipediaによれば、西部邁は、『「保守」を思想レベルにまで引き上げた知性は左右を問わず、多くの知識人の尊敬を集めた』と評価されており、それはこうした配置によるものであると考えると納得できる。



西部邁のラグナはどの星座か?

西部邁の出生時間は分からず、また結婚した日付や子供の誕生の日付なども分からない為、ラグナの特定は困難である。


然し、非常に多くの著作があり、またテレビにも多数、レギュラー出演していたことを考えると、


蠍座ラグナで5室(作家、著述家)に水星、太陽、土星が集中し、3室(芸能)に金星と月が在住していたのではないかと思うのである。


水星は8室の支配星で5室で減衰しているため、パラシャラの例外則でラージャヨーガ的に働く配置であり、著作家としての成功を表している。


また3室支配の土星が5室に在住する配置や10室の支配星が5室に在住する配置も著述家としての仕事を表わしている。


そして、5室支配の木星が4室から10室にアスペクトしている為、東京大学で教鞭を取る教授でもあったし、またテレビ番組の企画で、「西部邁ゼミナール」(TOKYO MX)といった教育番組を手がけていたのである。



その西部邁が何故、今回、自殺したかと考えると、


蠍座ラグナで正しければ、現在、水星/金星期辺りである。



マハダシャーの水星は8、11室支配のマラカで、3、4室支配のマラカに相当する土星とコンジャンクトして、太陽、火星から傷つけられている。


またアンタルダシャーの金星は7、12室支配で3室に在住している。


何故、河川敷からの入水自殺になったかと言えば、水星が水の星座(魚座)に在住しているからである。


またアンタルダシャーの金星も水の惑星である月とコンジャンクトし、ディスポジターの土星は水の星座(魚座)に在住している。



西部邁は、ここ数年、自分の死への思索を深めていたと言われ、著作などでもしばしば言及していたという。


自然死の実態が「病院死」であることから、自分は「生の最期を他人に命令されたり、弄り回されたくない」として「自裁死」を選択する可能性を示唆していたという。


おそらくマハダシャー水星期に入ってからその考えに取り憑かれてしまったのだと思われる。


水星は8室の支配星であるため、深い思索や研究を表わし、5-8の絡みは、判断力、思考(5室)が何らかの考えに狂信的に囚われてしまう(8室)ことを表している。


8室は中毒症状を表わす配置である。


従って、8、11室支配の水星期が深まるにつれ、いよいよこの思索を深めた自らの「自裁死」の信念を実行しなければならなくなったと言える。


水星は減衰し、8室の支配星と5室が絡み、傷ついてもいる為、判断力が弱まっていたとも言えるのである。


西部邁は、最近、手袋をはめていたようだが、掌蹠膿疱症という原因不明の皮膚病を患っていたようである。


掌蹠膿疱症

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は、皮膚病の一つ。手掌・足底に無菌性の膿疱が反復して出現する。基本的に慢性難治性の疾患である。膿疱性乾癬とも類似するが区別されている。また、欧米では膿疱性乾癬の病態のひとつとして分類しているが、日本では独立した疾病として分類されている。

症状

40代以降に好発する。膿疱の好発部位は母指球部と小指球部、土踏まずと踵で痒みを伴う。悪化すると日常生活に支障を来すほどの痛みを生じる。(略)

原因

原因は不明であるが、溶連菌やスーパー抗原に対する免疫応答に異常があるという報告がある。また、膿疱が無菌性であるが、慢性扁桃炎(扁桃病巣感染症)・虫歯・歯肉炎などの歯性病巣や、歯科用金属やアクセサリーなどに含有するプラチナによる金属アレルギーの関連性を指摘する報告がある。その他、ビタミンの一種であるビオチンの不足も原因とされている。喫煙(受動喫煙を含む)が原因になることもある。しかし、禁煙しても治癒しない。(略)

(wikipedia 掌蹠膿疱症より引用抜粋)

おそらくこの皮膚病を併発したのは、マハダシャー水星期からではないかと思うのである。


水星は皮膚を表わし、また神経系を表している。



従って、凶星から傷つけられた8室支配の水星は、明らかに原因不明の皮膚病を表しているのである。


西部邁の「自裁死」という思想は、この原因不明の皮膚病をもたらした同じ水星がもたらしたものである。


この原因不明の皮膚病に冒されながら、病院で薬や医療器具で拘束された尊厳のない死を迎えたくなかったのである。


この傷ついた8室支配の水星が、考えに考えた末、「自裁死」という思想に辿り着いたと言える。


それ自体、一つの思想的病であったと言えなくもないのである。




そして、水星/金星期がやってきた訳だが、西部邁は、自分の死が、メディアに報じられることも意識していたと考えられる。


つまり、何故、3室に在住する金星期に死を選んだかと言えば、それは、「演劇的死」なのではないかと思われる。


ソクラテスのように自らの信念による死を演出し、それを思想家・哲学者としての最期のパフォーマンスとして世に提示したのである。


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