マーク・ザッカーバーグ米上院公聴会に詰問される -巨大SNSの光と影-



米国の政治・選挙関連データ分析企業のケンブリッジ・アナリティカが、5,000万人分ものFacebookユーザーのデータを不正利用した問題で、facebookの創業者で最高経営責任者(CEO)のマーク・ザッカーバーグが5日間の沈黙を経てようやく重い口を開き、自らの責任を口にした。

この5日間の沈黙については物議をかもしたが、その後、米上院公聴会に呼ばれて2日間に渡って詰問された。

その中で、「あなたは何百万人ものアメリカ国民の個人データに対して、自分に連邦政府よりも大きな責任があると思いますか?」との質問に「はい」と回答し、自らの責任を認め、何度も謝罪の言葉を口にし、とんちんかんな質問を繰り返す、上院議員たちに対して真顔で回答を行なったということである。

然し、裏を返せば、何百万人ものアメリカ国民の個人データに対する責任は、連邦政府にではなく、自分自身にあるという主張を押し通して、facebookのオーナーとしての地位や、facebookを今後も第三者の監査の手から守ったと言うことができる。

そして、facebookの広告ビジネスを今後も継続するという権利を守り通した。

そうした様子を見て、フェイスブック本社に安堵の空気が流れているという。


米上院の公聴会は、延べ10時間、100人から600の質問を受けるという激しいものであったようである。

然し、この公聴会は、マークザッカーバーグが主役のフェスティバルのようであったと評価されている。






マークザッカーバーグが「超一流の謝罪」という演技で、全米の観衆を魅了した一大イベントである。


私は、以前の記事『インターネット個人ビジネスと獅子座について』で、マーク・ザッカーバーグが獅子座ラグナではないかという見解を書いたが、astrotheme.comによれば、出生時間はPM 14:49で、この時間で、出生図を作成すると、ラグナが獅子座のウッタラヴァパールグニーである。






従って、私の予想は正しかったと今回確認することが出来た。


マーク・ザッカーバーグは、インターネット上にfacebookというソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を創り出し、巨大メディアを誕生させた。


現在、20億人の人々がそれを利用して日々、コミュニケーションを行なっている。


従って、出生図で3室(メディア、コミュニケーション、通信)が強調されていなければならないはずである。


その為、3室を強くするためにはラグナを水瓶座か、獅子座に設定しなければならないのである。


然し、ザッカーバーグの立ち居振る舞いは、典型的な獅子座であり、プレゼンの仕方などが、獅子座ラグナであるスティーブ・ジョブズと似ており、舞台上でオーバーアクションで、聴衆に対して、プレゼンテーションを行う。




従って、私は以前からザッカーバーグは獅子座ラグナではないかと考えていた。



獅子座ラグナだと3室に6、7室支配の土星、12室支配の月、4、9室支配のヨーガカラカの火星が在住し、対向の9室から3、10室支配の金星と2、11室支配の水星がアスペクトしている。


3室で土星と火星は逆行しており、3室が激しく傷ついていることが分かる。


この3室の傷つきは、facebookの誕生時の物語を説明するものである。



これは2010年に公開された『ソーシャル・ネットワーク』という映画でも描かれているが、デビッド・カークパトリック著の『フェイスブック 若き天才の野望』の中で詳細に描かれている。




2003年秋頃にマーク・ザッカーバーグは、ハーバード大学のコンピュータをハッキングして女子学生の写真を取得し、女子学生の顔の格付けサイト「Facemash」を立ち上げ、2時間で2万2000アクセスを集め、4時間で大学のサーバーがダウンしてしまうのである。


ザッカーバーグのプログラミングのスキルにボート部に所属するエリート学生・ウィルクルボス兄弟が注目し、ザッカーバーグにハーバード大学の学生専用コミュニティサイト「ハーバード・コネクション」の制作を依頼するのである。






このアイデアをマーク・ザッカーバーグが盗用して、ウィルクルボス兄弟との接触は避け、「ハーバード・コネクション」の制作は遅らせて、その間にfacebookを完成させてしまうのである。


従って、ザッカーバーグは、ウィルクルボス兄弟からアイデアを盗んだのである。


そして、彼らの依頼されたものを制作するよりも先に自分のサイトを起ち上げてしまった。



これはザッカーバーグのチャートによく表れているのだが、6室支配の土星が3室で高揚している配置がそれに当たるのである。


ウィルクルボス兄弟は、自分たちでサイトは作れないので、ザッカーバーグの力を頼って、制作を依頼したのであるが、立場的に言えば、彼らが6室でザッカーバーグが8室に位置する。


6室の支配星が3室で高揚している配置は、自分のクライアント(目下の者であり、サービスする相手)であるウィルクルボス兄弟からアイデアをもらって恩恵を受けるという配置なのである。


このことが起こったのがちょうど土星/金星~土星/太陽期である。






マハダシャーは、この6室支配で3室で高揚する土星であり、アンタルダシャーの金星はマハダシャーロードの土星からアスペクトされて傷ついている。


従って、facebookを起ち上げた時から、ウィルクルボス兄弟との騙し合いや訴訟状態を抱えていたと言える。


土星/太陽期などは、ラグナロードである太陽が10室に在住して、高揚するラーフとコンジャンクトしているため、facebookを起ち上げて、ヒーローになった当時のザッカーバーグを表していると考えられる。


然し、そのようにfacebookが全米の学生に広がっていく中で、ウィルクルボス兄弟が当時、ハーバード大学の学長だったラリー・サマーズにザッカーバーグがアイデアを盗用したことを訴えたりしているが、学長はこれを一蹴している。


その後、土星/太陽期の後で、土星/月期が来て、土星/火星期と続いていくが、いずれもアンタルダシャーの月や火星が6、7室支配の土星から傷つけられている。


従って、この間、ずっとウィルクルボス兄弟の批判や訴訟に悩まされていたということが出来る。


決して、facebook草創期の物語は綺麗な物語ではないのである。


そして、2011年には、ウィルクルボス兄弟は、ザッカーバーグから和解金として6500万ドルを受け取っている。


因みにウィルクルボス兄弟は、この和解金の一部で、当時、120ドル程度だったビットコインを大量に購入し、現在、ウィルクルボス兄弟の資産総額は約8兆円を超えているようである。




この他、facebook制作時に1000ドルの出資とCFO(最高財務責任者)を依頼した友人エドゥアルド・サベリンは、制作当時、持ち株比率は、30%以上あったが、その後、投資会社を自分たちで見つけたザッカーバーグは、エドゥアルド・サベリンをCFOから降ろし、持ち株比率を0.03%まで希薄化させてしまう。


そのことで、エドゥアルド・サベリンから後に訴訟を起こされており、これもまた示談で解決している。


このようにfacebook草創期には色々な友人たちとの汚い争いがあったようである。


私は、2010年頃に出版された『フェイスブック 若き天才の野望』を読んで、おそらくザッカーバーグの3室は傷ついてる為、獅子座ラグナではないかと思ったものである。




因みにもう少し分かりやすい事象を見ていくと、ザッカーバーグは2012年5月19日にハーバード時代から交際している華僑出身のプリシラ・チャンと結婚している。


この時、土星/木星/金星期である。


マハダシャーの土星は7室の支配星で、アンタルダシャーの木星とプラティアンタルダシャーの金星は7室支配の土星からアスペクトを受けている。


ナヴァムシャを見ると、射手座ラグナで、土星は2室の支配星で4室に在住している。






アンタルダシャーの木星はラグナロードで、ナヴァムシャのラグナの支配星のダシャーの時期は、結婚のタイミングである。


ラグナロードは、7室から見た7室の支配星でもある。


またプラティアンタルダシャーの金星は結婚の表示体である。



また生物学的事実(biological fact)を見ていくと、第一子(Max)誕生は2015年12月で、水星/ケートゥ/太陽期、もしくは水星/ケートゥ/月期である。






サプタムシャ(D7)を見ると、水星は5室の支配星で、ケートゥ(ラーフ/ケートゥ軸)はラグナやラグナロードに絡んでおり、太陽は5室の支配星と相互アスペクトし、月も9室の支配星と相互アスペクトしている。


第二子(August)は、2017年8月に誕生しているが、水星/金星/火星である。


やはり、サプタムシャで、水星は5室の支配星で金星は9室の支配星で、火星は9室にアスペクトしている。



第一子誕生時は、土星が蠍座で逆行して、5室にアスペクトし、木星はラグナから5室にアスペクトしていた。


また第二子誕生時は、土星は射手座5室を通過し、木星は乙女座で逆行して5室にアスペクトしていた。


従って、いずれも5室にダブルトランジットが成立している。




因みに何故、今回、マーク・ザッカーバーグは、Facebookユーザーのデータの不正利用の管理責任を問われ、米上院公聴会という大舞台に呼び出されて、激しい詰問を浴びて、謝罪の一大イベントの主役として、注目を浴びたのかということである。


米公聴会が行われた2018年4月10日と11日のダシャーは、水星/金星/木星期である。



マハダシャーの水星は6室支配の土星からアスペクトされ、アンタルダシャーの金星も6室支配の土星からアスペクトされ、プラティアンタルダシャーの木星も6室支配の土星からアスペクトされている。


従って、マハダシャー、アンタルダシャー、プラティアンタルダシャーが6室支配の土星から傷つけられている為である。


その他、12室支配の月や、4、9室支配の火星からのアスペクトも受けて傷つけられている。


ナヴァムシャでも水星は6室に在住し、金星は6室の支配星で、木星は2、3室支配の土星からアスペクトされている。






出生図で、アンタルダシャーの金星は、3、10室の支配星である。


従って、今、世間的にスターのように注目を浴びる時期であるのだが、その3、10室支配の金星は6室支配の土星から激しく傷つけられている。


従って、スターのように注目を浴びたが、世間から批判を受けたのである。


但し、この3、10室支配の金星は4、9室支配のヨーガカラカの火星と星座交換し、5室支配で自室に在住する強い木星からアスペクトを受けて、強い吉意を発揮している。


金星と火星が星座交換によって、9-10のダルマカルマラージャヨーガを形成し、3-9の星座交換を生じており、facebookを創始したザッカーバーグの活動は常に教育的、慈善的、啓蒙的な目的を持っている。


特に人々がつながる社会というものをイメージしており、人々の新しいネットワークの文化を創りだしたということが出来る。



現在、トランジットの土星は、2018年4月17日から射手座で逆行を始めたが、土星は一つ前の蠍座から10室にアスペクトし、木星は天秤座から10室の支配星にアスペクトしている。

その為、現在、注目を浴びていると言える。


また蠍座から6室にアスペクトし、木星はザッカーバーグにとっていわく付の3室をトランジットしている。



3室は上述したようにSNS制作過程での様々なトラブルを生み出したハウスであり、6室支配の土星が在住している。


従って、6室にもダブルトランジットが生じている。



従って、現在、マーク・ザッカーバーグは10室と6室にダブルトランジットが生じているのである。



この場合、6室と10室を合成したような象意が生じる時期である。




従って、マークザッカーバーグのラグナは獅子座ラグナで間違いないことが分かる。



astrotheme.comが示すPM14:39 という出生時間はどこから入手したのか分からないが正しいようである。




因みにザッカーバーグは、米公聴会での詰問が行われた現在、水星/金星/木星期だが、アンタルダシャーの金星は、牡羊座のバラニーに在住している。




マーク・ザッカーバーグは20億人のユーザーの個人情報を有する超巨大SNSを作り上げてしまったが、これは水瓶座の象意である監視社会の問題、全体主義の問題も喚起しているのである。

牡羊座のバラニーは、ヒトラーのラグナロードが在住していたナクシャトラであるが、独裁や全体主義と関係がある。



この20億人のユーザの個人情報をどのようにでも扱える巨大な権限を持ってしまったマーク・ザッカーバーグの立場に対して、天秤座で高揚する6室支配の土星が、リベラルの立場(共同体主義)から、ユーザーの個人情報の保護に対する責任も持つのは、連邦政府ではないのかとの疑問が呈されたのである。


これに対して、ザッカーバーグは、自分個人に責任がある旨(独裁主義、ヒーローイズム)を回答したのである。


巨大な全人類の個人情報のデータベースが構築された時、それに対するアクセス権や管理権限は誰が持つのか、プライバシーはどのように守られるのかという問題提起なのである。


然し、昨今の世界の右翼的傾向や独裁者が台頭している流れで、ザッカーバーグは自分個人に責任がある旨を回答したが、20億人の個人データを管理できる絶対的な立場に立っていること自体が牡羊座(独裁)の象意である。


結局、米連邦政府に移管されたとしても、連邦政府を金で支配する支配者階級が、それを手にすることになる為、ザッカーバーグがきちんと管理すればそれでいいのであるが、しかし、ザッカーバーグがそもそもハーバード大学で、大学のサーバーにハッキングして、女子学生の写真を取得し、女子学生の顔の格付けサイト「Facemash」を起ち上げたこと自体が、牡羊座のバラニーを体現していると思わざるを得ない。


ウィルクルボス兄弟からSNSの制作依頼を引き受けながら接触を巧みに避けて、自らのfacebookを完成させたというのも牡羊座らしいエピソードである。


やり方が剛腕で、ストレートであり、牡羊座的である。



それで、20億人が居住するソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を構築してしまったのである。



もしザッカーバーグが、その大量の個人情報を怪しげな企業に不正利用させることを許したとすれば、ザッカーバーグの独裁が間違っているということになる。



今回は、ザッカーバーグは謝罪によって、難を免れたが、この問題は今後も継続していく問題である。



ザッカーバーグが退いた後、その巨大SNS上に存在する情報は誰がアクセスでき、管理するのかというのは、重大な問題であり、悪意のある資本家の手に渡れば、それは人々を支配することにいかようにでも悪用できる。



今回、5,000万人分ものFacebookユーザーのデータが選挙対策に不正利用されたというのは、監視社会、全体主義の問題を提起している。



2010年~2012年にアラブの春が起こり、その時にfacebookで人々は情報交換し、デモに参加したが、そうしたリベラルな人々の独裁者への闘争に使用されたツールでもある。


またCIAやNSAなどの米国の諜報機関が、SNS上の人間関係などを全て把握できるようなPrismというシステムを既に所有していることなどもそうした問題に含まれる。


CIAなどがfacebook上で、様々な諜報活動を展開しているのである。


つまり、ザッカーバーグは、CIAやNSAが作りたかったものを作ってしまったのである。



そうしたこともリベラルを表わす天秤座で6室支配の土星が高揚し、3、10室支配で牡羊座のバラニーに在住する金星と相互アスペクトする象意が出ているものとして、非常に興味深い。



最近、facebookを使うのを止めたことを公言する有名人が相次いでいるが、これはリベラル派の立場からのマークザッカーバーグや独裁主義や全体主義、監視社会に対する批判なのである。


例えば、facebookは誰かの誕生日が来ると、「〇〇さんの誕生日なので祝いましょう」などと言ったメッセージを送って来るが、あたかもfacebookの設計者から友人知人の誕生日を祝うことを方向づけられ、強制されているかのようである。


知らず知らずのうちにfacebookの設計者の誘導する方向に行動するように仕向けられているのである。


また人は競って、facebookに自らの日常生活の写真を投稿するようになっている。


facebookに投稿する為にわざわざ業者にお金を払って、パーティーなど架空のイベントをでっち上げる人も出てくる始末である。


つまり、そこまでして、他人に自分の日常生活が充実していることをアピールしているのである。


facebookは他人からの承認を受けたいという大衆の欲求を表現するプラットフォームを提供し、新しい文化や習慣を創り出し、人々はそれに知らず知らずのうちに従っているのである。





(参考資料)



ザッカーバーグ「完璧すぎる謝罪」の舞台裏
日米企業トップの「コミュ力格差」は絶望的だ
2018年04月16日 東洋経済ONLINE

巨大なソーシャルネットワークサービス、フェイスブックのユーザーデータ流用・流出問題について、マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が4月10日と11日、2日間にわたって米議会の公聴会で証言台に上った。

数千万人分のデータ流出というフェイスブックにとって最大の不祥事を受けて開かれた公聴会は、延べ10時間、100人から600の質問を受けるというまさに「千本ノック」状態。この難局をザッカーバーグ氏は、究極の「謝罪力」で乗り切った。強靭なメンタルリフレックス(反射力)を養ったのは、星飛雄馬並みの血のにじむ準備と練習だ。

今回は隔週連載の番外編。その「演技」の裏側を読み解き、リーダーを目指す人ならば知っておきたい「超一流の謝罪」の作法について解説してみよう。

議員のとんちんかんな質問にも真顔で対応

ネットなどで中継されたこの公聴会、筆者もところどころ視聴したが、ちょっとしたエンターテインメント並みの面白さであった。何が笑えたかと言うと、議員のとんちんかんな質問に33歳のザッカーバーグ氏が「おい、まじかよ」「なんでこんなことも知らないのかよ」という顔を見せずに、取り繕ったまじめな顔で答えているところだ。

日本の国会もびっくりするほど、高齢化が進んでいるらしいアメリカ議会。質問者の平均年齢は62歳で、コアメンバーの平均年齢は80歳近いというシルバー集団に対峙するザッカーバーグ氏はまさに孫ほどの年齢。自分の祖父や祖母ほどの年齢の人に、スマホの使い方を懇切丁寧に解説している携帯ショップの店員のようなものだ。

たとえば、こんな質問が飛び出した。「(チャットアプリ)WhatsApp上でeメールしたら、その情報は広告主に伝わるのか?」「ツイッターとフェイスブックは同じようなもんか?」「ユーザーがおカネを支払わないのに、一体どうやってビジネスが成り立っているのか?」「うちの息子はインスタグラムに夢中でね~」「うちの選挙区に高速インターネット回線を持ってきてくれないか」などなど。

テクノロジーを知らない素人に対して、わかりやすい言葉で説明することが苦手と言われるシリコンバレー界隈の若手経営者だが、ザッカーバーグ氏は、いらだつこともなく、忍耐強く、敬意を持って、わかりやすい言葉での丁寧な説明に終始した。

この公聴会のシステムとして、一人5分の持ち時間で、次々と質問者が変わっていくものだったために、一人の質問者がどんどんと掘り下げていって追い詰めるという形にはならなかったこともザッカーバーグ氏には幸いした。結果的に、議員側のテクノロジーに対する知識の浅さが露呈する格好となった。

ザッカーバーグ氏といえば、お決まりのTシャツやパーカがトレードマークだ。Tシャツといっても、Brunello Cucinelliというイタリアンブランドで1枚295ドルもする代物らしいが、今回はそういったカジュアルな服を封印し、濃紺のスーツとフェイスブックカラーの青いネクタイで清潔感や礼儀を示した。

実は、ザッカーバーグ氏は8年前、WSJ主催のあるコンファレンスで、想定していなかった質問を受けて、大量の汗をかき、聴衆の面前で、パーカを脱ぐという恥ずかしい経験をしている。このときの動画(問題のシーンは14分50秒のところから)を見ると、ザッカーバーグ氏はものすごい早口で、口ごもりがち。声も高く、いかにも西海岸のテックベンチャーの兄ちゃんといった語り口で、今回の公聴会における落ち着きとはまさに天と地の差だ。

あらゆる角度からの質問を想定

この証言に向けて、ザッカーバーグ氏とその周囲の側近たちは膨大な時間を費やし、準備を進めたといわれている。社内スタッフと危機コミュニケーションの専門会社、弁護士、ブッシュ元大統領の側近なども含めて約500人で対応チームを結成し、緻密な戦略を練った。その過程で、ザッカーバーグ氏も何度も想定質問に対する回答の練習を重ねたのだろう。成果は、如実に表れていた。

企業の危機管理コミュニケーションのコンサルティングに携わる筆者にとって、興味深かったのは、フェイスブックが用意した想定問答集の中身だった。油断をしていたのだろうか、ザッカーバーグ氏が机に置いたまま休憩に入ってしまったため、カメラマンによってその内容が写真に収められてしまったのだ。

「責任をとって辞任するのか」「アップルがフェイスブックを批判していることについて」など想定される質問とその答え方が箇条書きでリスト化されたもので、まさに「千本ノック」に耐えられるように、あらゆる角度からの質問を想定し、準備していたことが浮かび上がった。

このように、微に入り細を穿つ準備の結果、完璧な謝罪に必要な5つの要素「謝罪」「現状説明」「原因」「責任」「再発防止策」をきっちりと盛り込んだ完成形が生まれた。

特に「謝罪」はアメリカ企業にしては随分と潔い印象を受けた。日本の企業はちょっとした不祥事で頭を下げ、謝るが、欧米の企業はあまり簡単に謝罪はしない。今回、ザッカーバーグ氏は「われわれはしっかりとした責任をとらなかった。それは大きな間違いだった。私の間違いだった。本当に申し訳ないと思っている。私がフェイスブックを始め、私が舵を取り、私がいま起こっていることのすべての責任を担っている」と、I’m sorry という強い言葉で自らの非を認めた。こうした謝罪は全体で40回にも上った。

果たすべき役割はきっちりと果たした 一方で、話せないことについては、「調べて後ほど、フォローアップさせていただきます」を連呼、きわどい追及を上手にかわした。結果的に、「公聴会といういわば、『ボクシングのショー』のような舞台において、ザッカーバーグ氏は果たすべき役割はきっちりと果たした」(米危機管理コンサルタント リチャード・リービック氏)。

新たな規制や不祥事の可能性など、今後もまったく楽観視はできないが、とりあえず、「超絶」危機管理コミュニケーション力によって、第一の関門は乗り越えた。

このように、企業が危機を乗り越えるか否かはトップのコミュ力に大きく依存する。そういった視点で日本企業を見たときに、まだまだ心もとないと感じる企業も少なくない。

直近の事例で言えば、仮想通貨取引所のコインチェックが見せた危機対応だろう。

フェイスブックと比べるのは企業規模から見ても「お門違い」と言われそうだし、もちろん、日本企業の中でも、強いリーダーシップでグリップを利かせる優良企業もあるのだが、ここは象徴的な事例ということであえて、取りあげさせていただきたい。

筆者の知人の記者が、最近、最もひどい会見対応の例として挙げたのが、このコインチェックだった。質問に対し、答えを口ごもる、登壇者のちぐはぐなやり取り等、まったくもって説明能力のないトップによる受け答えはまさに幼稚園レベル。そもそも、「会社として何のために存在するのか」「社会にどう貢献していくのか」という「ミッション」についての言及も一切ない、薄っぺらい会見だったことに心からがっかりしたという。

日本の企業は「What」を重視しすぎ

これは、海外の企業と比較したときに強く感じることだが、日本の企業は“What”重視型だ。「何」を売る、「こういうサービス」を提供する、というファクトをアピールする。一方、アメリカなどでは、「社会を、世界をこういうふうに変えたい」という存在意義をアピールする”Why”重視型が多い。特に日本のベンチャーなどには、こういったマクロの視点がすっぽり抜け落ちている場合があり、コインチェックもその例にもれなかった。

「ベンチャーだから」という言い訳はあるかもしれない。ただ、問題は、何億円という巨額の資金を安易にテレビ広告などに投じていながら、地道な説明責任、危機管理施策を一切放棄してきたという点にある。最近、知名度のないベンチャー企業が集めた資金をテレビ広告などにあて、認知拡大を短兵急に図ろうとするケースが非常に多いが、その陰で、最も重要なトップのコミュニケーションの努力はおざなりになっている。

筆者は新聞記者時代、まだ勃興期の楽天や成長途上のソフトバンクの取材にあたっていたが、彼らが黎明期に派手な広告を打ったという話は聞いたことはなかった。一流の企業は広告だけで大きくなることはない。地道にトップが前面に出て、説明責任を果たし、実績を積み重ね、一歩一歩着実に信用を獲得していくこと。まずはここが立脚点であろう。

リーダーはコミュ力ありきである。社員の士気を鼓舞し、ファンを増やし、社会の信頼を獲得する。リーダーとして必要なすべての資質はコミュ力を要するものである。その鍛錬をおざなりにして、企業の成長などありえない。
参照元:ザッカーバーグ「完璧すぎる謝罪」の舞台裏
日米企業トップの「コミュ力格差」は絶望的だ
2018年04月16日 東洋経済ONLINE

ザッカーバーグの「5日間の沈黙」は、Facebookに取り返しのつかないダメージを与えた
2018.03.26 MON 07:00 WIRED

TEXT BY JESSI HEMPEL
EDITED BY CHIHIRO OKA

Facebookユーザー約5,000万人分のデータが選挙コンサルティング会社のケンブリッジ・アナリティカに流出していた問題は、フェイスブックに重大な危機をもたらした。CEOのマーク・ザッカーバーグが問題発覚から5日間も沈黙を続けたことは、これまで成長の前提だったユーザーとザッカーバーグとの「親密な関係」を崩してしまった。ザッカーバーグとフェイスブックは、いかに信頼を取り戻すべきなのか。

「わたしがFacebookを始めました。そして、このわたしたちのプラットフォームで起きることは、最終的にはわたしの責任です」──。

フェイスブックの最高経営責任者(CEO)であるマーク・ザッカーバーグは、自社データの不正利用についてこのように述べた。937語に上る声明は、事件の第一報が流れてから5日が経った3月21日の午後、Facebookのザッカーバーグのページに掲載された。彼はここで、データ保護のためにやってきたことや今後の取り組みについて語っている。

関連記事:個人データの不正利用について、ザッカーバーグの声明文から見えてきたこと

ただ事件への対応を進める一方で、根本的な問題はそのままである。ザッカーバーグが詫びたときには、すでに手遅れだったのだ。

この5日間に起きたことは、フェイスブックにこれまでで最大の危機をもたらした。しかし過去のどのネガティヴなニュースよりも大きなダメージとなったのは、ザッカーバーグの沈黙だろう。

大企業とは「自分たちは違う」という態度

たいていの企業では、これほど壊滅的な事態は生じない。しかし、「フォーチュン500」に選ばれるような大企業なら危機管理マニュアルのようなものがあり、何か不都合が起きたときはそこに書かれた筋書きに従うことになっている。まず、広報担当者が問題を調査すると明言し、法務部が細心の注意を払って作成した声明がCEOの名前で出される。

状況がかなり深刻な場合、誰かが辞任するかクビになる。そして悪者とされる人物が責任をとると、残りの者は無傷で事態は沈静化するというわけだ。こうした芝居じみた一連の行動が、企業の説明責任に関して社会的に受け入れられる一般的なアプローチとみなされている。

しかしフェイスブックは、自分たちは違うという態度をとり続けていた。例えば、フォルクスワーゲンのような自動車メーカーやBPのような石油メジャーといった大企業とは異なり、もっと親しみやすい個人向けのサーヴィス企業というイメージ戦略でやってきたのだ。

結局のところフェイスブックが売りにしていたのは、人と人との間にある「親密な関係」だ。Facebookは個人が自分の考えや意見を表明し、友人や家族と気持ちを通い合わせる場として存在しようとしていた。

Facebookなら信じられるし、わたしたちを信じて欲しい! ここにはあなたの友達がいる! そしてみんなの一番の友人ザッカーバーグは、フェイスブックがやろうとしていることとその理由を、いつでも喜んで語ってくれる──というわけだ。

Facebookの「顔」としてのザッカーバーグ

昨年までは、この戦略こそザッカーバーグの重要な資産だった。インターネットが普及して10年が経ったころ、彼は誰よりも早く、人々はこれからは企業よりも個人を信じるようになると気づいていた。従って、21世紀のビジネスは個人を装ったかたちでやるのがいいと直観的に理解していたのだ。ザッカーバーグは昨年、『ブルームバーグ・ビジネスウィーク』のインタヴューで、「人々は組織や団体ではなく、人を信頼しているのです」と話している。

彼のビジネスは、この変化を後押ししてきた。Facebookでは人が尊重され、組織は二の次だ。まずは個人という核があり、互いに結びついて情報を広めていく。組織は“ページ”を与えられ、個人はそれを「いいね!」したり共有したり、あるいは単に無視したりすることもできる。

Facebookの社会的役割は、これまでは組織や企業が担ってきた活動を個人に移行することだ。つまり、お勧めのニュース記事を見せたり、休暇に行くのによさそうな場所を探したり、双子用のベビーカーで一番人気の製品を見つけたりできるのだ。

ザッカーバーグはFacebookがこの移行の過程で成功するには、組織の代弁者となる個人が必要だと考えていた。プラットフォームを代表して声を上げるが、同時にユーザーが親しみを感じられるような誰かだ。そしてこの役に適任なのは、ザッカーバーグ本人だった。

Facebookが大学生が冗談を言い合うだけの場所から、世界的なコミュニケーションプラットフォームへと成長するにつれ、彼は疑似政治家のように振る舞い始めた。国連総会で演説し、社会問題の解決を目的として自らが設立した慈善団体に何十億ドルも寄付する。

昨年はカメラマンを引き連れ、全米50州の行脚[日本語版記事]をやってのけた。こうした活動はすべて自身のFacebookアカウントで報告し、ほかにも妻と一緒にユダヤ教の祭りで食べる伝統菓子を焼いたり、家族と中国の旧正月を祝う写真を載せたりもした。

ユーザーとの「親密な関係」のほころび

フェイスブックにはザッカーバーグのアカウントをチェックし投稿を代筆するプロの専門チームがあり、こうしてつくり上げられたプロフィールは1億500万人以上のフォロワーがいる(ついでに言っておくと、これはNetflixの登録者数に迫る数だ)。

この戦略は初めはうまくいった。Facebookのユーザーは、ザッカーバーグのように名門私立大学の学生や卒業生で、デートの相手を探したり、酔っ払った自分の写真を投稿したりといった目的でこのプラットフォームを利用していた。

問題は比較的限られており、新しいサーヴィスの導入の仕方がまずかったり、個人情報の取り扱いに関して懸念が出たりするなど、運営側とユーザーに対立が生じたときはザッカーバーグ自身が彼らに直接語りかけることができた。

ザッカーバーグの初期の声明で覚えているのは、06年9月にNews Feedを導入したときのものだ。それは「わたしたちが間違っていました」という出だしだった。彼は釈明し、忍耐を求め、解決策を提案した。

このやり方は彼が問題に対処する際の基本姿勢となり、たいていは機能した。ユーザーはサッカーバーグ(つまりはフェイスブックだが)を許し、提供されるサーヴィスの利用を続けた。

しかし、この1年でほころびが出てきた。友人であるはずのザッカーバーグに、わたしたちに話していないことがあったのだ。『WIRED』US版の2018年2月号は打ちのめされたザッカーバーグの顔を表紙に使い、フェイクニュースと個人情報の問題を前に必死の努力を続けるフェイスブックをとり上げた。

ザッカーバーグは信用できるのか?

そしていま、同社が過去数年にわたり第三者が大量の個人データにアクセスするのを許していただけでなく、そのデータがどのように使われるのかほとんど監視しておらず、悪用が発覚したあとも対応が遅れたことが明らかになっている。

こうした事実によって、フェイスブックが常に重視してきた「オープンであること」がもたらした難題にどう対処していくかについての困難な状況が浮き彫りになった。同時に、フェイスブックはユーザーを守るためにどの程度のことをしてくれるのか、という疑問も生じる。

そして同社が過去に情報を隠蔽していた可能性があることが示されたいま、わたしたちは「マーク・ザッカーバーグを信用できるのか」と問わざるを得ない。

フェイスブックにとっては存続の危機だ。なぜなら、人々に組織より個人を信じるよう仕向けるのは大変なことだからだ。人間は気まぐれで、期待通りには動いてくれない。何かあると連絡してこなくなる。相手が自分が思っていたような人間ではなかったと気づくと、すぐに落胆して離れていってしまう。

つまり、ザッカーバーグが人々に自分の会社は大丈夫だと信じさせるには、彼自身が信頼を取り戻さなければならないのだ。それが前に進む唯一の方法である。

求められる「無限の努力」

この5日間、政府関係者はザッカーバーグに議会で証言するよう圧力をかけ、メディアは釈明を求めた。フェイスブックのスタッフはTwitterやFacebookまで総動員して自社を擁護しようと懸命な努力を続けたが、そこにボスは不在だった。ザッカーバーグは20日午後に開かれた社内ミーティングにも姿を現さなかった。

そして翌日、Facebookへの投稿というかたちでようやく問題を認め、テレビのインタヴューに応じると表明した。30分も経たないうちに、投稿には3,100件のコメントが付いた。

次のようなコメントもあった。「つまりこんなとんでもないことが起きていると何年も前から知っていたのに、秘密がばれたから、これがあんたの反応だっていうわけ? 最低だな。絶対に議会で証言させるべきだ」

キッチンでお菓子をつくっているチャーミングな写真だけでは、これから襲いかかってくるであろう規制当局をなだめることはできないだろう。そしてユーザーの信頼を取り戻すには、「親密な関係」を再構築するための無限の努力が必要になる。
参照元:ザッカーバーグの「5日間の沈黙」は、Facebookに取り返しのつかないダメージを与えた
2018.03.26 MON 07:00 WIRED

ザッカーバーグの公聴会後、フェイスブック本社が「安堵の空気」に包まれた理由
2018.04.16 MON 18:00 WIRED

TEXT BY NICHOLAS THOMPSON
EDITED BY CHIHIRO OKA

フェイスブックのCEOであるマーク・ザッカーバーグに対する米上院公聴会が2日間にわたって開かれた。ザッカーバーグが手練れの議員たちに詰問される様子を生中継で見ていた本社の社員たちは、意外なことに「安堵の空気」に包まれていった。いったいなぜなのか。『WIRED』US版編集長のニコラス・トンプソンが解説する。

2日間にわたって行われた、マーク・ザッカーバーグへの公聴会。その初日が始まってから2時間あまり(つまり全体の2割ほど)が過ぎたときのことだ。上院議員のジョン・コーニン(テキサス州選出、共和党)が、Facebookのアカウントを抹消したユーザーのデータはどうなるのかを質問した。

質問に対するザッカーバーグの答えは、「データは消去される」というものだった。しかしコーニンは、「フェイスブックが契約した第三者はどうでしょう。こうしたデータから得られる情報を広告に利用しようとする人々です」と続けた。

ザッカーバーグはイライラさせられたことだろう。これまでに何度も繰り返して来たように、フェイスブックは広告主にデータは売らない。第三者がそのデータを使ってターゲティング広告を打てる製品を開発し、フェイスブックの競合になる恐れがあるからだ。

そこで彼は再び根気よく、自社のビジネスモデルを説明した。「広告主にデータは渡しません。フェイスブックは誰にもデータは売らないのです」

「Facebookが何か」を理解していない議員たち

カリフォルニア州メンローパークのフェイスブック本社では、公聴会を前に緊張が続いていた。何週間にもわたって問題ばかり起きていたからだ。株価は暴落し、ザッカーバーグは議会に呼ばれた。カリスマ的でも、取り立てて機転が利くわけでもない最高経営責任者(CEO)が、プロの議員たちの追求を受けるのだ。

社員たちの心境をたとえて言えば、張り詰めた空気の漂う結婚式で、花嫁の父親がワイングラスを片手にマイクの前に立ち、乾杯の音頭をとるのを見つめるようなものだ。大丈夫だろうか。うまくいくはずだ。しかし、大惨事が起こる可能性もある。

公聴会の開催中にコメントを求められたフェイスブックの社員たちは、それでも口を揃えて、本社は落ち着きを取り戻し始めたと話している。理由はいくつかあるだろうが、まず初日の上院合同公聴会では、議員たちの多くがFacebookのことをまったく理解していない事実が露呈していた。

フェイスブックのある役員は、「個人的には、議員たちがこれほどまでに準備不足だとは思いませんでした」と言う。「彼らは状況を理解しておらず、質問はひどくちぐはぐでした。わたしたちは過ちを犯したが、議員たちはそれについてよく知らないのだということが分かったのです」

司法委員会委員長のチャック・グラスリー(アイオワ州選出、共和党)がしたのだという質問が、ミームとなって社内に拡散した。「少し前に手にした雑誌に『America On-Line』[編註:大手インターネットプロヴァイダーであるAOLの旧サーヴィス名]とかいうものが30時間無料で試せるというフロッピーディスクが付いていたのですが、これはFacebookと同じものですか?」

社内の空気が「完全に変わった」瞬間

コーニンの質問が終わると、ジョン・スーン(サウスダコタ州選出、共和党)が休憩を入れるべきか尋ねた。スーンは商務・科学・運輸委員会の委員長で、この場にいる議員たちのなかではフェイスブックに大きな影響力をもっているとされる。そして、噛み付き方も相当きついはずだ。しかし、ザッカーバーグは「大丈夫です、続けましょう」と答えた。まだ余裕があるということだ。

フェイスブック本社でテレビ中継を見ていたスタッフから歓声が上がった。その場に居合わせたひとりは、「まるで魔法のようでした」と語る。役員たちの集まる別のエリアでは笑い声も聞かれた。うまくいったのだ。とんでもないことなど起こらない。一方、ここしばらくで初めて上昇に転じた株価にも注目が集まっていた。

直後に、ディーン・ヘラー(ネヴァダ州選出、共和党)が答えにくい質問をした。「あなたは何百万人ものアメリカ国民の個人データに対して、自分に連邦政府よりも大きな責任があると思いますか?」

「難しい質問です」と言って逃げればよかったし、何か愛国的なセリフを口にして適当にごまかすこともできた。しかし、ザッカーバーグはシンプルに「はい」とだけ答えた。そして一呼吸置いてから、ほかのことを話し始めた。

本当に素晴らしい瞬間だったと、フェイスブックの別の社員は言う。「社内の空気が完全に変わったんです」

批判や嘲笑に動じなかったザッカーバーグ

もちろん、すべての人が感心していたわけではない。「ニューヨーク・ポスト」は、彼を「ソーシャルばか(The Social Nitwit)」と呼んだ。「TEDカンファレンス」でも、Facebookが繰り返し叩かれた。「仮想現実(VR)の父」と呼ばれるジャロン・ラニアーは、「この問題を解決しなければ人類は滅亡するだろう」とまで言っている。

ザッカーバーグは背の低さをカヴァーするために、椅子の上に厚いクッションを置いているとからかったツイートもあった。また、生のフェイスブックCEOを初めて見た人たちは、まるでヒューマノイドのようだと思ったらしい。コメディアンのトレヴァー・ノアは、公聴会に出たのは「絶対にロボットだ」と主張した。ジミー・キンメルは「本当の人間みたいに笑ってたよね」とちゃかしている。

しかし、ザッカーバーグがこうしたつまらない嘲笑やジョークに動じることはなかった。フェイスブックの株価はもち直し、時価総額は公聴会の間だけで170億ドルも上昇した。自身の保有株の価値は25億ドル増えた計算だ。

またある意味では、彼にとって公聴会で最も重要なのは、社員の動揺を取り除くことだった。ここ数週間、フェイスブックで働くことは、2008年のゴールドマン・サックスで仕事をするのと同じようなことになっていた。

同社にとって最大の課題は、スタッフをつなぎ留めることにあった。何十億ドルもの収益を出し、屋上ではコンブチャが飲めるような素晴らしい企業でも、シリコンヴァレーでの技術者の奪い合いは熾烈だ。フェイスブックの力は弱まりつつあり、奇襲をかけるのは簡単そうに見えた。ツイッターで「ついに自由だ」と離職したことを誇らしげに発表するエンジニアまでいた。

社員の士気が尺度だとすれば、上院公聴会は成功だった。オリン・ハッチ(ユタ州選出、共和党)は、Facebookにサブスクリプションモデルがないのはなぜかと質問した。ザッカーバーグは注意深く丁寧に答えたが、ハッチは「だとすれば、ユーザーがサーヴィスに対価を支払わないビジネスをどう維持しているのですか」と食い下がった。

ザッカーバーグはこれに対し、「上院議員、広告です」と辛抱強く笑顔で繰り返した。メンローパークでは、この文句が冗談のネタになり、スタッフたちは会議で「上院議員、広告です」と言い合ったのだ。

広告モデルへの回答に詰まったCEO

もちろん完璧だったというわけではなく、フェイスブックの従業員たちですら理解に苦しむ場面もあった。具体的には、ザッカーバーグは広告ビジネスについて答えに詰まることが多かった。

例えばロイ・ブラント(ミズーリ州選出、共和党)からの質問では、フェイスブックがユーザーの行動をオンラインだけでなくオフラインでも追跡しているのかを、明確にできなかった。なお、ブラントはケンブリッジ・アナリティカの顧客でもあったが、ザッカーバーグはこれを指摘することは控えている。またユーザーから収集しているデータの詳細についても、正確に答えられなかった。

ザッカーバーグは最終的に、43の質問について確認してから回答すると約束したが、なかでも単純な質問はその多くが広告ビジネスの詳細に関するものだった。

テレビ中継されている公聴会で、自社のデータ収集について細かい話をしたくなかったのかもしれない。しかしフェイスブック内部では、CEOは本当に答えを知らないのだという見方が強かった。

なぜだろう? 社内では以前から知られていたことだが、ザッカーバーグはビジネスそのものより、製品や技術的なことに強い関心を抱いている。彼のスピーチライターだったキャサリン・ロッシは、「ザッカーバーグはよくやったと思う」としたうえで、フェイスブックの収益の根幹をなす事業に関する知識のなさには驚きを隠せないようだった。「彼は純粋に広告ビジネスには興味がないのだと思います」

フェイスブックが抱えるほかのいくつかの問題にも、満足のいく回答は示されなかった。例えば、ザッカーバーグはFacebookにおけるロシアの政府系機関の活動について、正確な情報を提示できなかった(議員たちも適切な質問をしなかった)。

メンローパークを包んだ「幸せな空気」

この先、ケンブリッジ・アナリティカとロシアの介入という2つの問題が、どこかでつながる可能性は大いにある。そうなれば、フェイスブックは過去数週間の混乱よりも、さらにひどい状況に追い込まれるだろう。簡単に言えば、Facebookを信頼するユーザーのデータ(と下手をすればプライヴェートメッセージまで)が、大統領選の操作を試みた敵対国の手に落ちていたということだ。

フェイスブックは11年に連邦取引委員会(FTC)とプライヴァシーを巡る問題で和解し、個人情報の扱いに関する説明で誤解を招くような表現を使わないことなどを義務づけられた。今回、ケンブリッジ・アナリティカによるデータ収集が明らかになったあとも、ユーザーデータを守るために適切な措置をとっていなかったとすれば、この和解への違反に相当するのではないかという問題がある。

この問題はまだ調査中だが、違反が認められた場合、数十億ドルの罰金が科される可能性もある。

それでもメンローパークは、幸せな空気に包まれていた。公聴会翌日の12日には、最高執行責任者(COO)のシェリル・サンドバーグが全社員を対象に質疑応答セッションを行う予定だったが、実際に質問に答えたのはワシントンD.C.から戻ったばかりのザッカーバーグ本人だった。スタッフのひとりは、「まるでマークが主役のフェスのようでした」と話している。
参照元:ザッカーバーグの公聴会後、フェイスブック本社が「安堵の空気」に包まれた理由
2018.04.16 MON 18:00 WIRED

Facebookの個人データの不正利用について、ようやくザッカーバーグが重い口を開いた
2018.03.23 FRI 06:00 WIRED

TEXT BY ISSIE LAPOWSKY

政治・選挙関連データ分析企業のケンブリッジ・アナリティカが、5,000万人分ものFacebookユーザーのデータを不正利用した問題が波紋を広げている。事件報道から5日たっ てようやく公式コメントをFacebookに投稿したマーク・ザッカーバーグだったが、後手に回った代償は大きい。その公式コメントの内容と、見えてきた問題の本質について考 察する。

政治・選挙関連データ分析企業のケンブリッジ・アナリティカが行ったとされる5,000万人分ものFacebookのユーザーデータの不正利用について、最高経営責任者(CEO)のマ ーク・ザッカーバーグが何日もの沈黙を経て、ついに重い口を開いた。

ザッカーバーグは3月21日(米国時間)にFacebookに投稿し、ユーザーのデータを保護するフェイスブックの能力と、その欠如を巡る深刻なスキャンダルを認識していること を明確にした。彼はまた、ユーザーのデータを保護するためにFacebookを改良することについても発表した。この改良は、『ニューヨーク・タイムズ』と『ガーディアン』、 そして『オブザーヴァー』の3紙によるケンブリッジ・アナリティカに関する報道を受けたものである。

情報流出の責任を認めたザッカーバーグ

ケンブリッジ・アナリティカは、2016年の米大統領選でトランプ大統領を支えた企業である。その協力企業である英国のSCLが、Facebookユーザーのデータをケンブリッジ大 学の研究者経由で入手していた。このデータは、2015年に破棄するというフェイスブックとの取り決めにもかかわらず、そのまま保持されていたものだった。

20日の火曜日(米国時間)、フェイスブックの時価総額は500億ドル(約5.27兆円)近く下落した。また、ザッカーバーグをワシントンに招致して証言させようと、複数の連 邦議会議員たちが声を強めた。

このスキャンダルへの反応に、なぜ5日間も要したのかについて、ザッカーバーグは触れなかった。だが、彼は「Facebookと、安全にデータをFacebookで共有できると期待し ていたユーザーとの相互信頼の破綻」について、自社の責任を認めた。

「わたしがFacebookを始めました。そして、このわたしたちのプラットフォームで起きることは、最終的にはわたしの責任です」と、ザッカーバーグは記している。「わたし たちのコミュニティを守るために必要なことに、真剣に取り組んでいます。ケンブリッジ・アナリティカ関連で起きた問題は、新しいアプリではもう起こり得ません。ですが 、過去に起きてしまったことは変えようがありません」

ダメージ軽減のいくつかの手

ケンブリッジ大学の研究者が使ったのと同じ方法で大量の情報にアクセスできるFacebookアプリすべてを、フェイスブックは監査する計画であることをザッカーバーグは発表 した。Facebookは監査に応じないアプリをアクセス禁止にする予定である。

「個人を特定できる情報を悪用しているデヴェロッパーを見つけた場合、アクセス禁止措置をとり、そのアプリで被害を受けた人たちすべてにお知らせします」と、ザッカー バーグは述べている。そして被害を受けた人たちには、ケンブリッジ・アナリティカにデータを漏洩されてしまった人たちも含まれると彼は付け加えた。

データを悪用されてしまった人々に、どの程度の詳細な説明がなされるのか。また、フェイスブックがそうした人々に一体どのように告知するのかは明らかではない。

フェイスブックはまた、ユーザーデータの利用を制限する計画についても発表した。例えばアプリ開発者は、自社のアプリを直近の3カ月間使用していないユーザーのデータ へのアクセスを禁じられる。今後フェイスブックは、ユーザーの名前、プロフィール、写真、電子メールアドレスだけを、契約を交わしたアプリ開発者に送るにとどめる。

ユーザーの投稿やそのほかのデータにアクセスするには、開発者はユーザーからの同意と、フェイスブックとのさらなる契約が必要になる。そしてフェイスブックは独自ツー ルを開発し、どのアプリが自身のデータにアクセスしているのかを、ユーザーが容易に視覚的に知ることができるようにする。

5,000万人分の個人データが漏洩

ダメージ軽減のためにいくつかの手を打ったものの、ケンブリッジ・アナリティカが行ったとされる悪事によってもたらされた危機は、フェイスブックのリーダーシップに打 撃を与えた。3月16日(米国時間)の夜、メディアで問題が報道される数時間前に、フェイスブックは否定的な報道を回避しようと先手を打ち、ケンブリッジ・アナリティカ とSCLのアカウントを停止したと発表した。

また、ケンブリッジ・アナリティカの元社員で同社の不正を暴露したクリス・ワイリーと、ケンブリッジ・アナリティカとSCLに問題のデータを提供したケンブリッジ大学の 研究者であるアレクサンダー・コーガンのアカウントも停止された。

2014年、SCLは「大規模リサーチプロジェクト」を実施し、アメリカ人の心理的プロファイリングを行うよう研究者のコーガンに委託した。この目的のためにコーガンは、ユ ーザーに性格テストを提供するアプリを作成。約27万人がこのアプリをインストールした。

その結果、人々のデータがコーガンと彼のクライアントのSCLの手に渡った。問題は、フェイスブックがアプリ開発者に当時提供していたソーシャルグラフAPIという機能を通 じて、アプリのユーザー約27万人にとどまらず、そのFacebook上の友人たちに関する精度の高いデータまでも、コーガンが収集できてしまったことにある。

これによって、Facebookユーザー合わせて5,000万人分のデータが漏洩してしまったのだ。ソーシャルグラフAPIは、そのころアプリ開発者に広く使われていた機能で、オバマ 大統領の2012年の選挙戦でも利用されていた。ユーザーの友人ネットワークからデータを得られるこの機能を、フェイスブックが完全に停止したのは2015年中ごろになってか らだった。

コーガンが収集したデータは、コーガンの使用に留まるはずだった。そのデータをSCLとケンブリッジ・アナリティカに提供したことによって、彼はフェイスブックの規約に 違反した。

さらに、これらの2社はフェイスブックのデータ削除の要請に応じなかったとみられている。複数の情報源から『WIRED』US版が確認したところによると、ケンブリッジ・アナ リティカの何人かの社員には、17年初めの時点でも問題のデータは閲覧可能であったという。

ケンブリッジ・アナリティカとSCLはいずれもそのような指摘を否定し、フェイスブックの指示を受けてすぐに破棄したとの主張を崩していない。「ケンブリッジ・アナリテ ィカとSCLエレクションズは、Facebookのデータの使用も保持もしていない」と、2社の共同声明には書かれている。

株主の訴訟、そしてザッカーバーグ招致の動き

データの悪用が発覚したあとの怒りと関心の高まりは、フェイスブックの予想を超えている。個人データにまつわるスキャンダルの長い歴史で、フェイスブックがこれまでに 経験したどの問題より深刻かもしれない。

そして3月19日には同社の株価は急落し、20日にはフェイスブックの株主たちは訴訟を起こした。フェイスブックが「実質的に虚偽の人を惑わす発表」を行い、著しい損失を 招くに至ったというのが訴訟内容である。

一方、ワシントンでは、超党派の上院議員たちが、上院司法委員会でザッカーバーグに証言するよう要求していた。また連邦取引委員会(FTC)も、無許可の第三者の手にユ ーザーデータが渡った場合、その事実をユーザーにフェイスブックが通知しなければならないという2011年の同意判決に同社が違反しているかどうかについての調査を開始し た。

連邦議会の議員たちは、ザッカーバーグのFacebookへの投稿には納得していない。彼の投稿直後にエド・マーキー上院議員(民主党・マサチューセッツ州)はTwitterで、「 あなたは連邦議会に来て宣誓し、それを証言しなければなりません」とツイートした。ザッカーバーグの声明には、証言をする意思の有無については触れられていなかった。

決定的な証拠の映像

ケンブリッジ・アナリティカとSCLは、ただの無許可の第三者というわけではなかった。英国の報道ネットワークのチャンネル4ニュースは、虚偽ニュースの流布から女性を使 って政治家を罠にかけることまで、クライアントの利益のためにケンブリッジ・アナリティカが使う一連の不正な手法を同社の幹部たちが自慢気に話す映像を放映した。

当時のケンブリッジ・アナリティカのCEOだったアレクサンダー・ニックス、同社データ部門責任者のアレクサンダー・タイラー、SCLエレクションズ業務執行取締役のマーク ・ターンブルら経営幹部は自らが話している相手が、スリランカの選挙戦に影響を及ぼしたがっている裕福な大物事業家の意を受けたフィクサーだと信じ込んでいたのだった 。その“フィクサー”は、実際は正体を隠したリポーターだった。

ケンブリッジ・アナリティカは、問題の映像は選択的に編集されたもので誤解を誘導するものであるとの声明を発表した。映像のなかで同社にとって最も都合の悪い発言をし ていたCEOのニックスは、「潜在的なクライアントだと思っていた相手に、ただ調子を合わせていただけだ」と語った。

「どんなふうに見えてしまうかは、わかっています、でも実際はそうではないのです」と、ニックスは19日に出した声明で述べている。「ケンブリッジ・アナリティカは、罠 や贈賄、あるいは“ハニートラップ”を容認したり、実行したりはしていないことと。また、虚偽の情報をいかなる目的にも利用していないことを、わたしは断固として主張 します」

それから1日遅れてケンブリッジ・アナリティカの取締役会は、さらなる調査の結果が出るまでニックスCEOを一時停職とし、タイラーが職務を代行することを決定した。

問題の本質

こうして詳細が明るみに出るに従って、このスキャンダルはフェイスブックのユーザーデータ保護の失敗といった規模を超えてしまった。現在、真に問題となっているのは、 一連のデータが非倫理的で、ときとして非合法な活動を公然と自慢する企業にいかに悪用されてしまったのか、ということなのである。

21日になるとザッカーバーグの沈黙は、逆に問題の大きさと根深さを耳をつんざかんばかりの大きさで示すものになっていた。

この件が、フェイスブックの当初の認識よりも相当に厄介な問題になった──と書いたとしたら、それは非常に控え目な表現だ。ケンブリッジ・アナリティカは、フェイスブ ックが抱えるもっと根本的な問題の未完成なイメージキャラクターにすぎない。そしてこの問題は、テクノロジー業界全体の問題でもある。

確かにフェイスブックは、ケンブリッジ・アナリティカとSCLによるデータへの不正アクセスを、ユーザーに知らせることをしなかった。だが、フェイスブック自身がその不 正アクセスを知り得たのは、たまたまケンブリッジ・アナリティカがテッド・クルーズの選挙戦にかかわった非常に目立つ企業であり、『ガーディアン』紙が15年12月にそれ を報じたからだった。

さらに深刻な問題は、これまでにユーザーがデータを何回くらい悪用されたり、誤用されたりしたのかをフェイスブックが知る手段がないということである。まがりなりにも 、それを見つけ出そうとフェイスブックは努力してはいるのだが。
参照元:Facebookの個人データの不正利用について、ようやくザッカーバーグが重い口を開いた
2018.03.23 FRI 06:00 WIRED

フェイスブックCEO夫人は玉の輿か
IT長者の配偶者選びに共通点
2012/5/24 7:00 日本経済新聞

(2012年5月20日 Forbes.com)

 マーク・ザッカーバーグ氏が長年の恋人であるプリシラ・チャンさんと19日に結婚したとたん、ツイッター上にはどこからともなく結婚をやゆする輩たちが現れた。

 「マーク・ザッカーバーグはフェイスブック上の自身のプロフィル内で交際ステータスを『既婚』に変更した。プリシラ・チャンはステータスを『玉の輿(こし)』に変更した」、などといった具合だ。

 ところがそんな見方は的外れだ。というのも、ザッカーバーグ氏の結婚のタイミングは、その前日に実現した160億ドルのフェイスブックの株式新規上場(IPO)とは無関係に決められたようなのだ。ザッ カーバーグ氏が待っていたのは株式上場ではなく、チャンさんのメディカルスクール卒業だったらしい。少なくとも、ザッカーバーグ夫妻についてメディア向けコメントを許されている結婚式参列者の1人はそ う語っている。この関係者は「結婚式は何カ月も前から準備されており、2人はチャンさんが学校を卒業するのを待っていた。株式上場の日付は流動的で、結婚式の日取りを決めた時には上場日は決まっていな かった」とAP通信に語った。

 IPO直前の月曜日、ちょうどザッカーバーグ氏が28歳の誕生日を迎えた日、彼はチャンさんのカリフォルニア大学サンフランシスコ校メディカルスクールの卒業式に姿を現した。彼はその会場だったサンフ ランシスコ市内のイェルバ・ブエナ芸術劇場で、もちろんフェイスブックで「チェックイン」し、「君を誇りに思うよ、ドクター・チャン:)」と書き込んだ。

 今や医学博士のチャン氏は、大富豪ドナルド・トランプ氏の妻たちのように、典型的な“富豪の奥様”になるつもりはなかったようだ。27歳で北京語も操る彼女は、2007年にハーバード大を卒業した。ザッカ ーバーグ氏がフェイスブック(当時はthefacebookという名称だった)に熱をあげて中退していなければ、同大で学位を取得していたであろう年の翌年である。

 二人は2004年に知り合い、在学中から時々デートを重ねていた。ハーバード大を卒業後、マサチューセッツ州出身のチャンさんは、全米トップ校の一つであるUCサンフランシスコのメディカルスクールに進 学する前の2年間、シリコンバレーのサンノゼ市にある、ハーカー・スクールという由緒ある私立小中高一貫校で理科を教えていた。ザッカーバーグ氏がパロアルト市に所有する700万ドルの豪邸に移り住んだ のは、2012年のことだった。

 チャンさんは当初、本当に医学の道でキャリアを積みたいのか自信がもてなかったと、ハーバード大の日刊学生新聞、「ハーバード・クリムゾン」に05年に掲載された記事で語っている。同紙は現在、ソーシ ャルメディアについて特集を組んでいる。ザッカーバーグ氏がハーバード大中退を表明した時の記事には、チャンさんについてこんなくだりもあった。

 <「ねえプリシラ、フェイスブックで働かない?」と、ザッカーバーグは尋ねた。

 「フェイスブック? それもいいわね」。プリシラ・チャン(‘07卒予定)はこう答えて、トゥイズラー(米の駄菓子)を彼に渡した。>

 フェイスブックで働くという話は実現しなかったが、チャン氏はザッカーバーグ氏の仕事に影響を与え続けている。彼女は小児医療に情熱をもっており、研修の際に病気に苦しむ子供たちに出会ったことをき っかけにザッカーバーグ氏に対し、フェイスブック内に臓器提供の意思表示の場を設けるよう働きかけた。ザッカーバーグ氏は今月初め、米ABCのロビン・ロバーツ氏に、「プリシラ医師は患者さんの容体が 悪くなっているところにある日突然、臓器提供を受けられるといった経験をすることでしょう。そんなときに彼女はとても明るい表情で家に帰ってくるでしょう。その臓器のおかげで誰かの人生がより良くなる からです」と話している。

 ツイッター上に広がる「玉の輿」ジョークとは裏腹に、チャンさんはザッカーバーグ氏との結婚後も、仕事を辞めて宝石やブランド品集めに走るなどというつもりはないようだ。今年後半には、小児科医とし て働き始めるという。

 シリコンバレーのIT富豪の妻たちは、夫の資産に依存して暮らす「お飾り」的存在というよりは、自身も自らの力で成功を収めていることが多く、チャンさんもこうした人々の仲間入りをすることになる。

 例えば、ローレン・パウエル・ジョブズさん。彼女はペンシルベニア大ウォートン・スクールで経済学を修め、ゴールドマン・サックスとメリルリンチで働いた後に、スタンフォード大で経営学修士(MBA )を取得。その年に、あのアップル社の創始者スティーブ・ジョブズ氏と結婚した。彼女は自然食を扱うテラヴェラという会社、そして教育関連の非営利組織(NPO)「カレッジ・トラック」の共同創始者で あり、3児の母でもある。ニュー・アメリカ財団と、ティーチ・フォー・アメリカの委員も務めている。

 グーグル共同創業者のセルゲイ・ブリン氏の妻、アン・ウォジツキさんは、イェール大を卒業(生物学)、23アンドミーというバイオテクノロジーの会社を共同設立した。同社は顧客のDNA解析を比較的手 ごろな価格で行う会社だ。

 さらにメリンダ・ゲイツさんという、本当に実権も持つIT長者夫人もいる。旧姓ではメリンダ・アン・フレンチさん。デューク大で学士号とMBAを取得し、80年代に草創期にあったマイクロソフト社に就 職した。電子百科事典「エンカルタ」や、「エクスペディア」という旅行予約サービスの開発に力を発揮し、後に夫となるビル・ゲイツ氏と出会った。夫妻が運営するビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団は、 メリンダさんが主導しており、世界でも主導的な慈善家としての評価を揺るぎないものにしている。

by Clare O'Connor (Forbes Staff)
参照元:フェイスブックCEO夫人は玉の輿か
IT長者の配偶者選びに共通点
2012/5/24 7:00 日本経済新聞







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